G20(金融・世界経済に関する首脳会合)

令和6年11月18日
リオデジャネイロの風景を背景に、集合写真撮影をする首脳陣 集合写真 (写真提供:内閣広報室)
セッション1で発言する石破総理大臣 セッション1 (写真提供:内閣広報室)
セッション2の会議場の様子 セッション2 (写真提供:内閣広報室)

 現地時間11月18日(日本時間18日)、G20議長国ブラジルの主催により、同国リオデジャネイロにおいてG20リオデジャネイロ・サミットが開催され、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ・ブラジル連邦共和国大統領(H.E. Mr. Luiz Inacio Lula da Silva, President of the Federative Republic of Brazil)が議長を務め、石破茂内閣総理大臣が出席したところ、1日目の概要は以下のとおりです。

 セッション1及び2を通じて、ロシアのウクライナ侵略に関し、日本を含む多くのメンバーから、国連憲章を遵守し、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和を実現することの重要性が強調されました。また、緊迫化する中東情勢について、日本を含む多くのメンバーから、人道状況の改善の必要性と、事態の早期沈静化に向けた全ての当事者による最大限の自制と国際法の遵守の必要性が強調されました。特にセッション1では、戦争や紛争が飢餓と貧困の悪化をもたらしているという点、また、セッション2では、国際社会はウクライナ情勢や中東情勢に効果的に対処できておらず、安保理を含む国連改革が必要である点が強調されました。

 なお、セッション2の終了後、G20リオデジャネイロ首脳宣言が発出されました。

1 セッション1「飢餓と貧困との闘い」

  1. 現地時間午前11時15分(日本時間午後11時15分)から約4時間15分行われた本セッションでは、飢餓・貧困対策を中心とした開発課題について議論が行われました。また、本セッションに先立ち、「飢餓と貧困に対するグローバル・アライアンス」が創設され、日本もこれに参加しました。
      全てのメンバーが飢餓・貧困の撲滅に向けた取組の重要性を強調しつつ、「飢餓と貧困に対するグローバル・アライアンス」への参加を表明しました。また、いくつかのメンバーが食料安全保障や持続可能で強靱な食料システムの構築の重要性を強調した他、持続可能な開発の実現に向け、G20が責任を共有し、地球規模課題への取組を主導していく必要性が指摘されました。

  2. 本セッションにおいて、石破総理大臣から、概要以下のとおり述べました。
    1. 飢餓・貧困、気候変動、災害、紛争など、世界は今や、待ったなしの課題に直面している。そのような中にあって、G20は、分断と対立ではなく、共通点と一致点を見出し、全てのメンバーが責任を共有した形で、課題解決を主導していく必要がある。
    2. 飢餓・貧困との闘いに関し、日本は、人間の安全保障の理念の下、飢餓・貧困を撲滅し、誰もが人間の尊厳を持って幸福に生きられる豊かな社会を実現していきたいと考える。そのためには、食料安全保障や持続可能で強靱な食料システムの構築という観点が重要であり、日本は、「飢餓と貧困に対するグローバル・アライアンス」にも積極的に貢献していく。
    3. 日本は、過去5年間だけでも約150億ドルの飢餓・貧困対策支援を実施してきた。ブラジルにおける長年のセラード開発は、不毛の大地を世界最大の大豆生産地に変え、世界の食を支えている。森林伐採をせずに劣化した牧野を畑地へ転換する、持続可能な農業の実現に向けた協力も行っていく。また、小規模農家の能力構築にも力を入れており、売ることを意識した営農・栽培スキルの向上を目指し、アフリカ、中南米を中心とする世界69か国に支援の輪を広げている。さらに、日本の高い技術を活用し、温室効果ガス排出の低減を含めた持続可能で生産性の高い農林水産業を中南米、アフリカ諸国を含む新たなパートナーにも広げていきたい。
    4. 1993年から日本が主催している首脳級のアフリカ開発会議(TICAD)は、飢餓・貧困撲滅に向けた取組を強調する重要な機会である。来年8月に日本で開催予定のTICADでも、アフリカ諸国と共に、更なる取組を行い、質の高い成長を実現していきたい。
    5. 気候変動に関し、世界の温室効果ガス排出量の約8割を占めるG20は、世界のリーダーとして、気候変動対策、経済成長、エネルギー安全保障の同時実現に責任を有する。1.5℃目標と整合する総量削減目標を含む、野心的な次の「国が決定する貢献(NDC)」を策定し、実行することが重要である。各国の事情に応じた多様な道筋の下で、2050年ネット・ゼロという共通目標を達成したいと考える。
    6. 環境に関し、日本は、2040年までに、追加的なプラスチック汚染をゼロにするという野心の下、本年末までのプラスチック条約の策定に向けて議論を主導していく。
    7. 持続可能な開発を実現していく観点からも、日本は、ブラジルが主導した「バイオエコノミー・ハイレベル原則」を支持する。
    8. 防災に関し、世界で頻発する地震、台風等の大規模自然災害への対応は待ったなしである。国民を災害から守るためには、平時から不断に万全の備えを行うことが必要不可欠である。日本は、専任の大臣と災害対応の専門家を揃えた防災庁の設置を目指している。引き続きG20メンバーと共に、「仙台防災枠組」を着実に実施し、防災対策を強化する。また、避難所環境の改善、備蓄の確保、ボランティアなど民間セクターとの連携向上等について知見や経験の共有を進めていきたい。

