2 米国
(1)米国情勢
ア 政治
1月20日、トランプ第47代大統領が就任し、トランプ第2期政権が発足した。トランプ大統領は、就任演説において、「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」の立場を改めて強調し、「米国の黄金時代が始まる」と強調した。
政権発足直後から、トランプ大統領は、「米国を再び偉大にする(Make America Great Again)」のスローガンの下、移民・国境対策、米国第一の外交政策など、大統領選挙での公約を実現するための施策を実行に移している。
(ア)米国の国内情勢
大統領に就任した1月20日、トランプ大統領は、連邦政府の機関・職員・機能の縮小、化石燃料開発を含む規制の緩和・撤廃の推進、出生地主義の見直しを含む移民・国境政策、多様性・公平性・包摂性(DEI)政策の撤回、エネルギー、メキシコ湾のアメリカ湾への名称変更等に関する42の大統領令等に署名した。
2025年の連邦議会では、1月3日、2024年11月の連邦議会選挙の結果を受けた第119議会が開会した。上下両院で共和党が多数を占めるものの、民主党との議席数が僅差であることもあり、党として統一行動をとるに当たっては、共和党・民主党の双方において、投票における造反の防止が重要な課題となった。
7月初旬までに、連邦議会両院は、2017年減税・雇用法(いわゆる「トランプ減税」)の期限付項目の恒久化、政府債務の法定上限引上げ、チップ・残業代の免税、社会保障の削減、クリーンエネルギー支援策の撤廃等のトランプ政権の重要施策を盛り込んだ財政調整法案(いわゆる「一つの大きな美しい法案(One Big Beautiful Bill)」)を可決し、その後、トランプ大統領が同法案に署名し成立した。
同月中旬、トランプ政権の要請に基づき、連邦議会共和党は、国際開発庁(USAID)や公共放送向けの予算計90億ドルの削減から成る2025年予算撤回法案を提出し、同法案が可決した後、8月、トランプ政権は立法措置を経ない国連及びその関係機関への拠出金49億ドルの予算不履行を発表した。
民主党は、トランプ政権及び連邦議会共和党のこれら動きに反発し、つなぎ予算の交渉で態度を硬化させた。共和党・民主党は合意に達せず、9月30日、「つなぎ予算」は期限切れを迎えた。これにより、連邦政府の一部が閉鎖された。その後、連邦上院共和党指導部と同民主党の中道派議員の一部は、「つなぎ予算」期限の翌年1月30日までの延長や政府閉鎖中に解雇された4,000人以上の連邦政府職員の再雇用、未払い賃金の支払等に合意した。11月上旬、これら一部民主党議員の賛成をもって連邦議会で「つなぎ法案」が可決され、米国史上最長となった43日間の連邦政府の一部閉鎖は解除された。
トランプ大統領は、南部国境非常事態宣言を含む複数の移民・国境管理関連の大統領令に就任初日に署名するなど、不法移民・国境対策強化やフェンタニル等の薬物対策に重点的に取り組んだ。
トランプ政権は、6月には、アフリカ、中東、アジア、中米の19か国の国民の入国禁止・制限を導入し(12月には入国禁止・制限の対象を39か国に拡大)、11月、トランプ大統領は「第三世界諸国」からの移民受入れの恒久的な停止と非米国市民への連邦補助金終了等を表明した。
また、米国国務省は、査証発給に当たり、申請者のソーシャルメディア(SNS)審査を導入するなど、査証審査の厳格化の措置も行った。
また、6月、トランプ政権は、カリフォニア州ロサンゼルスにおいて不法移民取締強化への抗議運動への対応として、4,000人の州兵を派遣した。これに対し、カリフォニア州側は、同州知事の同意のない派遣は違法として提訴した。
トランプ政権は、連邦政府の能力と実効性を向上させるとして、デジタル庁を「政府効率化省(DOGE)」に改称・改編し、実業家のイーロン・マスク氏がDOGEを率いる役割を担った。
トランプ政権は、政府効率化の一環として、特に対外援助(USAID)、行政規制(環境保護庁、エネルギー省、労働省、国家労働関係委員会等)、教育(教育省)、社会福祉(住宅都市開発省、保健福祉省、公共放送等)を所管する省庁等の組織改編・人員削減等に取り組んだ(USAIDについては、7月に閉鎖された。)。なお、5月、マスク氏はDOGEを退任し、11月、DOGEがその役割を停止し、解体されたと報じられた。
トランプ大統領の支持率(1)は、就任直後の50%前後を最高値として、3月には不支持率が支持率を逆転し、7月から12末まではおおむね42%から46%の間で推移した。
11月、ニュージャージー州知事及びバージニア州知事、ニューヨーク市長選挙が実施され、いずれも民主党候補が勝利したが、民主党党内での中道派とプログレッシブ(急進)派の路線対立が改めて示される契機にもなった。
(イ)米国の外交
トランプ政権は、「力による平和」を追求するとともに、自国の国益を最優先とする米国第一(アメリカ・ファースト)の外交政策を展開した。
トランプ政権は、政権発足直後に、パリ協定からの離脱、世界保健機関(WHO)からの脱退、国連人権理事会からの離脱を表明し、7月には、国連教育科学文化機関(UNESCO)からの脱退を表明するなど、前政権の外交政策から転換する姿勢を強く打ち出した。
トランプ政権は、政権の優先課題である移民・薬物対策強化のため、南部国境管理を厳格化するとともに、カナダ、メキシコ、中国など一部の国に対して、追加関税等を通じて、対策の強化を求めた。
また、トランプ大統領が、グリーンランドの編入・取得に言及し、パナマ運河を取り戻すと発言したことは、国際社会の反響を生んだ。
