3 各国との連携・協力
2024年においても、日本は、FOIPの実現に向け外交活動を積極的に推進した。
(1)米国
4月、米国を公式訪問した岸田総理大臣は、ワシントンD.C.においてバイデン大統領と日米首脳会談を行い、会談の成果として発出された日米共同声明において、「自由で開かれたインド太平洋及び世界」を実現するために、日米両国が共に、そして他のパートナーと共に、絶え間ない努力を続けることを誓うことが確認された。また、米国連邦議会上下両院合同会議における演説においても、岸田総理大臣は同志国と共にFOIPの実現を目指すと述べた。
9月に米国・デラウェア州で行われた日米首脳会談においても、岸田総理大臣から、日米両国がG7、日米豪印、日米韓、日米比などといった同志国との連携を通じて、FOIPを更に発展させていくとともに、こうした協力をグローバル・サウスとの間でも進めていく必要性を強調した。
また、石破総理大臣は、10月の電話会談に続き、11月にはペルー・リマにおいてバイデン大統領と対面での会談を行い、日米間で引き続き緊密に連携していくことを確認した。さらに2月にはワシントンD.C.においてトランプ大統領と日米首脳会談を行い、FOIPの実現に向けて緊密に協力することで一致した。
日米首脳会談以外の場においても、累次の日米外相会談、7月の日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)など様々な機会を通じ、日米両国がインド太平洋地域で引き続き緊密に連携していくことを確認してきている。
(2)オーストラリア・ニュージーランド
オーストラリアとは、9月の第11回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)において、インド太平洋地域の安全保障環境について率直な意見交換を行い、戦略認識を深く共有していることを確認した。その上で、FOIPの実現に向けて先導的役割を果たしていくことで一致した。また、10月のASEAN関連首脳会合に際して石破総理大臣はアルバニージー首相と首脳会談を実施し、日豪間の「特別な戦略的パートナーシップ」の下、FOIPの実現に向けて、共に取り組んでいくことを確認した。
ニュージーランドとの間では、6月のラクソン首相の訪日の際に実施した首脳会談において、インド太平洋地域の戦略環境が厳しさを増す中、FOIPの実現に向け協力を一層強化することで一致した。
(3)東南アジア諸国連合(ASEAN)
日本とASEANの間では、2020年に「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)協力についての第23回日ASEAN首脳会議共同声明」を発出し、AOIPとFOIPが本質的な原則を共有していることを確認した。また、2023年のFOIPのための新たなプラン発表時には、岸田総理大臣から、AOIPとFOIPが共鳴するビジョンであることを強調し、日・ASEAN統合基金に新たに1億ドルを拠出することを発表した。さらに同年9月のASEAN関連首脳会議では、ハード・ソフト両面における連結性の一層の強化に向けた「日・ASEAN包括的連結性イニシアティブ」を発表した。同年12月の日・ASEAN特別首脳会議では、新たな協力のビジョンを示す共同ビジョン・ステートメントと幅広い具体的協力の実施計画を採択した。10月の日・ASEAN首脳会議においては、この共同ビジョン・ステートメントに沿って、協力が着実に進展していることを確認した。ASEAN各国は、これを歓迎するとともに、FOIPがAOIPと相互補完的であるとの評価や、更なる協力の進展への期待が表明された。また、同月の東アジア首脳会議(EAS)において、石破総理大臣は、日本はAOIPを一貫して支持し、AOIPの推進と主流化を積極的に後押ししていくと述べるとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、ASEAN主導の枠組みを通じた協力を強化していくとの決意を示した。
(4)カナダ
6月、9月及び11月に実施した日加首脳会談、1月の上川外務大臣のモントリオール訪問、7月のジョリー外相訪日や11月のG7外相会合の際に実施した日加外相会談において、2022年に両国で発表した「FOIPに資する日加アクションプラン」を着実に実施し、FOIP実現に向けて引き続き日加間で連携することを確認した。
日加共同訓練(KAEDEX24)や違法・無報告・無規制(IUU)(2)漁業監視活動における協力を始め、同アクションプランに基づく安全保障・法の支配などの分野における協力が着実に進展した。
(5)インド
