2 文化・スポーツ・観光
(1)概要
日本文化がきっかけとなって日本に関心を持ち、日本を訪問する外国人は大変多い。外務省及び国際交流基金は、日本文化の魅力の発信や、スポーツ、観光促進に向けた様々な事業を行っている。具体的には、「在外公館文化事業」などを通じ、茶道、華道、武道などの伝統文化やアニメ、マンガ、ファッションといったポップカルチャー、食文化など幅広い分野における日本の魅力を紹介している。
また、2021年に開催された2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーを継承するため、外務省は、スポーツを通じた日本の国際交流・協力の取組である「Sport for Tomorrow(SFT)」プログラムの一環として、様々なスポーツ交流・スポーツ促進支援事業、独立行政法人国際協力機構(JICA)海外協力隊によるスポーツ関係者の派遣や招へい、文化無償資金協力を活用したスポーツ器材の供与や施設の整備を実施した。また、これらの取組を外務省公式Xアカウント「MofaJapan×SPORTS」を通じて内外に発信している。
さらに、次世代を担う多様な人材の対日理解の促進のため、外務省は、在外公館を通じて、日本への留学機会の広報や元留学生とのネットワーク作り、地方公共団体などに外国青年を招へいする「JETプログラム」への協力、アジアや米国などとの青年交流事業や社会人の招へい事業、大学や研究機関における日本研究支援などを実施している。
海外における日本語の普及は、日本との交流の担い手を育て、対日理解を深め、諸外国との友好関係の基盤となるとともに、日本における多文化共生社会の実現にも資するものである。このような観点から、日本国内においては、2019年6月に「日本語教育の推進に関する法律」が公布・施行され、2020年6月には「日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」(閣議決定、2025年9月5日改定)が策定された。外務省は、これらに基づき、国際交流基金を通じて、日本語専門家の海外への派遣、海外の日本語教師に対する研修、日本語教材の開発など海外における日本語教育の環境整備に努めている。また、就労目的で来日を希望する外国人に対する日本語教育という社会的ニーズに対応した取組を行っている。
日本は、国連教育科学文化機関(UNESCO:ユネスコ)などと協力し、世界の有形・無形の文化遺産や自然遺産の保護支援にも熱心に取り組んでいる。また、世界遺産条約や無形文化遺産保護条約などを通じ、国際的な遺産保護の枠組みの推進にも積極的に参加している。
デジタルツールを一層活用するなどの工夫を凝らしてこれら文化・スポーツ外交を推進し、日本の魅力を海外に発信することによって、将来の訪日観光客の増加にもつなげていく。
(2)文化事業
各国・地域における世論形成や政策決定の基盤となる個々人の対日理解を促進し、日本のイメージを一層肯定的なものとすることは、国際社会で日本の外交政策を円滑に実施していく上で重要である。この認識の下、外務省は、在外公館や国際交流基金を通じて多面的な日本の魅力の発信に努めている。
在外公館では、管轄地域での対日理解の促進や日本のイメージの向上を目的とした外交活動の一環として、多様な文化事業を行っている。例えば、茶道・華道や折り紙などのワークショップ、日本映画の上映会、邦楽の公演、武道の大会やデモンストレーション、伝統工芸品や日本の写真などの展示会、アニメ・マンガなどのポップカルチャーや日本の食文化などの生活文化も積極的に紹介し、また、日本語スピーチ・コンテストや作文コンテストなどを企画・実施している。
また、外交上の節目となる年には、時宜を捉えて文化・人的交流事業を活性化し、関係の一層の強化を実現するため、政府関係機関や民間団体とも連携して大規模かつ総合的な周年行事などを集中的に実施している。2025年は、日韓国交正常化60周年、日・ブラジル外交関係樹立130周年、日・サウジアラビア外交関係樹立70周年、日・マルタ外交関係樹立60周年、日・カーボベルデ外交関係樹立50周年の機会にこれらを記念した大型の文化事業を実施した。
また、国際交流基金においても、海外拠点を活用し、在外公館との連携の下、日本と諸外国との文化芸術交流事業を展開している。
2025年は、日韓国交正常化60周年を記念した日本祭り開催支援事業の一環として、ソウルで開催された「日韓交流おまつり2025 in Seoul」にブレイキンチーム「KOSÉ 8ROCKS」を派遣してステージ・パフォーマンスを実施したほか、日・ブラジル外交関係樹立130周年の機会に、日本のパフォーマンス・アーティストのサエボーグ氏をサンパウロに派遣し、同氏による『Super Farm』公演を主催して日本とブラジルの文化芸術交流を促進した。また、8月に開催されたTICAD 9を契機として、大ヒットアニメの主題歌を歌う話題のアーティストである、MYTH & ROID、sajou no hana、前島麻由氏をエジプトのカイロとアレキサンドリアに派遣し、アニメソングライブ公演や現地の日本語学習者との交流会を行ったほか、「日本映画祭(JFF)アフリカツアー」を実施し、対象全17か国のうちエチオピア、ナイジェリア、ルワンダで大型日本映画祭を開催した。これに関連して、国際交流基金が運営する日本の映像コンテンツ無料配信プラットフォーム「JFF Theater」を通じて、アフリカ全54か国に向けて多言語字幕付きの日本映画を配信した。また、大阪・関西万博においても、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会への助成を通じ、各国パビリオンの展示及びナショナルデーのイベントに携わる学芸員及びパフォーマー等の日本への渡航費・滞在費に対し途上国支援を実施した。