さらに、トランプ政権は、世界各地における紛争の停戦・終結に向けた外交を精力的に展開した。ウクライナや中東情勢を含め、世界各地での外交努力を行うとともにトランプ大統領は、8か月で八つの戦争を終わらせたと繰り返し述べ、自身の成果を強調した。
トランプ大統領は、就任初日、対外援助を90日間停止し、外交政策との整合性を見直すとの大統領令に署名した。3月、ルビオ国務長官は、USAIDの支援契約全体のうち約8割を打ち切る方針を発表するとともに、4月にはUSAIDのほぼ全ての機能を国務省に再編する計画を発表した。その後、同長官は、7月1日に、USAIDによる対外援助の正式な停止を公表した。
4月、国務省は、「アメリカ・ファースト」の外交政策の実現のため、同省の組織改編計画を発表した。5月、ルビオ国務長官は、ウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官の退任に伴い、同補佐官の役職も兼任することとなった。
9月、トランプ大統領は、国連総会で演説を行い、国連が役割を果たさず、問題を解決するのではなく、気候変動や不法移民問題といった問題を作り出してきたと述べた。
12月、トランプ政権は、米国の本土防衛、国防、外交政策を統括し、その指針となる文書である「国家安全保障戦略(NSS)」を公表した。NSSでは、「力による平和」を進め、インド太平洋地域における紛争を抑止するために同盟国等と協力することや、米国との間で確認してきた共通の目標であるFOIPについてのコミットメントなどが記載されており、トランプ政権の目指す安全保障政策が明確に示された。日米間では、首脳・外相レベルを含め多くの要人往来が実施された。
要人往来の機会を通じて構築された首脳間等の信頼関係の下、日米関係はかつてなく強固なものとなっている。日米同盟は日本の外交・安全保障の基軸であり、インド太平洋地域の平和と繁栄の礎である。また、日米両国はFOIPを力強く推進するため、緊密に連携している。
イ 経済
(ア)経済の現状
米国の実質GDPは、2023年通年は前年比2.9%増、2024年通年は前年比2.8%増とプラス成長が続いた。一方、関税引上げを忌避した駆込みでの輸入や在庫積上げの影響もあり、2025年1月から3月までは前期比年率0.6%減と約3年ぶりのマイナス成長を記録した。その後、同年第4月から6月までは、前期の駆込み需要の反動による輸入減少などにより、前年同期比3.8%増とプラス成長に転じた。
経済の先行きについては、関税措置を含む通商政策が物価や消費等に与える影響も指摘され、その勢いが弱まる可能性がある。高い金利水準の継続に伴う影響による下振れリスクや、今後の通商政策など政策動向による影響に留意する必要がある。米国民の関心を集めたインフレについては、消費者物価指数(CPI・前年同月比)の伸び率が2024年7月に約3年ぶりに3%を下回り、2025年には一時2%前半まで低下したものの、2025年4月以降、少しずつ上昇している。政策金利誘導目標については、連邦公開市場委員会(FOMC)(2)は、2023年7月以降約1年にわたり、5.25%から5.50%に据え置いていたが、インフレ率が低下したことを受けて2024年9月に同目標を4.75%から5.00%とし、約4年半ぶりに利下げを実施した。その後も追加利下げが複数回行われ、政策金利誘導目標は3.75%から4.00%となった。雇用においては、2024年に引き続き、失業率は年間を通じ4%前後と依然として低水準で推移し、雇用者数も緩やかに増加した。
(イ)主な経済政策
第2期トランプ政権においては、3月の議会演説でトランプ大統領から示されたように、関税政策、投資誘致を含む国内への産業回帰、規制緩和、減税などに重点を置いた経済政策が推進されてきた。中でも、1月の政権発足以降、第2期トランプ政権は、関税措置を基軸とする通商政策を次々と発表し、世界経済に大きな影響を及ぼすものとして大きな注目を集めた。トランプ大統領は、就任初日には、大統領覚書「米国第一の貿易政策(America First Trade Policy)」を発表し、投資及び生産性を促進し、米国の産業及び技術的優位性を強化し、経済及び国家安全保障を擁護し、そして何よりも米国の労働者等への恩恵をもたらす、強固で再活性化された貿易政策を確立する方針を発表した。トランプ政権は、2月に、カナダ、メキシコ及び中国に対して、フェンタニルを含む不法入国者と麻薬による異常な脅威が国家緊急事態を構成するとして、国際緊急経済権限法(IEEPA)(3)に基づく追加関税を課すことを発表した(中国に対しては同月、カナダ及びメキシコに対しては3月に発動した。)。また、4月、貿易赤字を削減し、貿易におけるその他の不公正かつ不均衡な側面に対処するためとして、IEEPAに基づく相互関税(Reciprocal Tariff)措置を発表した。これにより、ほぼ全ての国に10%の関税が課され、対米黒字計上国に対しては更に個別の高い関税(上乗せ税率)が課されることとなった。上乗せ税率については、一時停止期間が設けられ、税率の修正が行われた後、8月に発動した。その後、4月、9月及び11月には相互関税の適用範囲の修正が行われ、一部農産品の除外等が発表された。一方、IEEPAに基づく相互関税等は違憲又は違法であるとの訴訟が提起され、現在(2025年12月時点)、連邦最高裁で審理中である。
