寄稿・インタビュー

令和7年8月26日

 8月26日から27日にかけて、日本の外務大臣として3年ぶりにウズベキスタンを訪問します。以前から望んでいたウズベキスタンへの訪問が実現し、大変うれしく思います。 ウズベキスタンをはじめとする中央アジアと日本との交流の歴史は、千年以上も前に遡ります。シルクロードを通じて、多くの文化や技術が日本に到達し、日本の歴史や社会に大きな影響を与えてきました。数千キロの陸と海がウズベキスタンと日本を隔てているにもかかわらず、我々は長きにわたり、互いに文化的・民族的な親近感を育んできたのです。

 また、先の大戦終了後に旧ソ連によって多くの日本人が抑留されましたが、ウズベキスタンにおいて強制労働に従事した日本人とウズベキスタンの市民との間には、温かい交流もあったと承知しています。日本人が建設に従事したナボイ劇場の堂々たる姿は両国の友好の象徴となり、1966年のタシケント地震の際もびくともせず、今もなお市民がオペラやバレエを観劇する場所として親しまれています。

 日本はウズベキスタンの独立後、1992年にいち早く外交関係を樹立しました。以降30年以上にわたり、ウズベキスタンを一貫して支援し、ウズベキスタンの友人であり続けてきました。そして、交流と友好の長い歴史を礎として、両国関係は着実に発展してきています。日本は、ウズベキスタンが進める経済・社会面での改革努力を強く支持し、ウズベキスタンの発展のために、インフラ整備や人材育成など、様々な協力に力を尽くしてきました。

 例えば、近年では、ミルジヨーエフ大統領が推進する経済改革や脆弱層支援を後押しする財政借款の供与に加え、ナボイ火力発電所をはじめとする複数の火力発電所の近代化を通じた経済インフラの整備も支援しています。気候に対して強靱な農業を通じた自立支援計画や技術供与など、アラル海の枯渇に起因する様々な問題にも共に取り組んでいます。また、医療へのアクセス向上や、国作りのための人材育成といった分野における支援を実施しています。こうした日本のこれまでの貢献が、現在のウズベキスタンの発展の一助になることができていれば、これ以上に喜ばしいことはありません。

 2016年のミルジヨーエフ大統領の就任以来、ウズベキスタンは同大統領の下で着実な経済発展を遂げており、これに伴い、日本とウズベキスタンの二国間関係は近年ますます発展しています。特に、2019年12月のミルジヨーエフ大統領の訪日は、両国の戦略的パートナー関係の質を高め、多方面での協力を進める大きな契機となりました。それ以来、両国は、エネルギーや農業分野での新たな協力を進め、両国間のビジネス環境を一層改善する取組や地方交流・学術交流等の強化を通じた幅広い人的交流に取り組んでいます。

 また、日本は、中央アジアの重要性に早くから着目してきました。そして、日本が触媒となって、中央アジア諸国自身が主体となる地域協力を推し進めることを目的に、2004年には世界に先駆けて「中央アジア+日本」対話の枠組みを立ち上げました。これまで9回開催された外相会合をはじめ、20年間以上にわたる「中央アジア+日本」対話のたゆまぬ歩みの中で行われた数多くの政治対話や人的交流は、日本と中央アジアを結ぶ強固な紐帯となっています。

 今日、中央アジアは着実な経済発展を遂げ、欧州とアジアをつなぐ交易路として、その重要性はますます高まっています。同時に、国際情勢の変化により、中央アジア諸国が大きな影響を受けていることも日本はよく認識しています。中央アジアを取り巻く環境が急激に変化している今こそ、中央アジアにおける地域協力は不可欠となっています。

 このような中、ミルジヨーエフ大統領のイニシアティブの下、ウズベキスタンが中央アジア諸国間の対話の促進に主導的な役割を果たし、国境や水資源などの重要な問題について建設的、平和的な対話が行われていることを高く評価します。これは、「中央アジア+日本」対話の目的とも軌を一にするものです。日本としても、こうした情勢も踏まえ、「中央アジア+日本」対話の枠組みも活用して中央アジアとの関係を更に強化していく、そして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を共に堅持していく、それが今回の私の訪問の大きな目的です。

 8月27日に予定されているサイードフ外務大臣との会談においては、初となる外相戦略対話を実施し、政治、経済、文化交流をはじめとした幅広い分野における更なる関係発展や国際的な課題への対処について、率直な議論を行う予定です。日本は、今後も、人材育成、グリーン、基礎的社会サービスの向上といった分野でウズベキスタンの経済成長を支援していくとともに、ますます発展していくウズベキスタンとの互恵的協力の潜在性を開花させていきたいと考えます。

 最後に、本年4月から「いのち輝く未来社会のデザイン」のテーマの下開催されている大阪・関西万博では、「知識の庭(The Garden of Knowledge)」をコンセプトとするウズベキスタンのパビリオンに連日多くの訪問者が訪れております。8月17日にはウメロヴァ大統領府創造経済・観光局長御出席のもと、ウズベキスタンのナショナルデーイベントが開催され、大変な盛況を見せました。万博を契機として両国の様々なレベルでの人的交流や経済的な交流が一層強固なものになることを期待しています。万博閉幕まで約1ヶ月半となりましたが、ぜひ、多くのウズベキスタンの皆様に日本を訪問していただきたいと思います。

 日本国外務大臣  岩屋 毅


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