5 国際連合(国連)における取組
(1)日本と国連との関係
国連は、世界のほぼ全ての国(2025年12月現在193か国)が加盟する国際機関であり、紛争解決や平和構築、テロ対策、軍縮・不拡散、貧困・開発、人権、難民問題、環境・気候変動、防災、保健を含む多様な分野の諸課題に取り組んでいる。
日本は、1956年に加盟して以来、国連の普遍性と専門性の両面を活用しつつ、国連の活動の3本柱である国際の平和と安全、開発、人権を始めとする様々な分野において、多国間協力を通じた政策目的の実現を図ってきた。国連安全保障理事会(国連安保理)の非常任理事国を加盟国中最多の12回務め、国際の平和と安全の実現及び維持に積極的に貢献してきたのは、その重要な例である。また、こうした活動を支えるため、政府として国連への財政拠出を行いつつ、組織面(マネージメント)への関与を行ってきたほか、国連において活躍する日本人職員を支援し、重要なポストの獲得に努めている。国際秩序が大きく揺らぐ中、法の支配に基づく国際規範の強化がより一層必要となっている。日本は、国連を中核に据えた多国間主義の強化、そして安保理改革を始めとする国連の機能強化に積極的に取り組んでいる。
2025年、国連は創設80周年という節目を迎えました。国連は、戦争の惨禍を再び繰り返さないという人類の誓いの下、1945年の創設以来、世界の平和と安全、開発、人権を始めとする様々な分野において、多国間協力の中心的な舞台として歩み続けてきました。
国連は、第二次世界大戦を防げなかった国際連盟の反省を踏まえて誕生しました。1945年4月から6月にかけて、50か国の代表が「国際機関に関する連合国会議(United Nations Conference on International Organization)」に出席するため、米国・サンフランシスコに集まりました。会議では、「戦争の惨害から将来の世代を救う」との決意を表明した国際連合憲章が起草され、同年6月26日に署名されました。国連憲章は同年10月24日に発効、これが国連創設の日となり、現在も「国連デー」として世界各国で祝われています。国連憲章は、国連の目的として、国際の平和及び安全の維持、諸国間の友好関係の発展、国際問題の解決、人権及び基本的自由の尊重の促進について、国際協力の達成等を謳(うた)い、同時に主権平等や紛争の平和的解決、武力の不行使を始めとする原則を規定しました。
創設時の加盟国は51か国でしたが、2025年時点では193か国が加盟し、国連は唯一無二の普遍的な国際機関として、国際の平和と安全や地球規模課題への取組を続けています。平和維持活動、人道援助、持続可能な開発など多岐にわたる活動を展開し、時代ごとにその役割を拡大、深化させてきました。
2025年、創設80周年を迎えた国連は、激変する国際情勢と複雑化する地球規模課題に対応するため、組織の根本的な改革に乗り出しています。その中心となるのが「UN80イニシアティブ」です。これは、3月11日にグテーレス国連事務総長が提唱した、国連システム全体に係る改革であり、より強力で効果的な、21世紀にふさわしい国連の実現を目指す取組です。UN80イニシアティブは、「効率化」、「マンデートの実施状況の見直し」、「組織再編」の三つの柱(ワークストリーム)で構成されており、より機能する国連の実現に向けて、国連事務局と加盟国により、改革の議論が進められています。

国連改革の取組はUN80イニシアティブに限りません。国際社会が直面する諸課題に対して国連がより効果的に対応できるようになるためには、安保理改革も必要です。2024年9月に国連総会で行われた「未来サミット」において、全世界の首脳が安保理を改革する緊急の必要性を訴えたように、国際社会の現実を反映した安保理改革を早期に実現し、その正統性、実効性及び代表性を向上させるべきとの認識が広く共有されています。
80年という長い年月において、国際社会が大きく変化する中、国連はその時々の課題に向き合い、改革と進化を重ねてきました。創設から80年を迎える今、国連は、次の世代のための変革をより一層求められています。
(2)2025年の主要行事
9月、第80回国連総会ハイレベルウィークには、石破総理大臣と岩屋外務大臣が出席した。
石破総理大臣は、一般討論演説において、国連の成り立ちを振り返りつつ、安保理改革の緊急の必要性を力強く訴えた。また、中東地域の平和と安定に向けた日本の取組強化の決意を述べたほか、「核兵器のない世界」の実現を訴えるとともに、課題解決策を各国と共に創る日本の国際協力について発信した。その上で、健全で強靱(じん)な民主主義の重要性を指摘し、「分断より連帯、対立より寛容を」と呼びかけた。

