4 東南アジア
(1)インドネシア
インドネシアは、世界第4位の人口(約2億8,000万人)を有する東南アジア地域の大国であり、マラッカ海峡などのシーレーンの要衝に位置し、東南アジア諸国連合(ASEAN)において主導的な役割を担っている。また、ASEAN唯一のG20メンバー国であり、グローバル・サウスの有力国としての存在感も示すなど、地域・国際社会の諸課題に関する取組における役割の重要性が高まっている。2024年10月に就任したプラボウォ大統領は、就任演説で貧困削減(給食制度の普及含む。)や食糧・エネルギー自給率の向上、汚職撲滅への注力を表明し、連立政権による安定した議会運営の下、諸政策を推進している。また、外交については、BRICS(27)に正式加盟する一方で、経済協力開発機構(OECD)や環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への加入要請を行うなど、非同盟を基本とした外交を展開しており、プラボウォ大統領自らも積極的に外国訪問を実施した。日本とインドネシアは包括的・戦略的パートナーとして、安全保障や経済を始めとした様々な分野での協力を強化するとともに、厳しさを増す地域・国際情勢において連携を深めてきた。1月には、石破総理大臣が総理大臣就任後初の二国間訪問先の一つとして、インドネシアを訪問し、プラボウォ大統領との間で協力関係を更に強化していくことで一致した。5月には、岸田文雄衆議院議員・アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)議員連盟最高顧問が総理特使としてインドネシアを訪問し、両国間での脱炭素・エネルギー移行における協力強化を確認した。同じく5月には、プラティクノ人材育成・文化担当調整相が大阪・関西万博ナショナルデーに出席するため訪日したほか、9月にはプラボウォ大統領も同万博視察のために訪日した。11月には、東京で3回目となる日・インドネシア外務・防衛閣僚会合(「2+2」)を開催し、茂木外務大臣、小泉進次郎防衛大臣、スギオノ外相、シャフリィ国防相の4閣僚の間で、地域・国際情勢に関する戦略的な認識を共有しつつ、二国間での安全保障・防衛分野での協力を更に強化していくことを確認した。両国は、こうしたハイレベルでの往来や意思疎通を通じ、長年にわたる緊密な友好協力関係に基づく包括的・戦略的パートナーシップを発展させてきている。
(2)カンボジア
カンボジアは、メコン地域に位置し、地域の連結性と格差是正の鍵を握る国である。新型コロナウイルス感染症流行の影響により2020年はマイナス成長となったが、2022年以降は5-6%の成長を続けている。
内政では、2023年7月の総選挙の実施に当たり、2022年の村・地区評議会選挙で最大野党となった「蝋燭(ろうそく)の火」党の立候補登録が拒否され、与党人民党が圧勝した。長年首相を務めたフン・セン氏が首相の座を退き、フン・マネット首相を首班とする新内閣が発足した。
日本は、1992年に初めて本格的に国連平和維持活動(PKO)に要員派遣するなど、カンボジアの和平と復興・開発に協力してきた。近年、日本企業の投資により経済関係も拡大しているほか、安全保障やデジタル等の新しい分野でも協力が進展し、4月には海上自衛隊艦艇が整備後初めての外国艦艇としてリアム海軍基地に寄港した。
5月の日・カンボジア首脳会談で、石破総理大臣とフン・マネット首相は共同声明及び「経済共創パッケージ」を発出し、「包括的戦略的パートナーシップ」の下、安全保障、経済・投資、民主主義、特殊詐欺対策などの分野で協力していくことを確認した。国際場裡(り)でも、日本とカンボジアは、両国によるカンボジア国内の地雷対策での協力実績を生かし、ウクライナ等の第三国の地雷対策で協力している。
5月及び7月に国境付近でタイとの軍事衝突が発生した。日本は、両国国境地域の緊急人道ニーズに対する総額180万ドルの緊急無償資金協力や停戦監視のための機材供与を始め、両国間の停戦合意の着実な履行を含む緊張緩和のための取組を進めてきている。