さらに、1962年通商拡大法232条に基づき、鉄鋼・アルミニウム製品及び派生品、自動車及び同部品、銅半製品及び派生品、木材及び派生品、中型・大型トラック及び同部品といった広範な分野において分野別関税が発動されてきている(2025年12月時点)。そのほか、半導体、医薬品、重要鉱物、航空機及び同部品等についても、同条に基づき、国家安全保障に及ぼす影響を判断するための調査が実施されている。このような一連の米国の関税措置は、世界経済や多角的自由貿易体制等に大きな影響を及ぼすものであり、日本を含む多くの国・地域が、関税引下げを求めて米国との交渉を行った。
通商政策に加え、米国国内への生産回帰を促す国内産業復興を目的とした経済政策も推進されてきた。資源分野では、エネルギー及び重要鉱物の国内生産の強化を図ることで、米国内の雇用創出、外国産への依存低減及び米国内サプライチェーンを強化し、更なる米国の繁栄につなげるため、2025年1月に、行政命令「米国エネルギーの解放(Unleashing American Energy)」、3月に、「重要鉱物の生産強化のための緊急措置(Immediate Measures to Increase American Mineral Production)」が発表された。造船分野においては、造船能力が中国等に劣ることなどを問題視し、米国第一主義に基づく経済政策の一環として、米国の国家・経済安全保障の確保に向け、海事産業基盤の再建や労働力の強化を目指す行政命令「米国の海洋支配力の回復(Restoring America’s Maritime Dominance)」が発表された。医薬品分野においても、同様に米国内の生産能力強化の観点から、5月に、行政命令「重要医薬品の国内生産を促進するための規制緩和(Regulatory Relief to Promote Domestic Production of Critical Medicines)」が発表された一方、行政命令「最恵国待遇の処方薬価格を米国の患者に提供する(Delivering Most-Favored-Nation Prescription Drug Pricing to American Patients)」が同月に発表され、医薬品メーカーに対して米国における医薬品の販売価格引下げを求めた。AI分野においては、AIイノベーションの加速、米国のAIインフラの構築及び国際的なAIに係る外交と安全保障の主導を柱とする「AI競争に勝つ:米国のAI行動計画(Winning the Race America’s AI Action Plan)」が発表され、AI分野における米国のグローバルな優位性を維持・強化するための具体的な計画が策定された。
その他の経済政策上の大きな動きとして、7月に、トランプ大統領が議会に可決を強く求めていた財政調整法案が可決され、2017年減税・雇用法(いわゆるトランプ減税)の期限付き項目の恒久化、チップ・残業代の免税、社会保障の削減、クリーンエネルギーの支援策の撤廃等の措置が実施された。
(2)日米政治関係
日米間では、首脳・外相レベルを含め多くの要人往来が実施された。
要人往来の機会を通じて構築された首脳間等の信頼関係の下、日米関係はかつてなく強固なものとなっている。日米同盟は日本の外交・安全保障の基軸であり、インド太平洋地域の平和と繁栄の礎である。また、日米両国はFOIPを力強く推進するため、緊密に連携している。
1月7日、岩屋外務大臣は訪日したブリンケン国務長官と会談を行い、岩屋外務大臣から、ブリンケン国務長官のこれまでの日米同盟に対する貢献に謝意を述べた上で、両外相は、かつてなく強固になった日米関係を維持・強化するため、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致した。
1月9日、前年12月29日に逝去したカーター元大統領の国葬がワシントンD.C.で行われ、日本から菅義偉元総理大臣が総理特使として参列した。
また、1月、米国・カリフォルニア州で大規模な山火事が発生し、甚大な被害をもたらした。同月10日、石破総理大臣は山火事により甚大な被害が発生していることを受け、バイデン大統領に対して、「この悲劇の犠牲となられた方々に心から哀悼の意を表するとともに、負傷された方々の早期回復の祈念、そしてこのような困難な時期に日本はアメリカ合衆国国民と共にある。」とのお見舞いメッセージを発出した。同月15日には、日本は、被災者救援のための支援として、米国赤十字社を通じて200万ドルの支援を行うことを決定した。
1月20日、ワシントンD.C.を訪問した岩屋外務大臣は、米国側からの招待を受け、日本の外務大臣として初めて米国大統領の就任式に出席し、翌21日には、岩屋外務大臣はルビオ国務長官と初めてとなる外相会談を行い、岩屋外務大臣からルビオ国務長官の就任への祝意を述べ、両外相は、今後も日米同盟を新たな高みに引き上げるとともに、FOIPの実現に向け、日米で協力していくことで一致した。さらに、両外相は、かつてなく強固になった日米関係を維持・強化するため、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致した。