(9月23日、米国・ニューヨーク 写真提供:首相官邸ホームページ)
また、石破総理大臣は、グテーレス国連事務総長を始めとする各国・機関首脳と会談や懇談を行い、国際場裡(り)における様々な課題及び二国間関係について意見交換を積極的に行った。グテーレス国連事務総長との会談では、石破総理大臣から、安保理改革の緊急の必要性について改めて提起するとともに、UN80イニシアティブ(66)を始めとする国連改革における連携も引き続き行っていきたいと述べた。また、国連関連機関における日本人職員の雇用維持、増強を改めて依頼した。グテーレス国連事務総長からは、開発に対する日本の姿勢について、協力対象国の視点に立ったものであり、高く評価するとの発言があった。

岩屋外務大臣は、G7外相会合、日米韓外相会合、G20外相会合、自らが議長を務めた安保理改革に関するG4外相会合、イスラエル・パレスチナ問題に関する二国家解決ハイレベル国際会合など、約30の会合や会談等を行った。各国との会談等を通じ、国連を中核とした多国間主義を推進し、国際の平和と安全の実現及び維持に積極的に貢献していくとの日本の立場・取組を発信するとともに、同志国間及び多国間の会合や各国外相との会談等を通じ、インド太平洋地域やウクライナ・中東情勢を始めとする地域・国際情勢や、国際社会の喫緊の課題について、各国との緊密な連携を確認した。
(3)国連安全保障理事会(国連安保理)、安保理改革
ア 国連安保理
国連安保理は、国連の中で、国際の平和と安全の維持に主要な責任を有する機関であり、5か国の常任理事国と、国連加盟国により選出される10か国の非常任理事国(任期2年)から構成される。その扱う議題は、紛争の平和的解決への取組、大量破壊兵器の拡散やテロへの対処から、平和構築、女性・平和・安全保障など幅広い分野に及んでおり、近年は気候変動や食料安全保障などの新しいテーマも取り上げられている。国連平和維持活動(PKO)や国連特別政治ミッション(SPM)の活動内容を定める権限も持つ。
イ 安保理改革
国際社会の構図の大きな変化に伴い、国連の機能が多様化した現在でも、国連安保理の構成は、国連発足以来ほとんど変化していない。2022年2月のロシアによるウクライナ侵略の事態に対し、国連安保理ではこれを非難し、ロシア軍の撤退を求める決議案が投票に付されたが、ロシアの拒否権行使により採択されず、国連安保理で協調した対応がとれなかった。このことは、国連安保理がロシアのウクライナ侵略などの事態に対して有効に機能できていないことを如実に示した。国際社会では、安保理改革を早期に実現し、その正統性、代表性及び実効性を向上させるべきとの認識が共有されている。
日本は、国連を通じて国際の平和と安全の実現により一層積極的な役割を果たすことができるよう、常任・非常任理事国双方の拡大を通じた安保理改革の早期実現と日本の常任理事国入りを目指し、各国への働きかけを行ってきている。
ウ 安保理改革をめぐる最近の動き
国連では、2009年から国連総会の下で安保理改革に関する政府間交渉(IGN)(67)が行われている。国連総会第79回会期は、2024年11月から2025年6月にかけて6回の会合が実施された。同会期中には、IGN共同議長のイニシアティブにより、各加盟国・グループによる議席配分、拒否権や作業方法などの各種提案に関する具体的議論が行われた。10月、ベアボック第80回国連総会議長は、政府間交渉の共同議長にクウェート及びオランダの国連常駐代表を任命した(クウェートの国連常駐代表は再任命)。
日本は、安保理改革の推進のために協力するグループであるG4(日本、ブラジル、ドイツ及びインド)の取組を重視している。岩屋外務大臣は、9月の国連総会ハイレベルウィークの際にG4外相会合を主催した。同会合では、「未来のための約束」(68)で全世界の首脳が安保理改革の緊急の必要性を訴えたことを歓迎しつつ、アフリカや米国を含む関係国と連携しながら、国連創設80周年の節目に、早期の具体的な成果を目指すことで一致した。日本は引き続き、多くの国々と緊密に連携しつつ、安保理改革の実現に向けて粘り強く取り組んでいく。

