経済外交

平成26年1月21日
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)第4回総会会場

1.会議概要

IRENA第4回総会で発言する加茂佳彦駐アラブ首長国連邦特命全権大使
  • (1)1月18日及び19日,アラブ首長国連邦のアブダビにおいて国際再生可能エネルギー機関(IRENA:アイリーナ)第4回総会(議長:コルドウェル・メキシコ・エネルギー大臣)が開催され,加盟国,憲章未批准の署名国,加盟手続中の国等あわせて150カ国以上が参加した。約120の関係国際機関,オブザーバー,民間企業等を含めると,出席者は1,000人以上に達した。我が国からは,加茂佳彦駐アラブ首長国連邦特命全権大使を代表として,外務省,経済産業省,農林水産省及び国際協力機構(JICA)からなる代表団が参加した。
  • (2)今次総会は,2010年7月にIRENA憲章が発効して以降,4回目の総会となった。批准国数は,前総会(2013年1月)から19か国増加し,124か国(含むEU)となった。前総会で加盟の意思を表明した中国等が新規加盟国として今次総会に参加した。
  • (3)今次総会では,IRENA事務局から,IRENA史上初となる機関刊行物である『REthinking Energy』,2030年に向けた再生可能エネルギーのロードマップ『REMAP2030』の進捗について発表があった。各国からは,IRENAが再生可能エネルギーに特化した国際機関として着実に成長し,その活動が具体的成果を挙げていることに対する評価が表明されるとともに,国連の「万人のための持続可能なエネルギー(SE4ALL)」イニシアティブ*のハブ機関としてのIRENAの役割に対する期待が寄せられた。
  • (4)また,今次総会では,2014-15年作業計画予算,IRENA事務局長の選定・任命に係る手続等が承認されるとともに,我が国を含む7か国がIRENA/アブダビ開発基金(ADFD)プロジェクトの第2期資金サイクルにおける諮問委員に選出された。
  • (5)我が国代表である加茂大使は,IRENAに対する我が国の財政的・知的・人材育成的貢献,JICAや日本エネルギー経済研究所の活動を含む再生可能エネルギー分野における我が国の貢献やその強み,日本とIRENAの今後の協力活動等について発言を行った。任意拠出金(2013年は約81万ドルを拠出済み,2014年は予算成立を条件に約82万ドルを拠出予定)をはじめとする我が国からIRENAへの様々な支援・貢献に関しては,アミン事務局長や他の国々から深甚なる謝意が表明された。
  • (6)今次総会において,我が国が2015年1月に開催予定の次期総会議長国に指名された。同副議長国には,カザフスタン,ケニア,ニュージーランド及びペルーが指名された。

2.主な討議の内容

(1)2013年作業計画予算の執行状況

 アミンIRENA事務局長による2013年作業計画予算(18百万ドル)の執行状況に関する報告を受け,加茂大使より,概要以下の内容の発言を行った。

  • 機関刊行物を含む各種刊行物,RRA(再生可能エネルギーに関する潜在可能性調査)等の様々な活動を通じて,IRENAが再生可能エネルギー分野における国際協力の中核として着実に成長していることを高く評価。
  • 我が国はIRENAを,財政的,知的,人材育成的側面で支援。
  • 財政貢献として,2013年には総額約81万ドルの任意拠出金を拠出。この中には,IRENAの機関刊行物,REMAP2030,RRA等への支援が含まれる。
  • 知的貢献として,バイオマスにかかる事業を支援している他,JIRCAS(独立行政法人国際農林水産業研究センター)がIRENAと協力覚書(MOU)を締結し,研究者を派遣。また,IRENAとOLADE(ラテンアメリカ・エネルギー機構)共催の地熱・中南米セミナーへ我が国より専門家を派遣。
  • 人材育成面での貢献として,NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は,IRENAとの間のMOUに基づいて,2週間,アブダビと日本で約40名の研修生を招待してキャパビル研修を実施。

