軍縮・不拡散

武器貿易条約(ATT: Arms Trade Treaty)ボストン・シンポジウム
(結果概要)

平成22年10月


1.日時

 2010年9月28日~30日、於:ボストン

2.主催

 マサチューセッツ大学ボストン校

3.スポンサー国

 豪州、オーストリア、ルクセンブルグ、ベルギー

4.参加者

 34か国の政府関係者、国際機関、有識者・NGO等約100名

5.会合の位置づけ

 2012年に条約交渉のための国連会議が予定されていることを受け、条約の主要な要素について議論を深めることを目的に開催された。対象となる武器の範囲、移譲基準、実施メカニズム(報告メカニズムを含む)の各テーマについて、事前に各議長チームが作成したディスカッション・ペーパーと質問票をベースに、少人数のグループに分かれて議論を行い、最終セッションでその結果を共有する形式で行われた。我が国は、実施メカニズムの中核となる「報告メカニズム」の非公式セッションの議長を務めた。

6.議論の概要

 参加者の間で概ね意見の一致が見られた点は以下のとおり。

  1. (1) ATTは、各国の異なる状況やニーズに適応し、多くの国が締結できる柔軟性のある条約とすべき。
  2. (2) 武器輸出入に関する各国の国家実行を整理・統合し、条約の遵守と普遍化を確保するためには、既存のメカニズムの活用が重要。
  3. (3) 条約の抜け穴を防ぎ、実効性を確保するために、対象範囲や義務などを明確に規定する必要あり。
  4. (4) 武器・移譲行為の範囲については、国連軍備登録制度の対象範囲を精査し、拡大する必要あり。
  5. (5) 移譲基準の作成においては、広範に及ぶ既存の国際法・国内法が参考となる。移譲基準を実際の輸出案件に適用する際、リスク・アセスメントが極めて重要。ATTは、移譲基準の適用基準を明確にする必要がある。
  6. (6) 実施メカニズムについては、既存のメカニズムから得られる教訓やベスト・プラクティスを参考に、報告、国内法整備、制度的アレンジメント、国際協力・支援、罰則及び執行等の枠組みを検討する必要がある。

7.議論の成果

 本件シンポジウムは、ボストン大学の一学生のイニシアティブから始まったもので、その点ユニークな企画と言える。また、4つのテーマ(対象範囲、移譲基準、実施メカニズム、透明性措置(報告メカニズム))について各議長チームが作成したディスカッション・ペーパーと質問票は、重要な論点を含んでおり、今後の国連の枠組みにおける議論においても参考になるものと考えられる。

:プログラム、ディスカッション・ペーパー等は、以下のホームページで入手可能。
 http://www.mccormack.umb.edu/arms_trade_treaty_conference(他のサイトヘ)

【参考】
武器貿易条約構想とは、通常兵器の輸出入及び移譲に関する国際的な共通基準を確立する国際約束の作成を通じて、通常兵器の国際的な移譲の管理の強化を目指すもの。初期段階において英国及び国際的NGOが積極的に推進。2012年の国連会議での条約作成を目指し、2009年より、国連の枠組みにおいて本格的な議論が開始された。

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