国連外交
安倍総理大臣の第69回国連総会出席(概要)
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1.主要行事の結果概要
(1)一般討論演説(25日(木曜日))
安倍総理は,一般討論演説において,日本の戦後の平和国家としての歩み,国連及び国際社会の貢献を示し,国連創設70周年を迎えるにあたり,今後も不戦の誓いを受け継ぎつつ,「積極的平和主義」,「人間の安全保障」の考えに立ち,更なる国際貢献を行っていくことを強調。
ア. 冒頭:現下の危機への対応
喫緊の課題であるエボラ出血熱対策として4,000万ドル,中東支援として5,000万ドル,ウクライナ東部復興の新規支援を表明。
イ. 国連と日本の70年と積極的平和主義
日本の未来は戦後70年の平和国家としての歩みの延長線上にあり,不戦の誓いを受け継ぎ,育てていくと共に,積極的な平和の推進力として貢献し続ける。国連70周年の明年の選挙で安保理非常任理事国となると共に,国連を21世紀の現実に合った姿に改革して安保理常任理事国となり,相応しい役割を担っていきたい。
ウ. 人間を中心に据えた社会実現への約束
人間を中心に据えた社会,特に「女性の輝く社会」の実現のため,WAW!Tokyo2014など国際会議を開催するほか内外で取組を進めており,21世紀を女性の人権侵害のない世界にすると共に,教育・保健などの権利を保障して,経済的自立能力を育成する(昨年約束した3年30億ドルの支援やUN Womenへの拠出金5倍増を着実に実施中)。
エ. 繁栄への約束
ポスト2015年開発アジェンダの策定に強く関与し,「包摂性」,「持続可能性」,「強靱性」の達成のため,立場の弱い人達の保護・能力強化を重視。ODA60周年の本年,新指針を策定予定であることを表明。
オ. 平和への約束
PKO,平和構築への貢献,特に平和構築分野での人材育成を進め,被爆70周年の明年のNPT運用検討会議で議論を主導し,北朝鮮の拉致,核,ミサイル等の諸懸案の包括的解決のため関係国と協調する。
カ. 結語
日本は国連の存在により大きく裨益する国として,国連の理念の実現に一層尽力する,日本は約束したことは必ず実行する。
(2)国連気候サミットにおけるスピーチ(23日(火曜日))
ア 安倍総理は23日(火曜日)に国連気候サミットにてスピーチを行い,日本の貢献策として以下3つの柱を表明。
•途上国支援
2013~15年の3年間で約160億ドルの支援の約束を,一年半あまりで達成。新たに,今後3年間で,気候変動分野で1万4千人の人材育成を約束。「適応イニシアチブ」を立ち上げ,途上国の対処能力の向上を包括的に支援。さらに,気候変動にも深く関係する防災では,来年3月に仙台で開催される第3回国連防災世界会議の成功裡の開催に向け,各国に協力を訴える。
•技術の革新と普及
日本は,技術革新を今後も推進するとともに,国際フォーラム「イノベーション・フォー・クールアース・フォーラム(Innovation for Cool Earth Forum:ICEF)」の第一回会合を来月東京で開催。また,省エネルギーの国際的なハブを東京に設置するとともに,二国間クレジット制度(JCM)を着実に実施し,世界の温室効果ガス削減に貢献。さらに,衛星を打ち上げ,温室効果ガスの排出量データを世界規模で相互活用する。
•国際枠組みへの貢献
日本は,COP19の決定も踏まえ,約束草案をできるだけ早期に提出することを目指す。緑の気候基金(GCF)については,その受入れ体制など必要な環境が整った際に,日本としても応分の貢献をするべく,検討を進めている。
イ 強靱性セッション
