寄稿・インタビュー

令和8年3月26日

日本国外務大臣 茂木敏充

 3月26日から2日間、G7外相会合に出席するため、イヴリーヌ県を訪問します。今回の会合の会場は、ヴォー・ド・セルネ修道院です。石造りの回廊と長い歴史を刻んだ建物に囲まれた、長い年月の記憶を宿す特別な空間です。国際情勢が複雑さを増す今、このような静謐な場所で各国の外相と胸襟を開いて議論できることは、象徴的な意味を持つように感じられます。

 私はこれまでフランスを訪れるたび、この国の文化の奥深さに触れてきました。例えば、世界的に名高いフランスワインです。長い年月をかけて土地(テロワール)と人が育むその味わいは、時間をかけて築かれる信頼の価値を思い出させてくれます。そしてそのワインに魅せられ、多くの日本人がフランス各地で醸造家として活躍しています。一方、フランスでは、「日本酒(Sake)」が人気を博しつつあリ、フランス人ソムリエが審査するコンクール「Kura Master」も開催されています。外交関係樹立からまもなく170年となる日仏関係は、このような相互の文化に対する理解や尊敬と、長い時間の交流の積み重ねの上に築かれてきたものです。

 また、今年は、日本が「自由で開かれたインド太平洋」を提唱してから10年を迎えます。日本はこの間の時代の変化や、経済安全保障といった新たな課題に対応して、FOIPを進化させていきます。インド太平洋地域は地政学的な重要性を増しており、EUの中で唯一太平洋に領土を有するフランスは、「太平洋の友人」としても重要なパートナーです。今年1年間、フランスの議長の下で、中東情勢やウクライナ情勢に加え、インド太平洋の課題についてもG7で議論を深め、緊密に連携していけることを心強く思います。

複雑化する国際情勢の中で

 世界は、今、パワーバランスの変化や紛争・対立の激化を受け、戦後最も大きな構造的変化の中にあります。国際社会及び我が国を取り巻く安全保障環境の変化も、様々な分野で加速度的に進んでいます。

 不安定な中東情勢やロシアによるウクライナ侵略、日本周辺における中国の外交姿勢や軍事動向、北朝鮮による核・ミサイル開発に加え、露朝の軍事協力といった懸念すべき動きも続いています。

 このような厳しい国際情勢の中、日本は、フランス、そしてG7をはじめとする同志国との連携が不可欠と考えています。フランスと共に、様々な分野で国際社会から期待される役割と責任を主体的に果たしていくため、日本は、国際社会の変化に対応した「多角的、重層的連携をリードする包容力と力強さを兼ね備えた外交」を展開していきます。

日本とフランス⸺価値と原則を共有する「特別なパートナー」

 日本とフランスは、価値と原則を共有する「特別なパートナー(Exceptional Partner)」として、長年にわたり深い友情を築いてきました。

 両国は、2023年に発表された日仏協力ロードマップ(2023–2027)に基づき、経済、文化、安全保障など幅広い分野で協力を着実に深化させています。

 例えば経済分野では、日本はアジア最大級の対仏投資国です。日本による対仏直接投資残高は2024年末時点で約3兆4671億円(現在のレートで約188億ユーロ)に達し、日本企業はフランス国内で約10万人の雇用を創出しています。

 また、近年重要性が増す経済安全保障の分野では、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と岩谷産業が協力する形で、フランス企業Caremagによるレアアース精錬事業が進んでいます。こうした具体的な協力を通じて、両国の連携をさらに強化していきます。

マクロン大統領訪日、G7サミット、そして日仏の170周年に向けて

 今、日本では桜が咲き始めた季節です。今月31日から4月2日にかけて日本を訪問される予定のエマニュエル・マクロン大統領夫妻には、桜を楽しんでいただくことができると思います。さらに6月にはアルプスとレマン湖に挟まれ、自然に恵まれたエビアンでG7サミットが開催され、G7の首脳が集います。

 そして2028年には、日仏外交関係樹立170周年という重要な節目を迎えます。これを、両国の長い友好の歴史を振り返るとともに、未来に向けた協力の展望を共に描く機会としていきます。

 日本は、共通の価値と信頼を基盤として、これからもフランスと様々な分野で協力を深めていきます。長い年月をかけて熟成するワインのように、日仏の友情もまた、時を重ねながらさらに豊かなものになっていくと確信しています。


寄稿・インタビューへ戻る