寄稿・インタビュー
高市総理大臣のフィナンシャル・タイムズ紙(英国)への寄稿
「動揺する世界で強靭性の構築を」
国際社会は喫緊の諸課題に直面しています。その中でも重要なものの一つが、ホルムズ海峡をめぐる状況です。世界の物流の要衝であるホルムズ海峡は、国際公共財でもあり、同海峡における自由で安全な航行は日本や英国を含む数多くの国の繁栄・経済成長を支えてきました。
しかし、昨今の同海峡をめぐる事態は、我が国が一貫して支持してきた、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を揺るがすものと言えます。エネルギーを始めとする重要物資のサプライチェーンの強靱化のためにも、国際法が遵守される形で、ホルムズ海峡における航行を確保することが不可欠です。こうした考えは、多くの国々が共有するところであり、日本は私が来週出席するG7サミットを含め、国際社会と緊密に連携しつつ、必要な外交努力を粘り強く重ねていきます。
同時に、我々は、今般の動揺を教訓に、今後どのように国際社会の将来像を描くべきかという課題にも直面しています。ホルムズ海峡の事実上の閉鎖がもたらした現在の状況は、国際秩序の担い手である各国が、それぞれの自律性・強靱性を向上させ、役割を果たしていくことの重要性を我々に想起させました。
特に、世界のGDPの約50%を創出するインド太平洋地域は、今後の国際社会の平和と安定の鍵を握っています。英国や欧州が早期からコミットメントを示し、米国の国家安全保障戦略(NSS)にも優先目標として記載されているインド太平洋地域において、日本も、その安定に積極的に貢献し、責任を果たしていく必要があるとの考えを改めて強くしています。
このような観点から、私は本年5月に、進化した「自由で開かれたインド太平洋」(「進化版FOIP」)を発表しました。「進化版FOIP」は、法の支配や経済的繁栄、平和・安定の実現といった基本理念を堅持しつつ、現下の厳しい国際情勢を踏まえて、各国が自らの運命を自らの手で決めるために必要な自律性を身につけるとともに、地域全体が「共に、強く豊かになる」ことを目指すための取組を強化したものです。
とりわけ、経済安全保障分野での協力を強化しつつ、先端技術・イノベーションの側面でも連携を進めるとともに、ルールに基づく自由貿易の推進や投資の促進、経済的威圧への対応に取り組んでいきます。
先般、エネルギー供給の安定化という観点から、「パワー・アジア」を立ち上げました。この取組は、アジア諸国とともにエネルギーや重要物資のサプライチェーンの強靱化に取り組むものです。また、海底ケーブル、オープンRAN、衛星通信、オール光ネットワーク等、AI・データ時代に不可欠な基盤の整備を重点的に進める、「FOIPデジタル回廊構想」を推進しています。
現在のような地政学的な局面にあってこそ、各国との戦略的な協調を図る取組が重要となってくるのです。各国の強靱性の強化に向けた協力の推進は、インド太平洋地域に限らず、国際社会全体に必要です。
だからこそ、日本は、国際社会全体を視野に入れてきました。安全保障分野では、グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)に関して、英国及びイタリアとの間での協力が加速していることが象徴的です。加えて、本年の日本の防衛装備移転制度の見直しにより、日本と英国・欧州との間での相互運用性を更に高める協力が進むことが期待されます。さらに、ウクライナに対しては、これまで日本は約145億ポンドに及ぶ支援を行ってきました。英国・欧州のリーダーシップに敬意を払いつつ、引き続き連携して支援を継続していく考えです。
スターマー首相とは、「強化されたグローバルな戦略的パートナー」である日英間の協力を更なる高みに引き上げます。特に、エネルギーを始めとする経済安全保障のほか、”Beyond5G/6G”の研究を含む先端技術での協力、そして安全保障分野における協力を推進します。
新たな課題に対処するためには、新たな能力を獲得することが不可欠です。そのためには変化も必要です。政治的な抵抗を伴う場合もありますが、私は日本の「鉄の女」として、強い意志を持って必要な変革を成し遂げる決意です。今回の欧州歴訪を通じて、各国首脳と時代に即して変革していくことの意志を共有し、具体的かつ忌憚のない議論を重ねていきます。日本は、自由で開かれた国際秩序の維持・強化に、引き続き全力で取り組んでいきます。
