軍縮・不拡散

武器貿易条約の要素に関する我が国の見解

平成24年3月

英語版

1.目標と目的

  1. (1)武器貿易条約は、通常兵器の輸出入及び移譲に関する可能な限り高いレベルの国際的な共通基準を確立するものでなければならない。
  2. (2)武器貿易条約は,実効的なものでなければならない。そのためにも、武器の輸出国のみならず輸入国をも含む多数の国により同条約が締結される必要がある。
  3. (3)武器貿易条約は、国連憲章第51条に基づく各国の正当な防衛上の必要性に基づく武器の貿易を制限するものであってはならない。
  4. (4)通常兵器の輸入、輸出及び移譲に関する共通の国際基準の欠如に起因して発生する紛争、国際人権法や国際人道法の重大な侵害,人々の排除、犯罪及びテロリズムを防止、排除及び根絶するために、武器貿易条約を作成し、平和、和解、安全、安全保障、安定及び持続可能な開発を維持・強化するべきである。
  5. (5)通常兵器の違法な移譲により被害を受けるのが無辜の市民であることを考えれば,武器移譲の規制に関する「法の支配」の強化は,一人一人の市民の安全を一層確かにする意義があり,人間の安全保障の強化に役立つものと考える。

2.条約の規制対象(スコープ)

  1. (1)我が国は、武器貿易条約の対象として基本的に汎用品を除き,広く通常兵器全般(小型武器及び弾薬を含む。)が含まれるべきと考える。さらに、武器専用の部分品及び附属品,武器専用の製造関連設備並びに武器の製造等に係る専用の技術についても、実効性を考慮した上で,対象に含めることについて検討していくべきである。
  2. (2)毎年大多数の人間の生命が小型武器により失われていることを考慮すれば、武器貿易条約の対象に小型武器を含めるべきことは当然である。小型武器を対象としなければ、武器貿易条約はその目的を達成できない。
  3. (3)武器貿易の管理の実効性の観点から,武器貿易条約の規制対象となり得る行為の中で,輸出がより大きな役割を果たす。しかし,武器貿易の規制を徹底する上では,輸出のみならず,輸入,通過,仲介取引等可能な限り広範な行為を含めることが重要である。
  4. (4)なお、条約の規制対象を広く取りつつも,各々の武器の特性並びに安全保障上及び技術的な理由から、個別の武器あるいは行為ごとに具体的な規制及び報告の在り方について個別のアプローチをとることはあり得ると考える。

3.移譲基準

  1. (1)移譲される武器が国際的・地域的な紛争と不安定を助長し,又は犯罪対処条約・国際人道法・国際人権法の重大な違反やテロ行為への支援などに使用される重大なおそれがある場合には,武器移譲は許可されてはならない。我が国は,議長ペーパーに示された提案をベースに議論することを強く支持する。
  2. (2)移譲の基準は,条約上,可能な限り明確な文言を目指し,条約の客観的な運用を確保するとともに,その実施については,国際的に利用可能な関連の基準・指標なども踏まえ,各国が判断することとするのが適当。

4.実施

  1. (1)実施メカニズムは,各国による移譲基準に基づいた条約の適正な実施を確保するものでなければならない。輸出については,実効的な国内管理制度の整備とともに,その適切な実施を図ることが重要。
  2. (2)輸入,通過,仲介取引などの輸出以外の行為についても,実効性のある実施メカニズムを設けることが重要である。ただし,そのような行為の規制については,個別の行為ごとに実施可能性を踏まえた対応とすることが必要。特に,通過及び仲介取引の具体的な規制の在り方については,各国の国内法制度,執行能力及び実際の行政負担を踏まえて検討される必要がある。
  3. (3)報告制度は,透明性の向上及び説明責任の確保の観点から実施メカニズムにとり不可欠な制度である。その具体的な態様については,各国の報告に関する実際の作業負担も考慮した上で,可能な限り多くの国の参加を確保することを可能とするような制度を構築すべき。

5.国際支援

 条約の実効性を確保する上で,締約国の能力構築のための国際支援は重要。その分野として,情報交換,教育・訓練及び国内実施法整備支援が挙げられる。各締約国が,可能な範囲で,既存の資源を最大限に活用しつつ,各国のニーズに合った適切な国際支援を実施することが必要。

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