外交青書・白書
第4章 国民と共にある外交

第2節 海外における日本人への支援

総論
〈海外における危険と日本人の安全〉

海外に渡航する日本人は年間延べ1,621万人(2015年)、海外に在住する日本人は約129万人(2014年10月現在)に上っている。海外に渡航及び在住する日本人の増加に伴い、日本人が海外において事件・事故に巻き込まれたり、テロ、暴動や自然災害などに遭遇する危険性も増している。海外における日本人の生命・身体を保護し、利益を増進することは、外務省の重要な任務の1つである。

2015年は、シリアにおける邦人殺害テロ事件やチュニジアにおける銃撃テロ事件など、日本人が被害に遭うテロ事件が発生し、また、イラクとレバントのイスラム国(ISIL)がその機関誌において、日本人や日本権益を攻撃対象として例示した。さらに、パリにおける同時多発テロ事件が発生するなど、中東・北アフリカのみならず、世界の様々な地域においてもイスラム過激派組織やこれらの主張に影響を受けた者によるテロが発生しており、日本に対するテロの脅威は現実のものとなっている。

こうした状況の下、政府として海外における日本人や日本企業等の安全確保に万全を期すことは、極めて重要な課題である。5月、シリアにおける邦人殺害テロ事件等を踏まえ、「在外邦人の安全対策強化に係る検討チーム」が「提言」を公表した。同提言では、今後の安全対策に関し、①日本人がテロに巻き込まれるのみならずテロの標的とされ得る、②海外に在住する在留邦人のみならず旅行者もテロの被害に遭う可能性がある及び③中東・北アフリカのみならず先進国を含む世界各地でテロが起こり得る、といった基本認識が示された。こうした認識の下、体制整備、日本人学校等の安全対策、情報収集と発信などの柱を設け、安全対策強化に取り組んでいる。

またその一環として、2014年7月1日から運用を開始した外務省海外旅行登録「たびレジ」への登録を呼びかけている。「たびレジ」は、在留届提出義務の対象とされていない海外滞在期間が3か月未満の短期渡航者(海外旅行者・出張者等)が旅行日程・滞在先・連絡先などを登録することにより、滞在先の最新の海外安全情報を日本語で受け取れるようになり、また緊急事態発生時の日本人の安否確認にも活用されるため、日本人が安全に海外渡航を行うための重要な手段の1つとなっている。

2015年は、西アフリカのギニア、リベリア及びシエラレオネでエボラ出血熱流行の終息が宣言されたが、中東地域では引き続き中東呼吸器症候群(MERS)が発生し、中南米地域を中心にジカウィルス感染症が流行している。また、同年4月のネパール大地震など、大規模自然災害も発生したほか、一般に海外の治安は日本と比較して必ずしも良いとはいえず、盗難など各種犯罪や何らかのトラブルに巻き込まれる可能性があり、海外に渡航・滞在するに当たっては、事前の情報収集や安全対策を講じるなど、注意が必要である。

〈領事サービスの円滑な実施〉

そのほか、外務省は、海外における日本人の生活を支えるべく、旅券(パスポート)や各種証明の発給、戸籍・国籍関係届出の受理、在外選挙の実施等を通じ、日本人の安全の保護や利益の増進のため取り組んでいる。

また、外務省は、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)上の「中央当局」として、国境を越えて不法に連れ去られた子の迅速な返還及び国境を越えた親子間の面会交流の実現に向けた支援を行っている。

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