さらに、2024年から2033年までの10年間で、日本とASEAN諸国などの間での「双方向の知的・文化交流事業」と「日本語パートナーズ事業」を二つの柱として、国際交流基金は人的交流プログラム「次世代共創パートナーシップ-文化のWA2.0-」を集中的に実施している。その一環として、2025年は、国立劇場おきなわの芸術監督・金城真次氏をジャカルタ(インドネシア)等複数都市に派遣し、琉球舞踊公演と芸術大学の学生や日本語学習者を対象に、ワークショップやデモンストレーションをを開催した。また、和風JAZZダンスチーム「華美-Hanabi-」をハイフォン(ベトナム)に派遣し、ダンス公演と、日本語授業をサポートする「日本語パートナーズ」が活動する学校の生徒等を対象にワークショップを開催するなど、日本と東南アジアにおける双方向の芸術交流を促進した。また、2025年は、日本語パートナーズ派遣事業(長期派遣)においては、ASEAN7か国(インドネシア、カンボジア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ラオス)及び台湾に加え、インドへの長期派遣を開始したほか、初めてモンゴルに向けて短期派遣を実施した(4)。

(10月4日、ベトナム・ハイフォン)

(10月12日、韓国・ソウル 写真提供:kang jaegu)
日本国際漫画賞は、海外への漫画文化の普及と漫画を通じた国際文化交流の促進を目的として、優れた漫画作品を創作した海外の漫画家を顕彰するため、2007年に外務省が創設した。第19回となる2025年は、110の国・地域から過去最多となる738作品の応募があり、ブラジルの作品が最優秀賞、サウジアラビア、ベトナム、台湾、の作品が優秀賞に輝いた。また、今回はアフガニスタン、セント・ビンセント及びグレナディーン諸島、トーゴ、ネパール、プエルトリコ、リビアの6の国・地域から初めて応募があった。

(3)人物交流や教育・スポーツ分野での交流
外務省では、諸外国において世論形成・政策決定に大きな影響力を有する要人、各界で一定の指導的立場に就くことが期待される外国人などを日本に招き、人脈形成や対日理解促進を図る各種の招へい事業を実施している。また、教育やスポーツなどの分野でも、幅広い層での人的交流の促進のために様々な取組を行っている。これらの事業は、相互理解や友好関係を増進させるだけではなく、国際社会における日本の「応援団」を増やし、ひいては外交上の日本の国益増進の面でも大きな意義がある。
ア 留学生交流関連
外務省は、在外公館を通じ日本への留学の魅力や機会を積極的に広報し、国費外国人留学生の受入れのための募集・選考業務、各国の「帰国留学生会」などを通じた元留学生との関係の維持や日本への関心・理解・支持の拡大に努めている。3月、前年に続き第5回目となる帰国留学生総会を対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式で開催した。同総会においては、国単位での各国帰国留学生会の活動に加え、地域単位で開催される総会などの取組についての報告及び意見交換が行われ、各国帰国留学生間のネットワークの強化が図られた。
また、2021年9月の第2回日米豪印首脳会合において、教育及び人的交流に係る協力として、日米豪印のSTEM分野(科学、技術、工学及び数学)の優れた人材に対して米国留学のための奨学金を授与する日米豪印フェローシップが発表された。この枠組みで、2025年8月、第3期採用者25人(日米豪印から各国5人及びASEAN地域から5人)が米国での修学を開始した。加えて、日本で修学する国費外国人留学生のうち12人が日本フェローと認定され、同フェローシップのプログラムに参加することとなった。