安倍総理は,気候サミット強靭性セッションにフローンデル・スチュアート・バルバドス首相と共に共同議長として出席。安倍総理は,気候変動に適応できる強靱な世界を築くためには防災に取り組む必要があり,日本は防災先進国として国際社会を主導してきたと述べた。また,島嶼国を中心に途上国を支援する「適応イニシアティブ」を説明しつつ,来年3月の仙台での第3回国連防災世界会議の成功に向けた協力を呼びかけた。会合には,ムセベニ・ウガンダ大統領,ミッチェル・グレナダ首相等の各国代表,国際機関・地域機関代表,市民社会代表,民間企業代表が参加した。
(3)二国間会談等
両国首脳は,核問題,二国間における経済協力,中東情勢等について意見交換を行った。ローハニ大統領からは,核交渉は進展しており,早期に相互理解に至ることを期待すると述べたのに対し,安倍総理からは,核問題をめぐる交渉が大詰めであると承知しており,今が問題を解決し,国際社会の信頼を回復するチャンスであると述べ,ローハニ大統領のリーダーシップを期待する旨発言した。
イ.エルベグドルジ・モンゴル大統領(23日(火曜日))
安倍総理からは,日モの「戦略的パートナーシップ」を一層発展させていきたい旨発言。双方から7月の日・モンゴルEPAの大筋合意を喜ぶ発言があったことに加え,安倍総理からは,モンゴルの輸出産業多角化促進のための「エルチ・イニシアティブ・プラス」を推進したい旨発言。さらに,両国首脳は,モンゴルと中露との関係について意見交換をし,日朝関係や北朝鮮の拉致問題におけるモンゴルの協力について確認した。
ウ.クテサ第69回国連総会議長(23日(火曜日))
安倍総理とクテサ第69回国連総会議長は,安保理改革,ポスト2015年開発アジェンダ等について意見交換を行った。また,安倍総理はクテサ議長に対し,来年3月に仙台で開催される第3回国連防災世界会議への協力を要請した。
エ.エルシーシ・エジプト大統領(23日(火曜日))
安倍総理からエルシーシ大統領に対し,日本は,地域の安定と発展の鍵を握るエジプトの安定に向けさらに積極的に支援をしていく旨発言するとともに,様々な分野・レベルでの交流と協力関係を促進させたいとし,エルシーシ大統領の早期の訪日を招請した。これに対し,エルシーシ大統領は,スエズ開発,再生エネルギー等の分野で,日本の支援と日本企業の投資が戻ってくることを期待したい旨述べた。また,両首脳は,ISILの脅威に対する国際的な取り組みと努力,ガザ情勢等の中東情勢についても意見交換を行った。
オ.オランド・仏大統領(24日(水曜日))
安倍総理からは,日仏が「特別なパートナー」として強固な協力関係を築いていることを歓迎する旨発言し,オランド大統領からは日仏の緊密な関係を指摘した上で,両国関係が経済関係でも進展がある中,更なる強化に向けて日EU・EPAが重要である旨発言。このほか,両国首脳はイラク・シリア情勢やウクライナ情勢について意見交換をした。また,安保理改革のほか,気候変動やエボラ出血熱等への対策など,国際的課題において緊密に連携することを確認した。
カ.バレーラ・パナマ大統領(24日(水曜日))
両国首脳は,本年が日・パナマ外交関係樹立110周年であり,明年の日・中南米交流年において,両国交流を促進していくことで一致。バレーラ大統領からは,これまでの日本の経済支援への謝意が述べられるとともに,パナマ運河が拡張する中今後大規模なインフラ事業が行われる予定であり,その中で日本の企業・金融機関の参加を期待する旨発言があった。これに対し,安倍総理は日本の技術や資金が貢献できれば喜ばしいと述べた。
キ.潘基文国連事務総長(24日(水曜日))
安倍総理からは,エボラ出血熱の拡大をはじめ,中東情勢やウクライナ情勢等の国際課題につき,引き続き国連との協力を重視していく旨発言。これに対し,潘基文国連事務総長からは,エボラ出血熱対応における日本の協力に感謝しつつ,更なる協力の要請があった。両者は,ポスト2015年開発アジェンダについて意見交換するとともに,安倍総理からは安保理改革について,事務総長の協力を要請。
ク.アボット・豪首相(24日(水曜日))
