国連

中曽根外務大臣と潘基文国連事務総長の共同記者会見(概要)

平成21年7月1日

 6月30日午後7時25分から約25分間、中曽根外務大臣は、実務訪問賓客として訪日中の潘基文国連事務総長と、飯倉別館において共同記者会見を行ったところ、概要以下の通り。

1.冒頭発言

(1)中曽根大臣

 潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の来日を歓迎する。国際社会は厳しい経済金融情勢に加え、環境・気候変動やテロ・海賊、大量破壊兵器の拡散など、地球規模の様々な課題に直面している。こうした中、国連が果たすべき役割は益々重要となってきており、潘事務総長がこれらの問題に積極的に取り組んでいることを高く評価している。日本と国連が如何に協力を強化していくか、潘事務総長をお迎えして意見交換を行うのは、まことに時宜を得たものだと考える。
 北朝鮮の問題について、北朝鮮による核実験は国際社会に対する重大な挑戦であり、これに毅然と対応する必要がある、更に、北朝鮮の核保有は認められないという認識で一致した。潘事務総長の協力も得ながら、安保理決議1874号を着実に実施していきたいと考える。
 ソマリア沖の海賊問題は、我が国の経済活動にとっても重大な問題であるが、私から、アデン湾における自衛隊の活動に加え、周辺国の海上取締能力向上や地域協力、更にはソマリア情勢の安定化という中長期的な取組につき説明し、潘事務総長から高い評価が示された。
 軍縮・不拡散について、核軍縮の気運の高まりを、安全保障にも資する形で、世界的で持続的なものにしていくことが重要であるという認識でも一致した。このような観点から、CTBTの早期発効、2010年NPT運用検討会議の成功に向けて、国連とも連携していくことを確認した。
 安保理改革について、改革の早期実現が必要との認識で一致し、私から引き続き事務総長の理解と協力を得て議論を進展させていきたい旨述べた。
 この後、潘事務総長と引き続き意見交換を行う予定である。環境・気候変動や人間の安全保障、また地域情勢などについても幅広く話し合い、国連との協力を一層緊密化していく考えである。

(2)潘事務総長

 中曽根大臣、どうもありがとうございました。皆様、こんばんは。一年ぶりに日本に参りました。今から英語で話します。(ここまで日本語)
 三度目の訪日をうれしく思う。ちょうど一年前、私はここ日本で、日本の指導者達ととても有意義な意見交換を行った。本日、到着直後に中曽根大臣と会談を実施したが、既に中曽根外務大臣とは、G8外相会合の帰りの機中で初めての会談を行っている。
 日本は、国連加盟国の中で最も重要な国の一つである。そのため、私が定期的に日本政府と実施している対話は、私が国連事務総長としての自分の責務を果たすために、極めて重要なものである。金融問題だけでなく、平和、安全保障、平和維持、平和構築、開発、人道支援、国際保健、人権等、事実上国連の全ての分野における日本の活発な役割と貢献は、高く評価されている。私は、更に日本と国連の協力を強固なものとし、拡大したいと考えている。
 今終わったばかりの会談では、私は、中曽根大臣に、日本の国連に対する支援、そして、世界規模の課題に対応できるよう、国連を更に効率的かつ信頼できるものにする国連改革に向けての私共の努力への着実な支援に、感謝の意を表した。
 日本の継続的な指導力、貢献、活発な努力は、気候変動、世界金融・経済危機、そして、ミレニアム開発目標(MDGs)や軍縮・核不拡散を達成する上で不可欠である。
 中曽根大臣と私は、地域紛争、北朝鮮の核問題に関する安保理決議の実施、ソマリア沖の海賊問題、平和構築、テロとの闘いなど他の重要な問題についても話した。この後の夕食会では、私のミャンマー訪問や、スリランカやパキスタンの状況、そして最も重要な気候変動問題などについても話す予定である。
 ご存じの通り、私は、7月3日から4日にミャンマーを訪問する計画である。ミャンマーに戻り、国連及び国際社会にとって深刻かつ長期的な懸念をミャンマーの上層部と直接話し合いたいと思っている。同国の政治プロセスが重要な局面を迎えている今、ミャンマーの将来にとって最も重要な三つの問題を取り上げなくてはならないと思っている。第一に、アウン・サン・スー・チー女史を含むすべての政治犯の解放、第二に、国民和解の不可欠な部分である政府と野党の対話の再開、第三に、信頼に足る選挙を来年実施できる条件を整えることである。
 また、昨年のサイクロン後の共同の人道支援を確固たるものとするために、あらゆる機会を利用したいと考える。
 中曽根大臣と私は、これらの重要な課題に関する対話を継続する所存である。明日の日程や麻生総理との会談も楽しみにしている。
 この機会に、私や同行者に対する日本政府や日本国民の暖かい歓迎に感謝の意を表したい。(日本語で)どうもありがとうございました。

2.質疑応答

(1)【問】北朝鮮問題との関連で、国連安保理決議1874号の着実な実施について意見が一致したとのことだが、大臣から事務総長に国連に何をしてほしいと伝えたのか。事務総長には、全ての国連加盟国が一致して取り組むことが必要とのことであるが、今後、国連加盟国に対してどのような働きかけを行うつもりか。更に、安保理改革の必要性について意見が一致したとのことだが、具体的にどのような改革が必要と考えているのか。

