G20(金融・世界経済に関する首脳会合)
G20外相会合(概要)


現地時間20日及び21日(日本時間同日)、南アフリカ・ヨハネスブルグにてG20外相会合が開催され、岩屋毅外務大臣が出席したところ、概要は以下のとおりです。今回の会合では、ウクライナ情勢や中東情勢を含む地域情勢や、11月のG20サミットに向けた取組について議論が行われました。議長国南アフリカは、「連帯、平等、持続可能性」 というテーマの下、(1)災害強靱性・対応の強化、(2)低所得国に対する債務持続可能性の確保、(3)公正なエネルギー移行のための資金動員、(4)包摂的な成長及び持続可能な開発のための重要鉱物の活用という4つの優先分野を提示し、各メンバーから支持を得ました。
1 セッション1「開会」
現地時間20日午後2時30分(日本時間同日午後9時30分)から約30分間行われた本セッションでは、マタメラ・シリル・ラマポーザ・南アフリカ共和国大統領(H.E. Mr. Matamela Cyril RAMAPHOSA, President of the Republic of South Africa)及びロナルド・ラモラ・南アフリカ共和国際関係・協力大臣(Hon. Mr. Ronald LAMOLA, Minister of International Relations and Cooperation of the Republic of South Africa)が開会のスピーチを行いました。
2 セッション2「世界の地政学的状況」
現地時間20日午後3時40分(日本時間同日午後10時40分)から約4時間20分間行われた本セッションでは、ウクライナ情勢や中東情勢等を始めとする地域情勢に関する議論が行われました。
- 冒頭、岩屋大臣から概要以下を述べました。
ア ロシアによるウクライナ侵略を始め、国際社会が法の支配に対する大きな挑戦に直面する中、法の支配に基づく国際秩序を回復し、国際社会の平和と安定を確保することが必要。
イ 東シナ海・南シナ海を含め、世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試みは決して認められない。
ウ 日本は、こうした考えに基づき、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け、引き続きパートナーと共に具体的な連携・協力を進めていく。 - 岩屋大臣は、ウクライナ情勢等について概要以下を述べました。
ア ロシアによるウクライナ侵略に関しては、現在、平和実現のため、様々な外交努力が行われており、こうした動きにより、長年にわたる戦闘行為が終結し、困難な状況の打開へとつながっていくことを期待する。
イ 平和実現にあたっては、引き続き、同志国と連携しつつ、ウクライナを支えていくとともに、中長期的な復旧・復興支援にも貢献していく。
ウ 欧州とアジアの安全保障は不可分。露朝協力を深刻に懸念する。北朝鮮兵士の戦闘への参画を強く非難する。安保理決議の完全な履行を含め、国際社会による強力な対応が必要。
エ 拉致問題の即時解決に向けたG20各国の理解と協力をお願いしたい。 - 岩屋大臣は、中東情勢について概要以下を述べました。
ア ガザにおける停戦合意の誠実かつ着実な履行が重要。ガザのデイアフターは、中長期的な中東地域の平和と安定に直結する。国際社会全体で支援する必要がある。日本は、引き続き二国家解決を支持する。喫緊の人道支援とともに、中長期的な復旧・復興支援でも積極的な役割を果たしていく。
イ シリアについて、更なる難民・避難民を発生させないためにも、長年にわたり悪化した人道状況を改善する必要がある。また、シリアの将来はシリア人によって決められるべきであり、ISILが再び勢力を拡大しないようにするためにも、平和的で安定した包摂的な移行が重要。 - 岩屋大臣は、アフリカ情勢について概要以下を述べました。
アフリカの平和と安定も極めて重要。スーダンやコンゴ民主共和国東部の情勢について、両国及び周辺国、特に現地の人道状況の悪化を深く憂慮する。当事者に対して、停戦や持続的な和平のための交渉等を促すべく、国際社会が一致して行動する必要がある。 - 最後に、岩屋大臣から、国際社会を分断ではなく協調に導くためには、G20が国際協調を主導していく必要があると指摘しました。また、岩屋大臣は、対話を通じて共通点を探し、立場の違いや対立を超え、全ての国が責任を共有する形で具体的な連携・協力を進めていきたい旨述べました。
3 セッション3「2025年のG20の目標」
現地時間21日午前9時30分(日本時間同日午後4時30分)から約4時間10分行われた本セッションでは、南アフリカ議長下でのG20の成果等に加え、国際社会が直面する地球規模課題全般に関する議論が行われました。
- 冒頭、岩屋大臣から概要以下を述べました。