イ JETプログラム
外国語教育の充実と地域の国際交流の推進を図る目的で1987年に開始された「JETプログラム」は、総務省、外務省、文部科学省及び一般財団法人自治体国際化協会の運営協力の下、地方公共団体などが外国青年を当該地方公共団体や学校で任用するものであり、外務省は、在外公館における募集・選考や渡日前オリエンテーション、21か国に存在する元JET参加者の会(JETAA、会員数約2万4,000人)の活動を支援している。2025年度は54か国から1,501人の新規参加者を含む5,933人の参加者が全国に配置され、2025年7月1日時点の累計参加者は約8万1,000人を超える。JETAAは、各国で日本を紹介する活動を行っているほか、多くのJET経験者が親日派・知日派として日本への関心・理解・支持の拡大に資する積極的な活動を行うとともに、官民の様々な分野で活躍するなど、JET参加者は日本にとって貴重な人的・外交的資産となっている。


(7月25日、インド・ニューデリー)
ウ スポーツ交流
スポーツは言語を超えたコミュニケーションを可能とし、友好親善や対日理解の増進に有効な手段となる。外務省は、「スポーツ外交推進事業」による各国スポーツ競技団体に対する器材輸送支援などのスポーツ交流・協力を通じて、二国間関係の発展にも貢献している。この事業は、スポーツを活用した外交を推進し、日本への関心・理解・支持を拡大することで、国際相互理解の増進に寄与しており、国際スポーツ界における日本の地位の向上にもつながっている。

(3月28日、ウズベキスタン・タシケント)
エ 対日理解促進交流プログラム
外務省は、日本とアジア大洋州、北米、欧州、中南米の各国・地域との間で、二国間又は地域間関係を発展させ日本の外交基盤を拡充することを念頭に、諸外国・地域の青年に対し、招へい、派遣、オンライン交流を通じて多角的に日本への理解を促進するプログラムを実施し、未来の親日派・知日派の発掘及び育成に努め、海外からの日本に関する発信の強化を図っている。2025年は約1,700人の青年がこれらのプログラムに参加し、日本の政治、経済、社会、文化、歴史及び外交政策などの分野において、専門家からの講義の聴講、各分野の視察及び意見交換並びに日本文化の体験を行った。この事業は、諸外国・地域の青年の日本への興味や関心を喚起し、日本への支持層の裾野を広げ、参加者が同プログラムを通じて得た学びや日本国内の訪問地における体験を、所属先における報告やソーシャルメディアで発信することで、国際社会における対日理解の促進及びイメージの向上にも貢献した。また、本事業の同窓生を対象に約90件の同窓会やオンライン再訪日プログラムなどのフォローアップ・プログラムを実施したことにより、引き続き、各々の関心分野における日本と諸外国・地域の関係に対するより深い理解が促進されるとともに、強固なネットワークが培われている。

(4)知的分野の交流
ア 日本研究
外務省は、国際交流基金を通じ、海外における日本の政治、経済、社会、文化などに関する様々な研究活動を複合的に支援している。2025年は、日本研究フェローシップ事業を通じて87人の研究者に訪日研究の機会を提供した。また、「次世代共創パートナーシップ-文化のWA2.0-」事業の一環として、東南アジア日本研究学会(JSA-ASEAN)、シンガポール国立大学、及び東京大学東洋文化研究所を始めとする日本研究機関と協力して2025年7月に新たに実施した「東南アジア次世代日本研究者集中研修プログラム」においては、日本研究を専攻している東南アジア6か国(インドネシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア)の大学院生に対する講義やワークショップ等を通じて、参加者の国際的なキャリア形成に寄与するとともに、多層的な人的ネットワークを強化しながら、次世代日本研究人材の育成を図った。