(3)シンガポール
シンガポールは、ASEANで最も経済が発展している国であり、全方位外交の下、米国や中国を含む主要国と良好な関係を維持している。国内では、5月にローレンス・ウォン首相就任後初の総選挙が行われ、与党人民行動党(PAP)が改選97議席中87議席を獲得した。ウォン首相は、新内閣において、変化する世界でのシンガポールの地位確立、特に米中との関係深化及び同志国との協力、経済戦略の見直し、社会福祉制度の強化、国内連帯の強化などを優先事項として進めている。日本・シンガポール間では、石破総理大臣が4月にウォン首相と電話会談を行い、世界経済を中心に意見交換を行い、自由で開かれたインド太平洋の推進に向けて連携していくことで一致したほか、8月には大阪・関西万博のために来日したリー・シェンロン上級大臣(元首相)と会談し、同上級大臣への旭(きょく)日大綬章伝達式を実施した。岩屋外務大臣は7月のマレーシアでのASEAN関連外相会議において、バラクリシュナン外相と外相会談を行い、2026年の外交関係樹立60周年に向けて、デジタル、グリーン、安全保障といった幅広い分野において協力を推進していくことを確認した。また、両国は「21世紀のための日本・シンガポール・パートナーシップ・プログラム(JSPP21)」による第三国への共同技術協力を通じて、2025年はASEAN諸国を中心に約170名に対してグリーン、デジタル分野を含む研修を実施した。9月には第18回日・シンガポール・シンポジウムが東京で開催され、政治、経済、安全保障を含む幅広い分野で意見交換が行われた。
(4)タイ
タイは、東南アジア大陸(メコン地域)の中心に位置する、立憲君主制国家である。ASEAN原加盟国の一つであり、地政学的にも高い重要性を有する。6,000社を超える日本企業が進出し、7万人以上の在留邦人が暮らすタイは、自動車産業を始め日本企業にとっての一大生産拠点であり、今日では地域のサプライチェーンの一角として日本経済に欠くことのできない存在となっている。
2025年はカンボジアとの軍事衝突が発生し、その後政権交代が行われるなど、流動的な状況が続く1年となった。5月にカンボジアとの軍事衝突が発生したことを契機とし、両国間の国境閉鎖などにより緊張感が高まる中、6月、ペートンターン首相が事態の沈静化に向けカンボジアのフン・セン上院議長との電話会談を実施したが、この際の両者の会話の音声が流出したことを受け、憲法裁判所は、8月、同首相の電話会談における発言が憲法の定める倫理規定に違反するとして、首相失職の判決を下した。9月、下院における首班指名選挙の結果、同首相の発言を批判し連立政権から離脱していた名誉党党首のアヌティン氏が首相に就任し、新政権が発足した。
日本は引き続きタイとの二国間関係の強化に努めている。5月には岩屋外務大臣が訪日したマーリット外相と会談を実施し、経済・安全保障分野の協力強化を確認したほか、カンボジアとの武力衝突発生後は日・タイ外相電話会談等を通じて緊張緩和を働きかけた。
12月には茂木外務大臣が訪日したシーハサック外相と会談を実施し、「包括的・戦略的パートナーシップ」の下、様々な分野で連携を強化していくことで一致した。
(5)東ティモール
日本は、東ティモールの独立(2002年)と同時に外交関係を開設した。2022年に独立20周年を迎えた同国は、国際社会の支援を得つつ平和と安定を実現し、民主主義に基づく国造りを実践してきた。2023年5月に国民議会議員選挙が実施され、同年7月にグスマン首相率いる新政権が発足した。経済は天然資源(石油や天然ガス)への依存度が高く、国家の最優先課題として産業多角化に取り組んでいる。外交面では、東ティモールは、10月のASEAN関連首脳会議においてASEAN正式加盟を実現した。その際に行われた日ASEAN首脳会議において、高市総理大臣は、グスマン首相に対して祝意を述べ、歓迎した。ハイレベルの往来も行われており、7月に生稲晃子外務大臣政務官が東ティモールを訪問し、ラモス=ホルタ大統領、グスマン首相を含む政府ハイレベルへの表敬を行い、二国間協力の強化及び地域・国際情勢での連携強化を確認したほか、フレイタス外務・協力相との外相会談に際しては、人材育成奨学計画に関する書簡の署名・交換を行った。8月には、ラモス=ホルタ大統領が大阪・関西万博ナショナルデーに出席するため訪日し、石破総理大臣との間で首脳会談を行い、両国間の包括的パートナーシップを強化していくことを確認した。このほか、東ティモール人技能実習生の受入れが日本で増加しているなど二国間での人的交流も拡大している。
