欧州安全保障協力機構(OSCE)

平成28年12月13日
OSCE外相理事会の出席者による集合写真
OSCE外相理事会に臨む、岸副大臣の様子

 12月8~9日,ハンブルク(ドイツ)において第23回OSCE外相理事会が開催され,岸信夫外務副大臣が日本代表として出席したところ,概要以下のとおり。

1 概要

  • (1)第23回OSCE外相理事会には,加盟57か国及び協力のためのパートナー11か国のうち,45か国の外相を含む各国代表が参加(我が国は協力のためのアジア・パートナー国)。

  • (2)会合では,大多数の参加国が,主にウクライナ情勢を挙げ,ヘルシンキ最終議定書の基本原則が遵守されていない欧州の安全保障環境の現状を指摘した他,難民・移民問題やISILを含むテロ組織への対応,また,議長国ドイツがテーマとして掲げた「対話の継続,信頼の再構築,安全保障の回復」に基づく諸活動やOSCEの組織力強化等について議論された。(ヘルシンキ最終議定書は,1975年に合意。OSCE(当時CSCE)加盟国間での主権平等,武力行使または武力による威嚇の禁止,国境不可侵,紛争の平和的解決,人権と自由の尊重等の原則,安全保障面での信頼醸成措置の促進等に合意。)

  • (3)ウクライナ問題については,主権や領土の一体性等の原則の尊重,ミンスク合意が早期かつ確実に履行されるために関係国が協力すべきこと,ウクライナにおけるOSCE特別監視団(SMM)の活動を評価しつつ,関連地域への完全なアクセスを求める発言が相次いだ。

  • (4)難民・移民問題及びテロ対策については,根本原因の解決のため社会経済面を含む包括的対策の重要性を指摘するとともに,異なる宗教・民族に対する差別や嫌悪感の克服を呼びかける声が多く聞かれた。

  • (5)多くの国が,欧州の安全保障の前提には民主主義,人権,法の支配等があるとして,これらの価値は譲歩できない旨述べた。また,包括的な安全保障の実現に向けた議長国ドイツの活動のうち,軍事活動にかかる信頼醸成措置を規定するウィーン文書の改定に向けた議論(政治・軍事分野),連結性向上(経済・環境分野),ジェンダーや表現の自由(人権分野)等への取り組みへの支持・継続の期待が聞かれた。

  • (6)岸副大臣は,テロ,難民・移民問題,ウクライナ情勢,北朝鮮の核実験・ミサイル発射問題,東シナ海・南シナ海情勢の現状と対応,及び,法の支配の貫徹等について発言し,OSCE及び加盟国と共に国際社会の平和と安定に向け取り組む強い決意を表明(発言骨子,全文については,以下4参照)。

  • (7)第24回OSCE外相理事会を2017年12月7日及び8日にウィーンにおいて開催することが決定された。

2 OSCEトロイカとアジア・パートナー会合

  • (1)OSCEトロイカ(注:前議長国セルビア,現議長国ドイツ,次期議長国オーストリアの三者)とアジア・パートナー国との間で,本年のOSCEとアジア・パートナーによる活動を振り返るとともに,協力のあり方や将来の可能性につき意見交換を行った。

  • (2)岸副大臣からは,OSCEを通じた対話や透明性の強化による信頼醸成が国際社会の平和と安定をもたらすとの信念を共有し,OSCEを通じた我が国の貢献について説明した上で,アジアと欧州の安全保障環境は不可分であることを強調し,OSCEと我が国を含むアジア・パートナーの協力と対話を強化したい旨述べた。

  • (3)各国から,本年6月にバンコク(タイ)でOSCE共催会議が成功裏に終了したことに祝意が表されるとともに,来年の会合はアフガニスタンが担当し、ベルリン(ドイツ)で開催されることが確認された。

3 ザニエルOSCE事務総長との会談

 岸副大臣は,ザニエル事務総長と会談を行い,「法の支配」に反する活動によって,国際的な秩序が浸食される懸念に対し,民主主義の定着や国際社会の平和と安定のため,大きな役割を果たすOSCEと我が国との協力を継続していくことで一致した。

4 岸外務副大臣の発言

 (以下骨子,発言全文日本語(PDF)別ウィンドウで開く英語(PDF)別ウィンドウで開く
 岸副大臣は,外相理事会において概要以下のとおり述べた。

  • (1)欧州・アジア双方において、安全保障環境が厳しさを増しており、欧州のみならずアジアにおいてもテロが相次ぎ、多くの市民が犠牲になっている。

  • (2)国際社会全体の対処能力を底上げするため,我が国は,OSCEを通じて,国境管理スタッフカレッジを支援し,アフガニスタンと中央アジア諸国等の行政官に対し,国境管理についての訓練を支援。

  • (3)我が国は,世界が直面する未曾有の規模の難民・移民の移動による深刻な人道危機に対し,2016年から3年間で総額28億ドル規模の人道支援を行うことを表明し,積極的に貢献。

  • (4)ウクライナにおける紛争の未解決及び緊張の継続を懸念。我が国は,ウクライナの安定に大きな役割を果たすOSCE特別監視団(SMM)に財政的・人的に貢献。また,ウクライナの国内改革を後押しするため,約18.5億ドルの対ウクライナ支援を実施中。

  • (5)アジアにおいても,北朝鮮による核実験・ミサイル発射や東シナ海・南シナ海における現状変更の試みなど法の支配が脅かされる事態が継続。国際社会が声を一つにして,かかる試みを止める必要がある。

  • (6)我が国は,最も歴史あるパートナーとして,今後ともOSCE及び加盟国と共に国際社会の平和と安定に向けて取り組んでいく。

(参考)欧州安全保障協力機構(OSCE)

 OSCEは,北米から欧州,中央アジアの57か国が加盟する安全保障機構。外相理事会は,原則として年1回開催。日本は,協力のためのアジア・パートナー。


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