(6月29日から7月19日まで シンガポール及び東京)
また、2025年は、32の国・地域の51か所の日本研究機関に対し、教員拡充助成や、客員教授の派遣、セミナー・シンポジウムの開催支援、日本関係図書の拡充支援などを行ったほか、各国・地域の日本研究者や研究機関のネットワーク構築を促進するため、学会活動への支援なども行った。
イ 国際対話
外務省は、国際交流基金を通じ、新たな知見・知恵の創造と共有、共通課題の解決、次世代の相互理解の深化を目指す国際対話事業を実施している。具体的には、共通の国際的課題をテーマとしたシンポジウムなどの開催、文化人の派遣・招へいを通じた交流に取り組んだほか、草の根レベルで日本への関心と理解を深めるため、日米草の根交流コーディネーター派遣(JOI)事業を実施するなど、様々なレベルでの対話の促進と人材育成、人的ネットワークの形成に資する交流事業を企画、実施、支援した。
2025年、前年に引き続き、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に資する人材を育成するため、域内の専門家や実務家が共通課題に取り組む「国際交流基金インド太平洋パートナーシップ・プログラム(JFIPP)」を実施し、延べ78人が参加した。3月にはトランプ米国新政権下、新しい保守思想を牽(けん)引する若手論客として注目を集めるオレン・キャス氏を日本に招へいし、日本の有識者との対話や公開シンポジウムを開催したほか、ベルリン日独センターとの共催で、観光における持続可能性をテーマに、ハイブリッド形式でシンポジウムを開催し、日独双方の研究者や観光分野の実務家が議論や知見の共有を行った。また、「次世代共創パートナーシップ -文化のWA2.0-」事業の一環として、国際交流基金は、ASEAN各国の中等教育機関の教員など計98人を日本に招へいし、学校訪問及び日本の教員との意見交換会、日本文化体験や世界共通課題に対する日本の取組の現場の視察などのプログラムを実施した。これらを通じて参加者の対日理解や親日感が促進され、参加者が帰国後それぞれの教育現場においてその成果が還元されることが期待される。

ウ 日米文化教育交流会議(CULCON:カルコン)
日米の官民の有識者が文化・教育交流・知的対話について議論するカルコンでは、2月、日米パートナーシップの形成をテーマとするシンポジウムがワシントンD.C.(米国)で開催された。また、二つの日米合同分科会のうち「サブナショナル外交と地域間交流の促進」分科会が、6月に岩手県陸前高田市で第5回会合を、10月にハイブリッドで第6回会合を行った。さらに「デジタル化時代の情報共有とアクセス」分科会も、10月にハイブリッドで第5回会合を行った。両分科会は政策提言を含む最終報告書を、2026年2月に開催される第31回カルコン日米合同会議に提出する予定である。
エ 国際連合大学(UNU)との協力
UNUは、日本に本部を置く唯一の国連機関であり、国連諸機関全体のシンクタンクとして持続可能な開発目標(SDGs)を含む地球規模課題の研究に加え、学位プログラムを開設するなど人材育成の面でも国際社会に貢献しており、2025年に設立50周年を迎えた。日本は、UNUに対し、様々な協力と支援を行っている。8月には、TICAD 9でテーマ別イベントを2件実施したほか、複数のTICAD関連事業を実施した。9月には「国連大学50周年式典」が執り行われ、岩屋外務大臣、阿部俊子文部科学大臣、浅尾慶一郎環境大臣、小池百合子東京都知事が参列した。また、UNUが主催する対談シリーズなどを通じて、SDGsに関する議論の促進に貢献している。