(6)フィリピン
フィリピンは、シーレーンの要衝に位置し、日本と戦略的利益を共有する海洋国家である。フィリピンの経済成長率は2024年に5.7%を維持するなどASEAN諸国の中で最も経済成長率の高い国の一つであり、上位中所得国入りを目前に控えている。2025年に就任4年目に入り任期の中盤にさしかかるマルコス大統領は、農業、教育、健康、社会保障などを通じた国民生活の質向上及び公共インフラの整備を最優先事項として引き続き取り組んでいる。また、ミンダナオ和平については、モロ・イスラム解放戦線(MILF)の退役・武装解除に遅れが見られるものの、改正バンサモロ基本法に基づき、初の自治政府議会選挙後の自治政府樹立に向けたプロセスが継続している。
日・フィリピン間では、2025年も1月の岩屋外務大臣のフィリピン訪問を皮切りに様々なレベルでの要人往来があり、2026年の国交正常化70周年を見据えた戦略的パートナーシップの一層の強化が着実に進んでいる。4月には石破総理大臣がフィリピンを訪問し、マルコス大統領との首脳会談で、物品役務相互提供協定(ACSA)の交渉及び情報保護協定についての政府間での議論を開始することで一致し、それ以降も、5月の外相会談等ハイレベルで活発な交流が行われている。安全保障分野では、部隊間協力円滑化協定(RAA)が9月に発効し、10月に実施された日・フィリピン人道支援・災害救助共同訓練(ドウシン・バヤニハン)及びセブ島沖地震対応のための物資輸送支援に初めて適用されるとともに、10月の高市総理大臣とマルコス大統領との会談でACSAの実質合意を確認した。経済・人的交流分野では、3月及び9月に経済協力インフラ合同委員会が開催され、フィリピンの上位中所得国入りを見据えたインフラ及び経済分野での協力についての議論が行われたほか、6月にはマルコス大統領が訪日し、大阪・関西万博を視察した。また、2026年1月には茂木外務大臣がフィリピンを訪問し、ラザロ外相と外相会談を行い、ACSAに署名するなど、日・フィリピン国交正常化70周年に当たり、安全保障・経済等の分野での二国間協力を更に強化することを確認した。その他経済閣僚との懇談、ODA(政府開発援助)事業(パッシグ・マリキナ川河川改修計画)の視察を実施した。ACSAへの署名以外に、政府安全保障能力強化支援(OSA)及びODAの交換公文の署名も行った。

(10月26日、マレーシア 写真提供:首相官邸ホームページ)
こうした二国間協力のみならず、日米フィリピン(比)3か国の協力も着実に進んでいる。1月には日米比首脳テレビ会議が行われたほか、7月にはトランプ政権下で初となる日米比外相会合が開催されるなど、引き続き安全保障や経済といった幅広い分野で協力の具体的な取組が進んでいる。
(7)ブルネイ
ブルネイは、豊富な天然資源を背景に、高い経済水準と充実した社会福祉を実現し、政治的、経済的に安定している。立憲君主制の下、国王が首相、財務・経済相、国防相及び外相を兼任している。東南アジアの中心に位置し、南シナ海問題に関する係争国の一つであり、ASEANの一体性、統合強化を柱とするバランス外交を行っている。ブルネイの経済は、天然ガスの生産や石油精製事業に支えられているが、エネルギー資源への過度の依存から脱却するため経済の多角化を目指している。
