- 本13日(火曜日)(現地時間12日),米国ニューヨークの国連本部で開催されている国際刑事裁判所(ICC)第10回締約国会議において検察官選挙が実施され,締約国により候補者指名を受けていた唯一の候補であるファトウ・ベンソーダ候補(ガンビア出身,現ICC次席検察官)がコンセンサスで次期検察官に選出されました。我が国はベンソーダ候補の資質を高く評価し,同候補を指名しており,今次検察官選挙において同候補が選出されたことを歓迎します。
- ICCは,国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪を犯した個人を裁くことを通じて,国際社会の平和と安全を維持する上で,極めて重要な役割を担っています。ベンソーダ次期検察官には,これまでのICCの経験を踏まえながら,補完性の原則(注)に留意し,中立性・公平性を維持しつつ捜査・訴追を行うことを期待すると共に,職務の遂行に際しては実効性及び効率性を重視していくことを希望します。
- 我が国は,ICCを支える主要国の一つとして,引き続きICCの活動に積極的に貢献していく考えです。
(注)補完性の原則:各国が被疑者の捜査・訴追を行う意思や能力がない場合にのみ,ICCが捜査・訴追を行うという原則(ICC規程第17条)。
(参考1)国際刑事裁判所(ICC)
国際社会全体の関心事である最も重大な犯罪([1]集団殺害犯罪,[2]人道に対する犯罪,[3]戦争犯罪,[4]侵略犯罪)を犯した個人を,国際法に基づき訴追・処罰するための,史上初の常設の国際刑事法廷。設立条約たる国際刑事裁判所(ICC)ローマ規程は,1998年7月に採択され,2002年7月1日に発効。我が国は,2007年7月17日に加入書を寄託し,同年10月1日に105番目の加盟国となった。2011年12月現在の締約国数は120。裁判所はオランダのハーグに所在。
(参考2)ICC検察官
(1)ICC検察官は,裁判所から独立して行動し,ICCの管轄権の範囲内にある犯罪について締約国や国連安保理からの付託等を受理して捜査を開始するするとともに,自らの発意に基づき裁判所の許可を得て捜査を開始する権限も有する。
(2)現在,検察局は,リビアやスーダン・ダルフール等ICCに付託された7つの事態について捜査を行い,このうちウガンダ,コンゴ等5つの事態で計12件の事件をかかえている。また,北朝鮮やアフガニスタン等について予備的調査を行っている。
(3)スーダンのバシール大統領(2009年3月)やリビアのカダフィ指導者(本年6月)といった国家元首に対して逮捕状が発出されているが,本年11月30日にはコートジボワールのバグボ元大統領がハーグに移送され,元国家元首に対する初めての公判前審理が2012年6月に開始される予定。
(4)ICC検察官は,徳望が高く,かつ,刑事事件の訴追又は裁判について高い能力及び広範な実務上の経験を有し,英語又は仏語に通じる者でなければならない。任期は9年,再選不可。現職はモレノ・オカンポ検察官(アルゼンチン出身,男性。初代ICC検察官)
(参考3)ICC検察官選挙
ICC検察官は,締約国の絶対多数による議決で選出される。但し,次期検察官の選出に当たっては,そのポストの重要性に鑑み,コンセンサスで決定されることが望ましいとの考えから,第9回締約国会議(2010年12月)は調査委員会を設置。同委員会が独自に候補者を発掘・選定し,ベンソーダ候補を含む4名の候補者を議長団会合に提示,議長団会合がコンセンサスでベンソーダ候補を唯一の次期検察官候補とする旨決定し,同候補のみが我が国を含む締約国の指名を得て,締約国会議でコンセンサスで選出された。ベンソーダ次期検察官の任期は2012年6月から9年間。
(参考4)ファトウ・ベンソーダ候補(Fatou Bensouda,ガンビア出身,女性)
ガンビア政府で検事総長及び法務大臣等を務めた後,ルワンダ国際刑事裁判所(ICTR)で上級法律アドバイザー等を務める。2004年にICC締約国会議でICC次席検察官に選出され,現在に至る。