平成21年7月1日
6月30日午後6時40分から9時20分まで、中曽根外務大臣は、実務訪問賓客として訪日中の潘基文国連事務総長と、飯倉別館において会談、共同記者会見及び夕食会を行ったところ、概要以下のとおり(記者会見部分は別添)。
(1)潘事務総長から、国連が創設されてから60年の間に国際社会は大きく変化しており、国連安保理をより代表性が高く民主的な組織に改革する必要があることにつき加盟国間でコンセンサスがある、実際、加盟国の交渉が高いギアに入り、その中で、日本は主要な交渉グループの一つとして、より一層の努力が期待されている、早期の合意に向けてすべての加盟国に対し交渉を進めるよう促進する役割を果たしていきたいとの発言があった。
(2)中曽根大臣から、世界の平和と安定に対する日本の貢献は、多くの国々から評価を受けており、日本の常任理事国入りは、安保理の代表性、実効性の向上に繋がると考えている、常任・非常任双方の議席の拡大を含む安保理改革の早期実現に向け、事務総長のリーダーシップを期待する旨述べた。
(1)潘事務総長から、共通の懸念である北朝鮮の核問題についての日本のリーダーシップに対する評価が示された。そして、北朝鮮の行動は、軍縮・不拡散に反するものであり、核軍縮のための取組に挑戦するものであると認識していると述べるとともに、国際社会の一致した意志として採択された安保理決議1874号は強い内容が盛り込まれており、国連としても、同決議が実施されるよう加盟国への呼びかけを強化したい旨発言があった。他方で、同決議は政治対話にも道を開いており、平和的解決に向けても期待している旨述べた。
(2)中曽根大臣から、北朝鮮による核実験に毅然と対応しなければ安保理の威信が傷つく、安保理決議第1874号を今後各国がしっかりと実施していくことが重要であり、事務総長からも各国に対して決議の履行を訴えていただきたい、我が国も同決議を実効あらしめるよう、適切な対応を早急に行っていく旨発言があった。さらに、拉致問題を含む北朝鮮の人権状況は深刻であり、改善に向け、事務総長とも協力していきたい旨述べた。
(1)潘事務総長から、軍縮・不拡散分野での日本の貢献や中曽根外務大臣が先般発表した「11の指標」を歓迎し、事務総長が昨年10月に提案した核軍縮の「5つの行動計画」を紹介した。
(2)これに対し、中曽根大臣から、核軍縮の機運の高まりを、安全保障にも資する形で、世界的で持続的なものにしていくことが重要であり、CTBT発効の緊急性を呼びかける本年6月の事務総長声明を歓迎する旨述べ、2010年のNPT運用検討会議の成功に向けて、国連とも連携していきたいと表明した。
中曽根大臣から、護衛艦等によるソマリア沖の海賊対策やインド洋の補給支援活動といった取組につき説明したのに対し、潘事務総長から、我が国の貢献に対する高い評価が示された。
(1)潘事務総長から、1)アウン・サン・スー・チー女史を含むすべての政治犯の解放、2)国民和解の不可欠な部分である政府と野党の対話の再開、3)条件を満たした選挙を来年実施できる基盤の構築、の3点の指標について紹介した後、今回の訪日後ミャンマーを訪問予定であり、日本の協力を得たい旨発言があった。
(2)中曽根大臣から、事務総長のミャンマー訪問に対して敬意を表明しつつ、来年の総選挙を控え、ミャンマーと国際社会との関係において今が極めて重要なタイミングであり、それだけに、先月発生したスー・チー女史の新たな拘束と同人に対する訴追を深く懸念している旨述べた。さらに、中曽根大臣から、先週のG8外相会合では、ミャンマー政府による前向きな動きがあった場合には、我々として前向きに反応すること、また、国連事務総長の努力を支持していくことで一致したことを紹介した。そして、日本として国連による周旋努力への支持を更に強化したく、事務総長の訪問が成果のあるものとなるよう期待したい旨述べた。
(1)中曽根大臣から、6月10日に麻生総理が発表した「2005年比で15%減」との中期目標の設定を踏まえ、日本としては、年末のCOP15に向け、G8サミット、主要経済国フォーラム(MEF)首脳会合、及び8月以降の国連における交渉における議論に、引き続き積極的に参加し主導していきたい旨述べた。
(2)潘事務総長からは、日本の麻生首相の中期目標発表を評価しており、今後、オフセット、資金、技術などで更なる貢献をして、コペンハーゲンでのCOP15の成功に貢献されることを期待する旨述べた。
(3)さらに、潘事務総長から、主要経済国フォーラム(MEF)準備会合における先進国側と途上国側の対立について懸念が表明されたのに対し、中曽根大臣より、MEF首脳会合まで1週間ほどあるので、最後までねばり強く交渉するよう指示している、積極的に日本の立場を発言していきたい旨述べた。
(1)中曽根大臣から、我が国は今月、2度にわたり明石政府代表を派遣し、国内避難民に対する取組や国民和解のための政治プロセスの早期進展が重要であることにつきラージャパクサ大統領等に働きかけ、前向きな回答を得た旨述べた。さらに、我が国は本年、国内避難民への人道支援及び地雷除去支援のため総額最大約940万ドルの支援を決定し、今後も地雷除去等早期に必要な支援について検討していく考えであり、貴事務総長とも緊密に連携していきたい旨述べた。
(2)潘事務総長から、明石代表をはじめとする日本の役割を非常に有意義と評価しつつ、国際社会として、国民和解や透明性・人権侵害について若干懸念しているとの問題意識が表明された。これに対し、中曽根大臣から、国民和解については引き続き政治プロセスの着実な進展を働きかけているところであり、人権侵害の問題については、どのように人権確保を図っていくか国連事務総長ともよく相談していきたいと発言があった。
(1)潘事務総長から、人間の安全保障フレンズ会合等に言及しつつ、人間の安全保障が紛争や国際保健、移民、経済金融危機、気候変動といった問題の解決にも資する有用な概念であり、この分野での日本の貢献への評価が示された。
(2)これに対し、中曽根大臣から、我が国は人間の安全保障の理念の普及と更なる促進に向け、国連の人間の安全保障基金等を通じた実践に努めている旨紹介しつつ、今後とも事務総長と協力していきたい旨述べた。
(1)中曽根大臣から、経済・金融危機の逆風の中でも、ミレニアム開発目標(MDGs)をはじめ開発への取組を後退させてはならない、我が国は、TICAD4とG8北海道洞爺湖サミットにおける議論を踏まえ、そのフォローアップを着実に進めていく、これまでの努力に引き続き、MDGs達成に向け、関係国が最大限の努力を行うことが重要と述べた。
(2)それに対し、潘事務総長から、昨年我が国が表明した対アフリカODAの倍増を評価する旨述べ、引き続いての貢献への期待が示された。
(1)中曽根大臣より、オスターヴァルダー国連大学学長(会談・夕食会に同席)は、国連に対して知的貢献を行う、日本に根ざした国連大学の実現に努められており、我が国としてもこれを歓迎し、引き続き支援していきたい旨述べた。
(2)これに対し、潘事務総長からは、日本の支援に対する謝意が表明された。