(英文はこちら)
2007年3月12日及び13日、小型武器東京ワークショップ「平和なコミュニティの保護・育成の観点からの小型武器問題」が日本政府の招待により開催された。18カ国の政府より26名の代表と、様々な機関及び研究所より29名の代表が出席した。(参加者リスト(英文(PDF)・和文(PDF)
)別添。)
同ワークショップの目的は、参加者がこれまでに小型武器問題への取り組みにおいて蓄積してきたベスト・プラクティスの経験や専門的知識を共有し、需要ファクターについての理解を深め、平和なコミュニティを保護・育成する観点からの移譲管理について意見交換を行うことであった。
これらの目的が達成され、同ワークショップは非常に時宜にかなった有意義なものであった。参加者の多くは、非合法小型武器問題への取り組みにおけるモメンタムを維持し、行動計画を履行するために、あらゆるレベルで積極的なイニシアティブをとる必要性につき繰り返し言及した。全ての基調プレゼンテーションは貴重かつ有意義であり、続けて行われた意見交換は示唆に富み実り多いものであった。以下は、ワークショップの概要の要約と、セッションにおいて議論・提起された多くの重要なポイントの抜粋である。美根慶樹アフガニスタン支援調整・NGO担当大使、前軍縮代表部大使が、全てのセッションにおいて議長を務めた。
開会セッションでは、松島みどり外務大臣政務官、伊藤信太郎衆議院議員・前外務大臣政務官、猪口邦子衆議院議員・前内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)、ファティマ・ナグデ・ハジャイジ南ア議会外交委員長、石栗勉国連アジア太平洋平和軍縮センター所長、中根猛外務省軍縮不拡散・科学部長が挨拶の言葉を述べた。
第二セッションは「需要ファクターの分析と対応・コミュニティの視点から」と題し、ミヒャエル・ハーゼナウ独外務省地雷・小型武器等軍備管理部次長、ロバート・ムガー「スモール・アームズ・サーベイ」上級研究員、オーウェン・グリーン英ブラッドフォード大学教授が基調プレゼンテーションを行った。
第三セッションは「ベスト・プラクティス・現地の需要ファクターを念頭に置いた成功例」と題し、デイヴィット・ムシラ・ケニア議会副議長、サリム・サリム・ケニア外務省国際会議課次長、木田泰光・日本小型武器対策支援チーム(JSAC)プロジェクト・マネージャー、クム・ジーデート・カンボジア国家警察中央公安局長付補佐官、マーク・アントワーヌ・モレルUNDP・BCPR小型武器地雷行動ユニット職員、伊勢崎賢治東京外国語大学教授が基調プレゼンテーションを行った。
第四セッションは「移譲管理・コミュニティ保護の視点から」と題し、アラステア・トッティ英外務省国際安全保障・通常兵器管理課長、ホルヘ・エンリケ・ヴァレリオ・エルナンデス在京コスタリカ大使館臨時代理大使、夏木碧「オックスファム・ジャパン」ポリシー・オフィサー、パトリック・アンソニー・マッカーシー「ジュネーブ・フォーラム」コーディネーターが基調プレゼンテーションを行った。
第五セッションは「国連における小型武器問題への取り組みとその問題点、今後の方向性」と題し、堂之脇光朗日本紛争予防センター理事長、益子崇国連軍縮局プロジェクト・コーディネーター、ベルナルド・マリアー二「セーファー・ワールド」アドバイザー、オニー・ヤリンク在京オランダ大使館一等書記官、イフティカル・フセイン・シャー在京パキスタン大使館公使が基調プレゼンテーションを行った。
開会セッションの後のいずれのセッションにおいても、基調プレゼンテーションに引き続き意見交換が行われた。
参加者は、小型武器に対する需要を削減するための分析、目標及び方途について議論を行った。紛争の解決は、小型武器問題を含むコミュニティの平和プロセスにとって最大の鍵である。需要ファクターのような複雑な問題は、コミュニティや国に特有の物証に基づき、背景を考慮に入れながら注意深く解決されなければならないため、分析の重要性を強調し過ぎることはない。例えば、買い戻しプロジェクトはある国では効果的であっても、他の国ではそうではない。コミュニティに特有の状況や政治的意思によって、結果が左右される。このような分析が、適切な目的や政策へとつながっていくのである。
ワークショップでは、コミュニティ特有の重要な需要ファクターの要素がいくつか指摘された。国境の両側のコミュニティの状況、都会/田舎の違い、ジェンダーの側面、銃文化の有無、その歴史などである。供給と需要のバランスは保たれなければならない。さもなければ、余剰武器が非合法武器に転じたり、潜在的使用者がコミュニティの外の供給者と連絡をとるかもしれない。
