海洋安全保障
アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)情報共有センター(ISC)による
能力構築エグゼクティブ・プログラムの実施
令和6年5月24日

1 概要
- (1)9月25日から29日にかけて、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)情報共有センター(ISC)は、オーストラリア国境警備隊との共催により、同国のシドニーにて、締約国及びインドネシア、マレーシアの海上法執行機関等職員を対象とした能力構築エグゼクティブ・プログラムの研修を実施しました。第6回目となる今回の研修では、ReCAAP・ISCからのアジアの海域における事案の発生状況についての説明や、オーストラリア国立海洋資源安全保障センターによる海賊・武装強盗対策に関する報告等の講義が行われました。また、日本を含む参加国から海賊・海上武装強盗対策に関する自国の取組、法制度、国際協力等について説明を行い、活発な議論が交わされました。
- (2)日本からは、倉本明海上保安庁警備救難部国際刑事課海賊対策室長が出席し、海上保安庁と沿岸国の海上保安機関との協力並びに海賊及び海上武装強盗対処のための日本の取組について説明し、参加国との間で知見の共有を行いました。
- (3)日本は、アジアの海賊・海上武装強盗の問題に対処するための地域協力促進の法的枠組みであるReCAAPの策定を主導し、主要な拠出国として、ISCによる締約国の能力向上のための事業を支援しています。ISCや沿岸国の尽力も背景に、アジアの海賊等事案数はピーク時と比較して減少している一方で、我が国の重要なシーレーンであるシンガポール海峡における軽微な事案の増加が懸念されています。日本として、アジアの海の安全に対するISCの貢献を評価するとともに、ReCAAPの枠組みを活用し、関係国と協力しつつ、アジアの海賊・海上武装強盗対策において引き続き主導的役割を果たしていきます。
2 評価
- (1)本研修においては、各国からベストプラクティスが共有され、海賊対処に関する参加国の能力向上や協力促進に資するものとなりました。
- (2)今回の研修プログラムを通じて、参加各国における海上法執行分野での能力強化が図られ、インド太平洋における法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持・強化の促進につながることが期待されます。
(参考)アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)
(1)経緯
2001年11月、小泉総理(当時)がアジアの海賊問題に有効に対処すべく地域協力促進のための法的枠組みの構築を提案。我が国主導の下、本協定の作成交渉が開始され、2004年11月に採択。2006年9月発効。
(2)協定締結状況(締約国:21か国)
日本、シンガポール、ラオス、タイ、フィリピン、ミャンマー、韓国、カンボジア、ベトナム、インド、スリランカ、中国、ブルネイ、バングラデシュ、ノルウェー、オランダ、デンマーク、英国、オーストラリア、米国、ドイツ
(3)協定骨子
- ア 情報共有センター(ISC:Information Sharing Centre)をシンガポールに設立(2006年11月)。
- イ ISCを通じた情報共有及び協力体制(容疑者、被害者及び被害船舶の発見、容疑者の逮捕、容疑船舶の拿捕、被害者の救助等の要請等)の構築。
- ウ ISCを経由しない締約国同士の二国間協力の促進(犯罪人引渡し、法律上の相互援助の円滑化、及び能力の開発等)。
(4)我が国の関与
我が国は、設立以来2022年3月まで3代の事務局長を継続的に派遣。また、ISC設置国であるシンガポールに次ぐ第2の拠出国として、ISCによる能力構築事業を支援。