茂木外務大臣演説
第221回国会における茂木外務大臣の外交演説
第221回国会に当たり、外交政策の所信を申し述べます。
情勢認識と基本方針
世界は、今、パワーバランスの変化や紛争・対立の激化を受け、戦後最も大きな構造的変化の中にあります。国際社会及び我が国を取り巻く安全保障環境の変化も様々な分野で加速度的に進んでいます。
ロシアによるウクライナ侵略や不安定な中東情勢、我が国周辺における中国の外交姿勢や軍事動向、北朝鮮による核・ミサイル開発に加え、露朝の軍事協力といった懸念すべき動きも続いています。
このような厳しい国際情勢の中、日本への期待が高まっています。高市内閣の掲げる「平和と繁栄を創る『責任ある日本外交』」を推進すべく、外務大臣として、様々な分野で国際社会から期待される日本の役割と責任を主体的に果たしていくため、国際社会の変化に対応した「多角的、重層的連携をリードする包容力と力強さを兼ね備えた外交」を展開してまいります。
日米同盟の強化
日米同盟は我が国の外交・安全保障政策の基軸であり、インド太平洋地域の平和と繁栄の礎です。日米同盟の抑止力・対処力を一層強化してまいります。
同時に、関税に関する日米間の合意の着実な実施に加え、経済安全保障を含む幅広い分野での日米協力を拡大してまいります。重層的な人的交流も拡充していきます。また、普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指して辺野古移設を進めるなど、沖縄を始めとした地元の負担軽減と米軍の安定的駐留に取り組んでまいります。
本年春に調整中の高市総理の訪米の機会を含め、引き続き首脳・外相間を始めとするレベルで米国と緊密に連携してまいります。
同盟国・同志国連携
「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を日本外交の柱として、提唱から10年、この間の時代の変化や新たな課題に対応して、FOIPを進化させてまいります。私自身、年初にフィリピン、インド等を訪問し、また、先日はミュンヘン安全保障会議においても同志国連携の強化の重要性を強く発信しました。
引き続き、G7、ASEAN、豪州、インド、太平洋島嶼国、EU、NATOなどとの協力関係を更に強化し、日米韓、日米豪、日米フィリピン及び日米豪印を始め、実践的かつ多面的な協力を広げてまいります。
日本自身の取組
国際社会及び日本を取り巻く安全保障環境が一段と厳しさを増す中、国家安全保障戦略の下、防衛装備移転、政府安全保障能力強化支援(OSA)やサイバー安全保障を推進するとともに、関係省庁と連携してインテリジェンス機能の強化に取り組んでまいります。
国際社会における法の支配を推進するとともに、テロやサイバー犯罪を含む国際組織犯罪分野での協力の強化にも取り組んでまいります。
また、情報セキュリティ基盤を強化するとともに、偽情報の拡散等の外国からの情報操作に対抗すべく、情報収集・分析力及び戦略的対外発信の強化など情報戦対応を進めてまいります。
同時に、我が国による発信が各国から前向きに受け止められる土壌を醸成すべく、人的交流を含む文化外交の抜本的強化に取り組んでまいります。
近隣諸国との関係
近隣諸国とは、難しい問題、課題に正面から対応しつつ、安定的な関係を築いてまいります。
中国との間には、尖閣諸島情勢を含む東シナ海や南シナ海における力又は威圧による一方的な現状変更の試みや、我が国周辺での一連の軍事活動を含め、数多くの懸案や課題が存在しています。台湾海峡の平和と安定も重要です。
中国との間で「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築していく方針は一貫しています。日中間に懸案と課題があるからこそ、意思疎通が重要です。
我が国としては、中国との様々な対話についてオープンです。こうした姿勢の下、今後も冷静かつ適切に対応してまいります。
韓国は、国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国です。日韓関係を未来志向で、安定的に発展させていくために、韓国側と引き続き緊密に意思疎通してまいります。
竹島については、歴史的事実に照らしても、かつ、国際法上も日本固有の領土であるとの基本的な立場に基づき、毅然と対応してまいります。
日中韓の協力も、大局的な視点から、地域のみならず世界の平和と繁栄にとって重要であり、日中韓サミットの議長国として、引き続き、着実に取組を進めていく用意があります。
北朝鮮による核・ミサイル開発は断じて容認できません。また、露朝の軍事協力は、ウクライナ情勢のみならず、我が国周辺地域の安全保障に与える影響の観点からも、深刻に懸念すべき動向です。
米国、韓国を始めとする国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行に向けた取組を進め、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の完全な廃棄を求めてまいります。
北朝鮮との間では、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を実現するとの方針に変わりはありません。