(9月18日、東京・国連大学)
(5)日本語普及
日本経済のグローバル化に伴う日本企業の海外進出や日本のポップカルチャーの世界的な浸透などにより、海外では若者を中心に日本語への関心が増大している。海外において日本語の普及を一層進めることは、海外での対日理解の促進や日本の国民や企業にとって望ましい国際環境の醸成につながる。また、日本での就労を希望する外国人の日本語能力を向上させることは、それら就労外国人が日本社会で共生していく上でも重要である。国際交流基金が2024年度に行った調査では、143の国・地域で約400万人が日本語を学習していることが確認されている。また、同基金が実施する日本語能力試験(JLPT)は、2020年以降は新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって受験応募者数(国内実施分を含む。)が一時的に減少したものの、その後急速に回復・増加し、2025年の受験応募者数は過去最高の約194万人に達した。
外務省は、国際交流基金を通じて海外における日本語教育環境の整備に努めており、日本語学習への多様なニーズに対応している。具体的には、日本語専門家の海外派遣、海外の日本語教師や外交官、公務員、文化・学術関係者を対象とした研修、子どもを対象とした日本語教育支援、インドネシア及びフィリピンとの経済連携協定(EPA)に基づく看護師・介護福祉士候補者への訪日前日本語予備教育、各国・地域の教育機関などに対する日本語教育導入などの働き掛けや日本語教育活動の支援、日本語教材の開発、eラーニングの運営、外国語教育の国際標準に即した「JF(国際交流基金)日本語教育スタンダード」の普及活動などを行っている。また、「次世代共創パートナーシップ-文化のWA2.0-」事業の大きな柱の一つとして、ASEAN諸国などの中等教育機関などに、日本語授業をサポートする日本語パートナーズを派遣している。2025年には13の国・地域に計538人を派遣した。また、パートナーズ受入校などに所属する教師69人及び学生131人を日本に招へいし、研修の機会を提供した。また、日本における少子高齢化を背景とした労働力不足への対応として、2019年4月の在留資格「特定技能」外国人材受入れの開始以降、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(2018年12月25日「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定」)の策定に伴い、来日する外国人の日本語能力を測定する「国際交流基金日本語基礎テスト」(JFT-Basic)の実施(2025年末までの海外13か国及び日本国内における累計受験者数は約53万人)や、日本語能力を効果的に習得することを目的とした教材・カリキュラムの開発・普及、就労希望者に日本語教育を行う現地日本語教師の育成などの取組を行っている。なお、国際交流基金が実施する日本語試験において不正事案等が発生したことを受けて、再発防止のための対策を徹底して行っている。
(6)国連教育科学文化機関(UNESCO:ユネスコ)を通じた協力
ユネスコは、1951年に日本が戦後初めて加盟した国際機関である。日本は、教育、科学、文化などの分野におけるユネスコの様々な取組に積極的に参加し、1952年以降、継続してユネスコ執行委員会委員国を務めている。
日本は、ユネスコと連携し、開発途上国に対して教育、科学、文化分野における支援を行っており、文化分野においては、世界の有形・無形の文化遺産の保護・振興及び人材育成を重点とした支援を展開している。さらに、文化遺産保護のための国際的枠組みにも積極的に参画している。具体的な取組としては、1994年から継続するカンボジアでのアンコール遺跡修復保全支援事業、及び2003年から継続するアフガニスタンでのバーミヤン遺跡修復保全支援事業が挙げられる。これらの事業では、日本人専門家が中心となり、現地の関係者が将来的に遺跡の保護を自立的に担えるよう人材育成を推進している。加えて、遺跡の保全管理計画の策定や保存修復への支援も行っている。また、日本は、ユネスコが実施する教育分野でのガザやレバノンへの緊急支援のため、それぞれ10万ドルを拠出したほか、困難に直面するウクライナの文化・教育セクターに対し、ユネスコを通じた支援を継続している。また、近年、アフリカ諸国や小島嶼(しょ)開発途上国に対しても、文化遺産の保護と持続可能な開発の両立のための人材育成への支援を実施している。無形文化遺産の保護についても、開発途上国における音楽・舞踊などの伝統芸能、伝統工芸などを次世代に継承するための事業、各国が自ら無形文化遺産を保護する能力を高めるための国内制度整備や関係者の能力強化事業に対し、支援を実施している。
アズレー・ユネスコ事務局長は、ユネスコの非政治化のための改革及び組織改革を含むユネスコ強化に向けた「戦略的変革」を推進してきており、日本は、一貫して同事務局長を支持してきた。5月にはパリを訪問した岩屋外務大臣がアズレー事務局長と会談を行い、今後もユネスコにおける様々な課題に引き続き協力して取り組んでいくことで一致した。また、9月に同事務局長が日本を訪問し、石破総理大臣を表敬、岩屋外務大臣、阿部文部科学大臣と会談を行い、日本とユネスコの継続的な連携に向けて意見交換を行った。11月にはアズレー事務局長が8年間の任期を終えて退任し、エルアナーニー新事務局長が就任した。日本は今後も引き続き、新事務局長のリーダーシップの下で推進されるユネスコの活動に積極的に貢献していく。
