2 中東地域情勢
(1)中東和平
ア 中東和平をめぐる動き
2014年4月にイスラエル・パレスチナ間の交渉が頓挫して以降、中東和平プロセスは引き続き停滞している。2021年のバイデン米政権発足後、当事者間の協力再開の動きが一時見られ、ハイレベルでの接触など前向きな動きもあったが、2022年12月末にイスラエルで極右政党を含む連立政権が発足し、それ以降、エルサレムを含め、イスラエル及びパレスチナにおいて暴力行為や衝突が断続的に発生し、多数の死傷者が出た。
2023年10月7日、ハマスなどパレスチナ武装勢力が、ガザ地区からイスラエルに対し数千発のロケット弾を発射し、多数の戦闘員がイスラエル側検問・境界を破ってイスラエル国防軍(IDF)(3)兵士のほか、外国人を含む市民を殺害・誘拐した。イスラエル側では、少なくとも1,200人が殺害され、5,500人以上が負傷した。さらに、外国人を含む250人以上がガザ地区に連れ去られ、人質になった。同事態を受け、ネタニヤフ・イスラエル首相は「戦争状態」を宣言し、IDFがガザ地区への大規模な空爆を開始、その後、ガザ地区内での地上作戦を開始した。
ガザ保健当局の発表によれば、2025年12月末時点で、ガザ地区では、7万1,266人以上の死者、17万1,222人以上の負傷者が発生し、ガザ地区の住民約190万人が避難を余儀なくされている。
戦闘が長期化する中、イスラエル・ハマス間の停戦・人質解放に関する合意を目指し、米国、エジプト及びカタールが仲介努力を主導した。こうした中、2025年1月、人質の解放と停戦に関する当事者間の合意が成立した。合意を受けて、一部の人質が解放され、人道支援が拡大されたが、3月以降、イスラエル軍が軍事作戦を再開し、さらにガザ全域に拡大した。9月末にトランプ米国大統領が「ガザ紛争終結のための包括的計画」を発表したことを受けて、10月にはイスラエル・ハマス間で停戦・人質解放に関する合意が成立した。11月には、「包括的計画」を支持し全ての当事者にその履行を求める国連安保理決議第2803号が採択された。ガザの安定化と復旧・復興に向けて、国際的な取組が展開されている。
パレスチナ西岸地区においては、イスラエルによる入植地の拡大や入植者による暴力行為の急増、イスラエルによる治安作戦の展開、移動制限などによる社会経済状況の悪化、パレスチナ自治政府の財政難など、厳しい情勢が続いている。
中東和平問題をめぐる顕著な動きとしては、2024年に引き続き、2025年も欧州諸国を中心にパレスチナ国家を承認する国が増加した。マクロン・フランス大統領は、サウジアラビアと協働し、「パレスチナ問題の平和的解決及び二国家解決の実現のためのハイレベル国際会議」を開催し、パレスチナ国家承認の動きを主導した。フランス、英国、カナダやオーストラリアなどの諸国がパレスチナ国家を承認した。
イ 日本の取組
日本は、国際社会と連携しながら、イスラエル及びパレスチナが平和的に共存する「二国家解決」の実現に向けて、関係者との政治対話、当事者間の信頼醸成、パレスチナに対する支援の3本柱を通じて積極的に貢献してきている。
日本独自の取組としては、日本、パレスチナ、イスラエル、ヨルダンの地域協力により、パレスチナの経済的自立を中長期的に促す「平和と繁栄の回廊」構想を推進している。2025年末時点において、旗艦事業のジェリコ農産加工団地(JAIP)(4)ではパレスチナ民間企業18社が操業し、約285人の雇用を創出している。また、「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)」(5)を通じて東アジア諸国のリソースや経済発展の知見を動員し、パレスチナの国造りを支援している。7月11日、ガザ情勢により発生した支援ニーズについて議論するため、岩屋外務大臣は、ハサン・マレーシア外相とサラーメ・パレスチナ計画・国際協力庁長官と共に、マレーシアにおいてCEAPAD第4回閣僚級会合の共同議長を務め、成果文書として共同議長声明及び行動計画を発表した。11月には、閣僚級会合のフォローアップとして実務レベル・オンライン会合を開催し、フィリピンの正式メンバー入りを歓迎した。日本は、2023年10月以降、総額約4億1,000万ドルのパレスチナに対する人道・復旧支援を実施してきている。
7月11日、日本はマレーシア及びパレスチナとの共催で、マレーシアのクアラルンプールにおいて、「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)」1の第4回閣僚級会合を開催しました。CEAPADは、パレスチナ支援のための日本独自の取組の一つとして、東アジア諸国のリソースや経済発展の知見をいかしてパレスチナの国づくりを支援するため、2013年に日本が立ち上げた地域協力枠組みです。

(7月11日、マレーシア・クアラルンプール)

(7月11日、マレーシア・クアラルンプール)