(2)2014-15年作業計画予算

 事務局長による2014-15年作業計画予算(20百万ドル/年)の説明を受け,加茂大使より,概要以下の内容の発言を行った。なお,同作業計画予算は,活発な意見交換の後,承認された。

  • 再生可能エネルギーの加速的導入は,気候変動への対応,エネルギー・アクセスの向上及びエネルギー安全保障のため,国際社会にとっても重要な課題。この観点から,SE4ALLのハブ機関としてのIRENAの役割にも期待。
  • SE4ALLにも資する日本の国際貢献として,例えば,我が国は,ODAによる途上国支援を実施。日本は,エネルギー分野のODAにおいて,2012年までの5年間(累計)で95億ドルの支援を実施しており,OECD・DACメンバー中トップドナー。我が国のエネルギー分野のODAのうち,再生可能エネルギーのシェアは約24%を占め,金額にして約23億ドル。
  • 日本ODA実施機関であるJICAは,地熱,風力,太陽光発電,小水力,バイオ燃料を含む分野で,50か国以上の途上国において再生可能エネルギー関連プロジェクトを実施。
  • また,人材育成分野の貢献として,例えば,日本エネルギー経済研究所を通じて過去9年間で約20カ国を対象に約900人の研修生受入,約100人の専門家派遣を実施。
  • このように,案件形成に係るFS(事業化調査),マスタープランの作成から出資・融資,技術協力や人材育成まで,案件のあらゆる段階において,JICA,NEDO,JIRCASなどの関連機関が有する様々なツールを用いて,各国のニーズに応じた形で支援をカスタマイズできることが我が国の強み。 我が国の経験や技術をフル活用して,再生可能エネルギーの世界的な普及促進に引き続き貢献していきたい。
  • IRENAを,財政的,知的,人材育成的側面で支援する我が国の姿勢は不変。2014年には,予算の成立を条件に,総額約82万ドル相当の任意拠出を行う見込み。
  • 人材育成に関しては,来月東京で,アフリカ・太平洋島嶼国12か国を対象とした研修プログラムや国際セミナーをIRENAの協力を得ながら実施する予定。
  • このように,我が国はIRENAを非常に重視しており,その発展に一層貢献するべく2015年総会の議長国に立候補したところ。IRENAがその専門性や強みを生かしながらグローバルエネルギーガバナンスの一翼を担うよう,その活動を引き続き支援していく。

(3)第5回総会議長の指名

 2015年1月に開催予定の第5回総会の議長として,我が国が議長国として指名された。これを受けて,加茂大使より,同指名に対する謝意を表明するとともに,我が国としてはIRENA事務局やホスト国のア首連等と密接に連携しながら次回総会を成功させるべく万全の準備を進めていきたい旨発言した。

(4)IRENA/アブダビ開発基金(ADFD)プロジェクト

 我が国を含む7か国がIRENA/アブダビ開発基金(ADFD)プロジェクトの第2期資金サイクル(任期は2014年1月より1年)における諮問委員会の正式メンバーに選出された。

(5)その他の事項

 今次会議において,IRENA事務局長の選定・任命に係る手続,財務規則及び財務手続の一部改訂等が承認された。

(6)次回会議

 第5回総会は2015年1月18日及び19日に開催されることとなった。

(注)「万人のための持続可能なエネルギー」(Sustainable Energy for All: SE4All)

  • (1)SE4Allは,潘・国連事務総長の二期目の優先課題の一つ。2030年までに,(1)近代的エネルギーへの普遍的アクセスを達成,(2)世界全体でのエネルギー効率の改善ペースを倍増,(3)世界全体のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーのシェア倍増,の3つの目標の達成を目指す。
  • (2)2012年9月に立ち上がった諮問委員会は,潘事務総長とキム世銀総裁を共同議長とし,ケリー米国務長官,デンマーク開発大臣,WHO事務局長,UNDP総裁,IEA(国際エネルギー機関)事務局長,IRENA事務局長,堀江地球環境問題大使が主要メンバーに含まれている。

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