寄稿・インタビュー

令和6年5月2日

バンコクポスト紙(タイ)

 日本の経済協力開発機構(OECD)加盟60周年を迎える年に、インドネシア、タイ、ベトナム、シンガポール、ラオス(ASEAN議長国)及びASEAN事務局の参加を得て、日本がOECD閣僚理事会(MCM)の議長国を務めることは日本にとって大変光栄なことです。

 日本は、アジアからの数少ないOECD加盟国として、MCMにおいて重要なインド太平洋地域の国々と協力し、包摂的で持続可能な成長の実現に向けて、この地域の国々に優れた政策慣行を共有し、これらの国々がより良い共通ルールを模索できるようにするため、OECDがインド太平洋地域に関与していく重要性を強調します。

 昨年の日ASEAN関係樹立50周年に続き、2024年の年初から、OECDと東南アジアの関係に大きな進展が見られました。東南アジアで最も先進的な経済大国の一つであるタイがOECDへの加盟意図を表明しました。この決定は、タイがこれまでOECDに関与し続けてきた成果です。また、OECDはインドネシアの加盟審査を開始することを決定し、シンガポールとASEAN事務局とはそれぞれ2022年に覚書を締結しました。この大きな節目にあたって、改めてOECDによる東南アジアへの関与、特にタイのOECD加盟意図表明の意義について振り返りたいと思います。

 OECDは経済成長を促進することを目的とした国際機関として、長い間、ベスト・プラクティスのデータ収集や加盟国間の相互学習の実施を通じて、ルール作り及びニーズに合わせた幅広い政策提言やガイドラインの作成において主導的な役割を果たしてきました。OECDによって定められたルールやスタンダードは、世界の安定的な経済成長の基盤となってきました。

 タイはOECDとの関係を強化することにより、必要な国内改革を行い、中所得国の罠を乗り越えるための基準となるOECDのデータや分析から恩恵を受けることができます。さらに重要な点として、タイはOECDのルールやスタンダードを採用することで民間投資を呼び込むことができます。タイが目覚ましい経済成長を続けつつ、同時に持続可能な発展の実現に向けた資金需要ギャップを埋める上で、公的資金に加えて民間投資が入ることはタイにとって朗報です。

 OECDもまた、この新たな時代における東南アジア諸国の世界経済上の重要性の実態を反映し、ルール作りに当たって東南アジア諸国の声に耳を傾けるよう努めるべきです。OECD加盟国全体のGDPの世界経済に占める割合は、2000年の約80%から2020年には約60%まで低下しています。世界各国の成長に変化が見られるにもかかわらず、OECD加盟38か国のうち26か国はヨーロッパ諸国であり、アジア太平洋地域からの加盟国は日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの4か国にとどまります。OECDは自由貿易の促進と世界の持続可能な経済成長の達成に重要な役割を果たしてきましたが、OECDが国際場裡でその関連性と影響力を高めるために、今こそ東南アジアへの関与を強化するべき時です。OECDは経済のダイナミズムの変化に合わせて多様性を広げる必要があります。ルールは、主要なステークホルダーがその策定と実施に関与して初めてその目的を果たします。日本は、この課題を解決する鍵はOECDが世界で最もダイナミックな成長地域である東南アジアとの関係を強化することにあると考えます。

 OECDによるインド太平洋地域への関与をさらに推し進めるため、本年のMCMでは、日本の主導により2014年のMCMで設立されたOECD東南アジア地域プログラム(SEARP)の10周年を記念し、OECDによる東南アジアへの一層の関与を促します。この重要な機会に、日本は、東南アジアと世界経済全体の持続可能な成長のための環境を整えるため、OECDと東南アジアの橋渡し役を担う強い決意を持っています。

 日本はまた議長国として、東南アジアにおけるSDGsの達成に貢献するため、ジェンダーや気候変動といった分野横断的なトピックをMCMの議題に盛り込んでいきます。最も重要な点として、日本は、今年のMCMを、インド太平洋地域との関与を一層強化することにより、ルールに基づく自由で公正な経済秩序をさらに強化する機会とします。

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