2023年10月7日のハマス等のパレスチナ武装勢力によるテロ攻撃を受けて、ガザ情勢は急速に悪化しました。危機的な人道状況に置かれたガザの人々の人道支援ニーズと膨大な早期復旧・復興ニーズは、国際社会全体で取り組まなければ対処できない課題との認識の下、日本はこの枠組みを再活性化し、地域のリーダーとして役割を果たしてきました。実務レベルのオンライン会合を複数回開催し、パレスチナ自治政府(PA)や国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を含む国際機関から現地の情勢や支援ニーズ、復旧・復興に向けた計画について説明を受けつつ、PA改革や財政問題といった中長期的な課題も含めて議論を重ねてきました。そして、1月の日・マレーシア首脳会談において、パレスチナ向け支援で協力を進めることで一致したことを受け、マレーシアの協力も得て、閣僚級会合の開催が決定しました。
こうして開催された第4回閣僚級会合には、13の国・地域及び2機関から、共催者である岩屋外務大臣、ハサン・マレーシア外相及びサラーメ・パレスチナ計画・国際協力庁長官を含め、過去最多となる10人の閣僚級の出席者を得ました。各参加国がそれぞれの強みに基づく今後の対パレスチナ支援の意向を表明し、今後も人道支援、復旧・復興支援、PA改革支援等において、CEAPADを通じた連携を強化し、協力を促進していくことを確認しました。会合の成果として、共同議長声明に加え、パレスチナのニーズと各参加国が強みをいかす支援分野を示し、今後のCEAPADの枠組みでの支援の指針となるCEAPAD IVクアラルンプール行動計画を採択しました。
10月には、ガザでトランプ米国大統領の「ガザ紛争終結のための包括的計画」に基づき当事者間の停戦・人質解放合意が成立し、ガザの再建に向け国際社会が本格的に動き出しました。こうした動きも踏まえ、11月には、CEAPAD実務レベル・オンライン会合を開催し、ガザへの人道支援に加え、ガザの早期復旧・復興支援、パレスチナの経済発展、国づくりとPA改革を支えるため、引き続き各国が連携・協力していくこと、CEAPADの枠組みを活用しつつ、二国家解決の実現に関する地域的・国際的な取組に積極的に関与していくことを確認しました。
日本は、「包括的計画」の実施と将来の「二国家解決」に向けた取組の一環として、引き続きCEAPADを通じたパレスチナ支援の輪の拡大と連携の強化に努めていきます。
1 CEAPAD:Conference on cooperation among East Asian countries for Palestinian Development2024年にラオス及びカンボジアが、2025年にはフィリピンが正式メンバーとなり、第4回閣僚級会合には東ティモールがオブザーバーとして初めて参加するなど、CEAPADの協力の輪が拡大している。2025年12月末時点のメンバーは、11の国・地域及び3国際機関
2023年10月7日以降、日本は一貫して、ハマスなどによるテロ攻撃を断固として非難し、全ての当事者に対し、停戦と人質解放、国際人道法を含む国際法の遵守、人道状況の改善、事態の早期沈静化を求め、首脳・外相レベルで関係諸国・地域のカウンターパートとの会談を積極的に実施し、積極的な外交努力を重ねてきた。岩屋外務大臣は、2025年1月及び10月に当事者間の合意が成立した際に、合意の成立を歓迎し、誠実かつ着実な履行を求める談話を発出した。国連安保理決議第2803号の採択に際して、茂木外務大臣は同決議の採択を歓迎する談話を発出した。
また、11月、茂木外務大臣は、ガザ再建を始めとするパレスチナの国造りに向けた支援やガザの暫定的な統治メカニズムへの人的貢献などに取り組むため、大久保ガザ再建支援担当大使を任命した。
(2)イスラエル
現在のネタニヤフ政権は、リクード党を中心として極右政党も参加する形で2022年12月に発足した連立を基礎とする。2023年10月には、ハマスなどによるテロ攻撃を受けて、主要野党を含む挙国一致内閣が発足した。日本との関係では、ハイレベルでの率直な意見交換が多数実施され、5月にサアル外相が大阪・関西万博のナショナルデー行事への参加のため、イスラエル外相として15年ぶりに訪日し、岩屋外務大臣との会談を行った。また、8月に松本尚外務大臣政務官がイスラエルを訪問し、サアル外相、オハナ国会議長との会談を行った。さらに、岩屋外務大臣は5月の外相会談以降、3度の外相電話会談を実施した。2026年1月には、茂木外務大臣が同国を訪問し、サアル外相と会談するとともに、ネタニヤフ首相及びヘルツォグ大統領を表敬した。茂木外務大臣は、「包括的計画」の着実な実施、ガザにおける民間人保護や人道支援の確保について、イスラエルが適切な対応を取ることを求めるとともに、ヨルダン川西岸への入植活動は国際法違反であり、日本は入植地の拡大や入植者による暴力の増加が地域の情勢をより不安定化させることを深刻に懸念していること、また、日本として「二国家解決」を重視していることを伝えた。
(3)パレスチナ
パレスチナは、1993年のオスロ合意などに基づき、1995年からパレスチナ自治政府(PA)(6)が西岸及びガザの両地区で自治を開始し、2005年大統領選挙でアッバース首相が大統領に就任した。その後、同大統領率いるファタハと、ハマスとの間で関係が悪化し、ハマスがガザを武力で掌握した。2017年、エジプトの仲介により、PAへのガザにおける権限の移譲が原則合意された。また、2022年にはアルジェリアが仲介し、パレスチナ諸派間の和解文書「アルジェ宣言」が署名された。2024年7月には、ファタハとハマスを含むパレスチナの14諸派代表が北京(中国)で和解協議を行い、「北京宣言」を発表するも、依然として西岸とガザの分裂状態が継続している。
