軍縮・不拡散

第3回アジア不拡散協議(ASTOP-III)
(概要と評価)

平成18年2月15日

 13日、東京(外務省)にて我が国主催により第3回アジア不拡散協議(ASTOP-III: The 3rd Asian Senior-level Talks on Non-Proliferation)が開催された。その概要と評価は以下のとおり。

1.概要

(1)アジアにおける不拡散体制の強化に向けた意見交換

 今次協議には、ASEAN10ヶ国、米国、豪州、韓国及び我が国の14ヶ国(中国は欠席)より、局長級の不拡散政策担当者が出席した。
 協議の冒頭に金田外務副大臣による冒頭スピーチが行われ、その後、アジアにおける不拡散体制の強化に関する諸問題につき、自由かつ活発な意見交換が行われた。議長は中根軍縮不拡散・科学部長が務めた。

(2)議論の概要

(イ)大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散に関する最近の動き

 国際社会の重大関心事項である北朝鮮による大量破壊兵器等の拡散及びイランの核問題について取り上げられた。北朝鮮については、昨年9月の第4回会合で採択された共同声明やその後の動き等につき説明した上で議論を行った結果、北朝鮮の大量破壊兵器等の拡散がアジア地域のみならず国際社会全体に対する深刻な脅威である点、平和的解決を目指す枠組みである六者会合プロセスを支持するとの点で各国の認識が一致した。
 また、イランについては、同問題の安保理への報告を含む2月のIAEA理事会決議についての評価や今後予想される動き等につき意見交換を行い、イランが国際社会の懸念を真摯に受け止めて対応していくことの重要性が共有された。

(ロ)国際的な不拡散体制を強化するための最近の取組

 核燃料サイクル技術の制限を巡る諸提案及び2004年2月に採択された国連安保理決議1540の履行問題が取り上げられた。前者については、核燃料供給保証の枠組み構築等に関する国際的な議論が紹介された。後者については、各国が同決議を履行することの重要性が強調され、同決議の下で求められている報告書の作成に関する各国の経験が共有された。

(ハ)過去のASTOPのフォローアップ

 過去2回のASTOPにおいて議題となった不拡散にかかる主要な取り組みである1)国際原子力機関(IAEA)追加議定書、2)弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)、3)輸出管理の強化、4)拡散に対する安全保障構想(PSI)について、その締結、参加及び実施に向けた各国の取組が紹介され、これらの分野における各国の理解が深められた。

(ニ)不拡散にかかる措置の実施のための支援の可能性

 第2回ASTOPにて、特にASEAN諸国より関連条約・規範等の国内履行に際して直面する障害・問題点について指摘があったことを踏まえ、今次協議では、我が国をはじめ、かかる分野で支援を行う立場にある国より、自国の支援プログラムの基本方針や実施状況等が紹介され、これに対し支援を受ける立場の国よりは、国内事情を踏まえた具体的支援のニーズが明確にされた。

2.評価

(1)アジア地域におけるアウトリーチ活動への貢献

 我が国はこれまで、様々な機会を利用してアジア地域における不拡散体制の強化に向けた精力的な働きかけ(アウトリーチ)を実施してきたが、不拡散に関する幅広いテーマについて自由な意見交換を行う場であるASTOPを継続的に主催し、不拡散分野の諸問題についての参加国の理解を深めることにより貢献を行うことができた。
 また、アジア各国からは、我が国の努力について高い評価が得られたほか、参加国以外からもASTOPへの高い関心が示されるなど、ASTOPがアジアにおける不拡散問題を包括的に議論するための会合として有益であることが改めて認識された。

(2)アジア諸国による積極的取組の確認及び経験の共有

 今次協議では、不拡散に関連する様々な分野において積極的な取組を実施している国より、その経験に基づいた詳細な説明がなされ、不拡散体制強化に向けた努力の着実な進展が確認された。また、今後他の国が当該分野での取組を強化していく上で参考となる情報が参加国間で共有された。例えば、国連安保理決議1540の履行に関する韓国の取組、昨年新たに追加議定書を署名したタイ、シンガポール、マレーシアの取組、PSIにおけるシンガポールやフィリピンの取組、HCOCの普遍化のためのフィリピンの取組などが参加国間で共有された。これにより、これらの分野における理解が増進され、今後の積極的な取組を促進する効果が生まれた。

(3)不拡散にかかる措置の国内実施強化に向けた協力の具体化

 今次協議にて、支援国及び被支援国のそれぞれが重視する協力の具体的態様が示され、両者を結びつけるための議論が行われた結果、双方の利益に合致する形の支援の実現に向け、今後関係国が協議していくための基盤が作られた。例えば、我が国が来年度より導入を検討しているテロ対策等治安無償スキームに関する説明を受け、自国のニーズに合致するものとして関心を示す国があるなど、今後の具体的協力の方向性がより明確に示された。

このページのトップへ戻る
目次へ戻る