2 セッション2「グローバル・ガバナンス機構改革」

     
  1. 現地時間午後4時15分(日本時間19日午前4時15分)から約2時間50分行われた本セッションでは、国連総会の活性化や国連安保理改革を含む国連改革、国際開発金融機関(MDBs)改革、WTO改革やAIに係る国際協力を含むグローバル・ガバナンス改革について議論が行われました。
     本セッションでは、全てのメンバーから、国際社会が直面する課題の解決にはグローバル・ガバナンス改革が必要である点が強調された他、多くのメンバーから、AIの国際的なガバナンスに向けた協力の重要性が指摘されました。

  2. 石破総理大臣からは、概要以下のとおり述べました。
    1.  
    2. 世界は今、歴史の転換点に立っている。激動の時代にあって国際社会が協調するためには、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、そして、責任を共有するグローバル・ガバナンスの構築が鍵であると考えている。
    3. ロシアによるウクライナ侵略は、法の支配に基づく国際秩序に対する明確な挑戦である。今般のロシアによるウクライナ全土のエネルギー関連施設等への攻撃を強く非難する。また、国連安保理決議に違反する核・ミサイル活動を進める北朝鮮とロシアとの間の軍事協力の一層の進展を我が国は深刻に懸念する。一日も早く、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和を実現する必要がある。
    4. 中東における、情勢の緊迫化と危機的な人道状況を強く懸念している。事態の早期沈静化に向け、ガザでの停戦と人質の即時解放を改めて求めるとともに、全ての当事者に対し、最大限の自制と国際人道法を含む国際法の遵守を強く求める。
    5. 国連安保理は、現下の諸課題に対処できておらず、改革の緊急性について、未来サミットにおいて国際社会が一致した。日本として、常任・非常任理事国双方の拡大を支持する。具体的議論を早急に進めるべきであり、日本は、国連安保理改革を含む国連の機能強化に貢献していき、総会の果たすべき役割も検証していく。
    6. 国際開発金融について、財務大臣が合意した国際開発金融機関(MDB)ロードマップを歓迎する。MDB改革では、各機関の既存の自己資本を最大限活用し、追加の融資余力を生み出す取組が重要。日本は、世界銀行への保証の供与等を通じ、これに貢献してきた。また、MDBsが、借入国による民間資金・国内資金の動員強化を支援することも重要。低所得国支援に関し、MDBsに加え、ドナー国の役割も不可欠であり、日本は、アジア開発基金や国際開発協会において、長らく主要ドナー国として役割を果たしてきた。途上国債務に関しては、G20「共通枠組」における債務再編プロセスの迅速化や、債務透明性の一層の確保が必要。また、日本は、中所得国の債務再編で新興債権国と協調した初の事例であるスリランカの債務再編を主導してきた。日本は引き続き、途上国が直面する課題の解決に向け、必要な支援を行っていく。
    7. WTO改革について、デジタル化が進む国際貿易の世界において、WTO改革は喫緊の課題であり、共に政治的な推進力を与えたい。特に、紛争解決機能の回復は急務。また、WTOが目の前の課題を着実に実現していくことも重要。
    8. 新たな課題への対応も重要。安全、安心で信頼できるAIの実現のため、日本は、「広島AIプロセス」で策定した国際指針や国際行動規範の実践の拡大に取り組んでいる。同時に、デジタル格差への対応も重要。日本は、引き続き途上国の人材育成や制度構築を支援していく。G20でも協力していきたい。
    9. G20が国際協調を主導していくべき分野は多く、その役割は一層重要になっている。対立を超え、全ての国が責任を共有するグローバル・ガバナンスを構築していこう。


(参考1)G20リオデジャネイロ・サミット
     
  1. 日程
  2.  11月18日(月曜日)
      第1セッション 飢餓・貧困との闘い
      第2セッション グローバル・ガバナンス機構改革
     11月19日(火曜日)
      第3セッション 持続可能な開発とエネルギー移行

  3. 参加国・国際機関
    1.  
    2. G20メンバー
    3.   日本、ブラジル(議長国)、アルゼンチン、豪州、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、英国、米国、AU、EU
    4. 招待国
    5.   アンゴラ、ボリビア、チリ、コロンビア、エジプト、マレーシア、モザンビーク、ナイジェリア、ノルウェー、パラグアイ、ポルトガル、カタール、シンガポール、スペイン、タンザニア、アラブ首長国連邦、ウルグアイ、ベトナム、バチカン
    6. 国際機関
    7.  アフリカ開発銀行(AfDB)、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、ラテンアメリカ開発銀行(CAF)、国連食糧農業機関(FAO)、金融安定委員会(FSB)、米州開発銀行(IDB)、国際労働機関(ILO)、国際通貨基金(IMF)、アラブ連盟(LAS)、新開発銀行(NDB)、国際連合(UN)、国連貿易開発会議(UNCTAD)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、世界銀行(WB)、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)

(参考2)

 G20リオデジャネイロ首脳宣言(英文(PDF)別ウィンドウで開く和文仮訳(PDF)別ウィンドウで開く


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