日本・パレスチナ関係については、6月、アル・アムール・パレスチナ国民経済相が大阪・関西万博のナショナルデー行事への参加のため訪日し、岩屋外務大臣との会談を行った。また、8月、松本外務大臣政務官がパレスチナを訪問し、アッバース大統領などと会談を行った。2026年1月には、茂木外務大臣がパレスチナを訪問し、ムスタファ首相と会談し、シェイク副大統領を表敬した。茂木外務大臣は、「二国家解決」への日本の一貫した支持と、ガザ再建及びパレスチナの国造り支援に対する日本の立場を説明するとともに、西岸情勢の悪化に対する深刻な懸念、PA改革の着実な進展への期待を表明し、両者は、中東地域の平和と安定のために引き続き協力するため「日・パレスチナ・ハイレベル政治対話」を立ち上げることで一致した。
(4)アフガニスタン
アフガニスタンは、中東、中央アジア、南アジアの連結点に位置し、歴史的に様々な宗教、文化、民族が交錯してきた、地政学的に重要な国である。
同国では、タリバーンが2021年8月に首都カブールを制圧し、翌月に「暫定政権」の樹立が発表されたが、引き続き民族・宗教的包摂性の欠如が指摘されており、教育や就労を始めとした女性・女児の権利の大幅な制限も継続している。独自のイスラム教の解釈に基づいて人々の行動に厳しい制約を課す、いわゆる「勧善懲悪法」の適用も継続しており、国際社会は深刻な懸念を表明している。
一方、同国で歴史的に広く栽培されてきた麻薬の原料となるケシの生産量が、2022年以降のタリバーンによる取締りもあり、大幅に減少したことが、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)により報告されている。従来ケシ生産で生計を立ててきた住民を、違法な栽培から脱却させ、合法的な代替生計産手段に導いていけるかが今後の課題となっている。
治安は改善したものの、「イスラムとレバントのイスラム国(ISIL)」系組織(ホラサーン州)などによるテロが各地で散発しているほか、10月にはパキスタンとの国境付近で大規模な武力衝突が発生し、死傷者が発生するなど、地域情勢の不安定化要因の一つとなっている。こうした中、日本は、アフガニスタンが再び国際社会から孤立しテロの温床となることを避ける観点から、タリバーンに対し、女性や社会的少数者を含む全てのアフガニスタン国民の社会・政治参加や、各種制限の撤廃、及び、国際社会との建設的な関係構築を求める直接的な関与を継続するとともに、国際場裡での議論にも積極的に貢献している。
国連の発表によると、同国は、人口の約半数が人道支援を必要としており、日本は、タリバーンによるカブール制圧以降も国際機関などを経由し人道支援やベーシック・ヒューマン・ニーズ(人間としての基本的な生活を営む上で最低限必要なもの)に応える支援を継続してきた。
9月には、アフガニスタン東部で地震が発生し、2,000人以上が死亡するなど大規模な被害が発生した。日本は岩屋外務大臣による談話を発出し、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた緊急援助物資供与のほか、食料、保健・医療及び水・衛生の分野で、国際機関を通じた緊急無償資金協力を実施した。また、11月にもアフガニスタン北部で地震が発生し、日本は茂木外務大臣からのお見舞いメッセージを発出し、JICAを通じた緊急援助物資の供与を実施した。
(5)イラン
イランは、約9,200万人の人口と豊富な天然資源を誇るシーア派の地域大国であり、日本とは90年以上にわたり伝統的な友好関係を発展させてきている。
6月13日、イスラエルがイランの核関連施設等に対して攻撃を行い、同月21日には、米国がイランにおけるフォルド、ナタンズ、イスファハンの3か所の核関連施設に対する攻撃を実施した。
日本は、国際的な核不拡散体制の維持のためにもイランによる核兵器開発は決して許されないとの立場から、イランの核問題を深刻に懸念しており、米国などとも連携しつつ、その解決に向けた外交的努力を行ってきた。この観点から、イスラエル・イラン間での攻撃の応酬に際しても、協議を通じたイラン核問題の解決に向けた努力によって対話の道が再開されることを強く望むことを外務大臣談話等で表明するとともに、イラン及びイスラエル双方に対して最大限の自制を働きかけた。また、在イラン在留邦人保護の観点から、陸路による邦人退避支援を実施した。
核問題については、2018年の米国によるイラン核合意(包括的共同作業計画(JCPOA))からの離脱を受け、2019年7月以降、イランは核合意上のコミットメントを段階的に停止する対抗措置をとってきた。2024年に発足したペゼシュキアン政権は、欧米との対話に対して意欲的な姿勢を見せており、2025年4月以降、米・イラン間接協議が複数回実施された。しかし、6月のイスラエル及び米国によるイラン核関連施設への攻撃の影響などを受けて、その後同協議は停止した。また、イランは7月には国際原子力機関(IAEA)との協力停止に関する法律の施行を発表し、攻撃の影響を受けた核施設の査察に関しては2025年末時点で再開には至っていない。8月には、JCPOA参加国である英国、フランス、ドイツが、2015年の国連安保理決議第2231号に基づき、イランによるJCPOAの「重大な不履行」を国連安保理に通知し、同決議に基づき解除されていた対イラン制裁措置が9月に再適用されるに至った。
