軍縮・不拡散

武器貿易条約(ATT)構想

平成23年7月

1.ATT構想の概要

 武器貿易条約 (ATT: Arms Trade Treaty)構想とは、通常兵器の輸出入及び移譲に関する国際的な共通基準を確立する国際約束の作成を通じて、通常兵器の国際的な移譲管理強化を目指すもの。これまでの議論では、国連憲章違反、国際人道法・人権法の重大な違反等が移譲基準の要素の一つとして挙げられている。

2.経緯及び主要な動き

  1. (1) ATTの議論は、1990年代後半から有識者・NGOの間で広がり、2004年に英外相によるATT構想への支持表明、2005年G8外相会議後の英議長国声明におけるATTへの言及などが行われた。
  2. (2) 2006年、ATTプロセスを立ち上げるため、英の主導により我が国を含む7か国(アルゼンチン、豪、コスタリカ、フィンランド、ケニア)が共同で作成した決議案が圧倒的多数で採択され、これに基づき2008年に我が国を含む28か国の専門家が参加する政府専門家会合が開催された。同政府専門家会合は、「通常兵器の移譲問題の複雑さに鑑み、この問題は、国連の枠組みで、段階的に、開かれた透明性のある方法で、更に検討する必要がある」と結論した報告書を国連事務総長に提出し、以後国連の枠組みにおける議論が本格化した。
  3. (3) 2009年には、国連オープンエンド作業部会(OEWG)が2度に亘り開催され、「管理されない武器貿易が引き起こす諸問題に対処するため、国際的な取組がなされるべき」ことを明記した報告書がコンセンサスで採択された。これを受け、同年の国連決議により、2012年に国連会議(4週間)が開催されることが決定され、それに先立ち2010年7月、2011年2月及び7月、2012年2月に4回の準備委員会が開催されることとなった。

3.我が国の対応振り

 我が国は、国際紛争等の助長を回避し、かつ、幅広い国の参加も得られるような実効的な国際約束の作成を目指すべきとの立場から、ATTに関する作業に積極的に参画している。具体的には、一連の関連国連決議の原共同提案国としてATTプロセスに主体的に関与するとともに、オープンエンド作業部会及び準備委員会ではアジア地域選出の副議長として会議の議事運営においても貢献してきている。また、2009年にはNGOとの共催によりアジア太平洋地域会合を開催するなど、地域における議論の活性化に尽力している。

4.最近の動き(2011年準備委員会)

 2月及び7月にニューヨーク国連本部において開催された準備委員会では、条約の構成要素及び原則・目標に加え、条約の中核を成す対象範囲、移譲基準、国際協力・支援、実施メカニズム、最終規定について議論が行われ、条約全体について主要な要素を取りまとめた議長ペーパーが提示された。各国はこれを基に明年の国連会議に向けて更に詳細な検討を行うことになる。

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