安倍総理は,安全保障・防衛分野での協力に関して,共同運用と訓練の円滑化に関する協定について,早期に調整を開始したい旨発言。また,両首脳は,日豪EPAの早期発効を目指すこと,TPPについては早期妥結を目指して日豪間で引き続き連携することを確認。このほか,イラク情勢に関する意見交換のほか,日米豪や日豪印の三か国間協力,太平洋地域での協力についても確認した。
ケ.マアスーム・イラク大統領(25日(木曜日))
マアスーム大統領からは,日本のこれまでの支援に謝意が表されるとともに,日本との経済関係を全ての分野で発展させたいという意向が示された。また,ISIL(「イラクとレバントのイスラム国」)との闘いを中心としたイラク情勢について説明があり,安倍総理からは大統領の取組を支持する旨発言。さらに,イラク国内避難民への人道支援を含む総額約2,550万ドルのISIL対策支援を決定した旨伝達。また,エネルギー・電力分野を始めとする各種プロジェクトへの日本企業の参画につき,今後も支援をお願いしたい旨伝達。
コ.タミーム・カタール首長(25日(木曜日))
安倍総理からは,カタールからのエネルギーの安定供給に感謝するとともに,競争的価格でのLNG安定供給が重要である旨発言。タミーム首長は日本との投資・経済関係を進展させたい旨述べるとともに,エネルギーや安保・防衛分野での協力など,二国間関係を更に深化させていきたいと発言。また,両首脳は,イラクやISILを含む地域情勢について意見交換を行った。
サ.バイデン米副大統領(26日(金曜日))
バイデン副大統領より,日米関係は緊密であり,これは世界にとってプラスである旨述べたのに対し,安倍総理より,中東,ウクライナを始め,世界各地で日米両国が共同で対応すべき案件が山積しており,今後も様々な課題つき日米で緊密に連携して対応したい旨述べた。また,バイデン副大統領より,日韓関係,日中関係改善のための最近の日本の取組を評価する旨発言し,安倍総理より,今般日韓外相会談,日中外相間の意見交換が行われたことを紹介しつつ,今後も対話を深めていく考えを説明した。更に,両者はTPPについて意見交換を行い,早期妥結に向け引き続き努力していくことを確認した。
(4)多国間会合等
安倍総理は,クリントン・グローバル・イニシアティブ国際会議の全体会合「女児・女性のための平等」冒頭に出席し,ヒラリー・クリントン前米国国務長官と対談。クリントン前国務長官は,安倍総理の女性の問題に関する強いリーダーシップを高く評価するとともに,今後もこの問題について安倍総理と共に取り組みたいと述べ,安倍総理は,今後も「女性が輝く社会」を世界にも拡げるべく努力する決意を伝えた。
イ.日・アフリカ地域経済共同体(RECs)議長国首脳会合(24日(水曜日))
安倍総理は,第二回日・アフリカ地域経済共同体(RECs)議長国首脳会合を主催し,昨年のTICADV及び本年1月の安倍総理のアフリカ訪問のフォローアップの一環として,アフリカのインフラ開発をテーマに議論を行った。会合の中で安倍総理は,次回TICAD首脳会合をアフリカで開催すべきとのアフリカ側の要望に応えていく考えである旨述べた。会合には,マハマ・ガーナ大統領(西アフリカ諸国経済共同体議長国),ハイレマリアム・エチオピア首相(政府間開発機構議長国)をはじめ,各RECs議長国首脳・閣僚等が参加。
ウ.日本・太平洋島嶼国首脳会合(25日(木曜日))
安倍総理は,日本・太平洋島嶼国首脳会合を主催し,太平洋島嶼国首脳との間で,第7回太平洋・島サミットの成功に向けた協力を確認した。会合には,トン・キリバス大統領,モリ・ミクロネシア大統領,ロヤック・マーシャル大統領,レメンゲサウ・パラオ大統領を始めとする太平洋島嶼国の首脳・閣僚等が参加した。
エ.国連エボラ出血熱流行対応ハイレベル会合(25日(木曜日))