ア 世界遺産条約
世界遺産条約は、文化遺産や自然遺産を人類全体の遺産として国際的に保護することを目的としており、日本は、1992年にこの条約を締結した(2025年12月時点での締約国数は196か国)。この条約に基づく「世界遺産一覧表」に記載されたものが、いわゆる「世界遺産」である。建造物や遺跡などの「文化遺産」、自然地域などの「自然遺産」、文化と自然の両方の要素を持つ「複合遺産」に分類され、2025年12月時点で、世界遺産一覧表には日本の文化遺産21件、自然遺産5件の計26件を含む1,248件が世界全体で記載されている。第47回世界遺産委員会は、2025年7月にパリで開催された。
イ 無形文化遺産保護条約
無形文化遺産保護条約は、伝統芸能や伝統工芸技術などの無形文化遺産について、国際的保護の体制を整えるものである(2025年12月時点での締約国数は185か国)。国内の無形文化財の保護において豊富な経験を持つ日本は、2021年及び2022年に開催された条約の運用制度の改善を議論する政府間ワーキング・グループ会合の議長を務め、開発途上国からの要望を取りまとめるなど議論を牽引してきた。2025年12月、同条約に基づき作成されている「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に、日本の「和紙:日本の手漉(すき)和紙技術」、「山・鉾(ほこ)・屋台行事」、「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」の拡張登録が決定した(既に代表一覧表に記載されているこれら三つの無形文化遺産に関連する個別の遺産を追加するもの)。また、同年3月、新規提案案件として「書道」の提案書をユネスコ事務局に再提出した(2025年12月時点で日本の記載案件は計23件)。
ウ ユネスコ「世界の記憶」事業
ユネスコ「世界の記憶」事業は、貴重な歴史的資料などの保護とアクセス、関心の向上を目的に1992年に創設された。このうち、国際登録事業においてはユネスコのホームページによると、2025年12月時点で570件が登録されている。
従来の制度では、加盟国政府が登録の検討に関与できる仕組みとなっておらず、また、登録申請案件について、関係国間での見解の相違が明らかであるにもかかわらず、一方の国の主張のみに基づき申請・登録がなされ政治的対立を生むことは、ユネスコの設立趣旨である加盟国間の友好と相互理解の推進に反するものとなることから、2017年以降新規申請を凍結した上で同事業の包括的な制度改善を日本が主導した。その結果、2021年4月のユネスコ執行委員会で新しい制度が承認された。新制度では、登録申請は加盟国政府を通じて提出することとなったほか、当事国からの異議申立て制度を新設し、加盟国間で対立する案件については当事国間で対話を行い帰結するまで登録を進めないこととなった。制度改善が完了したことを受け、同年7月に新規の申請募集が再開され、日本からは、2023年5月に智証大師円珍関係文書典籍 -日本・中国の文化交流史-」(申請者:園城寺、東京国立博物館)が新たに登録されたほか、2025年4月には「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢(そう)書」(申請者:浄土宗、大本山増上寺)の新規登録が決定された。
在外公館による現地に寄り添った発信
昨今、ソーシャルメディアにおける発信が大きな影響力を有するようになっており、日本の外交政策に関する国内外の理解と支持を増進するため、このようなツールを通じて情報発信することの重要性がますます高まっています。こうした中、世界各地において外交の最前線で活動している在外公館や在外公館長(大使・総領事)が、各国・地域の特性を踏まえた発信を行うため、X、Facebook、Instagram、YouTube等のソーシャルメディアのアカウントを開設しています。
在外公館や在外公館長が、日々の外交政策上の取組について効果的に発信するための前提として、現地の方々が日本と日本国民に親近感を持ち、好意的に受け入れてもらえる環境を醸成することも重要です。ここでは、外交の最前線において、日本の外交政策上の取組を日々発信することに加え、在外公館が現地の方々に日本に親しみを抱いてもらうために凝らしている工夫について、ソーシャルメディアを通じた発信を例に紹介します。
在メキシコ日本国大使館は、メキシコ社会における対日好感度向上のため、ソーシャルメディアを活用したメキシコの人々や文化に寄り添った発信を積極的に行っています。メキシコだけではなく米国在住のメキシコ人の間でも大きな反響を呼んだ「メキシコ独立記念日」を祝う動画など、これまで心に響く投稿・画面構成を工夫してきた結果、多くの方々にフォローいただいています。