日・ブルネイ両国は、1984年に外交関係を開設して以来、継続的な皇室・王室の交流に象徴されるように良好な関係を築いている。また、ブルネイ産液化天然ガス(LNG)の輸出総量の約5割強が日本向けとなっているなど、経済関係も緊密である。7月には、生稲外務大臣政務官がブルネイを訪問し、ブルネイ側との間で、2024年に「戦略的パートナーシップ」に格上げされた両国関係が深化していることを歓迎するとともに、二国間協力や地域及び国際社会の諸課題について意見交換を行った。
(8)ベトナム
ベトナムは、南シナ海のシーレーンに面し、中国と長い国境線を有する地政学的に重要な国である。東南アジア第3位の人口を有し、中間所得層が急増していることから、有望な市場であると同時に、近年は、サプライチェーン多元化の動きにより、日系企業を含む外国企業が生産拠点をベトナムに移す流れが続いている。ベトナムは、2045年の先進国入り及び2050年までのカーボンニュートラルを目指し、GX(グリーン・トランスフォーメーション)やDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進しているほか、マクロ経済の安定化、インフラ整備や投資環境改善を通じた外資誘致を通じ、安定的な経済成長の実現に取り組んでいる。2022年以降は新型コロナ感染症の流行による経済の落ち込みからの回復基調を強め、2024年には7.1%の成長を達成した。ラム・ベトナム共産党書記長は、2026年1月の第14回共産党大会から始まる「新しい時代」に向けて、実務的で合理的な社会経済の発展を重視し、省庁再編や地方自治体の統合などの大規模な行政改革を矢継ぎ早に実施した。
日本とベトナムは、1973年9月21日に外交関係を樹立し、50周年を迎えた2023年には両国関係を「アジアと世界における平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップ」に格上げした。両国間の新たなパートナーシップの下で2025年も活発な要人往来やハイレベルでの会談が継続した。4月には石破総理大臣がベトナムを訪問し、ラム書記長やチン首相を始めとする最高指導者らと会談を行い、安全保障協力の更なる具体化及び半導体やGXなど新たな分野の協力を通じたベトナムの産業高度化・強靱(じん)化の後押しを確認した。茂木外務大臣は、10月のASEAN関連首脳会議の際にチュン外相と会談し、両国関係や地域・国際情勢などについて意見交換を行った。12月には、初となる外務防衛次官級協議(次官級2+2)を実施し、安全保障分野の協力強化について協議した。

(4月27日、ベトナム・ハノイ 写真提供:首相官邸ホームページ)
技能実習生を中心に在日ベトナム人の数は引き続き増加しており、2012年の約5万人から2025年6月末には約66万人を超え、国別在留外国人数で中国に次いで2番目に多い数となっている。
(9)マレーシア
マレーシアは、マレー半島の「半島マレーシア」とボルネオ島の「東マレーシア」から成り、インド洋と太平洋の結節点に位置し、南シナ海とマラッカ海峡に面した地政学的に重要な国である。また、13州及び3連邦直轄地から成る連邦国家で、ブミプトラ(土着の民族を含むマレー系)(70%)、華人系(23%)、インド系(7%)などから構成される多民族国家である。特に、2025年はマレーシアがASEAN議長国を務め、カンボジア・タイ国境での軍事衝突を受けて米国の関与を得つつ両国の和解を仲介するために尽力するなど、リーダーシップを発揮して存在感を示した。
マレーシアとの間では、ハイレベルでの活発な往来が実現した。1月に、石破総理大臣が就任後初の二国間訪問先としてマレーシアを訪問し、アンワル首相と首脳会談を行ったほか、5月には岸田文雄衆議院議員・アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)議員連盟最高顧問が総理特使として訪問した。7月にはASEAN関連外相会議のためにマレーシアを訪問した岩屋外務大臣が、モハマド・ハサン外相と外相会談を行った。これらの会談を通じ、両国は、海洋安全保障、経済、環境問題、先端技術、レアアースといった様々な分野において二国間関係を強化するとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化することの重要性を確認し、引き続き連携していくことで一致した。