日本は、これまで一貫してイランによる核兵器開発は決して許されないとの立場を取っている。また、イランの核問題の最終的な解決は、対話を通じてのみ達成可能であり、そのためにはイランと関係国との協議を通じた合意形成に加えて、引き続きIAEAの関与が不可欠であると考えている。こうした観点から、日本は、米・イラン協議の早期再開の重要性を強調するとともに、イランに対しては、再適用されることとなった安保理決議を適切に履行することに加え、関連の保障措置協定上の義務に従い、IAEAとの完全な協力を直ちに再開することを強く求めている。また、国連安保理による対イラン制裁の再適用については、9月に、日本として同安保理決議に基づく国内措置を遅滞なく履行した。
日本は、米国と同盟関係にあると同時にイランと長年良好な関係を維持してきている。5月に日・イラン次官級協議を行い、また、6月のイスラエルによるイランに対する攻撃を受け、同月には岩屋外務大臣とアラグチ外相との電話会談を2回実施した。9月には岩屋外務大臣が、訪問中のニューヨーク(米国)においてアラグチ外相との間で初めてとなる対面での会談を行った。

さらに、12月に茂木外務大臣はアラグチ外相と電話会談を実施し、地域の平和と安定に向け、日・イラン間の様々なレベルで、引き続き緊密に対話を行っていくことで一致した。このように、日本は、イランとの様々なレベルでの重層的な対話を継続しつつ、あらゆる機会を捉えて、イランに対し、諸課題について懸念事項を直接伝達するなど、中東地域における緊張緩和と情勢の安定化に向けた独自の外交努力を行ってきている。
2026年2月には米イラン協議が再開したが、同28日、イスラエル及び米国がイランに対する攻撃を行い、イランの最高指導者ハメネイ師を含む指導部やイラン革命防衛隊幹部などが死亡した。その後イラン側もイスラエル及び周辺諸国への反撃を行った。これを受け、日本として、関係国と緊密に連携して情報収集を行い、イラン周辺国を含む地域全体の邦人の安全確保、及び、海路・空路の状況把握と関係者への情報提供に引き続き万全を期している。また、イランによる核兵器開発は決して許されないという日本の一貫した立場から、イランに対し、核兵器開発及び周辺国への攻撃を含む地域を不安定化させる行動をやめ、外交的解決を強く求める旨対外的に発信した。こうした日本の立場は3月1日の外務大臣談話で明確に示している。また、周辺国のエネルギー施設を含む民間施設や外交施設等にまでイランの攻撃が及び、民間人の死者も発生していること、及びイラン側はホルムズ海峡の閉鎖に言及しており、実際にホルムズ海峡やその周辺海域において民間船舶が攻撃を受けていることなどを踏まえ、日本は、こうしたイランの行動を非難している。当該事案発生直後、茂木外務大臣は、UAE、イラク、オマーン、カタール、クウェート及びヨルダン等の湾岸諸国を含む関係諸国との間で会談を行い、前述の日本の立場を伝えるとともに、邦人の安全確保における協力を求めた。その上で、今般の事態を受けて緊密に意思疎通を行うとともに、連携して対応していくことを確認した。また、イスラエルやイランを含む当事国に対しても日本の立場を明確に伝え、邦人の安全確保への協力を求めるとともに、日本として事態の沈静化を強く望む旨働きかけた。
エネルギー安全保障を含む中東地域の平和と安定、そして国際的な核不拡散体制の維持は、日本にとって極めて重要であり、事態の早期沈静化に向けて、国際社会とも連携し、引き続き必要なあらゆる外交努力を行っていく。
(6)トルコ
トルコは、地政学上も重要な地域大国であり、北大西洋条約機構(NATO)加盟国として地域の安全保障において重要な役割を果たしており、欧米、ロシア、中東、アジア、アフリカへの多角的な外交を積極的に展開している。また、1890年のエルトゥールル号事件(7)に象徴されるように、伝統的な親日国である。
2003年の首相就任、2014年の大統領就任を経て20年以上にわたりエルドアン大統領が強力なリーダーシップを発揮し、トルコの成長を大きく牽(けん)引している。2023年2月にトルコ南東部で発生した犠牲者5万人を超える大地震に加え、高いインフレ率による市民生活の圧迫もあった中、同年5月の大統領選挙でエルドアン大統領が再選を果たした。その後の2024年3月の地方選挙では、エルドアン大統領が率いる公正発展党(AKP)は結党以降初めて野党に敗北した。
外交面においては、欧米重視に主軸を置きつつ、近隣諸国のみならず中南米やアフリカ地域とも関係を強化する多面的な外交政策を展開してきている。ガザ地区をめぐる情勢については、当初からガザ住民への人道支援を精力的に実施するとともに、10月のトランプ米大統領の仲介によるガザ停戦合意の成立に際しては、ハマスとの接点を有する特異な立場も使いつつ、合意成立に貢献した。
