寄稿・インタビュー

令和6年5月2日

ユーラクティブ(Euractiv)(欧州)

 日本の経済協力開発機構(OECD)加盟60周年を迎える年に、日本がOECD閣僚理事会(MCM)の議長国を務めることは大変光栄なことです。

 MCMにおける日本の主要な狙いは、現在の国際情勢が深刻な課題に直面する中で、OECDが果たす新たな役割の重要性を示すことです。

 その際、日本は、インド太平洋地域の国々に政策上のグッド・プラクティスを共有し、これらの国が持続可能で包摂的な成長の実現に向けてより良い共通ルールを模索する上で、インド太平洋地域への働きかけに当たってOECDが果たす重要な役割を強調したいと考えます。

 過去半世紀以上に亘り、OECDは経済成長を促進し、自由で多角的かつ無差別な貿易を拡大するルールやスタンダードを策定する上で、重要な役割を果たしてきました。

 冷戦時代、OECDは自由な経済秩序を堅持する西側諸国の結集点でした。最近では、OECDは貿易、投資の自由化、国際課税、責任ある企業行動(RBC)の世界的な推進などの分野で重要な推進役となっており、ビジネスと労働の両面から持続可能な発展の基盤を形成しています。

 OECDのルールとスタンダードは、安全で、予測可能なビジネス環境の基準とみなされており、OECD加盟国間でのビジネス活動の活性化につながります。

 今日、OECDへの期待はさらに高まっています。数多くの統計データを基に客観的な分析を通じてルール作りを推進するOECDのユニークな強みは、分裂しがちなグローバルな課題に対して各国が共通認識に達する一助となります。

 「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や先進国が、客観的なデータの不足を理由に共通認識に達することが難しいこともある、貿易、気候変動、及び環境分野において、意見や利害の相違を克服するOECDの橋渡しとしての役割が特に重要です。

 OECDの専門的な分析と政策提案は、それぞれの国の背景を考慮した公正な解決策を全ての国に提供します。

 さらに、OECDは参加国に対して、関連データや政策のベスト・プラクティスを共有するグローバルなプラットフォームも提供しています。OECDの炭素緩和アプローチに関する包摂的フォーラム(IFCMA)はこのような国際協力の好例であり、OECD加盟国と非加盟国の双方が、多様な道筋を通じてネットゼロ排出を達成するとの共通目標に向けて取り組んでいます。

 より具体的には、IFCMAは、データと情報のより良い共有、エビデンスに基づく相互学習、及び包摂的な多国間対話を通じて、世界的な排出削減努力を促進することを目的としています。私たちは、グローバルな課題に対処するOECDの強みを活用し、多国間協力を強化しなければなりません。

 OECDのルールとスタンダードは、世界各国がそれらを遵守することで一層影響力を持つことに繋がります。

 今日、OECD自身も、特に新興の非加盟国が経済的影響力を拡大させている中で、世界経済におけるその関連性と影響力を維持するにあたり、厳しい課題に直面しています。

 このことは、OECD加盟国のGDPの合計が世界のGDPに占める割合が、2000年の約80%から2020年には約60%まで低下したことに表れています。日本は、この課題に対する解決の鍵は、世界で最もダイナミックな成長センターの一つである東南アジアへのOECDによる関与を深めることだと考えています。

 OECDは、特に東南アジア諸国といった新興国の意見を取り入れることの重要性を認識してきました。

 日本は、OECDの東南アジア地域への関与を強化するため、2014年にOECD東南アジア地域プログラム(SEARP)の立ち上げを主導しました。この取組の成果として、今年は大きな進展が見られ、2月にOECDはインドネシアの加盟審査を開始することを決定し、タイも同様にOECD加盟の意図表明を行いました。

 インドネシア及びタイは、経済大国の証であるOECD加盟に意欲を示し、OECDのルールやスタンダードを積極的に採用しようとしています。さらに、シンガポール及びASEAN事務局がそれぞれ2022年にOECDと覚書を締結したことも心強いです。この進展は、OECDのルールとスタンダードの関連性の向上に大いに資するものです。

 今年のMCMは、欧州及びその他の地域の繁栄の要であるOECDのスタンダードを東南アジアに拡げる歴史的な機会となります。

 東南アジア地域にOECDのスタンダードを拡めることは、欧州各国がこの地域でのビジネス活動を拡大することに役立つだけでなく、国際社会が直面している差し迫った課題への対応の一助になります。

 この記念すべき機会に、日本は、アジア太平洋地域において4か国しかないOECD加盟国の1つとして、世界の持続可能な成長に向けた環境を整備するため、OECD及び東南アジア諸国と緊密に協力していく考えです。

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