また、10月には高市総理大臣がASEAN関連首脳会議出席のためマレーシアを訪問してアンワル首相と首脳会談を行い、両首脳間で、OSAを通じた無人航空機(UAV)と救難艇の引渡しや、新たな潜水作業支援船及びカンボジア・タイ国境におけるASEAN監視団の活動のための停戦監視用機材の供与に関する書簡の署名・交換を歓迎した。

(10月26日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)
(10)ミャンマー
2021年2月1日のミャンマー国軍によるクーデターから5年以上が経過した今も、各地で国軍と民主派勢力及び少数民族武装組織との間で衝突が発生しており、多くの市民が犠牲になるなど情勢は悪化の一途をたどっている。3月28日には、ミャンマー中部マンダレー付近を震源とするマグニチュード7.7の巨大地震が発生し、当局の発表によれば犠牲者は3,700人、負傷者5,100人を超えるとされ、また、家屋や公共施設が倒壊・損傷するなど甚大な被害を被った。地震発生直後、日本政府は、被災地に国際緊急援助隊(JDR)・医療チームや医療資機材を輸送するための自衛隊機を派遣したほか、国際機関を通じた約600万ドルの緊急無償資金協力、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた緊急援助物資や草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じた緊急支援セットの供与等を行った。
政治面では、7月31日、国防・治安評議会は4年半続いた緊急事態宣言の解除を発表し、新たにミン・アウン・フライン国軍司令官を委員長とする国家治安平和委員会を組織した。また、連邦選挙管理委員会は、12月28日から2026年1月にかけて総選挙を実施すると発表し、候補者名簿の精査など総選挙に向けた準備を着々と進めている。こうした動きを受けて、日本政府は、総選挙は民主的な政治体制の回復に向けたプロセスとして位置付けられるべきであり、政治的進展がないまま総選挙が実施されるような事態となれば平和的解決がより困難になることを懸念し、全ての当事者が平和的な問題解決に向けて真摯に努力していくことを切望するとの外務大臣談話を発表した。
また、日本政府はクーデター以降、ミャンマーの事態打開のためにはASEANが一致した対応を取ることが重要との考えの下、人道支援を含む「五つのコンセンサス」(28)の実施を始め、ASEAN一体の取組を最大限後押するとともに、国際場裡においても、ミャンマーに関する様々な議論に積極的に参加し、ミャンマー人権状況に関する国連人権理事会決議(4月)に共同提案国入りするなど、国際社会と連携して取り組んでいる。
人道状況の深刻な悪化は喫緊の課題であり、日本政府は、苦難に直面するミャンマー国民を支えるとの一貫した方針の下、国際機関やNGOなどを経由した人道支援や国民生活の向上のための支援をミャンマーの人々に直接裨(ひ)益する形で積極的に実施してきており、これまでに合計約2億ドル以上の人道支援を実施している(2025年12月末時点)。
(11)ラオス
ラオスは、中国、ミャンマー、タイ、カンボジア及びベトナムの5か国と国境を接するメコン連結性の要となる内陸国である。ソーンサイ首相は、内政面では、物価高騰や対外債務問題を含む経済・財政運営の課題に取り組んでおり、6月開催の第9回国民議会第9回通常会期において、インフレ率が前年の24%台から11%台まで大幅に改善したと報告した。日本との関係では、2025年は外交関係樹立70周年であり、年間を通じて要人の相互訪問などが行われた。1月、ソーンサイ首相が実務訪問賓客として訪日し、石破総理大臣との首脳会談において、両国関係を「包括的戦略的パートナーシップ」へ格上げすることで一致するとともに、共同声明への署名が行われた。3月5日の外交関係樹立記念日には、両国首脳間のメッセージ交換が行われた。