8月にニューデリーで実施された第3回日印外務・防衛閣僚会合(「2+2」)で、両国はFOIPに向けた共通の戦略的目標を強調した。また、同月の第17回日印外相間戦略対話においても、上川外務大臣から日印両国がインド太平洋地域の平和と繁栄に大きな責任を負っており、両国で連携してその責任を果たしていくため、二国間の協力を深化していきたいと述べた。さらに、両国は10月の日印首脳会談及び11月の日印外相会談でも連携を確認した。
(6)日米豪印
日米豪印4か国は、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を強化していくとの目標の下、FOIPの実現に向けて、重要・新興技術、質の高いインフラ、海洋安全保障を始め様々な分野で実践的な協力を進め、より多くの国々へ連携を広げていく重要性を共有している。また、4か国は、AOIPを全面的に支持しており、FOIPに関する欧州を始めとする各国の前向きな取組を歓迎している。7月、日本で開催された日米豪印外相会合において、4か国の外相はFOIPの実現に向けた確固たるコミットメントを改めて確認した。また、9月に米国で行われた日米豪印首脳会合において、FOIPという共通のビジョンへの強固なコミットメントを国際社会に示し続けていくことがますます重要であると改めて確認し、ウィルミントン宣言を発出した。2025年1月には、米国新政権発足翌日に日米豪印外相会合が開催され、FOIPの強化に向けた共通のコミットメントを再確認する共同声明を発出した。
(7)韓国
日韓両国は5月の首脳会談及び7月の外相会談において、FOIPを維持・強化する重要性について確認し、グローバルな課題に効果的に対処するためにも、日韓の連携が一層重要であることを確認した。
(8)日米韓
日米韓3か国の連携は北朝鮮への対応を超えて地域の平和と安定にとっても不可欠であるとの認識の下、3か国の間では、首脳会合、外相会合、次官協議などの開催を通じ、重層的かつ安定的に協力を進めてきている。こうした中で、FOIPの実現に向けても、3か国間の連携を進めている。また、2023年8月に米国のキャンプ・デービッドにおいて開催された日米韓首脳会合から1年の間に、幅広い分野でグローバルに日米韓連携が進展していることを累次の機会に確認している。9月の日米韓外相会合においては、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序が試練を迎える中、日米韓で一層緊密に連携していくことで一致したほか、6月及び11月には複数領域における日米韓共同訓練「フリーダム・エッジ」を実施し、朝鮮半島を含むインド太平洋の平和と安定のために、複数領域における日米韓の相互運用性を促進し、自由を守るという日米韓の防衛態勢と強固な意思を引き続き示した。
さらに、11月にはペルー・リマにおいて日米韓首脳会合が行われ、日米韓の戦略的連携はこれまでになく重要であり、幅広い分野でグローバルに日米韓協力が拡大してきたことを確認した。その上で、日米韓調整事務局を立ち上げ、これを活用しつつ、引き続き、北朝鮮への対応を含む様々な分野で緊密に連携していくことで一致した。
(9)欧州
ア EU
2月には、柘植芳文(つげよしふみ)外務副大臣がベルギーで実施された「第3回EUインド太平洋閣僚会合」に出席し、ますます不可分となっている欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障を始めとして、インド太平洋と欧州で連関が深まっている様々な分野や課題に欧州とインド太平洋の国々が共に取り組んでいくことの必要性を参加各国との間で共有した。
11月、岩屋外務大臣は、EUのボレル上級代表と第1回日・EU外相戦略対話を実施し、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であることを改めて確認し、自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、日・EU間で緊密に連携していくことを確認した。
イ 英国
8月、英国は環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への加入に関する議定書が12月15日までに発効すると発表した。11月に実施された日英首脳会談において、石破総理大臣とスターマー首相は、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は一体であるとの認識を共有した上で、グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)や、2025年に計画されている英国空母打撃群のインド太平洋への派遣、自衛隊によるアセット防護措置の英国への適用など、FOIPの実現に向け、両国間で意義の高い具体的協力が進んでいることを歓迎し、これを力強く推進していくことで一致した。また、同会談で、日英経済版2+2閣僚会合(経済版2+2)の立ち上げを発表した。さらに、同月、GCAPに関する日英伊首脳会合において、3か国の首脳は、3か国で緊密に連携して開発完了に向け引き続き協力していくことで一致した。
