通常兵器の軍縮及び過剰な蓄積禁止に関する我が国の取組

平成29年1月19日

1 背景

 国連軍備登録制度は,1991年に我が国がEC諸国(当時)とも協力しつつ国連総会に提出し,圧倒的多数により採択された「軍備の透明性」に関する決議により設置された制度。

2 目的

 本制度は,湾岸危機においてイラクの過大な武器の蓄積が地域の不安定化につながったという反省も踏まえ,兵器移転を中心とする軍備の透明性・公開性を向上させ,もって各国の信頼醸成,過度の軍備の蓄積の防止等を図ることを目的としている。

3 制度の概要

 本制度は,国連加盟国に対し,毎年,その前年の兵器輸出入に関する情報,具体的には,戦車,戦闘用航空機,軍用艦船等7つのカテゴリーの兵器につきその輸出入数量,輸出入先等のデータを国連に提出するよう要請することを主な内容としている。

4 現状及び我が国の取り組み

  • (1)本制度への参加国は最初の8年は平均90ヶ国程度であったが,2000年以降は100か国を超え,対象となっている兵器の世界の輸出入の殆どが報告されているともいわれている。他方,近年になり登録数は減少傾向にあり,本制度の一層の周知,参加促進が課題となっている。
  • (2)本制度について3年毎に開催される政府専門家会合において,7カテゴリーの定義,対象範囲,運営等の見直しが行われる(我が国は,2013年会合まで毎回参加)。
  • (3)2003年の政府専門家会合では,「大口径火砲システム」の口径を100ミリから75ミリへ引き下げ,「ミサイル及びその発射基」にはサブカテゴリーとして携帯式地対空ミサイルが追加された。さらに,小型武器の輸出入に関する追加情報を加盟国が自主的に提出することが勧告された。2006年に開催された政府専門家会合では,「小型武器」登録のための書式(使用は任意)が作成されたほか,「軍用艦艇」の敷居値が750トンから500トンに引き下げられた。
  • (4)2009年の政府専門家会合では,小型武器を新たなカテゴリーとして報告の対象とする提案が重点的に議論されたものの,合意に至らなかったことから,小型武器のカテゴリー化について各国の見解を求めることが勧告された。2013年の政府専門家会合でも,小型武器を新たなカテゴリーに含めることにつき議論されたが合意に至らなかった。
  • (5)2016年の政府専門家会合では,小型武器に特化した様式を用いた「7プラス1方式」での報告の試行的な実施,カテゴリー4に「無人戦闘機(UCAV)の追加,オンライン登録サイトを全ての国連公用語(現状は英語のみ)に改訂する等の勧告が行われた。

5 我が国の取り組み

  • (1)本制度は,我が国が当時のEC諸国と共同で成立させたものであることから,我が国は当初より本制度普及のため各国政府にデータを提出するよう働きかけを行うとともに,本制度強化のためのワークショップ開催への支援等の貢献を行ってきた。また,本制度の運用状況を検討するため原則3年毎に開催されてきた政府専門家会合にも参加し,制度の改善に貢献してきている。

    • ア 本制度設立10周年にあたり,我が国は,2002年から2003年にかけて開催された「軍備の透明性に関するワークショップ」を,各国と協力して実施。
    • イ 2006年12月,国連主催による「通常兵器の透明性に関する地域ワークショップ」が開催され,東南アジア,南アジアの14か国からの出席者に対し,それまでの政府専門家会合における議論,登録制度の概況に関する説明を実施。
    • ウ 2010年3月,国連とインドネシア政府共催による「通常兵器の透明性に関する東南アジア地域ワークショップ」を支援。ASEAN各国によるプレゼンテーションと活発な質疑応答を実施。
    • エ 2011年,国別報告書のオンラインによる提出及び武器貿易関連の各種情報の検索等を可能とする「国連e-軍備登録制度」の構築に必要な資金を拠出。

【参考】国連軍備登録制度で各国が提出する情報について

1 輸出入に係るデータ

各国は,以下の7カテゴリーの兵器及び小型武器の輸出入データの提出を求められる。カテゴリー毎に,一年間の移転数及びその輸出国又は輸入国を予め定められた様式に従って記録し,国連事務局に提出する。移転には,贈与,貸与,バーター取引,現金払い等も含む。

  • (1)戦車
  • (2)装甲戦闘車両
  • (3)大口径火砲
  • (4)戦闘用航空機
  • (5)攻撃ヘリコプター
  • (6)軍用艦艇
  • (7)ミサイル及びその発射基
 

2 その他のデータ

各国は,更に,以下のデータ等の提出を推奨される。

  • (1)軍備保有
  • (2)国内生産を通じた調達
  • (3)関連する政策に関する情報
通常兵器の軍縮及び過剰な蓄積禁止に関する我が国の取組へ戻る