多くの大使館員が共に出演することで一体感ある発信となり、さらにメキシコへの敬意と親しみを示す工夫を行うことで、幅広い人々の関心を惹(ひ)き付けることができました。そしてスペイン語での発信は、メキシコ国内だけではなく、国境を越えて拡散する結果となりました。このように、現地の人々やその文化に寄り添った発信を続けていくことを通じて、日本への理解の増進に努めています。
在メキシコ日本国大使館の公式Facebook:
https://www.facebook.com/JapanEmb.Mexico/

在ルーマニア日本国大使館では、日常生活で馴染(なじ)みの少ない大使館の活動を、より幅広い層のルーマニアの方々に知ってもらうために、大使の親しみやすいキャラクターを紹介した動画をソーシャルメディアで発信しています。大使がローカル・フードを楽しむ動画を皮切りに、ルーマニアならではの地域文化や家庭料理を体験し、民族衣装を着て季節の挨拶に挑戦するなど、日本の外交官に馴染みのない人も、驚き、楽しめるような、そして日本のファンになってもらえるような発信を心掛けています。

このような工夫により、ルーマニア政府高官や企業・文化関係者との面会の場でも、大使の活動が話題に上がるようになりました。さらに、若者たちから、大使館が出展するイベントで「ミスター・アンバサダーはいるか」と記念写真を求められることもあります。ソーシャルメディアでの発信を通じて、一般市民の大使に対する認知度が飛躍的に高まり、大使館の活動を一層効果的に進められるようになりました。
在ルーマニア日本国大使館の公式Instagram:
https://www.instagram.com/embassy_jpro/

在イラン日本国大使館では、人脈をいかし、特にイランで普及度の高いInstagramを通じて、現地の著名な俳優、芸術家、料理研究家などのインフルエンサーと連携することで、これまで日本とつながりのなかったイランの方々にも親日感情を抱いてもらえるような発信を行っています。
特に、イランの著名な音楽家のコンサートに大使がイランの横笛で出演し、共演動画を同音楽家と大使館の両アカウントで共同投稿した際は大きな反響を呼び、現地の大手メディア各社で報道されたほか、イラン政府高官の間でも話題となりました。これをきっかけに、インフルエンサーを含むより多くのイランの方々から共同投稿のオファーも得ています。

在イラン日本国大使館Instagramのフォロワー数は、イランにおける各国大使館の中でも特に多く、そこから発信される活動内容は、現地の様々な人々の注目の的となっています。
在イラン日本国大使館の公式Instagram:
https://www.instagram.com/japaniniran/

各大使館や大使館長によるソーシャルメディアは外務省ホームページ参照:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/sns/list_jp.html

JETプログラム1をご存じですか? 正式名称は「語学指導等を行う外国青年招致事業(The Japan Exchange and Teaching Programme)」といい、「海外の青年を招致し、地方自治体、教育委員会及び全国の小中学校や高等学校で、国際交流の業務と外国語教育に関わることにより、地域レベルでの草の根の国際化を推進すること」を目的としています2。
多くの方が学校で外国人の先生に英語を教えてもらった経験があると思いますが、その先生の中にはJET参加者が数多くいます。1987年に同プログラムが創設されて以来、参加者は世界82か国から8万人を超え、日本各地でこのような外国語教育や国際交流を行っています。ニュージーランドでは、頻繁に「私は元JETです。」という方に会います。ニュージーランドはJETプログラム創設当時から参加している4か国のうちの1か国(ほかの3か国は米国、英国、オーストラリア)で、これまでに3,600人以上が参加しています。ニュージーランドの人口は532万人3ですので、国民約1,500人に1人がJET参加者となります。この割合は世界1位です。それほどニュージーランドは同プログラムと深い関わりがある、「JET大国」です。2025年も、171人が日本で英語を教えたり、地方自治体の国際課などで国際交流やスポーツ交流に携わっています。

ニュージーランドには、JETプログラムを通じて日本社会に触れ、日本が大好きになって帰ってきた参加者が多くいます。JET参加後は高校で日本語を教える方、折り紙アーティストの方、市政や農業に携わる方など、JETに参加した経験をいかしてあらゆる分野で活躍しています。JET参加者同士が結婚して、その子どもがまたJET参加者となる事例もあります。それぞれ「日本好き」の度合いは異なり、必ずしも日本と直結した仕事をしているわけではありませんが、JET参加者が日本での楽しい思い出を持ち続け、折に触れて周囲に話し、人づてに広がり、日本に行ったことのない人の関心を喚起することで、新しい世代が日本に興味を持ち、JETプログラムに参加するといった好循環が生まれています。