2月7日、ワシントンD.C.を訪問した石破総理大臣は、トランプ大統領と対面で初めてとなる日米首脳会談を行った。両首脳は、厳しく複雑な安全保障環境に関する情勢認識を共有し、FOIPの実現に向けて緊密に協力し、日米同盟を新たな高みに引き上げていくことを確認し、日米同盟の抑止力・対処力を高めることで一致した。石破総理大臣からは、日本の防衛力の抜本的強化への揺るぎないコミットメントを表明し、トランプ大統領はこれを歓迎した。トランプ大統領は、米国による核を含むあらゆる能力を用いた、日本の防衛に対する米国の揺るぎないコミットメントを強調した。両首脳は、日米安全保障条約第5条が尖(せん)閣諸島に適用されることを改めて確認した。また、両首脳は、辺(へ)野古における普天間飛行場代替施設の建設及び普天間飛行場の返還を含む沖縄統合計画に従った在日米軍再編の着実な実施へのコミットメントを確認した。両首脳は、中国をめぐる諸課題や核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮への対応といった地域情勢について意見交換を行った。また、両首脳は、日米豪印、日米韓、日米比(フィリピン)といった同志国連携を更に強化していくことの重要性を確認した。両首脳は、かつてなく強固になった日米関係を維持・強化するため、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致し、日米首脳共同声明を発出した。最後に、石破総理大臣はトランプ大統領に対して、早期の日本への公式訪問を招待した。

(2月7日、米国・ワシントンD.C. 写真提供:首相官邸ホームページ)
3月13日、G7外相会合に出席するため、カナダ・シャルルボワを訪問中の岩屋外務大臣は、ルビオ国務長官と日米外相会談を行った。両外相は、2月の日米首脳会談の成果を踏まえ、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化に向けた協力を進めていくことを確認するとともに、首脳会談で一致した在日米軍再編の着実な実施へのコミットメントを再確認した。また、日米経済関係の更なる強化に向けて緊密に意思疎通を行っていくことを改めて確認した。岩屋外務大臣から、鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税措置について、措置の対象から日本を除外するよう申し入れてきたにもかかわらず、日本が除外されない形で追加関税の賦課が開始されたことは遺憾であると伝え、また、相互関税や自動車関税等の関税措置について、日本が対象になるべきではないと申し入れた。
3月29日、石破総理大臣は日米硫黄島戦没者慰霊合同追悼顕彰式に出席するため、硫黄島を訪問した。同式典には、日本側からは、石破総理大臣を始めとする政府関係者、逢沢一郎衆議院議員(硫黄島問題懇話会会長)、新藤義孝衆議院議員(硫黄島協会遺族代表)を始めとする国会議員、硫黄島協会関係者(硫黄島戦没者遺族)を含む約130人が参列した。米国側からは、ヘグセス国防長官、ヤング在日米国大使館臨時代理大使、スミス海兵隊総司令官、ミルズ米国硫黄島協会議長、バイス米国硫黄島協会会長、米国連邦議会議員を含む約160人が参列した。同式典に参列した石破総理大臣は、日米双方の戦没者と遺族に対し、追悼の言葉を述べた。その中で、石破総理大臣は、日本の平和への誓い、そして、世界に平和と繁栄をもたらす日米同盟を新たな高みに引き上げていく決意を表明した。

(3月29日、硫黄島 写真提供:首相官邸ホームページ)
日米硫黄島戦没者合同慰霊追悼顕彰式に続き、日本側参列者は、天山慰霊碑に場所を移し、日本側による戦没者慰霊追悼顕彰式を執り行い、石破総理大臣は、追悼の辞を述べた。また、石破総理大臣は、島内の遺骨収集現場を訪れた。
4月7日、石破総理大臣は、トランプ大統領と電話会談を行った。石破総理大臣は、2月の日米首脳会談の成果を踏まえ、トランプ大統領との間で、日米関係全体を更に発展させていくとともに、FOIPの実現に向け共に協力していくことを確認した。また、経済分野について、石破総理大臣から、日本が5年連続で最大の対米投資国であると述べつつ、米国の関税措置により日本企業の投資余力が減退することを強く懸念するとの考えを伝えた上で、関税ではなく、投資の拡大を含め、日米双方の利益になる幅広い協力の在り方を追求すべきであると述べ、措置の見直しを求めた。両首脳は、引き続き率直かつ建設的な協議を続けていくことを確認した。
5月23日、石破総理大臣は、トランプ大統領と電話会談を行った。両首脳は、米国の関税措置に関する日米協議や経済安全保障に係る協力や外交・安全保障をめぐる諸課題について幅広く意見交換を行った。その中で、トランプ大統領から、同大統領による先の中東訪問の成果について説明があり、これに対し、石破総理大臣から、米国による外交努力に敬意を表すると述べた。石破総理大臣から、米国の関税措置に係る日本の立場を伝え、関税措置に関する日米協議について、現在、赤澤亮正経済再生担当大臣がワシントンD.C.に向かっているところであり、閣僚間で生産的な協議が行われることを期待すると述べ、トランプ大統領もそれに賛同した。また、石破総理大臣から、G7カナナスキス・サミットの機会に対面での会談を楽しみにしていると述べ、これに対し、トランプ大統領から、同様に楽しみにしているとの発言があった。
5月29日、石破総理大臣はトランプ大統領と電話会談を行った。両首脳は、5月23日の電話会談に続いて、外交・安全保障、経済にまたがる幅広い分野で日米の協力を一層前進させるため意見交換を行うとともに、米国の関税措置に関する日米協議についても意見交換を行った。その中で、石破総理大臣からは、米国の関税措置に係る日本の考えを伝え、両首脳は、今後、更に担当閣僚間で議論を詰めていくことで一致した。
6月13日、石破総理大臣は、トランプ大統領と電話会談を行った。石破総理大臣から、これまでの米国の関税措置に関する日米協議の結果も踏まえつつ、米国の関税措置に係る日本の考えを改めて伝えた。両首脳は、日米双方にとって利益となる合意の実現に向け、担当閣僚間での協議を加速させていくことで一致した。また、両首脳は、現下のイスラエルによるイランに対する攻撃をめぐる対応についても意見交換を行い、中東地域の平和と安定は極めて重要であるとの認識を共有し、緊密に意思疎通を続けていくことで一致した。