国際社会は、気候変動、災害、食料安全保障といった様々な地球規模の課題に直面している。そのような中にあって、G20は、分断と対立ではなく、共通点と一致点を見出し、全てのメンバーが責任を共有した形で、課題解決を主導していく必要がある。 - 岩屋大臣は、南アフリカが提示する優先課題及び日本が重視する事項について概要以下を述べました。
ア 日本は、南アフリカが掲げる優先課題を支持する。とりわけ、日本は、防災・災害対応の強化、重要鉱物の活用、債務問題を重視しており、G20メンバーと協力して取組を推進したい。
イ 日本は世界有数の災害発生国であり、世界一の防災大国を目指している。仙台防災枠組の取組推進に貢献しつつ、日本が有する知恵や技術を、G20を始めとする国際社会と共有し、世界で頻発する地震、台風等の大規模自然災害への備えと対応の強化に貢献したい。
ウ クリーンエネルギーへのスムーズな移行のためには、サプライチェーン多様化を通じた重要鉱物の安定供給が極めて重要である。日本は、重要鉱物の貿易における公平な競争条件の確保に向けた取組を推進している。また、強靱で包摂的なサプライチェーンの強化(RISE)等の取組も通じて、責任ある重要鉱物サプライチェーンの構築につながる資源プロジェクト立上げや、現地高付加価値化に向けた資源国の人材育成や技術協力などを含めて鉱山開発を支援している。
エ 途上国が直面する債務問題への対応は急務。そのために、G20「共通枠組」のプロセス迅速化と、債務透明性の一層の確保が重要。
オ AIについては、イノベーションを促進し、機会を最大限活用するとともに、人間中心のAIを促進し、「安全、安心で信頼できるAI」を実現したい。AIの利益が途上国にも広く行き渡るよう、デジタル格差を解消することが重要。日本は、アフリカを含む途上国におけるAIガバナンスの構築及び強化に向け、引き続き支援していく。
カ 自由で公正な経済秩序は世界経済の成長と繁栄を支える基盤。喫緊の課題であるWTO改革は、本年がWTO設立30周年であることもモメンタムにしつつ、G20の場でも議論していきたい。 - 岩屋大臣から、アフリカとの連携強化について概要以下を述べました。
ア 2023年にAU(アフリカ連合)がG20メンバーとなり、本年は初めてアフリカでG20が開催されるなど、G20でもアフリカとの連携・協力が益々重要になっている。
イ アフリカは、若く、潜在力と希望溢れる大陸。日本は、長年にわたり、アフリカのオーナーシップと国際社会によるパートナーシップとの精神に基づき、協力を推進してきた。
ウ 8月には日本で首脳級の第9回アフリカ開発会議(TICAD9)を開催予定であり、諸課題への解決策をアフリカ諸国と共に創るべく取り組んでいく考え。TICAD9での成果をG20の取組に繋げていきたい。 - 岩屋大臣から、G20に関する評価等について概要以下を述べました。
G20の重要性が増すにつれ、扱う分野の裾野が広がってきている。G20の本来の役割、これまでの成果や課題をレビューすることに賛成する。最も重要なことは、今後、一層効果的・効率的かつ具体的な行動により、国際社会の問題解決を主導するようなフォーラムにしていくこと。メンバー間でよく議論していきたい。 - 最後に、岩屋大臣から、議長国南アフリカのおもてなしに謝意を述べつつ、日本はG20ヨハネスブルク・サミットの成功に向けて積極的に貢献していく旨述べました。
(参考) G20外相会合
- 日程
2月20日(木)
第1セッション 開会
第2セッション 世界の地政学的状況
2月21日(金)
第3セッション 2025年のG20の目標 - G20外相会合の参加国・機関
(ア)G20メンバー
日本、南アフリカ(議長国)、アルゼンチン、豪州、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、トルコ、英国、米国、AU(アフリカ連合)、EU(欧州連合)
(イ)招待国
アルジェリア、エジプト、アイルランド、オランダ、ナイジェリア、ノルウェー、シンガポール、スペイン、アラブ首長国連邦
(ウ)国際機関
アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)、アフリカ開発銀行(AfDB)、欧州評議会開発銀行(CEB)、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)、東アフリカ共同体(EAC)、中部アフリカ諸国経済共同体(ECCAS)、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、国連食糧農業機関(FAO)、経済公正機関(IEJ)、国際通貨基金(IMF)、国際電気通信連合(ITU)、新開発銀行(NDB)、経済協力開発機構(OECD)、南部アフリカ開発共同体(SADC)、サウスセンター(TSC)、国際連合(UN)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連アフリカ経済委員会(UNECA)、世界銀行(WB)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)