平成22年8月3日
8月3日,飯倉別館において,岡田外務大臣と訪日中の潘基文国連事務総長との会談及び夕食会に引き続き,午後9時20分から約20分間,共同記者会見が行われたところ,概要以下のとおり(同時通訳)。
潘基文国連事務総長の来日を歓迎する。特に今回は,歴代の国連事務総長として初めて,8月6日の広島平和記念式典に出席され,また前日の5日には長崎を訪問されるということで,歴史的に大きな意味のある訪日だと思う。「核のない世界」を目指して国際的な機運を更に高めていく上で,今回国連との協力関係を改めて確認できたことを,非常に心強く思っている。
この関連で,私から,我が国が9月の国連総会の機会に,豪州と共に「核軍縮・不拡散に関する外相会合」を実施する意向であることを伝えた。
事務総長とは様々な意見交換をしたが,北朝鮮の問題については,北朝鮮が安保理議長声明を真剣に受け止め,核問題等の解決のために前向きかつ具体的な行動を取る必要があるという認識で一致した。拉致,核,ミサイルといった諸問題を解決するためにも,事務総長の協力を得ながら,国連の場でも引き続き解決に向けて取り組んでいきたいと思っている。
安保理改革については,改革の早期実現が必要との認識で一致し,私から引き続き事務総長の理解と協力を得て議論を進展させていきたい旨述べた。また,PKO・平和構築についても議論を行った。事務総長からはハイチPKOへの自衛隊の迅速な派遣についても,高い評価を頂いた。
地球規模の諸課題については,我が国として国際社会の議論をリードし,積極的な役割を果たしていく旨述べた。具体的には,本年9月に予定されているミレニアム開発目標(MDGs)に関する国連首脳会合に向け,特に保健,教育の両分野における重点政策を発表するということを話した。また,気候変動問題ではCOP16に向けた国際枠組構築への努力や,生物多様性について本年10月に愛知県名古屋市で開催されるCOP10の成功に向けて,事務総長との緊密な連携を確認した。
そのほか,ミャンマー,スリランカやイラン等の地域情勢などについても,幅広く,時宜を得た議論を行うことが出来た。
事務総長は明日,菅総理との会談を行われる予定であり,総理との会談,また,長崎,広島訪問をはじめ,今回の訪日が有意義なものとなるよう期待している。
岡田大臣,どうもありがとうございました。みなさん,こんばんは。(ここまで日本語)
今回は国連事務総長として4度目の訪日となる。日本の政府と国民の皆様のもてなしに感謝を表したい。今回の訪日では,長崎及び広島を訪問する。原爆投下の65周年に両市を訪問することは大変名誉なことである。
日本は国連に対して大きな貢献を行っている。今回の訪日は,日本と国連の協力関係をより拡大するためのものである。日本は世界第2位の分担金を国連に対して拠出しているが,日本の貢献は,財政的なもののみではなく,気候変動,テロ対策,アフリカでの平和構築,人間の安全保障,MDGsの達成等幅広い。また,核軍縮・不拡散においては世界をリードしている。今後も日本の国際社会に対する貢献が一層拡大することを期待したい。
今回の会談でこれらの地球規模の諸課題について話し合うと同時に,朝鮮半島,アフガニスタン,イラン,スリランカ,ミャンマー,ソマリア等の地域情勢についても協議した。
安保理改革については,より代表的で透明性のある,また説明責任を果たす安保理に向けた日本の立場及び目標を承知している。岡田大臣に対しては,国連事務総長として安保理改革を実現するために進行中の政府間交渉を最大限支援するつもりであり,国連設立時からの国際政治状況の劇的な変化を考慮すれば,安保理改革は必須であると伝えた。
今回の訪日で菅総理に会うのを楽しみにしている。また,広島と長崎を訪問することにより,国際社会に対して「核のない世界」に向けて力強いメッセージを発信したい。核の脅威は現実のものであり,「核のない世界」に向けたモメンタムを維持するべく可能な限りのことを行う必要がある。
(1)【問】 潘事務総長は国連事務総長として初めて,長崎を訪問し,広島の平和記念式典に出席するが,それぞれの立場から核兵器廃絶に向けてどのような取り組みをなされるか伺いたい。
【大臣】 まず,「核のない世界」を目指すにあたり,核リスクの少ない世界を実現することが重要である。核リスクを減らすことが,現実的なステップとなる。具体的には核兵器の数を減らしたり,核の役割を縮小させたりと,核リスクを減少させるロードマップを作っていくことが必要である。
【潘事務総長】 最初に,原爆投下の65周年に広島の平和記念式典に出席出来ることは大変喜ばしい。国連事務総長として初めて広島の平和記念式典に出席する。私の出席により,国際社会に対して「核のない世界」に向けて最大限努力する必要があるという力強いメッセージを発信出来ると信じている。また,被爆者の「核のない世界」への切望を実現に向けて努めるべきである。
国連事務総長として,「核のない世界」に向けて提言を発表し,その中で何点かは実現している。現在非常に重要な時期に差し掛かっており,今まで築きあげてきたものにビルド・アップする必要がある。ここ最近でも米ロのSTARTに対する取組,4月の核セキュリティ・サミット,NPT運用検討会議と重要なモメンタムがある。この好機を活用して,9月24日に軍縮会議ハイレベル会合を開催することとし,岡田大臣を招待した。日本と緊密に取り組んでいく所存であり,日本の貢献には大変感謝している。
(2)【問】 北朝鮮の核兵器問題について伺いたい。六者会合はここ2年ほど動きのない状況となっているが,国連が六者会合の再開に向けて,何らかの役割を果たすべきだと考えるか。事務総長自身は,北朝鮮を訪問され,核兵器開発を断念するよう働きかける考えはあるか。
【潘事務総長】 朝鮮半島の問題に対して,特に北朝鮮の核問題については非常に大きな懸念を抱いている。引き続き朝鮮半島の安定に向けて努めていく必要がある。六者会合が近く再開されることを信じたい。六者会合は,北朝鮮との話し合いを行う上で重要な役割を果たした。北朝鮮が国際社会において責任ある国となるには,北朝鮮の非核化は必須である。
北朝鮮については,国連事務総長としても役割を果たすべく動き始めている。2月には特使を北朝鮮に派遣した。但し,韓国哨戒艦の沈没事件もあり,話し合いはスムーズに進んでいない。北朝鮮の問題を解決するべく,可能な限り協力したい。なお,朝鮮半島の問題の解決には日本と北朝鮮の関係改善が重要であることを付言したい。
(3)【問】 イスラエルとガザに対する空爆について事務総長に伺いたい。イスラエル,ガザ地区,エジプトやヨルダンで空爆が発生しており(ママ),犠牲者も出ている。報道によると,イスラエルは,パレスチナから発射されたロケット弾がイスラエルの都市で爆発したことに対し,国連へ訴えたと伝えている。これらの空爆の現状と国連の対応について伺いたい。
【潘事務総長】 中東で発生している一連の空爆事件については詳細な情報はないが,これらの攻撃は市民の犠牲者を出しており,国連事務総長としてこれらの攻撃を強く非難する。これらはテロ行為であり,イスラエルに対するロケット攻撃も,到底認めることは出来ない。双方の攻撃がエスカレートしないよう関係国が自制し,和平プロセスに焦点を当てるよう呼びかけた。そして今般,ガザ支援船団事件について調査チームを立ち上げた。これらの取組が和平プロセスに貢献することを願っている。