(9月25日、米国・ニューヨーク)
(4)国連の組織面(マネージメント)
ア マネージメント
グテーレス国連事務総長は、平和への取組及び開発とともに国連のマネージメント改革を優先課題として位置付け、グローバル・ガバナンス向上に引き続き取り組んでいる。また、2021年に「我々のコモンアジェンダ」報告書を発出し、2024年には同事務総長の発案である未来サミットを開催するなど、国連を新たな時代に適応させるための具体策を提案しており、日本は、改革の目的を支持し、国連が一層効率的・効果的に任務を果たすよう求めてきている。2025年3月、同事務総長は国連改革のための「UN80イニシアティブ」を提唱し、創設80周年を迎えた国連をより強力で効果的な、21世紀にふさわしいものとするため、国連のポストや予算の削減などの改革案を提起した。
イ 予算
国連の予算は、一般的な活動経費である通常予算(1月から12月までの単年予算)と、PKO活動に関するPKO予算(7月から翌年6月までの単年予算)で構成されている。
通常予算については、12月、国連総会において、2026年予算として約34.5億ドルの予算が承認された。「UN80イニシアティブ」の一環として、前年比約9.6%予算が削減され、約2,600ポストが削減された。また、PKO予算については、6月に2025年/2026年の予算が承認され、予算総額は約53.9億ドルとなった。
国連の活動を支える予算は、各加盟国に支払が義務付けられている分担金と各加盟国が政策的な必要に応じて拠出する任意拠出金から構成されている。このうち、分担金については、日本は、米国、中国に次ぐ第3位の分担金負担国として、2025年通常予算分担金として約2億3,723万ドル、2025/2026年PKO分担金として約3億7,326万ドルを負担しており、主要拠出国の立場から、国連が予算をより一層効率的かつ効果的に活用するよう働きかけを行ってきている。なお、分担金の算出根拠となる分担率は加盟国の財政負担能力に応じて3年ごとに改定されており、2024年末に改定された日本の分担率(2025年-2027年)は、米国、中国に次ぐ6.930%となった。
また、国連の行財政を支える主な機関として、国連行財政問題諮問委員会(ACABQ)及び分担金委員会(COC)がある。二つの委員会は個人資格の委員から構成される国連総会付属の常設委員会であり、ACABQは国連の行財政問題全般について審査し、国連総会に勧告を行う一方、COCは、国連総会における通常予算分担率の決定に先立ち、全加盟国の分担率案を作成し、国連総会に勧告する重要な役割を担っている。日本はこれらの委員会に継続的に委員を輩出している。


(66) UN80イニシアティブ:2025年3月11日にグテーレス国連事務総長が提唱した、国連システム全体に係る改革。より強力で効果的な、21世紀にふさわしい国連の実現を目指す取組であり、「効率化」、「マンデートの実施状況の見直し」、「組織再編」の三つの柱(ワークストリーム)から構成される。
(67) IGN:Inter-Governmental Negotiations
(68) 「未来のための約束(Pact for the Future)」:2024年9月の国連総会で開催された「未来サミット」で採択された成果文書。法の支配や人間の尊厳、「核兵器のない世界」の実現などに加え、安保理改革について首脳レベルで初めて具体的な内容が盛り込まれた。
