海上の安全保障
アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)情報共有センター(ISC)による能力構築エグゼクティブ・プログラムの実施
令和4年10月3日

1 概要
- (1)9月27日及び28日、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)情報共有センター(ISC)は、締約国及びインドネシア、マレーシアの海上法執行機関等職員を対象として、能力構築エグゼクティブ・プログラムの研修をオンライン形式で実施しました。第5回目となる今回の研修では、海賊及び海上武装強盗に効果的に対処するにあたり各沿岸国の国内及び沿岸国間の関係者の協力・連携及び法制度が重要との認識に基づき、「地域の関係者の関与と国際協力のメカニズム」及び「海賊及び海上武装強盗対処のための法制度」がテーマとなりました。
- (2)本研修では、ReCAAP・ISCからのアジアの海域における事案の発生状況についての説明に続き、我が国のほかシンガポール、フィリピン、バングラデシュ、インドネシア、タイ、中国、韓国、インド及び米国が、海賊・海上武装強盗対策に関する自国の取組、法制度、国際協力等について説明を行いました。
- (3)我が国からは、塚田淳外務省宇宙・海洋安全保障政策室長が「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」及びFOIPの実現を目指す一環としてアジアの海洋安全保障のための我が国の国際協力について説明を行いました。その際、巡視船の供与、国連薬物犯罪事務所(UNODC)との連携、各国の海上法執行機関職員の招へい、海上保安庁のモバイルコーポレーションチーム(MCT)の派遣や、防衛省・自衛隊の主催による訓練などを通じた我が国による沿岸国との協力を紹介しました。また、海洋状況把握(MDA)における国際協力についても説明を行いました。加えて、海上保安庁から、同庁と沿岸国の海上保安機関との協力、海賊及び海上武装強盗対処のための我が国の取組や法制度について説明し、具体的な知見を参加国と共有しました。
- (4)我が国は、アジアの海賊・海上武装強盗の問題に対処するための地域協力促進の法的枠組みであるReCAAPの策定を主導し、主要な拠出国として、ISCによる締約国の能力向上のための事業を支援してきました。ISCや沿岸国の尽力も背景に、アジアの海賊等事案数はピーク時と比較して減少している一方で、我が国の重要なシーレーンであるシンガポール海峡における軽微な事案の増加が懸念されています。我が国として、アジアの海の安全に対するISCの貢献に感謝を伝えるとともに、ReCAAPの枠組みを活用し、関係国と協力しつつ、アジアの海賊・海上武装強盗対策において引き続き主導的役割を果たしていく姿勢を伝えました。
2 評価
- (1)本研修においては、各国からベストプラクティスが共有され、参加国の海賊対処関連の知識向上や沿岸国同士の協力促進に資するものとなりました。
- (2)また、FOIP、海における法の支配、海洋安全保障に資するアジア諸国との協力、MDA分野における国際協力、海上保安庁の具体的知見等、我が国の政策を研修参加者に共有し、理解を深めてもらう良い機会となりました。
- (3)今回の研修プログラムは、参加各国の海上法執行分野の知見や能力の向上及び地域の連携・協力関係促進に資することで、インド太平洋における自由で開かれた海洋秩序の維持・強化に役立つことが期待されます。
(参考)アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)
(1)経緯
2001年11月、小泉総理(当時)がアジアの海賊問題に有効に対処すべく地域協力促進のための法的枠組みの構築を提案。我が国主導の下、本協定の作成交渉が開始され、2004年11月に採択。2006年9月発効。
(2)協定締結状況(締約国:21か国)
日本、シンガポール、ラオス、タイ、フィリピン、ミャンマー、韓国、カンボジア、ベトナム、インド、スリランカ、中国、ブルネイ、バングラデシュ、ノルウェー、オランダ、デンマーク、英国、オーストラリア、米国、ドイツ
(3)協定骨子
- ア 情報共有センター(ISC:Information Sharing Centre)をシンガポールに設立(2006年11月)。
- イ ISCを通じた情報共有及び協力体制(容疑者、被害者及び被害船舶の発見、容疑者の逮捕、容疑船舶の拿捕、被害者の救助等の要請等)の構築。
- ウ ISCを経由しない締約国同士の二国間協力の促進(犯罪人引渡し、法律上の相互援助の円滑化、及び能力の開発等)。
(4)我が国の関与
我が国は、設立以来2022年3月まで3代の事務局長を継続的に派遣。また、ISC設置国であるシンガポールに次ぐ第2の拠出国として、ISCによる能力構築セミナーの開催等を財政的に支援。