【中曽根大臣】北朝鮮の核・ミサイル開発を止めさせるためには、各国が安保理決議1874号を着実に実施することが重要であるとの認識を共有し、潘基文事務総長の協力を得ながら同決議の実効性を確保していきたいと述べ、この点について両者で一致した。また、拉致問題を含む北朝鮮の人権状況は深刻であり、2005年から4年続けて決議を提案し採択されているが、国連側とも協力しつつ、この問題の一日も早い解決に向けて取り組んでいきたい旨、私から申し上げた。
 国連安保理改革については、我が国の常任理事国入りは、安保理における代表性・実効性の向上に繋がるとの我が国の立場をお伝えし、安保理改革の早期実現に向けた潘事務総長のリーダーシップと協力を要請した。

【事務総長】全ての安保理決議には拘束力があり、全ての加盟国は安保理決議を完全に遵守する義務がある。北朝鮮の核実験について、安保理は重要な決定を行い、強力な全会一致のメッセージを北朝鮮に送った。北朝鮮も、完全にこの決議を守るべきである。この決議は、他の全ての加盟国にも完全な履行を呼びかけるものとなっている。この決議の中には制裁措置が入っており、例えば公海において貨物が核兵器・核物質の拡散に関係していると信じるに足る十分な根拠がある場合には、北朝鮮の船舶を臨検できる。これは非常に重要な点である。この決議では、対話の門戸も開かれており、対話を通じて平和的に解決できる道が開かれることになる。北朝鮮の当局が完全に協力し、決議を遵守し、同時に国連の加盟国も協力する、それによって決議を完全に実施することが重要だと考える。私は、全ての関係者に、状況を悪化させるような行動を控えるよう要請する。私は、北朝鮮当局者に、既に極めて深刻な状況を悪化させるような更なる措置を取ることを控えるよう要請する。北朝鮮の取った措置は、核軍縮・不拡散に関する国際社会の努力に反するものである。
 安保理改革については、繰り返し述べているように、国連創設以来60年間、大きな変化が起きていることから、安保理は広く代表性を持つ民主的なものに改革しなければならない。加盟国の間では、この問題についてコンセンサスができている。実際、国連加盟国はギアをシフトし、既に政府間交渉を国連総会非公式本会合で始めている。私は交渉の第3ラウンドを楽しみにしている。重要なのは、日本が重要な交渉グループの一員として最大限の努力をし、このモメンタムを維持することであると思う。それにより、国連加盟国が合意できるような解決策を見いだすべきだと思う。私も国連事務総長として努力は惜しまない。現在進行中の努力を推進し、安保理改革を可能な限り早期に実現したいと考えている。

(2)【問】今後、アウン・サン・スー・チー女史の公判が開かれるが、事務総長に対しては、ミャンマーを訪問するタイミングに関して、間違ったメッセージが送られることはないか伺いたい。中曽根大臣には、ミャンマー情勢改善のため日本が如何なる貢献ができるのかについて伺いたい。

【事務総長】私も、最も適切なタイミングを考えていた。ミャンマーの訪問はかなり前から検討していたが、アウン・サン・スー・チー女史の公判が保留状態にある今のタイミングでの私の訪問については懸念があることを認識している。私の訪問中に裁判が開かれるかも知れないことについては意識している。他方で、最も適切なタイミングを見つけるのは大変である。私の訪問については、ミャンマーの当局と交渉してきた。確かに国際社会の懸念はあるが、私は今回の訪問では、できる限り強い形で国際社会の懸念をミャンマーの指導層に伝える機会としたい。既に述べたように、最も重要な3つの指標は、第一にアウン・サン・スー・チー女史を含む全ての政治犯の解放、第二に、政府及び野党の間の対話の即座の再開、第三に、客観的、透明かつ民主的なやり方で信頼に足る選挙を来年実施するための政治的・法的な枠組み、雰囲気の醸成である。これは国際社会のコミットメントであり、懸念であり、切望である。このメッセージをタン・シュエ将軍等指導層に力強く伝えたいと考えている。また、私としては、全ての市民社会の指導者、NGO,政治指導者を招いて公開スピーチを実施したいと考えている。更に、全ての他の様々な政治グループの代表者にも会いたいと考えている。今回の訪問は、草の根の人たちとの対話及び最高指導部との対話ができるという意味で有意義と考える。

【中曽根大臣】我が国は、ミャンマーとは独自の関係を有してきている。今回の問題については、現地の我が国の大使館を通じて、私自身も現地の高官とも電話等で連絡をとりながら、平和的な解決に向けてのミャンマー政府の努力を要請してきたところである。事務総長からも話があった通り、本件に関しては国際社会も大きな懸念を有しており、ミャンマー国内の問題ではあるが、人道上の問題等も含めて、我が国としてもそのような懸念を伝えているところである。今後も引き続き、我が国の有するチャネル等を通じて、一刻も早い平和的な解決に向けて、働きかけを行っていきたいと考えている。

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