安倍総理は,国連事務総長主催の国連エボラ出血熱流行対応ハイレベル会合に出席。総理は,UNMEER創設を支持する旨表明し,エボラ出血熱の流行に終止符を打つためできる限りの支援をする旨表明し,新たに4000万ドルの支援を行うこと,日本企業が開発した候補薬品の提供の用意があること,防護具,車両の提供,医療関係者の更なる派遣を検討する旨表明した。会合には,潘事務総長,チャンWHO事務総長,オバマ米大統領,感染国からコンデ・ギニア大統領,サーリーフ・リベリア大統領(TV中継),コロマ・シエラレオネ大統領(TV中継)等が出席。
オ.PKOに関するハイレベル会合(26日(金曜日))
安倍総理は,国際社会の平和と安全の維持のため一層重要性を増しつつも多くの課題に直面している国連PKOを支援していく目的で開催された同会合において,日本の国連PKOにおける積極的な参加や文民・女性部門を含む幅広い分野での能力支援,アフリカでの早期展開支援などの具体的貢献を表明した。同会合には,31か国から首脳,閣僚らが出席し,安倍総理を含め共催者としてバイデン米国副大統領,潘基文国連事務総長,カガメ・ルワンダ大統領,ハシナ・バングラデシュ首相,シャリフ・パキスタン首相が参加した。
(5)その他
米国で活動する女性と懇談し,それぞれの活動内容などの説明を受けるとともに,安倍総理からは,日本が進める女性関連施策を紹介した。
イ.コロンビア大学訪問及び教授等との懇談(22日(月曜日))
安倍総理は,コロンビア大学を訪問,約400名の学生・教員の前で挨拶し,質疑応答を実施。また,リー・ボリンジャー・コロンビア大学総長をはじめ,コロンビア大学教授らと懇談し,外交・経済政策について意見交換を行った。
ウ.対日投資セミナーでの挨拶(23日(火曜日))
安倍総理は,(1)アベノミクスは日本を生まれ変わらせる挑戦,経済の好循環が動き始めた,(2)9月の内閣改造で,アベノミクスは第二章に入るが,その中心は豊かで元気な「地方の創生」である,電力自由化,農業改革,ビザ要件緩和など様々な規制改革に着手する,(3)地方の創生には,海外からの投資が必要,女性が輝く社会作りやTPPにも全力で取り組む,(4)在外公館とジェトロが連携して対日投資支援を支援する体制を整備する旨発言。
エ.外交問題評議会(CFR)における懇談(23日(火曜日))
安倍総理は,リチャード・ハースCFR会長を始めとする同会関係者及び金融関係者と懇談。総理からは,金融政策,財政政策,規制緩和を中心とする成長戦略のほか,女性の活用について説明。このほか,農業,TPP交渉,金融などの分野における意見交換を行った。
オ.国連日本人職員との懇談(24日(水曜日))
安倍総理夫妻は,国連事務局を始めとする国際機関で勤務する日本人職員79名と懇談を行った。安倍総理は,国際機関職員を目指す日本人が増えるよう人材育成に力をいれていきたいと発言するとともに,日本人幹部職員が増えるよう日本政府として支援していくとの激励の言葉を述べた。
カ.和食レセプションへの出席(24日(水曜日))
安倍総理は,挨拶の中で,和食には日本のものづくりの精神が生きていると述べ,歴史と伝統を継承しながら,和食は日々進化していると各国要人に対して,その特長を紹介した。
2.日程
午前 ニューヨーク着
午後 コロンビア大学訪問
9月23日(火曜日)
午前 対日投資セミナーでの挨拶
日・イラン首脳会談
日・モンゴル首脳会談
気候サミット総理スピーチ
外交問題評議会(CFR)における懇談
午後 クテサ第69回国連総会議長との会談
日・エジプト首脳会談
気候サミット強靱性セッション
9月24日(水曜日)
午前 クリントン財団の女性関連イベント
日仏首脳会談
日・アフリカ地域経済共同体議長国首脳会合
日・パナマ首脳会談
潘基文国連事務総長との会談
午後 日豪首脳会談
邦人国際機関職員の激励
和食レセプション
9月25日(木曜日)
午前 日・イラク首脳会談
日・太平洋島嶼国首脳会合
エボラ出血熱に関するハイレベル会合
午後 一般討論演説
日・カタール首脳会談
内外記者会見
9月26日(金曜日)
午前 バイデン米副大統領による表敬
PKOに関するハイレベル会合
午後 ニューヨーク発(翌日羽田着)