外交青書・白書
第2章 地域別に見た外交

2 カナダ

(1)カナダ情勢

カナダにおいても、ケベック州、オンタリオ州、アルバータ州、ブリティッシュ・コロンビア州などの大都市圏を中心に、新型コロナの感染者が多数発生している(2021年1月末時点でのカナダにおける累積感染者数は約75万人、死者数は約2万人)。

3月には、全ての州・準州で緊急事態宣言が発出されたほか、連邦政府は、国民に対する全世界への不要不急の渡航を制限する渡航情報の発出、原則として外国人の入国拒否、米・カナダ間の不要不急の往来の一時禁止といった諸措置を相次いで打ち出した(いずれの措置も2021年1月末時点で継続中。)。

国内経済は、新型コロナの感染拡大が大きく影響したものの、トルドー政権が給付金や賃金補助、資金繰り支援など国民生活を支える財政支出を相次いで発動したこと、夏場に経済活動が再開したことなどにより、雇用やGDPは比較的早く回復した。一方、9月以降、学校の再開や経済活動の活発化などに伴い再び感染者数が増加したこともあり、成長の鈍化が予想されている(10月末時点でのカナダ中央銀行による2020年の実質GDP成長率はマイナス5.7%)。

外交面では、トルドー政権は、米・カナダ関係、国連、北大西洋条約機構(NATO)、G7、G20、米州機構など、カナダが従来重視していた分野に加え、インド太平洋地域への関与を強めている。特に、国連安保理決議により禁止されている北朝鮮籍船舶の「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動に積極的で、10月には東シナ海を含む日本周辺海域への海軍艦艇の派遣を、11月から12月には航空機による警戒監視活動を再開した。一方、修交50周年を迎えた中国との関係は、2019年に続き低調で、カナダにとって大きな課題となっている。2018年末に発生したファーウェイ社CFO(最高財務責任者)の拘束とその後に発生した中国政府によるカナダ人2人の拘束事案が進展を見なかったこと、中国の新型コロナ対応への不信感、香港情勢の悪化などにより、カナダ国内の中国に対する好感度は大きく後退した。

対外経済関係では、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA4)が7月に発効したほか、11月には、英国のEU離脱の移行期間終了後も、カナダと英国は、カナダEU包括的経済貿易協定(CETA)を暫定的に適用する協定に合意した。

(2)日・カナダ関係

2020年は、新型コロナの感染拡大により、対面によるハイレベルの会談は実現しなかったが、日・カナダ間では首脳電話会談が4回、外相電話会談が2回実施された。2月の日・カナダ外相電話会談では、「ダイヤモンド・プリンセス号」のカナダ人乗客への対応につきシャンパーニュ外相から感謝表明があり、茂木外務大臣との間で、新型コロナへの対応について連携を密にし、協力していくことで一致した。9月の菅総理大臣就任直後に行われたトルドー首相との電話会談では、両国間及び両首脳間の協力を改めて確認した。

経済面では、日・カナダ間で初の経済連携協定となるTPP11協定の発効から2年を迎え、貿易投資関係の更なる深化が期待される。2020年は、新型コロナの影響を受け、4月から5月の対カナダ輸出が大きく落ち込んだが、夏以降は回復傾向にある。また、1次産品を中心とするカナダの対日輸出への影響は小幅なものにとどまった。一方、日本とカナダの間の人的往来は新型コロナにより大きな影響を受けており、両国を結ぶ直航便は各航空会社とも減便となった。12月には第30回日・カナダ次官級経済協議を日本側主催によりオンラインで開催し、国際貿易情勢、「自由で開かれたインド太平洋」に向けた両国経済協力及び優先協力分野に関する議論を行った。

4 USMCA:United States-Mexico-Canada Agreement

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