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平成24年版外交青書(外交青書2012)の刊行に当たって

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、被災者の方々に計り知れない痛みを与えたことを始め、日本全体に大きな爪あとを残しました。しかし、震災の中での人々の振る舞いと、世界中が差し伸べた支援は、日本の強さと、これまで日本が培ってきた世界との絆(きずな)を改めて示しました。日本は、自らに自信を持って、国際社会と共に国際社会の様々な課題の解決に一層積極的に取り組んでいかなければなりません。

私は昨年9月の外務大臣就任以来、日本の国益を最大化することを目指し、着実な成果を目指す結果重視の「実のある外交」を全力で進めてきました。日本が国益を最大化するには、自らが位置するアジア太平洋地域にあるリスクを最小化して、成長の機会を最大化することが重要です。そのためには、日本自身による安全保障面での努力はもとより、この地域に民主主義的な価値に支えられた豊かで安定した秩序を作り、地域諸国との共生の中で日本の再生を図る必要があります。さらに、国際社会では、新興国の台頭、情報通信技術の革命的な進歩、欧州の経済危機など、多くの新たな事態が発生しています。国際社会が変動する今、日本の繁栄に不可欠な世界の安定を実現するためにも、世界が示した連帯と期待に応えるためにも、内向き傾向を脱し、ピンチをチャンスに転じる「逆転現象」の考え方で、世界に打って出ることが必要なのです。

このような考えの下、これまで、アジア太平洋各国の要人との意見交換を通じ、日米同盟の深化・発展等、各国との協力関係の強化に努めてきました。また、世界の様々な課題に取り組むため、14年間で半減した政府開発援助(ODA)予算の反転の端緒を開くとともに、南スーダンへの自衛隊部隊の派遣による人的貢献、防衛装備品等の海外移転に関する基準の策定、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉参加に向けた関係国との協議の開始などを、一つひとつ着実に進めてきました。

外交は国の総力を挙げて進めていくものです。政府、地方自治体、非政府組織(NGO)、中小企業、個人など、様々な主体が協力・連携して相乗効果を生み出していく「フルキャスト・ディプロマシー」を進めることによって、日本の強みが一層発揮されるのです。そのためには、国民の皆様に、政府の取組を理解していただくことが非常に重要です。日本ならではの構想力も、全員参加型の外交を進めることでより良く発揮することが可能になります。

この度刊行いたします平成24年版外交青書(外交青書2012)は、2011年の国際情勢とその意義、その中での日本外交の取組を、国民の皆様に分かりやすく説明することを目的としています。この外交青書が、過去の出来事を記録するだけでなく、日本がこの先進むべき道を考えるための足がかりになることで、国民の皆様に幅広く支えられた力強い外交の実現につながることを期待します。

 

平成24年4月

外務大臣 玄葉 光一郎
外務大臣 玄葉 光一郎
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