5月にはトンルン国家主席が来日し、石破総理大臣と首脳会談を行い、同パートナーシップの下で、今後の二国関係を更に発展させていくための意見交換を行った。7月には、マレーシアでのASEAN関連外相会議の機会に、岩屋外務大臣とトンサワン外相が懇談したほか、カムチェーン首相府付相が大阪・関西万博のラオス・ナショナルデー(7月9日)関連行事出席のため訪日した。9月にはトゥンマリー・ラオス・日本友好議員連盟会長一行が衆議院招待により訪日した。そのほか、高嶋ちさ子「日・ラオス外交関係樹立70周年」親善大使のラオス訪問を含め、両国の政府・民間レベルで各種の文化・人的交流事業が年間を通じて実施された。
東ティモールは、インドネシアとオーストラリアの間に位置し、人口は134万人、面積は岩手県とほぼ同じ大きさの島嶼(しょ)国です。日本からの直行便がないためとても遠く感じるかもしれませんが、実は日本との時差がない数少ない国の一つです。また、東ティモールの現地語での国名「Timor Lorosa’e」は、日本と同じ「日出ずる国」という意味です。
2002年に独立した東ティモールは、21世紀最初の独立国です。日本は、東ティモールの安定と発展がアジア太平洋地域の平和に重要であるとの観点から、同国の国造りを一貫して支援し、インフラ整備や産業多様化の促進に向けて二人三脚で取り組んできました。
1999年、第1回東ティモール支援国会合を日本で開催し、独立直前の2002年には、小泉総理大臣が同国を訪問し、シャナナ・グスマン大統領当選者と会談を行ったほか、国連平和維持活動(PKO)として陸上自衛隊の部隊を派遣しました。国造りが軌道に乗った後も、政府開発援助(ODA)を通じた支援を継続し、2018年には、独立行政法人国際協力機構(JICA)が首都ディリに「HINODE Bridge(Ponte HINODE)」という橋を建設したことで、市内の交通事情が大幅に改善しました。
日本と東ティモールの二国間関係は近年急速に深化しています。
経済分野では、対東ティモール投資に関心を示す日本企業が増加しており、造船業や太陽光発電プラントなどにおける具体的な動きにつながってきています。人的交流でも、2023年に高知県が全国で初めて技能実習生を受け入れ、その後全国各地で東ティモール人が活躍しています。安全保障分野でも、東ティモール国軍に対する日米豪ニュージーランドの合同能力構築支援事業「ハリィ・ハムトゥック」への自衛隊の参加等を通じて、防衛協力が進んでいます。
2023年にグスマン首相が訪日した際には、こうした協力強化を受け、岸田総理大臣との間で両国関係を「包括的パートナーシップ」に格上げしました。2025年のラモス=ホルタ大統領の訪日に際しては、石破総理大臣との間で、東ティモール向けでは初となる、政府安全保障能力強化支援(OSA)の実施について両国で一致するなど、協力の裾野が広がっています。
そして、2025年10月、東ティモールはASEANに正式加盟しました。日本も従来、同国の取組を後押ししてきました。2002年の独立以降、平和構築、基礎インフラや国家制度の整備、経済発展といった課題に直面してきた同国にとって、この加盟は国際社会への更なる参画に向けた大きな前進であり、地域の平和と繁栄に貢献する意思の表れでもあります。
国際社会が複合的な危機に直面する中、民主主義や人権といった共通の価値を共有し、インド洋と西太平洋を結ぶ重要なシーレーンに位置する東ティモールとの関係はより一層重要になっています。東ティモールがASEANの一員として、日本と共に法の支配に基づく国際秩序の維持・強化に向けて取り組んでいくことは、地域の平和と安定を実現するための重要なマイルストーンとなるでしょう。

(8月26日、東京 写真提供:首相官邸ホームページ)

