外交青書・白書
巻頭特集

自由で開かれたインド太平洋

Free and Open Indo-Pacific(FOIP)

インド太平洋は、アジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至る広大な地域であり、世界人口の半数を擁する世界の活力の中核です。しかし同時に、インド太平洋は、各国の「力」と「力」が複雑にせめぎ合い、力関係の変化が激しい地域でもあります。また、海賊、テロ、大量破壊兵器の拡散、自然災害、違法操業といった様々な脅威にも直面しています。

インド太平洋地域において、ルールに基づく国際秩序を構築し、自由貿易や航行の自由、法の支配といった、地域の安定と繁栄を実現する上で欠くことのできない原理・原則を定着させていくこと。これが、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という考えの要諦であり、日本は、志を共にする国と連携しつつ、この考えの下での取組を力強く主導しています。

インド洋、太平洋

「太平洋からインド洋に至る広大な海。古来この地域の人々は、広く自由な海を舞台に豊かさと繁栄を享受してきました。航行の自由、法の支配はその礎であります。この海を将来にわたって、全ての人に分け隔てなく平和と繁栄をもたらす公共財としなければなりません。」

第百九十六回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説 2018年1月(写真提供:内閣広報室)
第百九十六回国会における
安倍内閣総理大臣施政方針演説
2018年1月(写真提供:内閣広報室)

「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に向けた日本の考え方

世界のパワーバランスが変化し、複雑で不確実な世界へ

●今後も人々が広く安定と繁栄を享受するには、「力」による主張ではなく、国際社会のルールを維持・強化して、秩序を確保することが必要

●様々な変化に対応し、時代の要請に即した新たなルール作りが必要

インド太平洋の重要性=インド太平洋を「国際公共財」に

●太平洋とインド洋の交わりによるダイナミズムは世界経済の成長エンジン

●インド太平洋地域のルールに基づく秩序の維持・強化が国際社会全体に貢献

FOIPは、開かれた包摂的な構想

●新たな機構の創設や既存機関との競合を意図しない

●ルールに基づく国際秩序の維持・強化は一国で実現できるものではない。いかなる国も排除せず、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」についてのビジョンを共有するパートナーと広く協力

日本の具体的な取組例

●海洋秩序に関する政策発信や海洋法の知見を国際社会と共有

●自由で公正な経済圏を広げるためのルール作り(TPP11協定、日EU・EPA、日米貿易協定、日米デジタル貿易協定など)

●インド洋と太平洋にまたがる連結性の実現(「質の高いインフラ投資に関するG20原則」、東南アジアの東西経済回廊や南部経済回廊の開発など)

●ガバナンス強化(財政政策・公的債務管理の能力構築支援など)

●海洋安全保障及び海上安全の確保(東南アジア沿岸国への海上法執行にかかる機材供与、人材育成など)

海洋秩序

第1回東京グローバル・ダイアログにおける政策スピーチで、海洋のルールを守り、発展させていく重要性について語る茂木外務大臣|2019年12月、東京
第1回東京グローバル・ダイアログにおける政策スピーチで、海洋のルールを守り、発展させていく重要性について語る茂木外務大臣|2019年12月、東京

自由で公正な経済圏を広げるためのルール作り

環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)|第1回TPP委員会 2019年1月、東京(写真提供:内閣広報室)
環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)|第1回TPP委員会 2019年1月、東京(写真提供:内閣広報室)
日米貿易協定・日米デジタル貿易協定に関する共同声明署名 2019年9月、米国(写真提供:内閣広報室)
日米貿易協定・日米デジタル貿易協定に関する共同声明署名
2019年9月、米国(写真提供:内閣広報室)

インド洋と太平洋にまたがる連結性の実現

ベトナム:南北高速道路(写真提供:JICA)
ベトナム:南北高速道路(写真提供:JICA)
カンボジア:シハヌークビル港(写真提供:JICA)
カンボジア:シハヌークビル港
(写真提供:JICA)

主な国・地域のFOIPに関連する取組・協力の現状

各国のFOIPに関連する取組と連携して、法の支配などの基本原則を共有しつつ、各々のビジョンに基づいて関係各国の当事者意識(sense of ownership)を喚起し、このビジョンを広げていく。

英国

①海洋安保、②質の高いインフラ、③5G等のサイバーセキュリティなどでの協力を強化(2019年1月 日英首脳会談)


フランス

「フランスとインド太平洋地域における安全保障」(2018年6月公表、2019年5月改訂)

①航行の自由・海洋安全保障、②気候変動・環境・生物多様性、③質の高いインフラの三本柱を中心に協力を具体化(2019年6月 日仏首脳会談)


ドイツ

●FOIPの実現に向けた協力を確認(2019年2月 日独首脳会談)


イタリア

●FOIPの維持・強化のため具体的協力案件の形成に向けた連携 (2019年4月 日伊首脳会談)


欧州連合(EU)

欧州・アジア連結性戦略(2018年9月)

●欧州・アジア太平洋間の連結性に関し、協力を確認 (2019年4月 日EU定期首脳協議)

●「欧州連結性フォーラム」に安倍総理大臣が出席、「持続可能な連結性及び質の高いインフラに関する日EUパートナーシップ」文書に署名(2019年9月)


太平洋島嶼(とうしょ)国

●日本の「自由で開かれたインド太平洋戦略」による貢献を歓迎 (2018年5月 PALM8

*第8回太平洋・島サミット


東南アジア諸国連合(ASEAN)

「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」を公表(2019年6月)

●ルールに基づく自由で開かれたインド太平洋地域を推進するとの見解を共有。日本のAOIPへの明確な支持を歓迎し、AOIPの重要分野における日ASEAN協力を奨励(2019年11月 日ASEAN首脳会議議長声明)


インド

「アクト・イースト」政策

「インド太平洋における日印開発協力」を公表(2018年10月 日印首脳会談)

「インド太平洋海洋イニシアティブ」を公表(2019年11月)


オーストラリア

●FOIPのビジョンを共有し、地域の安定と繁栄のために連携 (2018年11月 日豪首脳会談)

「自由、開放的、包摂的、繁栄するインド太平洋」(2019年6月 モリソン首相の外交政策スピーチ)。また、太平洋島嶼国地域について、「ステップ・アップ」政策を推進


カナダ

●FOIPのビジョンの下、戦略的パートナーシップを一層強化(2019年8月 日・カナダ首脳会談)


米国

FOIPの維持・強化の具体的協力を公表(2018年9月 日米首脳会談、2018年11月 ペンス副大統領訪日、2019年5月 日米首脳会談)

「インド太平洋戦略レポート」(2019年6月)、「自由で開かれたインド太平洋-共通のビジョンの推進-」(2019年11月)を公表


メコン諸国

「FOIPを実現するための我が国の政策との相乗効果が期待される日メコン協力」を公表(2018年10月 日・メコン首脳会議)

●メコン各国は、「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」に沿ったメコン各国による取組を支援するとの日本のコミットメントを歓迎(2019年11月 日・メコン首脳会議共同声明)


ニュージーランド

●太平洋島嶼国地域について、ニュージーランドの太平洋政策「パシフィック・リセット」と連携し、FOIPを実現するために両国の連携を具体化(2019年9月 日・ニュージーランド首脳会談)

赤字:各国・地域の取組例 青字:各国・地域と日本の協力例

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