日本を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しています。北朝鮮は核・ミサイル開発を進め、核実験を実施しました。また、中国公船による度重なる領海侵入、中国政府航空機による領空侵犯、中国海軍艦艇による火器管制レーダーの照射事案などの事態も発生しています。また、アルジェリアにおけるテロ事件のように、海外において日本人や日本企業が脅威に直面する事案も生じています。
私は外務大臣就任以来、こうした日本を取り巻く危機の深刻さを実感しています。日本と世界の平和と安定を脅かす危機や脅威から、日本を守り、平和と繁栄を確保するための外交を推し進めていきたいと考えています。
このため、私は、3つの柱、すなわち日米同盟の強化、近隣諸国との協力関係の推進、日本経済再生に資する経済外交の強化を軸に、大局的な観点から全力で外交を推進しています。
第一の柱は、日本の外交・安全保障の基軸である日米同盟の強化です。先般の安倍晋三総理大臣の訪米で、日米同盟の強い絆(きずな)を内外に示すとともに、世界の平和と安定のため、日米両国が手を携えて協力していくことを鮮明にすることができました。
第二の柱は、近隣諸国との協力関係の推進です。日本の国益を守るためには、アジア太平洋地域の平和と安定が不可欠です。中国、韓国、ロシア、ASEAN諸国といった近隣主要国との関係を強化し、信頼関係を構築・強化することは、地域の平和と安定の基礎となるものです。もちろん、重要性を増しているオーストラリア、インドとの連携・協力も重要ですし、その他の地域の諸国との関係の強化も進めていく考えです。
第三の柱は、経済外交の強化です。世界経済のグローバル化が加速する中で日本の繁栄を確保するためには、日本経済再生に資する経済外交を強化していく必要があります。自由貿易の推進は、日本の経済外交の柱であり、アジア太平洋地域や欧州等との間で、高いレベルの経済連携を戦略的に推進する考えです。また、TPP協定については、安倍総理大臣が交渉参加を表明されたことを受け、可能な限り早期に交渉に参加した上で、強い交渉力を持って、国益を最大限に実現するよう全力を尽くす考えです。
アルジェリアでのテロ事件では、国境を越えて世界の国々に影響を与える地球規模の課題はすなわち日本の課題でもあることが改めて認識されました。テロ対策、核軍縮・不拡散、気候変動問題、国際的な平和の維持・構築等解決すべき地球規模の課題は数多くあります。
こうした山積する外交課題に取り組むためには、国民の皆様一人一人の御理解と御協力が不可欠です。近年の情報技術の飛躍的な発達や民主主義の発展に伴い、各国の世論が外交政策に与える影響もますます高まっています。外交政策を効果的に実施するためには、政府のみならず、各国の国民への直接的な情報発信や国民レベルでの交流の促進を通じて、日本への関心や親近感を高め、良好な対日イメージの形成に努めることも欠かせません。
平成25年版外交青書(外交青書2013)は、第1章で2012年の国際情勢と日本外交の展開を振り返り、第2章では、地域別に見た外交、第3章では、分野別に見た外交について、それぞれ2012年の重要な出来事を記述しました。また、第4章の国民と共にある外交では、世界とのつながりを深める日本社会や日本人とそれを支援する外務省の取組、日本の立場や考え方に関する機動的かつ効果的な情報発信の体制強化や外交実施体制の強化について説明しています。
ここに刊行いたします外交青書が、国民の皆様にとって国際情勢と日本外交の直近の動きを知るための一助となるとともに、国民全体で推進する力強い外交への手がかりとなることを期待いたします。