寄稿・インタビュー

令和8年8月31日

 5年ぶりの開催となる「V4+日本」外相会合に出席するため、スロバキアを訪問することができ嬉しい。7月1日にスロバキアがV4の議長国に就任して以降、V4が欧州以外の最初の対話の相手国として、日本を選んでくれたことは光栄である。この背景には日本とV4とが長年培ってきた信頼関係があり、今後の協力への期待を象徴するものである。

 今回、ブラチスラバで、V4諸国の友人たちとの間で、未来に向けた協力の方向性を議論したいと考えている。法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、国際社会の平和と安定を確保していくこと、また、開かれた市場を維持し、ルールに基づく国際経済秩序を守り抜くことは、日本とV4諸国に共通する利益である。欧州とインド太平洋の安全保障と経済が不可分であることは、今や明白である。

 日本は今年、10年前に安倍晋三総理が提唱した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の進化を発表した。このビジョンに基づき、各国が「自律性」、「強靱性」を強化するための取組を進めていく考えである。「自由」、「開放性」、「多様性」、「包摂性」、「法の支配」、こうしたFOIPを支える中核的理念は変わらない。私は、この進化したFOIPが、V4とのパートナーシップの更なる発展を支える柱になると確信している。なぜなら、世界のサプライチェーンが国境や地域を越えてつながる中、非市場的な政策・慣行や経済的威圧、特定の相手への過度な依存は、V4諸国、EU、そして日本が直面する共通の課題だからである。だからこそ、信頼できる同志国や友好国との連携を広げ、サプライチェーンを多角化し、危機に耐える「強靱性」と、自らの運命を自らが選択できる「自律性」を高めることが重要である。これこそ、我々が共に未来の世代に残したい自由で開かれた世界を実現するためのビジョンであると考える。

 こうした協力を具体化していく上で、100年以上の絆を有する日本とV4との間には、既に確かな土台が存在する。V4諸国に進出する日系企業は既に900社を超えている。日本の企業は長年にわたり、V4諸国に投資し、雇用を創出し、技術を根付かせ、現地の友人たちと共に成長してきた。そして今日この歩みは新たな分野へと広がりを見せ、V4諸国と日本の次の100年を創造し始めている。

 その象徴的な動きの一つが、ここスロバキアのコシツェで既に始まっている。U.Sスチール・コシツェは、来る10月1日から日本製鉄による直接出資体制に移行し、「日本製鉄スロバキア」として新たな一歩を踏み出すことになる。日本製鉄はスロバキアを欧州事業の中核拠点と位置付けており、人口約20万人のコシツェで、日本製鉄が維持する雇用数は約8,000人となる。そして、その8,000人の従業員の先には、その家族、取引企業、地域社会がある。日本製鉄が培ってきた技術と、コシツェが長年育ててきた人材と産業基盤が組み合わさることで、スロバキアから欧州、そして世界に高品質な鉄鋼を届けるとともに、地域経済の持続的な発展にも貢献していくことが期待される。

 未来の社会を設計する先端技術の分野においても、日本とV4諸国の協力は大きな可能性を秘めている。幾多のノーベル賞受賞者を含む多くの発明家を輩出してきた日本とV4の5か国は、その知的蓄積と技術力において、世界のイノベーションを牽引するフロントランナーたり得る存在である。今年7月、日本はEUの研究開発支援枠組である「ホライズン・ヨーロッパ」への準参加に関する協定に署名した。この歴史的な一歩を新たな起点として、AI、量子を含む先端科学技術分野において、日本とV4の研究者、大学、企業が共にイノベーション・エコシステムを創り上げていくことを強く期待している。研究開発の現場で生まれた小さな種を、V4の友人たちと共に育て上げ、いつか世界を変える大木へと成長させたい。これこそが、日本とV4が自律的かつ強靭な未来を自らの手で共に切り拓く道である。

 国際情勢、世界経済の不確実性が高まる今日だからこそ、問われるのは壁の高さではなく、信頼できるパートナーとの絆の深さである。5年ぶりの開催となる今回の「V4+日本」外相会合を、100年以上の歳月をかけて積み上げてきた信頼を次の高みへ、次の投資へ、次の技術へ、次の世代へと確実につなげる機会としていく決意である。今回のスロバキア訪問が、そうした未来への旅の出発点になるものと信じている。


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