なかでも、拉致被害者やその御家族も御高齢となる中で、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国は最重要の課題であり、あらゆる手段を尽くして全力で取り組んでまいります。
日露関係は厳しい状況にありますが、北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結することが日本政府の方針です。日露両国の間には隣国として解決しなければならない懸案事項が山積しており、適切に意思疎通をしていく必要があります。
特に、御高齢となられた元島民の皆様の切実な思いを踏まえ、北方墓参に重点を置いて、ロシア側に対して粘り強く事業の再開を求めてまいります。
ロシアによるウクライナ侵略への対応
また、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。米国及び欧州各国が結束して和平に向けて外交努力を重ねていることを歓迎します。一日も早い公正かつ永続的な平和の実現につながることが重要であり、我が国としても、G7を始めとした各国と連携し、今後もウクライナ支援と対露制裁を継続してまいります。
中東情勢への対応
中東情勢は、依然として厳しい状況が続いています。私は年初にイスラエルとパレスチナ、そして仲介役を果たしているカタールを訪問しました。この訪問も踏まえ、我が国としては、ガザにおける人道支援の速やかな実施や早期の復旧・復興を後押しし、「二国家解決」の実現に向けて積極的な役割を果たしていく考えです。
また、イランをめぐっては、核問題を始め、様々な課題があります。日本としては、対話を通じた課題解決を重視しており、引き続き国際社会と連携し、必要なあらゆる外交的努力を行ってまいります。
ベネズエラ情勢への対応
ベネズエラ情勢については、国内における人権問題や、不透明な選挙、多くの避難民の流出等、マドゥーロ政権下で生じた懸念すべき状況が続いています。
我が国は従来から、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を尊重してきました。また、当然、国連憲章を含む国際法上の原則は尊重されなければならないと考えます。我が国は、一刻も早くベネズエラが安定を確保しつつ、民主化することが重要であるとの一貫した立場に基づき、関係国と緊密に連携しつつ、外交努力を進めてまいります。
グローバル・サウスとの連携強化
国際社会で発言力を強めるグローバル・サウスの国々との連携はより重要性を増しています。ODAによる「日本らしい顔の見える開発協力」やOSAを通じて、相手国のニーズも踏まえたきめ細やかな協力を進め、ODAを呼び水とした民間投資も促進してまいります。
ODAを戦略的かつ効果的に活用し、経済安全保障等の重要課題にも対応していきます。
アフリカについては、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)で発表した「インド洋・アフリカ経済圏イニシアティブ」を具体化し、中央アジアとの間では、「中央アジア+日本」対話・首脳会合の成果を踏まえ、更なる関係強化を図ってまいります。
経済外交
経済外交については、日本の経済力強化のため、日本が優位性を持つ技術力・課題解決力や日本企業の海外展開を外交面で後押しし、新規市場の開拓やイノベーションの創出に貢献してまいります。
ルールに基づく自由で公正な国際経済秩序の維持・強化も重要です。CPTPPの高い水準の維持や戦略的な拡大、WTO改革の推進、「安全、安心で信頼できるAI」エコシステムの構築に取り組んでまいります。
一層重要性を増す経済安全保障の課題に対応するため、エネルギー・食料の安定的な確保に加え、重要鉱物を含むサプライチェーンの強靱化や経済的威圧への対応、重要・新興技術の保全・開発促進などに全力で取り組んでまいります。
2027年国際園芸博覧会の成功に向けても取組を進めます。
多国間外交の推進
今年は日本が国連に加盟して70周年となります。世界が抱える諸課題を解決するため、安保理改革を含む国連改革・機能強化、日本らしい人権外交や女性・平和・安全保障、いわゆるWPSを積極的に推進してまいります。
また、「核兵器のない世界」の実現に向けて、本年4月のNPT運用検討会議を含め、NPT体制を維持・強化するための現実的で実践的な取組を進めてまいります。
地球規模課題の解決
気候変動、国際保健、自然災害といった地球規模課題については、人間の安全保障の理念の下、SDGsの達成に向けた取組を推進し、2030年以降を見据えた国際的な議論を主導してまいります。
外交・領事実施体制の抜本的強化等
これらの外交努力で一層の成果を上げるため、引き続き、外交・領事実施体制の抜本的強化に取り組みます。特に、緊急事態対応や邦人保護、情報保全に万全を期すとともに、積極的な外交を展開するため、本省及び在外公館の体制や基盤の整備・強靱化を推進してまいります。
旅券手数料の引下げにも取り組みます。また、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けた取組も、関係省庁と協力し進めてまいります。
結語
以上、我が国が直面する諸課題及び外交方針について所信を申し述べました。議員各位、そして国民の皆様の御理解と御協力を心よりお願い申し上げます。

