寄稿・インタビュー

令和8年6月14日

 高市首相はジョルジャ・メローニ伊首相と強い信頼関係を築いており、今年は日伊外交関係樹立160周年(1866年8月25日)にあたる。両国政府が共有する本質的な価値観や原則とは何か。また、どのような分野において、協力と共同の取組をさらに深化させることができるか。

 日本とイタリアは、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった、基本的価値と原則を共有する同志国であり、自由で公正かつ開かれた国際秩序を守るという共通のビジョンを有している。G7メンバー国としても、様々な局面で協力している。

 このように価値と原則を共有する日伊の連携の更なる飛躍を目指し、2024年6月のG7プーリア・サミットの機会に両国首脳間で「日伊アクションプラン」が発表された。同アクションプランに沿った形で各分野における協力が着実に進展しており、本年1月のメローニ首相訪日時に、両国関係は「特別な戦略的パートナーシップ」と再定義され、更なる高みを目指すこととなった。

 両国が更に協力を強化することのできる分野としてまず挙げられるのは、経済安全保障分野の協力である。例えば、重要鉱物・半導体を含むサプライチェーンの多角化・強靱化に向けた協力の深化は両国共通の関心事項である。経済分野では、日伊間の貿易・投資の促進、企業間協力の更なる進展も目指していきたい。

 宇宙の分野でも協力の動きが進んでいる。例えば、スペースデブリ対策をはじめ、科学、安全保障、商業・産業分野での宇宙の活用において、日伊間の協力には大きな可能性がある。これらの点については、本年5月に東京で開催された第一回日伊宇宙協議でも議論された。量子分野においても、G7の共通ビジョンを踏まえ、標準化を含む国際連携を軸に協力が期待される。また、フュージョンエネルギー分野はイーター計画を通じて協力を進めているほか、AIロボティクス、バイオものづくり、火山・地震分野における科学技術協力が両国間で進展を見せている。このような先進技術に係る協力は、技術革新の時代において、両国の成長と発展に大きく資するものとなる。

 ますます複雑化し不透明さを増す現在の国際情勢下においては、防衛・安全保障分野での日伊協力も極めて重要となっている。日伊両国は、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であるとの認識、そして自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向けて取り組む意思を共有している。イタリアとの間で、国際社会の平和及び安全により積極的に寄与する上でも、協力を更に深化させていきたい考え。

 日本とイタリアは共に、中国のWTO加盟及びそれに伴う中国からの低価格製品の「流入」を受け、それぞれの発展モデルを見直す必要に迫られた。また、日伊は共に、先端技術に不可欠な重要鉱物の世界市場における中国の支配についても懸念を共有している。中国の商慣行は、「経済的威圧」の例として批判されている中、日本とイタリアは、重要鉱物のサプライチェーンのレジリエンスを強化するために協力することで一致している。貴見では、重要鉱物における中国依存に代わる信頼できる欧州諸国の代替案を構築することはどれほど喫緊の課題か。

 現下の厳しい国際情勢の中、各国が複雑に絡み合った相互依存関係にあることを前提としつつも、自らの運命を自らの手で決めるために必要な自律性・強靱性を高めていく必要性は一層高まっている。特に、重要鉱物の安定供給確保は、日・イタリア両国が戦略的自律性・強靱性を高める上で不可欠。

 本年1月にメローニ首相が訪日した際に、私とメローニ首相は、連名で「日本とイタリア、不公正な経済慣行に対抗」という共同寄稿を発表した。この中で私たちは、サプライチェーンをより強靱で安全かつ外的ショックに耐え得るものとすることが不可欠となっているとの共通の認識を示した上で、市場を歪める不公正な経済慣行に対抗していく決意を表明した。

 また、本年1月の首脳会談では、メローニ首相との間で、重要鉱物のサプライチェーン多角化・強靱化を含む経済安全保障分野における両国の協力を一層強化していくことを確認した。これを踏まえ、去る5月27日に東京にて実施した第一回日・イタリア経済安全保障協議において具体的な協力について議論を開始したところ。

 こうした二国間協力に留まらず、日・イタリア両国が参加するG7の場でも、重要鉱物に対する輸出規制を含め、経済的威圧や非市場的政策・慣行に対して深刻な懸念を共有し、連携して対処することを確認してきている。来るG7エビアンサミットでも、こうした点について突っ込んだ議論を行いたい。

