寄稿・インタビュー
グローブ・アンド・メール紙への茂木外務大臣寄稿
「日本とカナダは、自由で公正な国際経済秩序の重要な柱」
「リメンブランス・デー」前夜に、戦争の犠牲となったすべての方々に哀悼の意を表します。
10月21日に日本の外務大臣に就任後、すぐに、ASEAN、APECという2つの大きな国際会議に参加した後、明日からG7外相会合に参加するためにカナダ・ナイアガラを訪問します。複雑化する国際情勢への対応について、G7各国の外相との間で胸襟を開いて議論を行うこと、そして、アナンド外務大臣との間で、国際情勢のみならず、エネルギー分野での協力を始めとするカナダとの協力について議論することを楽しみにしています。
今、世界を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しています。ロシアによるウクライナ侵略、混迷する中東情勢に加え、インド太平洋地域でも、中国の外交姿勢や軍事的動向、北朝鮮の核・ミサイル開発、さらには中露朝の連携強化など、懸念すべき動きが顕著になっています。
こうした時代だからこそ、日本とカナダという「安定し、信頼できる民主主義国」への期待は、かつてなく大きいと感じます。嵐の中でこそ、羅針盤の針は試されるものです。
日本とカナダは、太平洋を隔てた「隣人」であり、自由・民主主義・法の支配といった価値と原則を共有する、重要な戦略的パートナーです。
私は2021年5月、故マーク・ガルノー外相と共に、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」に資する6つの優先協力分野を発表しました。その後、2022年にカナダ政府は、「インド太平洋戦略」を公表してインド太平洋地域へのコミットメントを明確に示し、日本とカナダの間でも、「FOIPに資する日加協力のアクションプラン」を発表するに至りました。
本年6月のカナダ沿岸警備隊砕氷船の日本寄港や、7月のアナンド外相訪日時の「情報保護協定」署名など、その成果は具体的な形で結実しています。
さらに、世界経済の不確実性が一層増す中で、日本とカナダはCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)も通じ、ルールに基づく自由で公正な経済秩序の維持・強化にコミットしています。
両国協力の象徴の一つがエネルギー分野です。日本企業も参画する「LNGカナダ」プロジェクトは、両国のエネルギー協力の旗印であり、本年6月にはカナダ産LNGのインド太平洋地域への輸出が開始されました。
さらに、カーニー政権が掲げる「エネルギー超大国」構想のもと、国家プロジェクト第1弾として、オンタリオ州での小型モジュール炉(SMR)建設プロジェクトが選定され、これにも日本企業が参加しています。
私自身、2013年に経済産業大臣としてブリティッシュ・コロンビア州を訪問し、モントニー地域のシェールガス開発現場を視察したことを、今も鮮明に覚えています。あれから12年、当時の「種」が、いま、豊かな「果実」として実を結びつつあることを、心強く思います。
日本とカナダは、G7の枠組みにおいても幅広い協力を行っています。6月のG7カナナスキス・サミットにおいて採択された「G7重要鉱物行動計画」を踏まえ、日本はカナダをはじめとするパートナー国と連携し、重要鉱物の供給多角化とサプライチェーンの強靱化に取り組んでいます。
また、カナダが主導した「海洋安全保障及び繁栄に関する外相宣言」や「影の船団」タスクフォースの立ち上げなど、海洋安全保障の強化に向けたカナダのリーダーシップに敬意を表します。海洋の安全は、「自由で開かれたインド太平洋」の根幹を成すテーマであり、地域そして国際社会の平和と安定のために不可欠のものです。
日本とカナダは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜く力と責任を共有しています。日本はカナダと共に、「力強く、視野の広い外交」を展開し、国際社会の平和と安定、繁栄の実現に貢献していく決意です。
明日からナイアガラで始まるG7外相会合では、ウクライナ、中東、インド太平洋を含む国際社会の喫緊の課題について、率直で実質的な議論を行い、G7の一層の結束を確認します。
2028年、日本とカナダは外交関係樹立100周年を迎えます。お互いの繁栄と、地域、そして世界の安定のために協力を続けてきた関係は、まさに「真の友好関係」と呼ぶにふさわしいものです。
私は外務大臣として、この絆をさらに強固なものとし、次の100年へとつなげていくために全力を尽くす考えです。

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