欧州
NATOウェールズ首脳会合概要
(9月4日~5日,於:ニューポート(英国))
平成26年9月8日
1.NATO軍の即応性・防衛能力の強化
- (1)ロシアによるウクライナ攻撃,中東の過激派台頭,北アフリカの不安定化を受け,NATOが全方位的な任務を引き受け,加盟国を全方位的な脅威から守れるよう,NATOの集団防衛を強化する即応性行動計画(RAP)に合意。これは,NATO即応部隊(NRF)内の初動対処部隊(VJTF/極めて短時間で展開可能な部隊)の創設,迅速な増派のための東方加盟国内への司令部の常時配置,受入施設の整備,装備・物資の事前配置,更に集団防衛に焦点を当てた演習計画の強化を含むもの。バルト諸国,ポーランド,ルーマニアが施設提供の意思を表明。
- (2)防衛能力を強化するサイバー防衛等の優先分野のパッケージに合意。枠組国概念(FNC)を承認し,独英伊等を中心に有志加盟国による能力開発・部隊編成を実施。
2.大西洋間の絆と責任の分担の再確認
- (1)「大西洋間の絆に関するウェールズ宣言」を採択し,ロシアによる違法なクリミア併合・継続的攻撃,北アフリカと中東の暴力・過激派の拡大に備えるため,北米及び欧州の全加盟国の国民,領土,主権及び共通の価値を防衛する継続不変のコミットメントを再確認。
- (2)防衛予算の反転,効果的使用と負担・責任の均衡達成のため,NATO指標の対GDP比2%未達成国は10年以内に同水準に向けて引き上げるよう目指し,防衛予算の研究開発を含む主要装備品支出充当率も20%に増額するよう目指すことに合意。
3.ウクライナ危機とNATOロシア関係
- (1)NATOウクライナ委員会は共同宣言を採択し,ロシアに対し,クリミア「併合」撤回,東部ウクライナ武装勢力支援停止,部隊撤収等を要求。また,ウクライナに対し,指揮統制通信,兵站・標準化,サイバー防衛等の新規支援を表明し,ウクライナとNATO間の相互運用性向上のための高次の機会への参加を期待。
- (2)ロシアはNATOロシア基本文書・ローマ宣言に違反したが,NATOの今次首脳会合での諸決定はルールに基づく欧州安全保障枠組を尊重するもの。実務協力の停止と政治対話の維持は継続。今後のNATOロシア関係はロシアの行動の変化による。
4.パートナーとの関係深化等
- (1)アフガニスタン戦闘任務終了後もパートナーとの連携を維持・強化するために,相互運用性イニシアティブを策定。4日,NATO加盟国と日本を含む24パートナー国との国防相級の相互運用性プラットフォーム設立会合が開催された。また,軍事的貢献により高次の機会が提供される5パートナー国(スウェーデン,フィンランドの,グルジア,オーストラリア,ヨルダン)との会合を開催。
- (2)防衛治安能力構築支援イニシアティブの開始を決定。グルジア,ヨルダン,モルドバに適用。リビアは状況が許せば,イラクは先方要請があれば支援の用意あり。NATOは対イラク援助・輸送調整の支援に合意。「イラク・レバントのイスラム国(ISIL)」の脅威を認識し,暴力を非難。
5.アフガニスタン
- (1)アフガニスタンに関する首脳会合には日本を含む61か国・機関が出席。
- (2)冒頭,NATOの作戦に現場で従事する軍人に対して敬意を表するための式典が執り行われた。これを受け,兵士への賞賛を示すため軍隊に関する首脳宣言が公表された。
- (3)会合では,アフガニスタン支援のコミットメントが再確認され,2人の大統領候補に対し,(1)アフガニスタン国民が受け入れ可能な選挙結果を迅速に出すこと,(2)必要な安全保障上の協定(BSA,SOFA)を可能な限り早く締結することが要請された。
- (4)採択されたアフガニスタンに関する首脳宣言においては,NATOは来年以降,短期的には「確固たる支援(Resolute Support)」任務,中期的にはアフガニスタン治安部隊(ANSF)の財政的な持続可能性のための貢献,長期的にはNATO・アフガニスタン間の永続的パートナーシップを通じてアフガニスタンにコミット,アフガニスタン政府に対しては,腐敗との闘いを維持・強化し,2024年までに自国の治安部隊に完全な財政的責任を持つことを求めることなどが確認された。
6.その他
- (1)次回首脳会議
コモロフスキ・ポーランド大統領が2016年のNATO首脳会合をワルシャワで開催する意思を表明。 - (2)新規加盟国
新規加盟国につき,NATO加盟準備を前進させるためグルジアへの実質的な支援パッケージに合意。モンテネグロにつき,集中的な検討を開始し,2015年末まで加盟招請の可否を決定。マケドニア,ボスニア・ヘルツェコビナは進展なし。