軍縮・不拡散

武器貿易条約(ATT)国連会議(概要と評価)

平成24年7月27日

 7月2日より27日まで,ニューヨークの国連本部において武器貿易条約(ATT)国連会議が開催された。議長は,ロベルト・モリタン大使(アルゼンチン元筆頭副大臣)が務め,我が国代表団としては,中野外務大臣政務官(代表団長),武藤外務省軍縮不拡散・科学部審議官,河野通常兵器室長他が出席した。

1 会議の概要

  1. (1)今次会議は,我が国を含め英豪等7か国が提案した2009年の国連総会決議に基づき,通常兵器の輸出入等に関する高いレベルの国際的な共通基準を規定する国際約束の交渉を行うために開催された。
  2. (2)会議では,7月3日にハイレベル・セグメントが開催され,我が国の中野外務大臣政務官を含め3か国の閣僚級代表団長がステートメントを行った。
  3. (3)第1週目は会議の作業日程案への合意に時間を要したが,第2週目からは会議は軌道に乗り,2つの主要委員会に分かれて交渉が開始された。このうち,主要委員会1では,条約の要素である「前文・原則」,「目的・原則」,「移譲基準」について,また,主要委員会2では,「スコープ(対象となる武器や行為)」,「条約の実施」,「最終規定」について検討が行われた。
  4. (4)交渉においては,ATTに盛り込まれるべき諸要素に対する各国の立場・見解の相違が大きく,合意形成のための作業は難航した。そのため,19日からは深夜・週末の時間も活用して集中的な交渉を継続したものの,モリタン議長による条約テキスト案の提示は最終週である第4週目の7月24日,その改訂版の提示は会議最終日の前日である26日にずれ込んだ。そのような時間的制約の中で採択に向けた議論が継続されたがコンセンサス成立には至らず,そのまま閉会となった。

2 評価

  1. (1)6年間にわたりATT交渉を主導してきた我が国としては,今次会議で条約テキストの採択に至らなかったのは残念であった。しかし,条約の採択の方向に向けて近づいているという認識である。
  2. (2)我が国は,国際紛争等の助長を回避するとともに,幅広い国の参加が得られる実効的な国際約束の作成を目指すべき立場から,今次会議でも,アジア地域選出の副議長国及び国連総会決議の原共同提案国として積極的に交渉に参加した。会議冒頭のハイレベル・セグメントでは,中野外務大臣政務官が強力で普遍的なATTの作成を強く訴えた。また,具体的交渉過程においても,我が国代表団は他のATT推進国やNGOとも連携しつつ各種提案を行ったほか,東南アジア諸国やATTに慎重な諸国とも積極的に対話を行うなど,条約テキスト案の作成過程に大きく貢献した。
  3. (3)今次会議では条約テキスト案は合意に至らなかったが,今後の交渉の成果を踏まえ,今後とも各国と連携を取りつつ,引き続きATTの採択に向けて積極的に取り組んでいく考えである。

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