安倍総理大臣

平成26年5月9日

 安倍総理は,4月29日から5月7日まで,ドイツ,英国,ポルトガル,フランス,スペイン,ベルギーを訪問したところ,全体の意義と成果は以下のとおりです。

 欧州は,日本と,自由・民主主義・法の支配・人権などの基本的価値を共有し,その価値を基盤に,世界の平和と繁栄の実現に向けて,共に行動する同志です。また,欧州は,言語の力や歴史的背景などによって,アフリカ,中南米,中東など,世界の各地域がつながり結ばれる「結節点(コネクティング・ポイント)」です。更に,欧州は,国際世論をつくる発信力,主要な国際的枠組みにおける規範形成力,世界のGDPの30%を占める経済規模を有しています。
 このような観点から,日本が「地球儀を俯瞰する外交」を展開する上で,欧州は強力なパートナーであり,EUとの共同プレス声明の副題が示すとおり,共に行動するパートナーです。今回の欧州訪問を通じて,主に以下の5つの柱について連携・協力を強化しました。

1.「アベノミクス」を通じた世界への貢献

 各国首脳との会談を通じ,アベノミクスに対する期待と関心が引き続き高いことが伺えました。
 本年は,日本のOECD加盟50周年にあたり,閣僚理事会議長国を代表して,安倍総理より基調演説を行いました。日本が現在進めている経済・財政政策と、世界経済への貢献について、世界に力強く発信し,各国からは強い期待が寄せられました。また,シティで開催した晩餐会では,昨年6月に同じ場所で演説を行ってからの1年間にアベノミクスが生んだ効果を具体的に説明し,日本の努力と成果が参加者から高く評価されました。
 また,アベノミクスによって再興した日本と,力を取り戻しつつある欧州経済の連携強化も確認しました。ドイツ・英国・フランス・ベルギーで欧州企業関係者と活発な意見交換を行い,お互いに投資を活性化し,叡智を寄せてイノベーションを推進していくことで一致しました。
 さらに,日EU・EPAについて,総理自身から,欧州訪問中,様々な機会を通して,2015年中の大筋合意を目指したいとの考えを伝えるとともに,各国首脳と包括的かつ高いレベルのEPAの早期締結の重要性を確認しました。

2.日欧の安全保障協力を通じた「積極的平和主義」の実践

 ウクライナ情勢からも明らかなように,日本と欧州の安全保障環境は密接にリンクし,厳しさを増しています。また,海洋における「法の支配」を含め,共通のグローバル課題がより深刻になっています。
 NATOの最高意思決定機関である北大西洋理事会(NAC)での総理演説や,各訪問国・機関の首脳との会談を通じて,日欧の安全保障環境に関する共通認識を醸成するとともに,「積極的平和主義」を旗印とする日本の安全保障政策について,高い評価と支持が相次いで表明されました。
 欧州は,日本が「積極的平和主義」を実践していくに当たり,価値を共有する重要なパートナーです。今回の欧州訪問を通じて,「法の支配」を堅持し,海洋の自由といった原則を全ての国と改めて確認しました。
 各訪問国との二国間だけではなく,地域全体の安全保障に取り組むNAT0・EUとの間においても,安全保障協力を具体的に前に進めました。例えば,マリ,コンゴ民主共和国等におけるEUの平和・安定化のための活動との連携,ソマリア沖・アデン湾の海賊対処のためのNATO・EUとの共同訓練,防衛装備技術に関する英国,フランスとの協力等,具体的な協力案件に合意しました。

3.「女性が輝く社会」の実現に向けた日欧協力

 「女性の力」を最大限活かすことは,21世紀を平和で豊かな時代にしていくためのキーワードであり,日本は,「女性が輝く社会」の実現に力を入れて取り組んでいます。欧州は,女性分野の先駆者であることから,各訪問国・機関の首脳との会談で,ウィメノミクスと安全保障分野での女性の参画と保護という2つの角度から,女性を取り上げました。
 主な成果として,9月に日本で開催予定の「女性の輝く社会に向けた国際シンポジウム」に関し,各界で活躍する女性リーダーの参加も含め,その成功に向けて協力していくことで一致しました。また,NATO本部に女性の政府職員を派遣することで合意しました。

4.欧州における日本の魅力増進

 日本と欧州が,それぞれの精神性や価値に裏付けられた文化の普及を行うことは,更なる相互理解にとって重要です。
 今回の欧州訪問の機会を捉えて,例えば,駐フランス大使公邸において,オランド大統領の出席を得て,和食を紹介するレセプションを開催し,共通語になりつつあるUMAMI,季節感,おもてなしを始め,日本ならではの「心」を発信しました。
 また,各訪問国の首脳との会談や,英における2019年ラグビー・ワールドカップ及び2020年東京オリンピック・パラリンピックの協力に関する覚書の署名,ロンドン・オリンピックのレガシーの視察を通じて,2020年に向けて,オリンピック・ムーブメントの推進を始め,スポーツに根付く世界共通の価値を共に広めていくことへの決意もあらためて示しました。

5.G7ブリュッセル・サミットに向けた連携強化

 来月のG7ブリュッセル・サミット前に,ウクライナでは情勢が更に緊迫し,大統領選挙がひかえており,その平和的かつ民主的な実施が極めて重要です。各訪問国・機関の首脳等との会談において,ウクライナ情勢について率直な議論を行いました。
 各国からは,日本が欧州各国との連帯を示していることに対し高い評価が示され,日本のウクライナ支援に対して謝意が表されました。また,ウクライナ情勢の安定のためには,ウクライナ自身の政治的・経済的な安定が不可欠であり,これを支援していくべき点で一致しました。更に,ロシアとの関係では,各国間でニュアンスの違いはあるものの,ロシアとの対話のドアを開けておくべきであり,ロシアが国際社会の責任あるプレーヤーとしての役割を果たすよう促すべきとの意見が大勢でした。

 今回の訪欧における,以上5つの柱での成果を基に,日本が,「地球儀を俯瞰する外交」を展開する上で,世界の平和と繁栄の実現に向けて共に行動する強力なパートナーとして,欧州との連携や協力をさらに強化していきます。


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