 このように、特定国への依存低減に向けて、共通のビジョンを有するイタリアと共に、様々な機会を通じた具体的な協力を着実に進めていきたい。

 他方で、今日、中国は単なる軍事大国というだけではなく、東アジア(台湾の事例を念頭に)だけでなく(それ以外の地域にも)軍事力を誇示している。高市首相は、地域の安全保障を脅かす侵略について、日本は傍観するつもりはないことを明確にしている。日本が、自国の極めて防衛的な立場を乗り越えるために講じている具体的な措置は何か。また、国内の強い反対にもかかわらず、日本は平和主義的な憲法を改正し、再軍備に注力することはできるのか。

 日本は、戦後一貫して国際社会の平和と繁栄に貢献してきた。国連憲章を始めとした国際法を遵守し、国際社会における法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に取り組み続けてきた日本の姿勢は、国際社会でよく知られており、このような姿勢が変わることはない。日本政府は、専守防衛という受動的な防衛戦略を防衛の基本的な方針としており、国連憲章上認められている集団的自衛権について、国内法により、それが行使できる状況を限定的に定義している。

 その上で、中国・北朝鮮が軍事力を更に増強させ、また各国が、無人機の大量運用を含む「新しい戦い方」や長期戦への備えを急ぐなど、安全保障環境の変化が様々な分野で加速度的に生じている。このような状況を踏まえ、我が国として主体的に防衛力の抜本的強化を進めていくことが必要。まずは、現行の国家安全保障戦略に定める「対GDP比2%水準」について、前倒して、昨年度に措置することとした。

 また、日本の安全保障政策の基盤は、国家安全保障戦略を含む、国家防衛戦略及び防衛力整備計画から成る三文書であるが、国民の命と暮らしを守り抜くために何が必要なのか、現下の安全保障環境を踏まえて具体的かつ現実的に議論を積み上げ、三文書を本年中に改定し、現実的で強靱な安全保障政策を前に進める考え。なお、これは日本が直面する戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対するものであり、特定の国を対象としたものではない。

 中東危機は、先進工業国全体に深刻な影響を及ぼしている。日本は我々と同様、原材料やエネルギー資源に乏しいが、我々イタリアと異なり、福島の事故を受けて再考した後に原子力発電への投資再開を決定した。(望ましい)エネルギー的に自立した未来の実現という観点から、日本がイタリアにどのような教訓を提供できるか。

 日本は、エネルギー資源に乏しく、国土を山と深い海に囲まれるなどの地理的制約を抱えている。そのため、1970年代の石油危機などの経験を踏まえ、徹底した省エネルギーに加え、再エネ、原子力や火力の活用など、特定のエネルギー源に過度に依存しない分散化の取組を進めることにより、エネルギー安定供給の確保に努めてきた。

 こうした取組の中で、特にご指摘の原子力については、重要な選択肢として、再生可能エネルギーとともに最大限活用する方針を取っている。東日本大震災の事故の教訓を踏まえ、安全性確保と地域の理解を大前提として進めている。その上で、原子力はエネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源として大変重要であり、その活用は必要不可欠であると考えている。

 我が国のエネルギー政策の要諦は、一貫して、複数のエネルギー源が活用可能な状態を維持しつつ、エネルギー安定供給、経済効率性、環境への適合の最適なバランスを取ることにある。現下の中東情勢を受けて今後の国際エネルギー情勢は不確実性を増しているが、そのような中でも特定のエネルギー源に過度に依存することなく、技術的中立性に基づき、多様なエネルギー源と調達先を確保し続けることが一層重要。次世代革新炉の開発・設置、世界に先駆けた2030年代発電実証に向けたフュージョンエネルギーの挑戦を加速する。

 従前、米国は西側諸国の安全保障政策の礎となってきた。米国が、これまで平和と自由を保証してきた同盟における自らの存在感と役割を再考していることを我々は承知しているが、日本とイタリアは、将来の世界の勢力均衡においてどのような役割を果たすことができるか。

 日本とイタリアは基本的価値と原則を共有しており、安全保障分野を含む戦略的な連携強化は地域や国際社会全体の平和と安定の確保に極めて重要である。

 日本としては、日米同盟を我が国の外交・安全保障政策の基軸としつつも、イタリアを始めとした同志国との連携も一層強化し、地域及び国際社会の平和と安定に積極的な役割を果たしていきたいと考えている。

