(1)9月18日より22日まで、ウィーンにおいてIAEA(国際原子力機関)第50回総会が開催され、我が国政府代表として、松田科学技術政策担当大臣が出席した。松田大臣には、近藤原子力委員長、町原子力委員、中根軍科部長、谷内閣府審議官等が随行した。
(2)松田大臣は、総会初日に一般演説(仮訳・英文)を行ったほか、エルバラダイIAEA事務局長、ボドマン米国エネルギー省長官、ビュガ仏原子力庁長官との会談、及び主要国の代表を招いた昼食会を行い、北朝鮮やイランの核問題、IAEA保障措置、核燃料サイクル等に関する意見交換を行った。
(3)今次総会は、第50回記念総会との位置付けであったこともあり、例年を上回る100ヶ国以上が一般演説を行った。また、「中東におけるIAEA保障措置の適用」及び「イスラエルの核能力及び脅威」に関する決議案の文言調整等に時間を要したため、最終日の午後の会議時間が延長されたが、全般的には円滑に進行した。
(1)北朝鮮
北朝鮮による弾道ミサイルの発射を受けて全会一致で採択された国連安保理決議1695に留意しつつ、北朝鮮に対し、無条件で直ちに六者会合に復帰し、2005年9月19日に発出された共同声明の迅速な実施に向けて作業すること、とりわけ、朝鮮半島の検証可能な非核化という目標に向けた措置として全ての核兵器と既存の核計画を廃棄するとのコミットメントを完全に実施することを強く要求し、北朝鮮の核問題によって提示された挑戦に対処するための国際社会の平和的努力を支持する内容の決議が採択された。
(2)中東
(イ)「中東におけるIAEA保障措置の適用」
すべての関係国に対して中東非核化地帯の実現に向けた措置をとるよう求めるとともに、関係国に対してNPTを含む国際的な不拡散体制の遵守を慫慂する内容の決議。例年コンセンサスで採択されてきたが、本年は投票に付され、賛成多数(我が国を含む)で採択された。
(ロ)「イスラエルの核能力及び脅威」
イスラエルに対しNPTへの加入を求める内容の決議案が提出されたが、投票を回避するために出された「討議の終了」動議が賛成多数(我が国を含む)で可決されたことから、この決議の採択は行われなかった。
(3)保障措置の強化
いまだ包括的保障措置協定及び追加議定書を締結していない国に対して、可及的速やかに署名・締結を行うよう求めること等を内容とする決議が採択された。
(4)核セキュリティ
改正核物質防護条約の未締約国に早期締結を要請するとともに、本年末までの核テロ防止条約の署名と早期発効を要請すること等を内容とする決議が採択された。
(5)原子力安全
原子力、放射線及び輸送の安全と廃棄物の処理に関する国際協力を強化するための方策に関する決議が採択された。
(6)原子力技術
非発電分野の原子力技術応用として、ガン治療、マラリア蚊撲滅、ツェツェ蝿撲滅等の分野における放射線利用の促進、原子力発電分野として、原子力発電の国際協力におけるIAEAの役割の強調、革新的原子力技術開発の促進、原子力発電導入国に対するインフラ整備支援、原子力知識の継承等を謳った決議が採択された。
(7)技術協力
IAEAの技術協力活動を強化する必要性を強調し、すべての加盟国に対して技術協力基金への完全かつ遅滞なく拠出するよう求めるとともに、援助国と被援助国との間のコスト分担も含めた責任の共有を求めること等を内容とする決議が採択された。
(8)予算
総額約278百万ユーロの2007年度通常予算案が承認された(うち保障措置予算は約112百万ユーロ)。
(1)2003年にエルバラダイIAEA事務局長が国際核管理構想(MNA)を提唱して以来、濃縮・再処理等の機微な技術が拡散しないよう核不拡散と原子力の平和利用の両立を目指した様々なイニシアチブが提案されてきたことを受け、本年の総会のマージンで燃料供給保証について集中的に議論するための特別イベントが開催された。
(2)我が国は、この問題に関する国際的な議論に建設的に参加・貢献していく観点から「IAEA核燃料供給登録システム」の構築を提案し、特別イベントにおける議論に寄与した。このシステムは、参加国の多様な実態を反映しつつ、多くの国が一定の条件の下に参加・貢献できるようウラン濃縮に限らずウラン原料、転換・燃料加工、ウラン在庫・備蓄等フロントエンド全体をカバーするもので、市場の攪乱の予防やその対応への一助にもなり得る。
(3)今回のイベントにおける議論を通じて今後の検討項目が明らかになったことから、今後はIAEAの場を中心に日本提案も含めて議論が行われていく予定。具体的には、明年中のIAEA理事会での最終的決定を目指して、IAEA事務局が短期・中長期的段階における検討項目について勧告を提出する予定。