欧州安全保障協力機構(OSCE)

平成27年12月7日
OSCE外相理事会の出席者による集合写真
OSCE外相理事会に臨む、武藤副大臣の様子

12月3日~4日,ベオグラード(セルビア)において第22回OSCE外相理事会が開催され,武藤容治外務副大臣が日本代表として出席したところ,概要以下のとおり。

1 概要

  • (1)第22回OSCE外相理事会には,加盟57か国及び協力のためのパートナー11か国のうち,40か国程度の外相が参加。
  • (2)会合では,「ヘルシンキ最終文書採択40周年」を機に改めてその基本原則の実現のため努力すべき点で一致しつつ、主にウクライナ情勢,難民・移民問題,ISILを含むテロ組織への対応等について議論された。
  • (3)ウクライナ問題については、主権、領土の一体性等の原則を重視すること、ミンスク合意を確実に履行するために関係国が協力するべきである旨表明する国が相次いだ。また,多くの国がOSCEの特別監視団(SMM)を始めOSCEが果たしている役割を高く評価した。
  • (4)テロ対策については,一連のテロ行為を非難するとともに、根本原因であるシリア内戦の解決のため、関係国が協調した対応が必要であるとの議論を展開した国が相次いだ。また,OSCEが得意とする社会・経済面を含めた包括的対策の重要性を指摘する声が多かった。
  • (5)難民問題については,欧州は未曾有の難民流入に直面しており、協調した対応が必要である旨発言した国が相次いだ。
  • (6)武藤副大臣は,欧州・アジアの安全保障環境の不可分性,「ヘルシンキ最終文書」基本原則の遵守の重要性とウクライナ及び東シナ海・南シナ海情勢の現状と対応,テロ及び難民問題について発言し,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の下,OSCE及び加盟国とともに国際社会の平和と安定に向け取り組む強い決意を表明。
  • (7)2016年の議長国はドイツが務めること決定が決定された。次期議長国のドイツより、第23回OSCE外相理事会をハンブルクにおいて開催することが表明された(2016年12月8日及び9日)。

2 OSCEトロイカとアジア・パートナー国会合

  • (1)OSCEトロイカとアジア・パートナー国の間で,本年のOSCEとアジア・パートナーとの活動を振り返るとともに、協力のあり方や将来の可能性につき意見交換を行った。
  • (2)武藤副大臣からは,アジアと欧州の安全保障環境は不可分である点を強調しつつ、OSCEに対する我が国の貢献について説明した上で、OSCEと我が国を含むアジア・パートナーの協力と対話を強化したい旨述べた。
  • (3)各国から、本年6月にソウルにて行われたアジア・パートナー国会合が成功裏に終了したことに祝意が表されるとともに、来年の会合はタイにて6月に行われることが確認された。

3 武藤副大臣の発言(骨子)

 米国カリフォルニアで起きた銃撃事件と最近の一連のテロ事件の犠牲者に哀悼の意を表した上で以下のとおり述べた(発言全文(日本語(PDF)別ウィンドウで開く英語(PDF)Open a New Window))。

  • (1)欧州・アジア双方において安全保障環境が厳しさを増すとともに,テロ,サイバー等脅威も多様化し,もはや一国のみでは平和と安定を保つことができない。国際社会が協力して積極的に平和と安定を作り上げていく必要があり,我が国は,OSCEとともに国際社会の平和と安定に一層貢献していく。
  • (2)今年は1975年の「ヘルシンキ最終文書」採択から40周年。近年,紛争の平和的解決等の同文書の原則が蔑ろにされかねない事態が生じている。
  • (3)ウクライナ情勢は依然予断を許さない状況であり,我が国は,ウクライナの安定に大きな役割を果たすOSCE特別監視団(SMM)に財政的・人的に貢献。日本の貢献は,多様なアクターが信頼醸成に協力していることを示しており,OSCEの信頼性向上にも寄与。
  • (4)また,東シナ海・南シナ海においても一方的な現状変更の試みが顕在化しており,国際社会が国際法に基づく平和的解決を促すべき。
  • (5)テロは,我々が共有する価値に対する挑戦であり,国際社会が一致団結して対策を講じるべき。
  • (6)難民問題について欧州諸国への敬意と連帯を表明。我が国は,本年シリア・イラクの難民国内避難民支援のための約8.1億ドルの支援に加え,セルビア,マケドニア等に対し支援。
  • (7)我が国は,今後とも,国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の下,OSCE及び加盟国とともに国際社会の平和と安定に向け取り組む強い決意を表明。

[参考]
 OSCEは,北米から欧州,中央アジアの57か国が加盟する安全保障機構。外相理事会は,原則として年1回開催。日本は,協力のためのアジア・パートナー。


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