6月16日、G7カナナスキス・サミット出席のためカナダを訪問した石破総理大臣は、トランプ大統領と会談を行った。両首脳は、FOIPを推進し、両国が世界の平和と繁栄に一層貢献するため、日米同盟を更に強化していくことを確認した。また、米国による一連の関税措置に関し、両首脳は率直な議論を行い、担当閣僚に対し、更に協議を進めるよう指示することで一致した。

6月25日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会合等の関連行事に出席するためオランダ・ハーグを訪問した岩屋外務大臣は、ルビオ国務長官との間で、日米外相会談を行った。両外相は、現下の中東情勢について意見交換を行い、岩屋外務大臣からは、イスラエル・イラン間の停戦発表は重要な進展であり歓迎すると述べ、今後、着実に実施に移されていくことが重要であると述べた。両外相は、中東の平和と安定のための更なる外交努力の必要性で一致し、今後も緊密に意思疎通を続けることを確認した。また、米国の関税措置に関しても意見交換を行い、日米双方にとって利益となる合意の実現に向け、担当閣僚間の協議を後押ししていくことを確認した。
7月1日、日米豪印外相会合に出席するためにワシントンD.C.を訪問中の岩屋外務大臣は、ルビオ国務長官との間で日米外相会談を行った。冒頭、岩屋外務大臣から、国際情勢が激しく動く中で日米が緊密に意思疎通することは極めて重要であると述べ、両外相は、今後も日米同盟を更なる高みに引き上げていくことで一致した。また、インド太平洋地域が直面する諸課題やこの地域において日米両国が果たすべき役割について議論し、日米両国がFOIPの実現に向け、具体的な協力を積み重ねていくことの重要性で一致した。さらに岩屋外務大臣から、日米豪印外相会合を主催した米国のイニシアティブを高く評価すると述べ、両外相は、日米豪印、日米韓、日米比などの地域のパートナーとの同志国連携を更に進めていくことを確認した。両外相は、日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化に向けた議論も行い、日米安全保障協議委員会(「2+2」)開催に向け調整を進めていくことを確認し、米国の関税措置に関しては日米双方にとって利益となる合意の実現に向け、担当閣僚間の協議を後押ししていくことを改めて確認した。最後に、両外相は、地域情勢について意見交換を行い、中国をめぐる諸課題や台湾海峡の平和と安定の重要性を確認した。また、核・ミサイル問題を含む北朝鮮情勢についても、北朝鮮の完全な非核化に向けての確固たるコミットメントを改めて確認し、また、拉致問題の即時解決について、岩屋外務大臣から引き続きの協力を求め、ルビオ国務長官から支持を得た。

7月18日から20日、ベッセント財務長官が率いる米国大統領代表団が訪日し、18日に石破総理大臣を表敬した。石破総理大臣から、米国大統領代表団の訪日を歓迎すると述べ、7月19日の米国のナショナルデーは、強固な日米同盟、日米友好関係を示す機会となることを期待すると述べた。また、石破総理大臣は、米国大統領代表団との間で、幅広い分野での日米協力についても意見交換を行い、その中でウクライナ、中東、アジアの安全保障はつながっており、日米で更に協力を強固にしていきたいということ、日本の平和と安全の確保に日本として主体的に取り組み、防衛力の強化には引き続き取り組んでいくこと、経済・経済安全保障分野でも日米で連携すべき分野が多くあること等を伝えた。

(7月18日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)
同代表団は、19日には大阪・関西万博で開催された米国のナショナルデー関連行事に出席した。同行事には、日本からは赤澤経済再生担当大臣が出席し、公式式典において日本政府の代表としてスピーチを行った。
高市内閣発足後、10月25日、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議に出席するためマレーシア・クアラルンプールを訪問中の高市総理大臣は、トランプ大統領と初の電話会談を行った。冒頭、トランプ大統領から、高市総理大臣の就任への祝意が述べられた。高市総理大臣から、日米同盟の強化は、日本の外交・安全保障政策の最重要事項であると伝達し、両首脳は、日米同盟を更なる高みに引き上げていくために協力していくことを確認した。また、高市総理大臣から、日本はインド太平洋地域における米国の不可欠なパートナーであり、FOIPを共に実現していきたいと述べた。さらに、同月の中東における合意を実現したトランプ大統領のリーダーシップに敬意を表すると述べた。高市総理大臣から、拉致問題の即時解決に向けても、引き続きの理解と協力を求めた。高市総理大臣から、トランプ大統領を日本にお迎えできることを楽しみにしていると述べ、トランプ大統領からも、高市総理大臣に直接お会いする機会を楽しみにしているとの発言があった。
10月28日、高市総理大臣は、訪日中のトランプ大統領と日米首脳会談及び署名式等を行った。高市総理大臣から、トランプ大統領の訪日を歓迎した上で、日米同盟の発展へのこれまでの同大統領の貢献、中東を始めとする国際社会における同大統領の指導力に敬意を示した。また、高市総理大臣から、日米同盟はインド太平洋地域の平和と繁栄の礎であるとともに、その更なる強化は、日本の外交・安全保障政策の最優先事項であると述べた上で、米国にとっても、日本はインド太平洋における不可欠なパートナーであることを強調した。