ニュージーランドの親日度は非常に高く、対外親近感に関する意識調査では、歴史的に密接な関係のある英語圏のオーストラリア、英国、カナダに次いで、4番目に日本が位置し、80%の国民が日本を友人と考えています4。また政府が定める教育機関における重要外国語5か国言語には日本語が含まれ、日本とニュージーランドとの間には無数の学校間交流や、44の姉妹都市関係があります。ニュージーランドの人々の身近に日本という存在があり、それを支えているのはJET参加者といっても過言ではありません。
1 JETプログラムについては外務省ホームページ参照
https://warp.ndl.go.jp/web/20250802042727/https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/culture/hito/sei/jet/index.html

2 JETについてはホームページ参照
https://jetprogramme.org/ja/about-jet/

3 ニュージーランド統計局(2025年6月30日時点)
https://www.stats.govt.nz/

4 出典:アジアニュージーランド基金によるアジア認識調査
https://www.asiamediacentre.org.nz/highlights-of-the-new-zealanders-perceptions-of-asia-and-asian-peoples-2025-surve

―アジア、アフリカ、その先へ―
独立行政法人国際交流基金は、2024年から10年間にわたり東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国との間で日本語教育や文化芸術、日本研究・国際対話の分野で、包括的な人的交流事業を行う「次世代共創パートナーシップ -文化のWA2.0-」を推進しています。次世代の交流促進と人材育成という目的の下、2025年も多彩な交流が広がりました。
本プロジェクトの柱の一つである「日本語パートナーズ派遣事業」においては、新たにインドへの長期派遣を開始し、中等教育機関などにおいて現地の日本語教師や生徒のパートナーとして授業のアシスタントや日本文化紹介を行いながら、日印の架け橋となるよう日々奮闘しています。
文化芸術分野では、2024年東京国際映画祭に合わせて来日した東南アジアの映画プログラマー8人が、2025年にそれぞれの国で特集上映会を企画・開催し、日本の映画文化の魅力を現地観客と共有しました。また、10月には新たに10人の東南アジアの映画プログラマーが来日し、2年目となる交流プログラムに参加しました。
日本研究・国際対話の分野では、ASEANと日本の大学生28人が、「2050年に向けて、平和でより良い世界を共に創る」というビジョンの実現に向けて、「プラスチックごみ」をテーマとしてグループワークや日本及びフィリピンでの合同研修を行い、課題解決に向けたアクションプランを発表する「日ASEANユース・フォーラム」(TASC)を実施。またASEAN事務局協力の下、高校生による「日ASEAN青少年平和交流・対話プロジェクト(AJPAP)」を立ち上げました。戦後80年の節目となる2025年の初回事業では、4か国の高校生12人が広島で、被爆者証言や平和記念資料館での学びを基にしたワークショップの実施などに共に取り組みました。未来を担う若い世代に焦点を当て、対話と協働を通じた相互理解の機会を提供し、架け橋となる次世代人材の育成を目指します。

アフリカにおいても、第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)を契機に、日本文化への関心を広げる活動を展開しました。エジプトやコートジボワールに日本の大ヒットアニメの主題歌を歌うアーティストを派遣したアニソン公演や、エチオピア、ナイジェリア、ルワンダで「日本映画祭(JFF)アフリカツアー」と題した大規模な日本映画上映事業を実施しました。日本文化を通じた共感の輪を広げ、2026年もアフリカ諸国での文化芸術交流を展開していく予定です。また、サブサハラ地域の日本語教育振興を目的として毎年開催されている「アフリカ日本語教育会議」に、2025年は国際交流基金が共催者として加わり、各国の日本語教育の現状・課題を共有しました。会議に参加した教師たちは、会議実施後も日本語教授法の実践報告をするなど、情報交換を続けています。

(7月18日、マダガスカル・アンタナナリボ 写真提供:国際交流基金)
これからも、アジアやアフリカのみならず、世界中で、次世代の共感と信頼を育む国際文化交流を進めていきます。
(4) 「日本語パートナーズ派遣事業」として、2014年から2025年までに、インド、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、中国、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス及び台湾に長期派遣実績あり。モンゴル、東ティモールは短期派遣のみ
