犯罪

国際刑事裁判所(ICC)第10回締約国会議(結果概要)

2011年12月21日

 12月12日から21日まで,米国(ニューヨーク国連本部)で開催された国際刑事裁判所(ICC)第10回締約国会議(ASP)の概要は以下のとおり。

1 一般討議(要人挨拶を含む)

  1. (1)要人挨拶では、ミギロ国連事務次長、カーマ・ボツワナ大統領及びピレー国連人権高等弁務官がそれぞれ挨拶を行った。特に、カーマ・ボツワナ大統領は、アフリカ諸国によるICCへの協力が不十分であるとし、不処罰の終焉のために諸国は政治的意思を固める必要があると訴えた。
  2. (2)各国の一般討論演説では、(1)安保理によるリビアの事態の付託とコートジボワールの事態の検察官の職権捜査の開始によるICCの活動の更なる進展、(2)厳しい世界的経済状況に直面して効率的な裁判所運営の必要性に言及する国が目立った。
  3. (3)我が国は、ICCをより効率的、効果的、普遍的及び制度的に持続可能な裁判所とする観点から、ICCの普遍化(特にアジア諸国の加盟促進)、補完性の原則、ICCのガバナンスの向上及び侵略犯罪に関する解釈の違いにつき議論を継続する必要性に言及するステートメント(PDF)を行った。

2 新締約国会議(ASP)議長・副議長・議長団メンバーの選出

  1. (1)3年間の任期が終了したヴェナヴェザーASP議長に代わる新ASP議長の選出が行われ、7月に議長団(ビューロー)で合意したとおり、インテルマン(Ms. Tiina Intelmann)元エストニア国連常駐代表が新ASP議長に選出された。
  2. (2)ASPの副議長にガーナのカンダ氏とスイスのボーリン氏を選出し、その他の議長団メンバーとして、我が国の他、アルゼンチン、ベルギー、ブラジル、カナダ、チリ、チェコ、ガボン、フィンランド、ハンガリー、ナイジェリア、ポルトガル、韓国、サモア、スロバキア、南アフリカ、トリニダード・トバゴ、ウガンダの18か国が選出された。

3 検察官選挙

 来年6月に9年間の任期が終了するモレノ・オカンポ検察官に代わる新検察官の選出が行われ、唯一の候補として74か国から指名を受けたベンソーダ現ICC次席検察官がコンセンサスで次期検察官に選出された(外務報道官談話)。任期は、2012年6月16日から2021年6月15日までの9年間。

4 裁判官選挙

 来年3月に任期が終了する6名の裁判官の後任を決定する裁判官選挙が行われ、15回投票が行われた末、18名の候補から、カルモナ(トニダード・トバゴ)、ディフェンソー・サンティアゴ(フィリピン)、エボ・オスジ(ナイジェリア)、フレマー(チェコ)、ヘレーラ・カルブシア(ドミニカ共和国)、モリソン(英国)の6名が選出された。任期は、2012年3月11日から2021年3月10日までの9年間。

5 予算財務委員会(CBF)委員選挙

 来年4月に任期が終了する6名のCBF委員の後任を決定するCBF委員選挙が行われ、すべての地域グループの議席につきスレートにより新しい委員が選出された。選出された新しい委員は、杉浦正俊(日本、外務省総合外交政策局国際平和協力室長)の他、アドセット(カナダ)、ガライベ(ヨルダン)、イタム(シエラレオネ)、イズキエルド(エクアドル)、ソプコヴァ(スロバキア)の6名。任期は、2012年4月21日から2015年4月20日までの3年間。

6 2012年予算

  1. (1)7月に提出された書記局予算案は前年度比13.6%増、9月のCBF勧告後の予算案でも同8.2%増の予算案が提示された。その後10月に捜査が開始されたコートジボワールの事態及び本庁建築関連費用に関する補正予算が提出され、また今年リビアの事態等に予備費が支出されたため予備費の充填が必要になり、2012年度予算案は総額約114.3百万ユーロ(前年度比10.3%増)となった。
  2. (2)名目ゼロ成長(ZNG)を主張しCBF勧告から更なる削減を求める5主要財政拠出国(日本・ドイツ・英国・フランス・イタリア)とICCの活動に必要な財源が与えられるべきであるとする一部の中南米諸国(アルゼンチン、コスタリカ、ベネズエラ)、北欧諸国(フィンランド、ノルウェー等)、スイス、ベルギー等との間で主張が対立し、長時間の審議が行われた。
  3. (3)最終的には、(1)予備費の充填を含む総額を111百万ユーロとすること(2012年予算総額108.8百万ユーロ+2.2百万ユーロの予備費の充填。総額では前年度比7.1%増、予備費の充填を除く予算額では同5.0%増)、(2)予算決議に、(1)職員待遇の見直しに関する決議(英国・日本・カナダ・スペイン・ウガンダの共同提案)、(2)法律扶助の見直しに関する決議(ノルウェー提案) 、(3)予算プロセスの改善に関する決議(スウェーデン提案)、(4)国連に財政負担を求めるための取決めに関する決議(リヒテンシュタイン提案)を盛り込み、かつ、特定の事態等に関する予算のイヤーマーキングは行わないことというパッケージがコンセンサスで採択された。
  4. (4)なお、我が国は、最終局面において、他の主要財政拠出国と中南米諸国等の間での妥結点を探る観点から仲介を行い、パッケージ案の成立に貢献した。

7 オムニバス決議

 決議の附属書で、締約国の非協力に関して,規程第87条に従いICCが非協力を認定した場合のASPの手続と非協力が生じる前又は非協力が認定される前のASPの手続を新たに定めた。

8 手続証拠規則の改正、被害者賠償に関する決議

 ガバナンス問題スタディ・グループ(SGG)における検討を踏まえ、各裁判部への裁判官の配属権限を裁判官全員が出席する裁判官会議から裁判所長会議に移す手続証拠規則第4条の改正、及び、裁判所に対して被害者賠償に関する原則を確立することを要請する決議が、それぞれコンセンサスにより採択された。

9 第11回ASPの日程

 次回の日程を2012年11月14日~22日(於:ハーグ)とすることが決定された。


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