日・トルコ関係では、2月には衆議院招待によりクルトゥルムシュ・トルコ大国民議会議長、また、4月には大阪・関西万博のナショナルデー行事への参加のためボラット貿易相が訪日した。8月には中谷元防衛大臣がトルコを訪問されるなど、前年に引き続き活発な要人往来が実現した。
また、東日本大震災や2023年のトルコ南東部での大地震の際のように、地震国である両国は互いの強みや経験をいかしながら支援し合っている。両国の災害対策の知見を共有する観点から、日・トルコ防災セミナーを開催するなどの取組も行ってきている。
(7)イラク
イラクは、2003年のイラク戦争後、2005年に新憲法を制定し、民主的な選挙を経て成立した政府が国家運営を担っている。
内政面では、2021年の国民議会選挙後に政府を樹立できない混乱状態が続いたが、2022年10月のスーダーニー政権発足以降は安定した政治運営が行われ、国内治安も改善した。2024年10月には6年ぶりとなるクルディスタン地域議会選挙、11月には1987年以来37年ぶりとなる国勢調査が実施されたほか、2025年11月には国民議会選挙が概(おおむ)ね平穏に執り行われ、日本はこれを歓迎する外務報道官談話を発出した。一方、最近のイスラエル・パレスチナ、イラン、シリアなどの周辺国情勢が引き続きイラクの国内情勢に影響を及ぼしている。
外交面では、イラクはイラン、サウジアラビア、トルコといった地域大国の間に位置することから、近隣諸国との関係強化やバランス外交を志向している。
日本は2003年以降、一貫して対イラク支援を継続している。
(8)ヨルダン
ヨルダンは、混乱が続く中東地域において安定を維持しており、アブドッラー2世国王のリーダーシップの下で行われている過激主義対策、多数のシリア・パレスチナ難民の受入れ、中東和平への積極的な関与など「中東安定の要」として地域の平和と安定に果たしている役割は、国際的にも高く評価されている。伝統的な親日国であり、2018年には両国関係が戦略的パートナーシップに格上げされるなど、一貫して緊密な関係を有している。
2024年に、日・ヨルダン外交関係樹立70周年を迎え、両国の官民を含む様々なレベルでこれを記念する行事が開催された。2025年には、外相レベルでは、2月及び5月に岩屋外務大臣がサファディ副首相兼外務・移民相との間で会談を行い、ガザ人道危機への対処において、二国家解決及び長期的な地域の平和と安定の確立に向け、二国間で連携することを確認した。
5月には、フセイン皇太子が大阪・関西万博のナショナルデーに際して訪日し、石破総理大臣との会談を実施し、両国の良好な関係を象徴する機会となった。また、高市総理大臣は11月に来日したアブドッラー2世国王と首脳会談を実施し、今後も戦略的パートナーシップの下、安全保障や経済の分野で協力を強化し、二国間関係を更に深化させていくことで一致した。安全保障面では、8月の中谷防衛大臣、11月の内倉統合幕僚長、12月の小林陸上総隊司令官のヨルダン訪問などハイレベル交流が盛んに行われ、防衛分野における両国の協力関係が一層緊密化している。

(11月11日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)
(9)湾岸諸国とイエメン
湾岸諸国は、近年、脱炭素化や産業多角化などを重要課題として社会経済改革に取り組んでいる。湾岸諸国は、日本にとってエネルギー安全保障などの観点から重要なパートナーであることに加え、こうした改革は中東地域の長期的な安定と繁栄に資するとの観点から、日本としても、サウジアラビアとの「日・サウジ・ビジョン2030」や、アラブ首長国連邦(UAE)との「包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアティブ(CSPI)」などの下で幅広い分野の協力を進めている。また、2009年以降交渉が中断していた日・GCC(湾岸協力理事会)経済連携協定(EPA)については、交渉が再開され、引き続き協議が進められている。
サウジアラビアは石油輸出国機構(OPEC)で主導的な役割を担っており、日本の原油輸入の約4割を供給するエネルギー安全保障上の重要なパートナーである。また、同国はアラブ諸国唯一のG20メンバーであると同時に、イスラム教の二大聖地を擁するアラブ・イスラム諸国の盟主であり、中東情勢の緊張が続く中、同国は地域の安定化に向けて引き続き重要な役割を果たしている。また、同国は、「サウジ・ビジョン2030」を掲げ、包括的な社会経済改革を目指し、様々な分野で新たなイニシアティブを推進している。2025年は日・サウジアラビア外交関係樹立70周年の節目を迎え、様々な記念事業が行われた。大阪・関西万博の閉会式では、2030年リヤド万博を開催する同国への引き継ぎが行われた。また、2月にはファイサル外相が訪日し、岩屋外務大臣と第2回日・サウジアラビア外相級戦略対話を開催した。4月には岩屋外務大臣がサウジアラビアを訪問しファイサル外相と会談したほか、9月にも岩屋外務大臣がファイサル外相と電話会談を行った。このように、日・サウジアラビア間で要人往来や会談が活発に行われ、両国の戦略的パートナーシップを強化し、「日・サウジ・ビジョン2030」の枠組みの下での様々な分野での協力や地域・国際社会の安定化に向けて国際場裡での連携を更に進めることなどが確認された。
