平成21年11月
11月18日から26日にかけてオランダ・ハーグで国際刑事裁判所(ICC)第8回締約国会議が開催された。
空席2名分にかかる裁判官補欠選挙が行われ、5名の候補者で争われた。第一回目投票で日本の久仁子(おざき・くにこ)候補が92票中79票を得て当選し(日本は外務大臣談話を発出)、第六回目投票でアルゼンチン出身のフェルナンデス候補が当選した。任期は当選日(11月18日)から2018年3月10日まで。
各国代表からステートメントが行われた。日本政府代表(渋谷駐オランダ大使)からは、ICCの普遍化(特にアジア諸国の加盟促進)、補完性の原則、ICCの活動への持続的な支持のためのガバナンスの重要性等を主張し、ローマ規程検討会議(以下3.)に向けて積極的・建設的に貢献していく旨のステートメントを行った。
(1)日程
明年5月31日~6月11日にウガンダ・カンパラで開催されることとなった。ヴェナヴェザー締約国会議議長は、国連事務総長から各国首脳宛に招待状が発出されているとして、各国にハイレベル(閣僚級)の参加を呼び掛けた。
(2)規程改正案
(イ)侵略犯罪については実質的な議論はなく、特別作業部会でとりまとめられた改正案がそのままカンパラでの規程検討会議に持ち越されることとなった。
(ロ)新規締約国が、加盟後7年間、戦争犯罪に関するICCの管轄権を受諾しない旨の宣言を行うことができるとする第124条(経過規定)については、維持すべきか削除すべきかにつきコンセンサスが得られず、結論は規程検討会議に持ち越された。
(ハ)各国による規程改正案については、ベルギー提案の内の非国際的武力紛争における特定兵器(毒物、特定の弾丸等)の使用を戦争犯罪として追加する案についてのみ規程検討会議の議題とすることについて合意が見られた。
(ニ)その他、生物・化学兵器や対人地雷等の使用(ベルギー)、核兵器の威嚇・使用(メキシコ)、テロリズム(オランダ)、薬物取引(トリニダード・トバゴ)をICCの管轄犯罪とする提案、刑の執行に関する第103条改正案(ノルウェー)、捜査・訴追の延期に関する国連総会の権限を加える第16条改正案(AU)に関しては、規程検討会議の議題とすることにつき、いずれも十分な支持が得られなかった。これらについては、妥協案として、規程検討会議の後、作業部会を設置し、第9回締約国会議以降に議論していくこととなった(但し、ノルウェー提案については引き続きカンパラでの扱いにつきNY作業部会で検討。)。なお、この作業部会では、これまでに提出された改正案のみならず、あり得べき規程改正案は如何なるものであっても議論できることとなった。
(3)ストックテーキング
(イ)国際刑事司法の発展に関するストックテーキングのセッションが2日間程度行われることになった。議題は、1)補完性、2)協力、3)被害者への影響、4)和平と正義の四つ。形式・成果は今後議論される予定。
(ロ)日本は、上記1)や2)に加え、裁判所の実効性・効率性の向上、ガバナンス強化を重視すべき旨を主張。これらの論点に絞った形でディスカッション・ペーパーを作成し、非公式協議を実施(約90名が参加)。多くの締約国やNGOが問題意識を支持し、前向きな関心を示した。他方、規程検討会議の時間的制約を指摘する声も多かったこともあり、同会議におけるストックテーキングの議題とするよりも、それ以降の作業部会で規程改正の可能性も含めきちんと議論されることを確保すべく交渉した結果、その点が決議に含められることとなった。
(4)今後の準備プロセス
規程検討会議(特に侵略犯罪及びストックテーキング)について更なる準備をするため、3月22日~25日にNYで第8回締約国会議再開会期会合を開催することとなった。
(1)2010年度予算総額については、約103.6百万ユーロに決定(2009年度予算額比で約2.4%増)。定員は768(前年度から24増)。ICCは、CBF(予算財務委員会)により削減された一部予算の復活要求を行ったが、いずれも支持は得られず、認められなかった。日本はICCの活動を支持しつつも、財政規律を重視する立場で関連の議論に臨んだ。
(2)その他、締約国等による協力、アディス・アベバへのAUリエゾンオフィスの設置、ICC職員の汚職や非行に対処するための独立監督メカニズムの設置、被勾留者家族訪問に対する財政支援に関する決議等が採択された。また、ICCの本庁舎建設について、デンマークのデザイナーと契約交渉を開始することとする旨の決議が採択された。
(3)今次締約国会議には、米国代表団が初めてオブザーバーとして参加し、一般討論においてステートメントを行った。