 厳しさを増す国際情勢の中で、各国が自らの将来を自らの手で決めるために必要な自律性・強靱性を強化していくことが重要との考えから、先月、自分は、進化した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を発表した。今後、進化したFOIPの下でもイタリアと協力して、具体的な協力を進めていきたい。

 日伊英による第六世代の戦闘機共同開発であるGCAPは、日伊両国間の新たな防衛分野における協力関係の最も具体的な象徴となっている。2035年までに最初の運用機を配備することを目指していると承知しているが、このプロジェクトの財政的持続可能性に疑問を呈するイタリアや日本の国会議員たちに対し、どのように回答をするか。また、ドイツなどの他国へも(GCAPの)パートナーシップを拡大する計画はあるか。

 GCAPは日英伊3か国の幅広い協力の礎となる事業。本事業を共同開発とするこ とにより、3か国各々の技術を結集しつつ、開発コストやリスクを分担して、将来の 航空優勢を担保する優れた戦闘機を開発できる。

 GCAPは日英伊3か国にとっての同盟国や同志国との協力を念頭に置いて進めて きたものであり、第三国との協力についても、GCAPがより良いプログラムとなる ようイタリア及びイギリスと連携して取り組んでいく。

 貴首相は日本の歴史上初めて首相の座に就いた女性であり、ジョルジャ・メローニはイタリア政府を率いる初の女性です。女性のリーダーシップは外交政策の進め方を変えていると考えるか。日本とイタリアの若い女性たちへ送るメッセージを如何。

 私としては、「総理大臣」を目指していたものの、「初の女性総理」を目指していたわけではないため、その点はあまり意識せずに日々の仕事に取り組んでいる。それでも、いわゆる「ガラスの天井」を一つ破ることができた、そのことで、「勇気付けられた」と受け止めてくださる方がおられるならば、とても嬉しく、光栄である。

 「ガラスの天井」の先には、「ガラスの崖」もある。組織の危機、いわば失敗しやすい状況では、女性がリーダーのポジションにつきやすいという現象だ。そして、実際に失敗すると、「女性はリーダーに向いていない」との偏見に繋がってしまう。このような言葉を一掃すべく、懸命に働き、結果を出していきたい。

 そして、女性活躍の推進・男女共同参画社会の実現は、全ての人が生きがいを感じ られる、個性と多様性が尊重される社会を実現するために極めて重要。我が国及び世 界の女性が、生き生きと自ら選んだ道を歩んでいけるよう、力を尽くしていく。

 メローニ首相は1月に訪日された際、女性指導者としての大きな名誉とともに重大な責任もあることに触れ、最善以上のことを行うことを意味する「頑張る」という日本語を紹介し、自分の限界に挑戦し続け、決して現状に満足しない、という姿勢に言及されたことをよく覚えています。世界の今と未来を良いものとするため、(同じくイタリア政府を率いる初の女性である)メローニ伊首相を始めとする世界のリーダーと共に「頑張り」たい。

 日伊におけるもう一つの共通課題は出生率低下である。これに関し、日本は、移民受入れを通じてこの問題を解決するつもりはないとの立場を明確にしている。イタリアは、多くの欧州諸国と同様にこの道(移民の受け入れ)を選択しているが、両者のアプローチにはどのような長所と短所があると考えるか。

 出生率低下は、将来の国内労働力人口の減少をもたらす重要な課題と認識している。この課題に対しては、まず、国内の労働参加率の向上や自動化等による生産性の向上に向けてしっかりと取り組むことが重要である。

 外国人労働者に関しては、専門的・技術的分野においては、我が国の経済社会の活性化に資することから積極的に受け入れ、それ以外の分野においては、国民的コンセンサスを踏まえつつ検討する、という方針をとっているところである。

 確かに、多くの外国人を受け入れることで、出生率低下に伴う国内労働力人口の減少に一定の歯止めをかけることが期待できるが、受入れ環境が整備されないまま、在留外国人の増加に対応できていない制度等の下で、多くの外国人を受け入れることは、社会、経済、雇用、教育、医療、福祉、地域生活、治安など、様々な場面で混乱や軋轢を招く可能性がある。

 我が国に在留する外国人は、外国人労働者のみならず、その家族等も含め、年々増加傾向にある。そこで、日本国政府は、将来を見据え、社会保障や教育等多角的な観点から、外国人受入れによるメリットや外国人受入れに伴う課題を詳細に検討し、我が国にとって最適な受入れに向け、基本的な考え方の検討を進めている。


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