UAEも日本の原油輸入の約4割を供給するエネルギー安全保障上の重要なパートナーである。日本は、日・UAE包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアティブ(CSPI)の枠組みの下、多様な分野での協力を一層推進している。4月にはジャーベル産業・先端技術相兼日本担当特使が訪日し、石破総理大臣表敬及び林芳正官房長官表敬を実施したほか、岩屋外務大臣との間で第2回CSPI閣僚級会合を開催した。さらに、12月には茂木外務大臣が訪日中のジャーベル産業・先端技術相兼日本担当特使と会談を行い、両国間の連携を一層強化していくことで一致した。

また、大阪・関西万博にはムハンマド副大統領兼首相兼ドバイ首長やハーリド・アブダビ皇太子を始めとする多数の首長家や閣僚等の要人が訪れた。
経済分野では、2024年9月に首脳間で交渉開始が発表された日・UAE経済連携協定(EPA)の交渉が精力的に進められた。6月の東京での第3回交渉会合、8月、11月のオンラインでの第4回、第5回交渉会合を経て、12月にはドバイで第6回、2026年1月には東京で第7回交渉会合が行われた。
また、文化面では12月、UAEで初となる日本語能力試験(JLPT)が開催された。人的交流の促進に向けて、6月にはUAEの一般旅券所持者に対する短期滞在査証の緩和(滞在期間の90日への延長)が導入された。
カタールは、世界最大級の産ガス国であるとともに、イラン、タリバーン、ハマスなどとの独自のチャンネルをいかし、米・タリバーン間の和平交渉、米・イラン間の被拘束者交換の交渉、イスラエル・ハマス間の停戦・人質解放をめぐる交渉などを継続して仲介し、国際社会における存在感を一層高めている。
9月にカタール国内においてハマス幹部を標的としたイスラエルによる攻撃が発生し、地域の緊張が高まる事態となった。カタールの主権と安全、ひいては地域の安定を脅かす攻撃に対し、日本として強く非難しつつ、カタールへの連帯を表明する外務大臣談話を発出した。
カタールとの間では、9月の岩屋外務大臣とムライヒー外務担当国務相との会談や、2026年1月の茂木外務大臣のカタール訪問の際に行われたムハンマド首相兼外相との第3回日・カタール外相間戦略対話を始めとするハイレベルの対話を通じ、「戦略的パートナーシップ」に基づき、幅広い分野における協力関係を一層推進していくことを確認した。
オマーンは、イランやホーシー派との独自のチャンネルをいかし、サウジアラビア・イラン間の外交関係正常化の交渉、サウジアラビア・ホーシー派間の交渉、米・イラン間の被拘束者交換の交渉・間接協議の仲介などを継続してきた。2月に同国首都マスカットで開催されたインド洋会議において宮路拓馬外務副大臣が登壇したほか、海上自衛隊がオマーンに寄港し、洋上訓練を行うなど、海洋安全保障分野を含め、幅広い分野における両国間の協力・交流が進んだ。4月には第8回日・オマーン外務省間政策対話が開催され、9月には日・GCC外相会合などに出席するためクウェートを訪問した岩屋外務大臣が、バドル外務大臣と会談を行うなど、ハイレベルでの緊密な対話が実施された。

(2月17日、オマーン・マスカット)
クウェートは、日本の原油輸入の約9%を供給する強固なパートナーであり、2025年には要人往来が活発に進められた。
5月には、サバーハ・ハーリド皇太子が訪日し、石破総理大臣との会談などが行われ、その機会に二国間関係が「包括的・戦略的パートナーシップ」へと格上げされ一層強化されることとなった。同皇太子は、大阪・関西万博も訪れた。
8月には、第5回日・クウェート外務省間政策対話が開催され、政治、経済、エネルギー、文化といった幅広い分野での二国間協力、両国間の往来・交流の強化、そして国際場裡における連携について活発な議論が交わされた。また、8月末から9月初めにかけては、岩屋外務大臣が第2回日・GCC外相会合に出席するため、クウェートを訪問し、アフマド・アブドゥッラー首相及びサバーハ・ハーリド皇太子を表敬したほか、日・クウェート外相会談を実施し、様々な分野における協力について意見交換を行った。
さらに、9月には第80回国連総会出席のため米国・ニューヨークを訪問中の石破総理大臣が、サバーハ・ハーリド皇太子と会談を実施し、両国の緊密な関係を再確認した。
バーレーンは、米国海軍第五艦隊司令部が設置されており、中東地域における日本関係船舶の安全確保や地域の安定化という観点から、日本にとって重要なパートナーである。
2025年9月には、日・GCC外相会合などに出席するためクウェートを訪問した岩屋外務大臣が、ザヤーニ外相と懇談を行った。同月、ザヤーニ外相が訪日し、林官房長官を表敬したほか、岩屋外務大臣と第1回日・バーレーン外相戦略対話を開催し、エネルギー分野を超えて、政治・安全保障、環境、情報通信技術、宇宙を含む幅広い分野における両国の緊密な関係を再確認した。また同月、サルマン皇太子兼首相が大阪・関西万博参加のため訪日し、石破総理大臣及び岩屋外務大臣とそれぞれ会談などを行い、両国関係を「戦略的パートナーシップ」へと格上げすることに両国間で一致したほか、両国間の多様な分野で協力を拡大していくことを確認した。