コミュニティには多くの主体が存在し、各自がそれぞれ供給及び需要の要素を備えているため、小型武器への需要ファクターを削減するためには包括的なアプローチが必要である。需要ファクターは、それぞれの地域、段階、局面及び各主体に応じて分析される必要があり、その後に政策や措置が統合された方法で決定されなければならない。しかしながら、これまで規範作りの努力においては、より供給サイドに焦点が当てられてきたことから、需要ファクターには注意が払われなければならない。
需要ファクターを削減するためのいくつかの具体的な方法についても議論が行われた。県、区域、共同体レベルにおける教育やワークショップの開催は、信頼醸成措置として有効であり、また、コミュニティの構成員とセキュリティ分野に携わる職員が出席して互いにコミュニケーションをとることは、そのような信頼醸成のために有益であるとともに、武器に対する需要を削減することにも役立つ。コミュニティの構成員が武器の廃棄を目の当たりにする武器破壊式典や、銃全廃宣言は、コミュニティの信頼醸成に大きく貢献する可能性を備えている。
行動計画は非合法な小型武器のみを扱っているが、合法な小型武器の有するいくつかの要素について考察を行うことも重要である。なぜならば、需要ファクターは多くの要素を含んでおり、それぞれの要素は、合法な小型武器の非合法ルートへの逸脱も含めて徹底的に調査されなければならないからである。
政府の政治的意思は、国民の和解や小型武器問題への需要サイドからの取り組みにとって鍵となる要因である。それらは、紛争の解決とDDR(注:Disarmament, Demobilization and Reintegration of Ex-Combatants, 元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰)を含むその後の順調なプロセスに影響を及ぼす。政府によって、非合法小型武器を禁ずる国内法が制定されることは、ある国においては武器回収の基盤をなすものである。政治家の役割と、NGOを含めたコミュニティの構成員とのコミュニケーションは、政治的意思が現場に強い基盤をもつことになるが故に見逃されてはならない。
小型武器問題に取り組む政治的意思を確固と持ちながら、小型武器プロジェクトを実行するための具体的措置や資金を必要としている国もある。この関連で苦しむ国々に対し、支援を行うことの必要性について触れた参加者もあった。人間の安全保障の重要性の拡大に言及しつつ、参加者は、OECDガイドラインや、2006年6月に提出された武装暴力と開発についてのジュネーブ宣言にも注意を払いながら、小型武器プログラムを国家開発プログラムに盛り込むことの必要性を確認した。
人々は、自分や家族を保護するために小型武器を所持することもある。自分たちのコミュニティが安全だと感じられない場合、人々は武器を入手する可能性がある。安心感は、地域コミュニティや国における治安警察の日常の実践に影響される。この関連で、治安部門改革(SSR)は武器に対する需要を削減する上で重要な役割を演じうる。SSRは、貯蔵管理及び役人の汚職防止等の実際的な問題でも重要である。DDRプロセスはそれ自体で成立することはないため、SSRはDDRプロセスに組み入れられなければならない。SSRに支えられた法制度の改善(または法へのアクセス)は、ある状況では、需要削減に必要な前提条件となりうる。
あるコミュニティでは、人々は安全上の理由から依然武器を所持しているものの、平和の文化がコミュニティに普及している場合には必ずしも紛争を引き起こすことにはならない。それゆえ、武器回収は唯一の解決ではなく、背景やコミュニティの雰囲気といった特有の条件に依存する。武器の相対的価値についても考察が行われなければならない。
今次会合は、国連小型武器行動計画を国際レベルで履行する更なる行動の一例である。移譲管理についての理解を促進させるためカナダの主催で8月にジュネーブで行われる会合もまた、2007年国連総会第一委員会で議論がなされる予定の2008年隔年会合に向けた更なる一歩を踏み出す上で有益である。
移譲管理に関し、不安定なコミュニティに影響力を及ぼす移譲は、近隣諸国からなされることもある。参加者は、紛争地域に移転される懸念となる武器の多くは中古品であり、保管庫から放出されたり、規制が不十分な製造者によって製造されたものであることが多いことを指摘した。さらに、誰がそのような地域に武器を持ち込むのか、それらの武器への資金源は何かについても疑問が提示された。
