人権外交
第49回人権理事会ハイレベルセグメントにおける中谷総理補佐官ステートメント
人権理議長、人権高等弁務官、御列席の皆様、
国際人権問題担当総理補佐官の中谷元です。人権をはじめとする普遍的価値を守り抜くことを重視する岸田内閣の下で、昨年末に初めて設置された専任補佐官として、今回ステートメントを行う機会を得たことを大変光栄に思います。
議長、まずはウクライナ情勢について言及せざるを得ません。ロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナの主権・領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反です。我が国は最も強い言葉でこれを非難します。また、世界人権宣言が「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利を承認することは世界における自由、正義及び平和の基礎である」と述べていることを想起しつつ、国際人道法を含め、国際法上の義務の履行を強く求めます。
議長、
人権や自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値は、いかなる国でも尊重されるべきものであり、人権擁護は全ての国の基本的な責務と考えます。
その信念の下、日本は、深刻な人権侵害に対してはしっかり声を上げる一方、各国の事情を考慮し、二国間対話や協力を積み重ねることで、各国の自主的な取組を後押ししてきました。
議長、
人権状況の改善は一朝一夕に成しえるものではなく、引き続き世界中で解決すべき課題があります。日本はアジア太平洋地域の人権理事国として、同地域及び国際社会の人権状況の改善に引き続き貢献していく決意です。
例えばカンボジアの人権状況について、昨年の人権理事会で日本が提出した決議がコンセンサス採択されました。同国の取組が促進され、人権状況の改善につながることを期待します。
また、ミャンマーにおいては、クーデターから1年を経た今なお、事態改善に向けた動きが見られないことを懸念しています。国軍に対し、改めて暴力の即時停止、拘束された関係者の解放と民主的な政治体制の早期回復について、具体的な行動を取るよう強く求めます。日本は、引き続きASEAN諸国を含む国際社会と緊密に連携し、事態の改善に向けて最大限努力していきます。
国際社会における普遍的価値である自由、基本的人権の尊重、法の支配は、香港や新疆ウイグル自治区を始め、中国においても保障されるべきです。昨今の情勢を深刻に懸念しており、中国に対し、透明性のある説明を含め、建設的で具体的な行動を改めて強く求めます。
北朝鮮による拉致問題は、日本の最重要課題です。拉致被害者の御家族も御高齢となる中、本件の解決には一刻の猶予もありません。これまで採択された北朝鮮人権状況決議は、拉致問題等を含む北朝鮮の深刻な人権侵害に対する国際社会の強い懸念の現れです。日本は、各国政府及び国際社会と緊密に連携し、北朝鮮に対し、拉致問題の即時解決に向けて具体的かつ前向きな行動を改めて強く求めます。
議長、
今日、あらゆる場面で人権尊重への取組が一層求められている中、社会経済活動全体で関連の取組を浸透させることが重要です。日本政府は、2020年に策定した「ビジネスと人権」に関する行動計画に基づく取組を一層加速するため、私の下に省庁横断的な会議を立ち上げました。国際協調による企業の予見可能性を確保しつつ、企業における人権尊重の取組を積極的に進めていきます。企業のためのガイドラインを今夏までに策定する作業も開始しました。
議長、
この機会に、日本の最近の取組を他にもいくつか紹介します。
日本は、国内外で、子どもに対する暴力をなくすための取組を推進しており、昨年8月、行動計画を策定しました。
ハンセン病差別撤廃に関しても、引き続き国際的な議論を主導し、特別報告者の活動を支援していきます。
また、日本は、先住民族であるアイヌの人々の誇りが尊重される社会の実現に取り組んでいます。昨年の東京オリンピック・パラリンピック大会では、伝統的なアイヌ舞踊を披露し、アイヌ文化を発信しました。この大会で、すべての人がお互いの人権や尊厳を大切にし支え合う共生社会の実現を目指す姿を世界に示すことができたことを嬉しく思います。
女性の人権の保護も重要です。本年、日本は脆弱な立場に置かれた女性に対する新型コロナ対策のため、UN Women等に約620万ドル拠出します。
議長、
韓国の代表が、慰安婦問題に言及しました。日本政府は、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年の日韓合意を含め、長きにわたって慰安婦問題に真摯に対応してきています。また、日韓合意に基づく事業については、多くの元慰安婦の方々から評価を得ています。以上から、韓国側の発言は受け入れられません。
議長、
日本は、人間の安全保障、「誰一人取り残さない」との理念の下、引き続き国際社会と緊密に連携して、人権の保護・促進に貢献していきます。
ご静聴ありがとうございました。