ウ フランス
5月、岸田総理大臣は、マクロン大統領との間で日仏首脳昼食会を実施し、自衛隊と仏軍の相互運用性を向上させ、両国間の安全保障・防衛協力を更に促進させる枠組みである、日仏部隊間協力円滑化協定(RAA)の交渉開始に合意したほか、「重要鉱物分野の協力に関する日仏共同声明」の署名を歓迎し、経済安全保障分野において更に連携を強化していくことで一致した。10月、岩屋外務大臣は、バロ欧州・外務相と外相電話会談を、また11月にはイタリアにおいて外相会談を実施した。同会談で、両外相は、日仏協力のロードマップの下、安全保障分野や経済・科学技術分野での協力を進めていくことで一致するとともに、テロ対策分野での協力推進のため、日仏テロ対策協議を立ち上げることを歓迎した。また、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であるとの認識を共有し、インド太平洋における安全保障情勢や、ウクライナ及び中東情勢に関し、日仏で緊密に連携していくことを確認した。
エ ドイツ
2020年9月に閣議決定した「インド太平洋ガイドライン」に基づき、ドイツ政府が同地域への関与の強化に取り組む中、日独間の安全保障協力は一段と深化した。1月には、日独両国部隊間が共同活動を行う際の燃料などの相互の提供に係る決済手続などを定める日独物品役務相互提供協定(日独ACSA)が両国間で署名され、同協定は7月に発効した。同月には岸田総理大臣が訪独して日独首脳会談を実施し、両首脳は、ドイツがインド太平洋地域への関与を強化している中、近年、両国間で安全保障・防衛協力が進展していることなどを歓迎した。その後、ドイツ政府による「インド太平洋方面派遣2024」の枠内で、7月にユーロファイター戦闘機を含むドイツ空軍が訪日、8月にはフリゲート艦「バーデン=ヴュルテンベルク」及び補給艦「フランクフルト・アム・マイン」が日本に寄港し、いずれの機会にも自衛隊との共同訓練が実施された。
オ イタリア
2月、岸田総理大臣は、メローニ首相との間で日伊首脳会談を実施し、グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)を始めとする防衛・安全保障分野での協力を確認したほか、日英伊による次期戦闘機の共同開発(GCAP)の円滑な進展に向けて、一層努力していく点で一致した。6月、G7プーリアサミットでも日伊首脳間で懇談を行い、両首脳は日伊物品役務相互提供協定(日伊ACSA)の交渉開始を発表した。8月には空母「カヴール」、フリゲート艦「アルピーノ」、哨(しょう)戒艦「モンテクッコリ」で構成される空母打撃群及び空軍機が訪日し、自衛隊との間で共同訓練を実施した。また、同月下旬から9月上旬、「モンテクッコリ」は北朝鮮籍船舶の「瀬取り」(3)を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動を初めて実施した。11月に日伊ACSAへの署名が行われた。さらに、同月、GCAPに関する日英伊首脳会合において、3か国の首脳は、3か国で緊密に連携して開発完了に向け引き続き協力していくことで一致した。
カ オランダ
1月、上川外務大臣は、ブラウンス・スロット外相との日・オランダ外相ワーキング・ランチ、ルッテ首相表敬を通じて、欧州とインド太平洋の安全保障は不可分であるとの認識を共有し、両国の安保・防衛分野を含む両国関係を強化していくことで一致した。5月下旬から6月上旬、フリゲート艦「トロンプ」は北朝鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動を初めて実施し、6月には長崎港に寄港した。7月、岸田総理大臣は、スホーフ首相との間で日・オランダ首脳会談を実施し、6月の「トロンプ」の日本派遣など、オランダのインド太平洋地域への具体的な関与を歓迎した。
(2) IUU:Illegal, Unreported and Unregulated
(3) ここでの「瀬取り」は、2017年9月に採択された国連安保理決議第2375号が国連加盟国に関与などを禁止している、北朝鮮籍船舶に対する又は北朝鮮籍船舶からの洋上での船舶間の物資の積替えのこと