(9月19日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)
イエメンの安定は、中東地域全体の平和と安定のみならず、日本のエネルギー安全保障に直結するシーレーンの安全確保の観点からも重要である。紛争長期化により「世界最悪の人道危機の一つ」とされるイエメンに対し、日本は2015年以降、国際機関などと連携しながら、支援を実施している。
イエメンでは、イエメン正統政府及びアラブ連合軍とホーシー派との間で衝突が継続していたが、2022年4月に全土での停戦が成立し、同年10月に同停戦が失効した後も小康状態が継続している。
一方、ガザ地区をめぐる情勢を受け、2023年11月以降、ホーシー派はイスラエルへのミサイル・ドローン攻撃、並びに紅海及びアデン湾を航行する船舶に対する攻撃を開始した。日本は、こうしたホーシー派の行動を断固非難し、船舶の自由かつ安全な航行を阻害する行為の自制を求めるとともに、当該船舶及び乗組員の早期解放や周辺海域の安定化に向けて、関係国と連携しながら取り組んできている。2025年1月には、2023年11月からホーシー派に拘束されていた日本企業が運行する「ギャラクシー・リーダー号」の乗組員が解放された。
2025年10月のガザ停戦合意成立を受けて、ホーシー派は、紅海及びアデン湾を航行する船舶に対する攻撃を停止した。しかし、航行の安全に対する不安は継続しており、円滑な物流やエネルギー供給の障害となっている。9月に発足した「イエメン海上安全保障パートナーシップ(YMSP)」は、紅海及びアデン湾の安定回復に向けてイエメン沿岸警備隊の能力強化を図る国際枠組みであり、日本もこれに参加している。
(10)シリア
ア 情勢の推移
2011年から長きにわたって危機が継続した後、2024年9月以降のイスラエルによるレバノンの親イラン民兵組織ヒズボッラーに対する攻撃が拡大すると、シリア国内にも攻撃が増大し、アサド政権下のシリア情勢は悪化の一途をたどった。
こうした中、シャーム解放機構(HTS)を母体とする反政府勢力は、2024年11月末に北部の都市アレッポを制圧し、12月8日には首都ダマスカスを制圧したと発表した。アサド大統領がロシアに亡命すると、10日にはダマスカスで「暫定政権」の樹立が宣言された。トルコやアラブ諸国及び欧米各国は、暫定政権の樹立を歓迎するとともに、同政権との接触を順次開始した。
2025年2月末にシャラア大統領が任命されると、内政においては、暫定政権は2月末に国民対話を実施し、3月に憲法宣言を発布、同月末に期間5年とする移行政府を樹立し閣僚を任命するなど政治プロセスの進捗を進めた。さらに10月には人民議会選挙を実施し立法府の再設置を目指している。外政においては、国際社会への復帰及び経済再建に向け積極的な外交を展開している。シャラア大統領は、9月にシリア首脳として58年ぶりとなる国連総会に参加し演説を行ったほか、11月には1946年のシリア独立以降初となる国家元首としての米国ホワイトハウス訪問を実現し、トランプ大統領と会談した。
治安面では、6月にダマスカス市内の教会でISILによる自爆テロが発生したほか、3月の沿岸部におけるアラウィ派と政府軍の大規模衝突及び7月にはベドウィン系集団とドルーズ派の衝突にシリア政府軍とイスラエル軍が介入し大規模な戦闘が発生するなど国内少数派との抗争も継続している。北東部ではシリア民主軍(SDF)との間で攻撃の応酬が続いているが、シリア政府はSDFの政府軍への統合を目指して協議を続ける姿勢を示している。
人道状況は厳しい状況が続いており、2025年には、人道支援を必要とする人々の規模が、人口の67%に当たる1,650万人に上るとされている。旧政権の崩壊以降、国内外の避難民が元の居住地に自発的に帰還している一方、社会・経済インフラは10年以上継続したシリア危機で破壊されており、帰還民の受入れを進める上でも支援ニーズが依然高い状況にある。
イ 日本の取組
日本は、3月に発足したシリア移行政府が、国内の諸問題に対し包摂的な政治的解決と国民和解に向けた対話に取り組んできたことを評価している。引き続きシリアにおいて平和的で安定した移行が実現するよう、全ての当事者が建設的な役割を果たすことを求めるとともに、国際社会とも連携しながら、シリア政府と国民による平和的かつ安定した移行を支えていく。
この方針にのっとり、5月末には、旧アサド政権に対し課していた資産凍結などの措置の一部解除を発表した。また、日本は、2012年以降、シリア及び周辺国に対して総額35億ドル以上の人道支援を行ってきており、長年の危機で疲弊したシリア国民の生活を改善する必要があるとの考えに基づき、人材育成や地雷除去、インフラ整備など、日本ならではの知見や経験をいかしながら、復興と人道状況改善に向けた支援を継続していく。
(11)レバノン