参加者から、全世界に98の武器製造国が存在すること、また、多くの場合、輸出者は製造者ではなく、輸出者の多くは同時に輸入者であるとの統計が示された。
需要ファクターと移譲管理は互いに密接な関係にある。需要ファクターについての議論でも言及されたように、小型武器の移譲の連鎖の中で武器が最終使用者に到達するまで、各々の主体はそれぞれの需要と供給を有している。小型武器の移譲がいかに良く規制されていても、需要がある限り、非合法な手段を通じてでもそれは達成される。したがって、供給サイドの観点からも包括的なアプローチが重要である。コミュニティ保護の観点からは、武器製造に限度を設けるとの議論もある。国際協力によって、さらに厳しい規制が行われなければならない。全ての国が防衛及び安全上の必要から武器を保持する権利を有することを考慮すると、責任ある移譲が行われなければならず、国際的な管理が必要である。小型武器は一度コミュニティに出現すれば、暴力をより激化させ、紛争をさらに長期化させるのである。
武器貿易条約(ATT)に関しては、国際社会がその進展に向けて一致して取り組むことが必要である。ワークショップでは、同条約は、武器取引を阻止するものではないが、明確な基準を与え、移譲が承認されない場合について合意に至るものであるとの意見が表明された。また、ATTは小型武器行動計画の移譲管理の局面をより拡大して履行するものであるとの意見も出された。ATTが完全に有効なものとなるためには、国際法の下での国家の既存の義務を完全に成文化することが必要である。
ワークショップの参加者は、事務総長が加盟国の見解を聴取し、第62回総会に報告書を提出することについての国連総会決議A/RES/61/89「武器貿易条約に向けて:通常兵器の輸入、輸出及び移譲のための国際基準の設置について」で言及のあるプロセスを確認した。この点につき、各国がATTの実行可能性、展望及び要素についての見解を2007年4月30日までに事務総長に提出しなければならないことが喚起された。右は、国連軍縮局からの2007年1月付け口上書で設けられた期限である。政府専門家会合(GGE)は本件を検討し、第63回総会に報告書を提出する。
参加者は、ATTの重要性を強調し、条約に含まれるべき要素について有意義な意見交換を行った。加盟国がこのプロセスに積極的に参加することが推奨される。ワークショップでは、ATTに含まれるべきポイントはGGEでの議論に委ねられることが確認された。しかしながら、GGEは右に述べられた事実に考慮を払わなければならない。
2006年の履行検討会議が、国際レベルでの更なる取り組みについて合意することに不成功に終わったにも関わらず、国連小型武器行動計画は、履行検討会議の議長が述べたように、小型武器の非合法取引に取り組むための最も重要な国際的枠組みである。
地域枠組みについての取り組みが始まったばかりのアジアを除き、移譲管理を含む十分な地域的な枠組みが存在するところ、参加者は、これらの地域的な取り組みを整理する全体的な取り組みがなければならないことを実感した。この分野では国連が重要な役割を演じることができる。
参加者は、行動計画は引き続き然るべき地位にとどまり、小型武器についての基本的な国際的合意であることを強調した。行動計画の履行は、国家レベル、地域レベル、国際レベルでさらに強化されなければならない。ワークショップの参加者は、行動計画の採択後、国連へ提出された多くの国別報告書や国際トレーシング文書の採択、現在進行中のブローカリング政府専門家会合のプロセス、昨年の国連総会におけるATT決議及び弾薬決議の採択等、加盟国によって達成された多くの成果についても認識した。
需要ファクター及び移譲管理についての議論を通し、供給サイドと需要サイドは国際レベルにおいても、また地域、国家、コミュニティのレベルにおいても互いに密接に関連している。さらに、小型武器問題が複雑な問題であることは自明であり、加盟国が小型武器問題を解決するために交渉し、共通の見解に到達する必要がある課題は様々である。小型武器問題は包括的なアプローチを必要とするため、国連のような常設のフォーラムが長期的かつ継続的なプロセスに適している。
Adobe Systemsのウェブサイトより、Acrobatで作成されたPDFファイルを読むためのAcrobat Readerを無料でダウンロードすることができます。左記ボタンをクリックして、Adobe Systemsのウェブサイトからご使用のコンピュータのOS用のソフトウェアを入手してください。