3 地方自治体などとの連携
外務省としても、内閣の最重要課題の一つである地方創生に積極的に取り組み、地方との連携による総合的な外交力を強化するため、地方の活性化に資する施策を展開している。
日本国内では、2015年に開始した外務省の施設である飯倉公館を活用した地方創生支援プロジェクトを佐賀県(2月)、山口県(3月)、福岡県(7月)及び岡山県(8月)との共催で実施した。これは、地方の多様な魅力を内外に広く発信すべく、外務大臣とそれぞれの県知事との共催で各国駐日大使、各国商工関係者等を飯倉公館に招き、セミナーやレセプションを開催するものであり、いずれも約300人の関係者が出席する盛況の中での開催となった。駐日外交団などの参加者から共催自治体に関心が寄せられ、更なる交流・連携促進につながる機会となった。



また、2016年から開始した「地方を世界へ」プロジェクトを2017年も引き続き実施した。これは、外務大臣始め外務省のハイレベルが自ら駐日外交団と共に日本の地方を訪れ、地元の方々と対話を行い、地方の魅力を世界に発信することにより、地方と世界をつなぎ、地域の更なる活性化を目指すものである。岸田外務大臣は、沖縄県(2月)、熊本県・福岡県(3月)、青森県・北海道(4月)、石川県(6月)及び香川県・兵庫県(7月)を訪問した。訪問中、岸田外務大臣は、各国大使らと共に、地元食材をふんだんに使った食事を取りながらの知事・市長らとの意見交換、地域に伝わる伝統技術や最先端技術を誇る地元中小企業の視察、地域の祭りへの参加等を通じて、地方の魅力にじかに触れるとともに、その多様な魅力を内外に広く発信した。



このほか、複数の自治体が駐日外交団等に対し、各地域の観光地の魅力や投資環境の有利さを訴求するプレゼンテーションを行うなど、更なるインバウンド促進の契機とする「地域の魅力発信セミナー」を実施した。同セミナーでは、参加自治体から駐日外交団等に対し、各地域の特産品や観光を紹介するブースも出展され、東京に居ながらにして、地方の魅力を直接体験できる貴重な場であるとして参加外交団等から好評を得た。

また、駐日外交団が参加する「地方視察ツアー」については、秋田県北部(5月)、宮崎県(7月)、群馬県(9月)及び三重県伊勢志摩地域(11月)で実施し、約90人の駐日外交団が各地を訪問した。各国大使を始めとする外交団は、地域が誇る景勝地や地域の文化・産業施設等に直接足を運ぶことで、各地に溢(あふ)れる地域の魅力を堪能した。ツアーをきっかけに参加国との交流・連携が始まった自治体や、参加外交団とのつながりを活用して同地域への来訪者増加を目指す自治体もあり、地方の活性化に資する取組の一つとなっている。




さらに、外務省では自治体に対し、最新の外交政策等に関する説明や意見交換の場を積極的に提供している。その一環として「地方連携フォーラム」を1月に開催し、自治体関係者を中心に約270人が出席した。第1部の外交政策説明会では「最近の日中関係」の講演を実施し、第2部の分科会では「伝産協会(伝統的工芸品産業振興協会)における販路拡大事業の実績と将来展望」、「海外の売り手(BtoB)に選ばれる日本のブランドストーリー及び世界の売り手ネットワークを活(い)かした海外需要発掘・海外販路開拓・訪日外国人誘致の取り組み」、「日本酒を世界酒へ Sakeから観光立国」、「2020年を地域にどう活(い)かすか」のテーマで意見交換を行った。
海外では、東日本大震災後の国際的風評被害対策として、輸入規制及び渡航制限の撤廃・緩和の働きかけと併せ、地方創生の一環として地方の魅力発信、県産品の輸出促進、観光促進等を支援する総合的なPR事業である「地域の魅力海外発信支援事業」を、2月に北京で、また、3月に台北(公益財団法人日本台湾交流協会主催)でそれぞれ実施した。2月に北京で開催されたPRイベントでは、元サッカー日本代表の中田英寿氏がスペシャルゲストとして出席する中、野上浩太郎内閣官房副長官がオープニングセレモニーで挨拶を行い、宮城県、福島県等16自治体が参加し、2日間で約1万5,000人が来場した。また台北で開催されたPRイベントでは、あかま総務省副大臣がオープニングセレモニーで挨拶を行い、福島県、千葉県等20自治体が参加し、2日間で約8,400人が来場した。

また、在外公館施設を活用して自治体が地方の魅力を発信することを通じて、地場産業や地域経済の発展を図るための支援策である「地方の魅力発信プロジェクト」をアジア、北米及び欧州地域で計9件行った。例えばアジアでは、山梨県が、10月に在ベトナム日本国大使館と共催で「やまなし魅力説明会」を開催し、同県の観光資源、県産品のプレゼンテーションを行い、その後の交流会では、ぶどうの試食、ワインの試飲等により山梨の魅力をPRした。

このほか、外務省では様々な取組を通じて日本と海外の間の姉妹都市交流を全面的に支援している。具体的には、在外公館長や館員が海外の姉妹都市提携先を訪問して、国際交流・経済交流関係担当幹部などと意見交換を行ったり、在外公館長の赴任前や一時帰国の際に地方都市を訪問し、姉妹都市交流に関する意見交換や講演を行ったりすることで、地方の国際的取組への支援を行っている。加えて、日本の自治体と姉妹都市提携を希望している海外の都市等がある場合は、都道府県及び政令指定都市等に情報提供するとともに、外務省ホームページの「グローカル外交ネット」で広報するなどの側面支援を行っている。2
また、各地の日本産酒類(日本酒、日本ワイン、焼酎・泡盛等)の海外普及促進の一環として、各在外公館による任国の要人や他国外交団との会食で日本産酒類を提供したり、天皇誕生日祝賀レセプション等の大規模な行事の際に日本酒で乾杯をするなど日本産酒類の積極的なPRを行う等、日本酒を始めとする日本産酒類のプロモーションに積極的に取り組んでいる。
さらに、地方の中小企業支援として、開発途上国の急速な経済開発に伴いニーズが急増している水処理、廃棄物処理、都市交通、公害対策等に対応する優れた知見を蓄積している地方の中小企業に対して、日本の地方自治体と連携してODAを活用した海外展開支援を行い、開発協力を進めている。これは、地元企業の国際展開やグローバル人材育成、日本方式のインフラ輸出にも寄与し、ひいては地域経済・日本経済全体の活性化にもつながっている。
2 2018年2月現在日本との姉妹提携数(都道府県、市区町村含む。)が多い国は、多い順に米国(451件)、中国(363件)、韓国(162件)、オーストラリア(109件)、カナダ(71件)等(一般財団法人自治体国際化協会による集計、同協会ホームページhttp://www.clair.or.jp/j/exchange/shimai/countries/参照)