レバノンでは、2022年10月末のミシェル・アウン前大統領の任期終了後、政治勢力間の対立などにより、大統領位の空白状態が続いていた。行財政改革も著しく遅れ、公共サービスの機能不全や高いインフレ率などの問題を抱えている。2023年10月以降のガザ情勢悪化の影響を受け、イスラエルと国境を接する南部では、イスラエル軍とヒズボッラーとの間で攻撃の応酬が勃発し、国内では100万人規模の避難民が発生していたが、2024年11月26日、イスラエルとレバノンは、停戦に合意した。日本は本合意を歓迎するとともに、全ての当事者が停戦合意を完全に履行することを求めているが、現在もレバノン南部を中心に、イスラエル軍による空爆が続いており、不安定な情勢が続いている。
2025年1月、新たにジョゼフ・アウン国軍司令官が第14代大統領に選出され、2年以上にわたる大統領位の空白が解消された。2月にはサラーム内閣が発足し、同国の安定と発展に向けた一歩を踏み出した。同内閣は8月の上旬に、武器の保有を正式な治安機関・軍組織に限定する方針、及びレバノン全土で非政府武装勢力の存在を終了させる方針を閣議決定した。また、同月下旬には、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の活動任期を2026年末とし、その後は部隊の縮小と撤収を進めるとの国連安保理決議が採択された。これらの方針に従い、今後レバノン国軍(LAF)の強化と、ヒズボッラーを含む国内諸勢力の武装解除を安定的かつ並行して進めていくことが必要となっている。
日本は、2012年以降、総額2億9,000万ドルに上るレバノン支援を実施してきており、引き続き人道状況の改善に向けた支援を行っていく。
―日・サウジアラビア外交関係樹立70周年―

9月23日、サウジアラビアの建国95周年と、日・サウジアラビア外交関係樹立70周年が重なる特別なナショナルデーを大阪・関西万博で迎えました。国交樹立以来、両国はエネルギー面で重要なパートナーであり続けています。加えて、近年サウジアラビアでは、アニメ、マンガ、ゲーム等をきっかけに日本に対する関心が特に高まっています。ナショナルデーのイベントが行われた会場では、両国の文化や人々の交流にスポットライトが当てられ、ステージ上で繰り広げられるパフォーマンスが織り成すハーモニーは、70年にわたって築き上げられた両国の友好・信頼関係のハイライトとなりました。


午後2時、日本とサウジアラビアの国旗が掲げられ、両国の国歌が奏でられる中、ナショナルデー・イベントの幕が開けました。ファーレフ・サウジアラビア投資相が次世代に向けた関係深化の期待や日本文化への敬意を述べた後、サウジアラビアの無形文化遺産である剣舞「アルダ」と太鼓のリズミカルなパフォーマンスが披露され、続いて、日本の能管とサウジアラビアの伝統的な笛「ネイ」による演奏が美しい旋律を紡ぎました。両国の文化が一つの舞台で響き合う瞬間は、多くの観客を魅了しました。
プロジェクションマッピング『水の物語』では、日本人チェロ奏者とサウジアラビア人歌手が共演し、アラビア湾岸の真珠採りの物語が表現されました。チェロの深い音色、歌手の伸びやかな歌声、鮮やかな映像の融合。『水の物語』は、歴史や生活習慣が異なる国同士でも、自然や日々の営みの中に多くの共通点があることを改めて実感させてくれました。
日没後のコンサートでは、日本の人気歌手であるLiSAさんとサウジアラビアの若手アーティストが共演し、心を一つに歌い上げられた声は、文化や世代を超えた交流の象徴となりました。
大阪・関西万博における二国間の文化的共鳴は多くの人々の心に深い印象を残すものとなり、特に『水の物語』は、大阪・関西万博のワールド・エキスポオリンピック(World Expolympics)「プレゼンテーション部門」で銀賞に輝くなど、その芸術性と没入型の体験が高く評価されました。
また、12月に東京ミッドタウン日比谷で開催された日・サウジアラビア外交関係樹立70周年記念文化イベントには、日本各地からはるばる来場した多くの日本人の姿が見られました。
1932年に統一国家として成立したサウジアラビア。外交関係樹立70周年と重なり、大阪・関西万博でのナショナルデーはサウジアラビアの「今」を映し出し、同国との相互理解と交流促進に大きく貢献しました。くしくも、日本からバトンを引き継ぐ形で、2030年の万博はサウジアラビアの首都リヤドで開催されることが決定しています。このつながりがきっかけとなり、多くの日本人が2030年のリヤド万博を訪れ、日・サウジアラビアの相互理解が一層深まることで、次世代の交流促進につながっていくことを期待してやみません。
(3) IDF:Israel Defense Forces
(4) JAIP:Jericho Agro-Industrial Park
(5) CEAPAD:Conference on cooperation among East Asian countries for Palestinian Development
(6) PA:Palestinian Authority
(7) エルトゥールル号事件の詳細については、以下ホームページ参照:https://warp.ndl.go.jp/web/20180501202554/http://www.mofa.go.jp/mofaj/ms/da/page22_001052.html