(10月28日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)


(10月28日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)
その上で、高市総理大臣から、日米同盟は、今や世界で最も偉大な同盟であり、これを基軸として力強い日本外交を取り戻す決意を伝え、日米両国をより強く、豊かにする日米同盟の新たな歴史を共に創り上げていきたいと述べた。
これに対し、トランプ大統領は、高市総理大臣の就任に対する温かい祝意が示された上で、今後、日米関係は、今まで以上に強固なものとなっていくと考えており、日米は最も強固な同盟国であると述べた。また、トランプ大統領は、日本にとって必要な時は、いつでも助けになると強調した上で、高市総理大臣との間で素晴らしい関係を築くことができるだろうと述べた。また、両首脳は、来年の米国建国250周年を共に祝い、日米の友好・交流関係を一層発展させていくことを確認した。
両首脳は、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化していくため、幅広い安全保障協力を進めていくことで一致した。高市総理大臣は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境において、これまで一貫して防衛力の抜本的強化の必要性を訴えてきており、就任直後から行動に移していると述べ、日本として主体的に防衛力の抜本的強化と防衛費の増額に引き続き取り組んでいく決意を表明した。トランプ大統領からは、日本が防衛力を大幅に強化していることを承知していると言及があった。
両首脳は、関税に関する日米間の合意について両国による迅速かつ継続的な取組を確認する文書(「合意の実施 -日米同盟の新たな黄金時代に向けて-」)に署名し、日米両国の経済を更に力強く成長させることを確認した。また、両首脳は、重要鉱物及びレアアースに関する文書(「採掘及び加工を通じた重要鉱物及びレアアースの供給確保のための日米枠組み」)に署名し、重要鉱物・レアアースに加え、AIを始めとした重要技術、造船など、幅広い分野において、経済安全保障の取組を一層強化していくことでも一致した。
高市総理大臣は、FOIPを、日本外交の柱として、引き続き力強く推進し、時代に合わせて進化させていく決意を示した上で、両首脳は、FOIPを力強く推進するために、緊密に連携していくことを確認した。また、両首脳は、そのビジョンの下で、日米韓、日米比、日米豪印といった地域の同志国ネットワークを強化していく重要性を確認した。
両首脳は、7月にカンボジアとタイの間で、また、10月には中東において、それぞれ停戦合意が実現するなど、世界各地における平和に向けた取組についても意見交換を行い、高市総理大臣から、日本は、米国にとっての平和の取組の「伴走者」であると述べた。両首脳は、今後予定される外交日程等も念頭に、インド太平洋地域が直面する情勢や諸課題についても意見交換を行った。両首脳は、中国、北朝鮮、ロシアの連携や軍事活動の活発化など、かつてなく厳しく、複雑な地域の安全保障環境についても意見交換を行った。両首脳は、中国をめぐる諸課題について意見交換を行い、両首脳は、力又は威圧による一方的な現状変更の試みに反対し、日米で緊密に連携していくことを確認した。両首脳は、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて確認した。
両首脳は、北朝鮮情勢について認識を共有し、核・ミサイル問題に共に対処する必要性や、北朝鮮の完全な非核化に向けた確固たるコミットメントを確認した。
拉致問題の即時解決について、高市総理大臣から、引き続きの理解と協力を求め、トランプ大統領から全面的な支持を得た。また、両首脳は、拉致被害者御家族とも面会した。


同28日、高市総理大臣はトランプ大統領と共に横須賀に入港中の米空母「ジョージ・ワシントン」を訪問した。両首脳は、自衛隊員及び在日米軍人に対して激励の挨拶を行い、高市総理大臣は、インド太平洋を自由で開かれたものとし、地域の平和と繁栄の礎とする決意を述べ、トランプ大統領と共に世界で最も偉大な同盟となった日米同盟を更なる高みに引き上げていく覚悟であると述べた。

10月28日、茂木外務大臣は、トランプ大統領の訪日と併せて日本を訪問中のルビオ国務長官との間で、外務大臣就任後初となる日米外相会談を行った。冒頭、茂木外務大臣から、ルビオ国務長官の訪日を歓迎するとともに、世界で最も偉大な日米同盟を世界に示すため、ルビオ国務長官と緊密に連携していきたいと述べた。また、茂木外務大臣から、拉致被害者御家族と面会いただいたことへの感謝を述べた。ルビオ国務長官からは、安全保障分野、経済分野を含む日米同盟を強化していきたいと述べた。両外相は、日米間で、具体的な安全保障協力を進め、日米同盟の抑止力・対処力を強化していくことで一致した。両外相は、経済分野に関しても意見交換を行った。茂木外務大臣から、日米間の合意の実施に加え、経済安全保障面の取組を更に推進していくことの重要性を強調した。また、茂木外務大臣から、中東、ウクライナ、カンボジア・タイなど、世界各地における米国の外交努力を強く支持すると述べ、両外相は、中国をめぐる諸課題や核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮への対応において協力していくことで一致した。両外相は、FOIPの実現に向け、日米韓、日米比、日米豪印などの同志国連携を更に進めていくことを確認した。