2025年、日本とラオスは外交関係樹立70周年を迎えました。1月のソーンサイ首相訪日時には、両国関係を「包括的・戦略的パートナーシップ」へ格上げし、5月のトンルン国家主席訪日時の日・ラオス首脳会談では、協力関係の更なる強化を確認しました。さらに、11月17日から22日にかけて、愛子内親王殿下がラオスを公式に御訪問になりました。愛子内親王殿下は、トンルン国家主席、パーニー国家副主席及びソーンサイ首相を始めとする政府要人による温かい歓迎のもと、晩餐(さん)会において日・ラオス関係に関するおことばを述べられ、また、各施設への御訪問を通じて若い世代との交流を深められました。2012年の皇太子殿下(現在の天皇陛下)御訪問以来の皇室による御訪問であり、次世代に向けて発展していく両国の絆(きずな)を内外に示す機会となりました。

(11月18日、ラオス・ビエンチャン 写真提供:宮内庁)
こうした要人往来のほか、年間を通じ、両国において多彩な記念イベントや交流行事などが催されました。
その一環として、外務省は、バイオリニスト高嶋ちさ子氏を「日・ラオス外交関係樹立70周年」親善大使に委嘱し、同氏は現地の小学生に音楽指導を行うなど、文化・教育分野の草の根交流を牽(けん)引しました。また、香川県のデザイナーである出(いで)淵光一氏が、両国を象徴するゾウと桜をモチーフとしたロゴマークを制作し、様々な広報に活用されました。
両国の友好関係の基礎には、長年にわたる人的交流と協力の積み重ねがあります。1965年、独立行政法人国際協力機構(JICA)海外協力隊が世界で初めてラオスに派遣され、以後、約1,100人が教育、保健、農業など幅広い分野で同国の発展に貢献してきました。また、現地日本語教師の助手や日本語学習者の会話の相手などを担う「日本語パートナーズ」を派遣し、ラオスでの日本語教育支援や日本文化紹介などにも寄与しています。また、「京都市動物園におけるゾウの繁殖プロジェクト」で寄贈されたラオスからのゾウや、ラオス・フアパン県に植樹された桜は、友好の象徴として多くの市民に親しまれています。さらに、日本政府奨学金によるラオス人元留学生は1,300人規模に達し、政官財学の幅広い分野で活躍しています。
経済社会基盤の整備でも、日本は最大級の支援国として「質の高いODA」を実施し、首都ビエンチャンの幹線道路や国際空港、南部地方のパクセー橋、水力発電所の改修など、周辺国との連結性強化に貢献してきました。また、ガバナンス面ではラオス初の民法典制定・普及等の法制度整備支援も着実に実施しています。近年はスポーツ協力も拡大し、首都中心部のチャオ・アヌウォン・スタジアム改築計画が進展しています。観光面では、北部の古都ルアンパバーンと岐阜県高山市の協力交流を始め各地で交流の裾野が広がっています。
このようにして深められた相互の信頼と友情を基盤に、日本政府は、あらゆる分野で開花している両国関係を今後更に発展させ、両国民の利益及び地域の平和と繁栄に貢献していきます。
(27) BRICS:ブラジル、ロシア、インド、中国及び南アフリカなどの国々から構成されるグループを指す。2006年にブラジル、ロシア、インド、中国で初の外相会合、2009年に初の首脳会合を開催した。2011年に南アフリカが参加したことで、名称が現在のBRICSになった。2024年にエジプト、エチオピア、アラブ首長国連邦、イラン、2025年にはインドネシアが加盟。また、2024年10月の首脳会合では「BRICSパートナー国」という新たなカテゴリーが創設され、2025年1月にベラルーシ、ボリビア、カザフスタン、キューバ、マレーシア、タイ、ウガンダ、ウズベキスタン及びナイジェリア、同年6月にはベトナムのパートナー国入りを公表した。
(28) 2021年4月24日に開催されたASEANリーダーズ・ミーティングで発表されたもの。(1)暴力の即時停止、(2)全ての当事者による建設的対話の開始、(3)ASEAN議長特使の対話プロセスへの仲介、(4)ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)を通じた人道支援の提供、(5)ASEAN議長特使のミャンマー訪問及び全ての当事者との会合の実施、の五つの内容から成る。
