2006年6月
国際熱帯木材機関(ITTO)の第40回理事会が、5月29日(月曜日)~6月2日(金曜日)までの5日間、メリダ(メキシコ)において開催され、わが国からは、外務省、林野庁からなる代表団が出席した。
今回の理事会には、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ブラジル、コートジボアール、コンゴ共和国等の熱帯木材生産国及びわが国、米国、スイス、ノルウェー、韓国、EU等の消費国(計37カ国と1地域)の政府代表のほか、FAO、UNFF等の国際機関、NGO等が参加した。
29日の開会式においては、開催地であるメリダのフエンテス市長、ホセ・ユカタン州知事、リード・メキシコ国家林野庁長官より、国際機関の会議が当地で開催されることへの歓迎の挨拶とユカタン半島における森林・林業の概要、現在の取組等の説明があったほか、アンドー・コートジボワール環境・森林大臣、プルアイチ・パプアニューギニア林業大臣、伊藤康一理事会議長、ソブラルITTO事務局長によるスピーチが行われた。
伊藤康一理事会議長からは、この会議の開催にあたってのメキシコ国及びメリダ市への感謝の言葉が述べられた後、ITTOは熱帯林に関する唯一の法的な国際的枠組みであり有用性が高いこと、本年1月に採択された「2006年国際熱帯木材協定」は柔軟性を有し持続可能な森林経営を着実に推進する内容となっており各国の早期批准を望む旨の発言があった。ソブラルITTO事務局長からは、新協定の早期批准を望むと共に、これまでITTOは2.8億ドルのプロジェクトを実施してきたが熱帯林地域の保全と発展のため更なるITTOの活動が必要である旨の発言があった。
また、インドネシア代表団より、5月27日に発生したジャワ島中部地震に関連し各国からの人道的支援を求めたいとの要望が述べられるとともに、被災者を悼み出席者全員による黙祷が行われた。
第37回理事会決議3等を踏まえ、第31回専門家パネルにおいてプロジェクト審査に係る基準・採点票の変更が試行的に実施された。今次理事会では、パネルにおける検討の報告が行われた。
わが国からは、「理事会で承認されたプロジェクトができるだけ資金を受けられるよう、専門家パネルの審査を厳しくし、プロジェクトをさらに絞り込む必要がある。第37回理事会(横浜)において『専門家パネルへの新規プロジェクト提出数を1か国あたり3件を上限とし、優先順位を付す』と決議されており、各国ともこのルールを遵守すること、及び事務局においても本決議の遵守を確認する必要があることを指摘したい」との発言を行った。多くの生産国からは、「理事会でプロジェクトが承認されてもドナーの資金支援が行われないケースが多い。プロジェクトの質を高めるのは大事だが、もっと根本的な問題はプロジェクトへの資金手当である。生産国はお金をかけてプロジェクトを作成しており、消費国による資金手当がなければ全て無駄な作業になる」との発言が相次いだ。
第30回理事会決議9に基づき、事務局から「熱帯林経営の現状に関する報告」が行われ、この報告書は冊子やホームページ上でも公開されている旨紹介された。
第32回理事会決議3に基づき、「熱帯林における林地復旧、劣化二次林の管理及び復旧のためのITTOガイドライン」の普及促進のためのワークショップの実施状況及びガイドラインの利用状況に関する報告があった。
2006年12月末に有効期限を迎える「1994年国際熱帯木材協定」の延長については、1994年国際熱帯木材協定(現行協定)第46条「有効期間、延長及び終了」の規定に基づき、理事会は特別多数票による議決で、2006年国際熱帯木材協定(新協定)が発効するまでの間、現行協定を延長することができる。今次理事会においては、現行協定の延長に関する暫定的な決議案を作成し、本年11月に予定されている第41回理事会(横浜)において表現振りの詰めの作業を行ったうえで決議することで合意した。
現行協定第16条「事務局長及び職員」において「事務局長の任用の条件は理事会が定める」との規定を踏まえ、事務局より今後の必要な手続きに関する説明があった。本年11月の第41回理事会(横浜)において、次期事務局長選出に関するパネル・メンバーの構成等を含めた具体的な選出手続に関する協議を行うことで合意した。
今回の理事会では、18件のプロジェクト、3件の事前プロジェクトが承認された(決議1)。このうち、わが国は、違法伐採対策と持続可能な森林経営に関連する統計情報システム(グアテマラ)、持続可能な森林経営のモニタリング(インドネシア)、地域住民参加によるマングローブ林管理(メキシコ)等10件のプロジェクト及び人材育成のためのフェローシップ・プログラムに対し、301.1万ドル(外務省250.8万ドル、林野庁50.3万ドル)の拠出を決定した。
また、カメルーンから提案された「中央アフリカにおける森林生態系の持続可能な経営のための関係地域の国会議員会議」に関する決議案については、アフリカ31ヶ国が国会議員や市民社会と連携しつつ森林法の施行とガバナンスの向上を図ることを目的としており、「アフリカにおける森林法の施行とガバナンス」(AFLEG)に資するとの観点から理事会で承認された(決議2)。
なお、米国が提案した野生生物の密輸に反対する決議案については、多くの加盟国(スイス、ブラジル、EU等)の賛同が得られず、協議は持ち越された。
今後の理事会の開催予定は以下のとおり決定された。
第41回:2006年11月6日~11日 横浜市
第42回:2007年5月8日~12日 ポートモレスビー(パプアニューギニア:PNG)