11月25日、高市総理大臣は、トランプ大統領と電話会談を行った。高市総理大臣から、10月のトランプ大統領訪日を報じる記事への同大統領による高市総理大臣宛手書きメッセージの発出についての謝意やウクライナ和平に向けた米国の取組への評価を伝えた。また、両首脳は、日米同盟の強化やインド太平洋地域が直面する情勢や諸課題について、幅広く意見交換を行った。その中で、トランプ大統領から、同月に行われた米中首脳会談を含む最近の米中関係の状況につき説明があった。さらに、高市総理大臣から、トランプ大統領からの質問に答えて、先に行われたG20ヨハネスブルグ・サミットについて説明した。両首脳は現下の国際情勢の下で、日米間の緊密な連携を確認した。トランプ大統領からは、高市総理大臣とは極めて親しい友人であり、いつでも電話をしてきてほしいとの発言があった。
2026年1月2日、高市総理大臣は、トランプ大統領と電話会談を行った。高市総理大臣から、米国が建国250周年を迎えることに対する祝意を伝えた。また、高市総理大臣から、ウクライナや中東など、世界各地での平和を実現するためのトランプ大統領の外交努力に対し、改めて敬意を表した。また、両首脳は、この記念すべき年を日米同盟の新たな歴史を切り拓(ひら)く1年とするため、日米間の友好関係や、経済や安全保障を含む裾野の広い日米協力を一層深めていくことを確認し、日米韓を含む同志国連携やFOIPを共に力強く推進していくことを確認した。また、両首脳は、インド太平洋地域を中心に意見交換を行い、現下の国際情勢の下での日米の緊密な連携を確認した。トランプ大統領からは、高市総理大臣の米国訪問への招待があり、両首脳は、2026年春の訪問に向けて具体的に調整することで一致した。さらに、両首脳は、今後も緊密に意思疎通を続けていくことを確認した。
(3)日米経済関係
日米経済関係は、安全保障、人的交流と並んで強固な日米同盟を支える主な要素の一つであり、日本と米国は、経済面でも最も緊密なパートナーである。例えば、日本は、米国内の直接投資残高で6年連続世界最大の対米投資国(2024年は8,192億ドル)であり、2022年には約97万人の雇用を創出した(英国に次ぎ2位)。2025年は、米国による広範な関税措置を含む通商政策が、日米両国の経済関係に大きな影響を及ぼした1年だった。その中でも、日本企業による多大かつ長きにわたる貢献を含む強固な日米経済関係を背景に、率直かつ建設的な議論を様々なレベルで重ねた結果、同年7月に日米両国の利益になる形での合意に至り、経済安全保障を含めた日米間の協力を一層進化させていく基盤を築くことができた。以下、経緯を概観する。
2月7日に米国・ワシントンD.C.で行われた石破総理大臣とトランプ大統領の初の対面での会談では、両首脳は、日本が最大の対米投資国であることを始め、経済面で両国が緊密なパートナーであることを確認した。石破総理大臣からは、対米投資額を1兆ドルといういまだかつてない規模まで引き上げたい、そのために共に取り組んでいきたいと伝達し、トランプ大統領からは、日本企業による対米投資に対する強い歓迎の意が示された。また、両首脳は、両国におけるビジネス環境を整備して投資・雇用を拡大していくこと、互いに産業を強化するとともにAIや先端半導体等の技術分野における開発で世界をリードすること、さらに、成長するインド太平洋の活力を取り込む取組を力強く推進していくことを通じて、日米のパートナーシップを更に高い次元に引き上げていくとの認識で一致した。加えて、日米双方に利のある形で、液化天然ガス(LNG)輸出増加も含め、両国間でエネルギー安全保障の強化に向けて協力していくことを確認した。
米国の関税措置については、2月、1962年通商拡大法第232条に基づく分野別関税として、全世界を対象に25%の鉄鋼・アルミ関税(その後6月に50%に引上げ)が発表された。3月には自動車・同部品に対して同様に25%の分野別関税が発表された。さらに4月2日、トランプ大統領が、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく「相互関税」を発表し、日本に対する同税率は24%とされた。これを受け、政府として、4月8日、石破総理大臣を本部長として、内閣に米国の関税措置に関する総合対策本部を設置し、米国の関税措置に関し総合的な対応を図った。外務省においては、4月10日、岩屋外務大臣を本部長とする日米経済協議対策本部を設置し、対応に当たった。
その後、米国の関税措置に関する日米間の協議についての日本側担当閣僚として、赤澤経済再生担当大臣が指名され、4月から9月まで、計10回にわたり訪米し、「関税より投資」の考えの下、関税引下げのための協議を重ねた。最終的に7月22日、日米間で合意に至った。同合意では、日本からの輸入品に対する相互関税については「上乗せなし」で15%とすること(すなわち、既存の関税率が15%以上の品目には相互関税は課されず、15%未満の品目については既存の関税率を含め15%の相互関税が課されること)となった。また、日本に対する自動車・同部品関税も、同様に「上乗せなし」で15%の扱いとなった。さらに、日本の医薬品と半導体について、仮に将来、分野別関税が課される際も、日本がEU等の第三国・地域に劣後しないとの確約を得るとともに、日本産の航空機や航空機部品に対していかなる関税も課されないこととなった。同時に、経済安全保障及び国家安全保障上の利益を促進するため、日本企業による米国への投資を通じて、日米が共に利益を得られる強靱(じん)なサプライチェーンを構築していくために日米で緊密に連携をしていくことで合意した。具体的には、半導体や医薬品、エネルギー等経済安全保障上重要な分野において、5,500億ドル規模の対米投資を促進することを確認した。その後、9月4日、トランプ大統領は、7月22日の合意に基づき、日本に対する関税の引下げ措置に関する大統領令に署名した。同日、赤澤経済再生担当大臣はラトニック商務長官との間で、前述の米国への戦略的投資イニシアティブについて、日米の共通理解を確認するための了解覚書に署名した。同日、日米両国は、7月22日の日米間の合意におけるコミットメントを再確認する共同声明を発出した。
