目次 > 外交青書2011(HTML)目次 > 平成23年版外交青書(外交青書2011)の刊行に当たって

平成23年版外交青書(外交青書2011)の刊行に当たって

私は、2011年3月9日、外務大臣に就任しました。前原外務大臣の下、外務副大臣として外交に取り組んだ経験を生かし、政権交代後、岡田外務大臣、前原外務大臣が推進してきた日本外交を、しっかりと軌道に乗せ、日本の国益を追求していく考えです。去る3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により、日本は、戦後最大の国家的危機に直面しています。日本がこれからの困難な時期を乗り越え、復活を果たすためにも、外交に全力で取り組む決意です。

今日の国際社会は、大きな変化に直面しています。こうした国際情勢の下で、日本が引き続き世界の平和と繁栄のための役割を果たしていくには、国民一人ひとりの力が源泉となるのは言うまでもありません。主権者である国民に対する説明責任を果たし、国民が外交に関して判断するのに必要な情報を入手する際の一助とするため、この度、平成23年版外交青書(外交青書2011)を刊行し、2010年の日本を取り巻く国際情勢や日本外交の軌跡について、国民の皆様に分かりやすく説明したいと思います。

日本及び日本国民の安全と繁栄を確保することは、政府の最大の責務です。引き続き、国際社会では、環境問題、テロ、貧困、感染症などの問題が山積しており、日本を取り巻く安全保障環境も厳しさを増しています。

日米同盟は、日本の外交・安全保障の基軸であり、日本及び日本国民の安全と繁栄に不可欠な役割を果たしているのみならず、アジア太平洋地域、更には世界の安定と繁栄のための共有財産です。日米同盟を、21世紀にふさわしい形で、更に深化・発展させていく考えです。

同時に、強固な日米同盟を基軸として、中国、韓国、ロシアをはじめとする近隣諸国との協力関係を推進し、様々な懸案の解決にも力を入れます。北朝鮮とは、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を図る方針です。また、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国や、オーストラリア、インドなどの地域諸国との協力を進めると同時に、アジア太平洋経済協力(APEC)、東アジア首脳会議(EAS)、ASEAN地域フォーラム(ARF)などの地域協力の枠組みを活用し、開かれたネットワークを重層的に発展させていきます。アジア太平洋地域では、新興国の台頭が経済的な好機を生む一方で、海洋権益をめぐる争いが近年顕在化するなど、地域には不安定要因が存在します。この地域の多様性が、対立ではなく活力の源となるよう協調体制を築くことが、この地域の長期的な発展のために是非とも必要です。そのため、地域諸国と協力し、この地域の新たな秩序の形成に取り組みます。

また、2010年11月に閣議決定された「包括的経済連携に関する基本方針」に基づき、市場として成長が期待できるアジア諸国や新興国、欧米諸国、資源国などとの経済関係を深化させ、日本の将来に向けての成長・発展の基礎を再構築することで、「強い経済」を実現することが必要です。この考えの下、自由な貿易体制を推進します。このため、各国との間で、高いレベルの経済連携協定(EPA)・自由貿易協定(FTA)を目指すこととし、そのための適切な国内改革に取り組みます。環太平洋パートナーシップ(TPP)協定についても、関係国との協議など必要な取組を進めます。また、この他、インフラ海外展開、資源外交、観光立国の推進、ジャパン・ブランドの発信にも引き続き取り組み、経済外交を積極的に推進する考えです。

日本が将来にわたって繁栄を享受するには、国際社会の平和と安定が必要です。このような考えに立ち、国際社会が一致して取り組むべき地球規模の課題についても積極的に取り組みます。核軍縮・不拡散については、「核兵器のない世界」の実現に向け、積極的に取り組んでおり、これからも国際社会の議論を主導する考えです。国際平和維持活動への協力は、国際社会の平和と安定への貢献の最も有効な手段の一つであり、今後も積極的な役割をはたします。また、紛争地域などでの平和の定着支援にも力を入れます。気候変動問題をはじめとする環境分野でも、2010年の成果を踏まえ、一層前進するよう、国際社会における議論で主導的な役割を果たします。政府開発援助(ODA)については、ミレニアム開発目標(MDGs)達成への貢献、平和への投資、持続的な経済成長の後押しを引き続き重視し、アフリカやアフガニスタン・パキスタンへの支援も引き続き積極的に行います。

もちろん、日本が積極的な外交を展開するためには、日本国民の安全が前提であることは言うまでもありません。邦人保護は、政府の大変重要な任務の一つであり、今後も様々な国際事案に関し、情報の収集・把握に努めながら、邦人保護に万全を期す考えです。

今年の外交青書では、「要約」で、外交青書全体の概要を簡潔にまとめ、第1章「2010年の国際情勢と日本外交の展開」において、2010年の国際情勢と日本外交の取組を大局的な視点から振り返ります。第2章では「地域別に見た外交」、第3章では「分野別に見た外交」について、2010年の重要な動きをそれぞれ記録しています。また、第4章「国民と共にある外交」では、世界で活躍する日本人や日本企業とそれを支援する外務省の取組、地方自治体との連携や外交実施体制の強化など、総合的な外交力強化に向けた取組について説明しています。

ここに刊行します外交青書が、国際情勢と日本外交について国民の皆様にわかりやすくお伝えする一つの機会となり、国民の理解と信頼に支えられた力強い外交の実現につながることを期待しています。

 

平成23年4月

外務大臣 松本 剛明
外務大臣 松本 剛明
このページのトップへ戻る