10月28日、高市総理大臣は、訪日中のトランプ大統領と共に、関税に関する日米間の合意について、両国による迅速かつ継続的な取組を確認する文書(「合意の実施 -日米同盟の新たな黄金時代に向けて-」)や、重要鉱物及びレアアースに関する文書(「採掘及び加工を通じた重要鉱物及びレアアースの供給確保のための日米枠組み」)に署名した。また、両首脳は、AIを始めとした重要技術、造船など、幅広い分野において、経済安全保障の取組を一層強化していくことでも一致した。この機会に、閣僚間でも様々な意見交換が行われ、茂木外務大臣は、ルビオ国務長官との間で日米外相会談を行い、経済安全保障面の取組を更に推進していくことの重要性を強調したほか、ラトニック商務長官との間でも、経済安全保障の強化に向けた日米間の協力を含む幅広い分野について意見交換を行い、今後の日米関係強化のために様々なレベルで連携を深めていくことを確認した。
連邦政府と並んで、特色豊かな各州とも緊密な関係を築くことは、多層的かつ広範な日米経済関係の深化につながると考えられる。2025年には、日米の民間経済人の対話により相互理解の促進を図る日米財界人会議や、日本と米国の各地域との相互交流の促進を図る日本・米国中西部会・日米合同会議や日本・米国南東部会・日米合同会議が日本で対面開催された。そのほか、個別の機会でもメリーランド州、ハワイ州の知事などが訪日した。
日米経済関係の土台を草の根レベルから強化するため、政府は一丸となって対日理解促進に取り組んでいる。2017年の「グラスルーツからの日米関係強化に関する政府タスクフォース」の立上げ以降、日系企業による地域経済への貢献を発信する「草の根キャラバン」を始め、各省庁・機関の協力の下で、各地域の特徴や日本への関心の高さに応じたテイラーメイドの関係構築が進められている。これまでに、例えば、日・カリフォルニア州間の更なる脱炭素化の取組を促進するために水素ウェビナーを開催したほか、アーカンソー州、ネブラスカ州、ケンタッキー州、メリーランド州、アリゾナ州、ネバダ州など、全米各地で、地域の産業や関心に応じ、シンポジウムやワークショップ、ネットワークイベントを実施し、草の根レベルでの日米連携を推進してきている。
日本で最も人気のあるスポーツの一つである野球。野球の本場メジャーリーグにおける日本人選手の活躍は、米国でも連日報道され、人々を熱狂させています。
その野球を初めて日本に紹介したとされる人物が、米国メイン州出身のホーレス・ウィルソンです。ウィルソン氏は、明治時代に「お雇い外国人」として来日し、旧開成学校(後の東京大学)で英語と数学を教えていました。その授業のかたわら生徒に紹介したのが、当時まだ日本に伝わっていなかった野球です。その功績がたたえられ、2003年にウィルソン氏は東京・後楽園にある日本の野球殿堂入りを果たし、旧学士会館には記念碑が建てられました。しかしながら、ウィルソン氏の功績は、米国どころか地元メイン州の人々にも全く知られていませんでした。
2025年2月2日、在ボストン日本国総領事館は、メイン州出身・在住のライアン・シェイファー・ワシントンDC日米協会会長と協力し、メイン州ポートランド市において、日米野球交流の象徴であるウィルソン氏の功績を顕彰するイベントを開催しました。イベントには、ボストン・レッドソックスの吉田正尚(たか)選手、メイン州議会初の日系米国人議員のエリー・サトウ・メイン州下院議員、マーク・ダイオン・ポートランド市長らが参加しました。また、吉田選手が、築200年になるウィルソン氏の生家を訪問し、現在もそこに住むウィルソン氏の御親族との面談を果たした様子は、日米双方のメディアでも取り上げられました。
さらには、このイベントを契機に、メイン州で日本関連の活動を行っている個人や団体が協力し、ウィルソン氏の記念碑を地元に設立する活動が始まりました。この活動は、その後ホーレス・ウィルソン記念碑設立委員会の発足に発展し、サトウ議員を始めとする委員が精力的に活動しています。
7月には、ウィルソン氏がもたらした日米の野球の絆(きずな)を記念して、メイン州ポートランド市を本拠地とするボストン・レッドソックス傘下のマイナーリーグ・チーム、ポートランド・シードッグスのホーム・ゲームで「ジャパン・ナイト」が初めて開催されました。試合前に挨拶した髙橋総領事はスピーチの中で、野球が日米友好の架け橋として果たしてきた役割を強調しつつ、「日本とメイン州の歴史に刻まれる新たな1ページ」として、記念碑設立委員会の発足に祝意を表しました。
ウィルソン氏の蒔(ま)いた種が、日米両国民の架け橋となって、生まれ故郷で花開こうとしています。


(左端は髙橋総領事)
(1) Real Clear Politics世論調査平均
(2) FOMC:Federal Open Market Committee
(3) IEEPA:International Emergency Economic Powers Act
