G7
G7広島サミット(概要)
令和5年5月26日
5月19日から21日にかけて岸田総理大臣は広島にてG7サミットを議長として主催したところ、概要は以下のとおり。
議題・日程
- 出席者
- G7
日:岸田総理(議長)、伊:メローニ首相、加:トルドー首相、仏:マクロン大統領、米:バイデン大統領、英:スナク首相、独:ショルツ首相、EU:ミシェル欧州理事会議長、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長 - 招待国(8か国)
豪州:アルバニージー首相、ブラジル:ルーラ大統領、コモロ(アフリカ連合(AU)議長国):アザリ大統領、クック諸島(太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国):ブラウン首相、インド(G20議長国):モディ首相、インドネシア(ASEAN議長国):ジョコ大統領、韓国:尹(ユン)大統領、ベトナム:チン首相 - 招待機関(7国際機関)
国連:グテーレス事務総長、国際エネルギー機関(IEA):ビロル事務局長、国際通貨基金(IMF):ゲオルギエヴァ専務理事、経済協力開発機構(OECD):コーマン事務総長、世界銀行:マルパス総裁、世界保健機関(WHO)(オンライン参加):テドロス事務局長、世界貿易機関(WTO):オコンジョ=イウェアラ事務局長 - ゲスト国
ウクライナ:ゼレンスキー大統領
- G7
- 日程及び出席国
- 5月19日(金曜日)
- セッション1「分断と対立ではなく協調の国際社会へ/世界経済」
出席国:G7メンバー - セッション2「ウクライナ」
出席国:G7メンバー - セッション3「外交・安全保障」
出席国:G7メンバー - 5月20日(土曜日)
- セッション4「パートナーとの関与の強化(グローバル・サウス、G20)」
出席国:G7メンバー - セッション5「経済的強靱性・経済安全保障」
出席国:G7メンバー - セッション6「複合的危機への連携した対応」
出席国:G7メンバー、招待国・機関 - セッション7「持続可能な世界に向けた共通の努力」
出席国:G7メンバー、招待国・機関 - 5月21日(日曜日)
- セッション8「ウクライナ」
出席国:G7メンバー、ウクライナ - セッション9「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」
出席国:G7メンバー、招待国、ウクライナ - 閉会セッション
出席国:G7メンバー
成果文書
G7広島サミットにおいて発出された文書は以下のとおり。
各セッション概要
セッション1「分断と対立ではなく協調の国際社会へ/世界経済」
- 総論
- 岸田総理から、世界が気候危機、パンデミック、ロシアによるウクライナ侵略といった複合的危機に直面し、また、国際社会の構造的な変化が進む中、国際社会は歴史的な転換期を迎えている、基本的価値を共有するG7は、国際社会の重要な課題に効果的に対応し、世界をリードしていかなければならない旨述べました。
- また、岸田総理から、今回のサミット全体を通じての大きなテーマは、分断と対立ではなく協調の国際社会の実現に向けたG7の結束の確認と役割の強化であり、そのための積極的かつ具体的な貢献を打ち出すことである、そのため、第一に法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くこと、第二にG7を超えた国際的なパートナーとの関与を強化することという二つの視点を柱とし、G7として明確に打ち出したい旨述べました。更に、G7の揺るぎない結束を確認しつつ、国際社会が直面する諸課題の解決に向けた我々の断固たる決意を、この広島の地から共に強く発信していきたい旨述べました。
- G7首脳は、これら二つの視点の重要性について一致しました。
- 世界経済
- 総論
- 岸田総理から、ロシアによるウクライナ侵略が長期化する中で、インフレ圧力を始め、世界経済の直面する困難は深刻化している、機動的かつ柔軟に経済政策を行い、必要に応じ、脆弱層に対して一時的かつ的を絞った支援を行いつつ、物価の安定のために万全を期す必要がある旨述べました。また、金融システムは強靭だが、金融セクターの状況を引き続き強い警戒心を持って注視するとともに、金融システムの更なる強化に向けた議論も進めなければならない旨述べました。
- また、岸田総理から、経済政策においては、マクロ的な成長だけでなく、持続可能性や所得・富の平等など、様々な価値に配慮する必要性が一層高まっている旨述べるとともに、日本は「新しい資本主義」を掲げ、持続的な経済成長のため供給サイドの改革を進め、賃上げとともに「人への投資」の強化と国内投資の拡大を重視し、成長と分配の好循環を推進してきた、官民が連携しながら、持続可能で力強い成長の実現に向けて取り組んでいきたい旨述べました。これに対し、複数の国から同調する発言がありました。
- G7首脳は、クリーン・エネルギー経済への移行に向けた取組、特定国への依存の低減、信頼性あるサプライチェーンの構築に向け、G7間での緊密に連携するとともに、国際的なパートナーと協力していくことの重要性について一致しました。
- デジタル
- 岸田総理から、デジタル技術の飛躍的な進展が経済や社会に積極的影響をもたらしており、生成系AIやメタバースのような没入型技術はその典型である旨述べました。また、国境のないデジタル経済については、我々の価値観を反映したガバナンスを創出することが重要である、偽情報対策も重要な課題、特に生成系AIは経済・社会に対する影響力が甚大であり、G7が一致して切迫感をもって対応すべき旨述べました。G7首脳は、生成系AIや没入型技術に関し、G7の価値に沿ったガバナンスの必要性を確認するとともに、特に生成系AIについては、「広島AIプロセス」として担当閣僚の下で速やかに議論させ、本年中に結果を報告させることで一致しました。
- 岸田総理から、デジタル経済の核はデータである旨述べつつ、「人間中心の信頼できるAI」を構築するためにも、「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」を具体化させるべく、閣僚レベルの合意に基づき、国際枠組の早期設立に向けて協力を得たい旨述べるとともに、議長国として相応の拠出も含め、貢献していく旨述べました。
- 貿易
- 岸田総理から、WTOを中心とするルールに基づく自由で公正な貿易体制は、世界の成長及び安定の基盤である、紛争解決手続の機能回復、デジタル社会への対応等は喫緊の課題であり、来年の第13回WTO閣僚会議で成果を出すために協力したい旨述べました。
- また、岸田総理から、現在の国際経済ルールでは十分に対処できない国の台頭や戦争等によるサプライチェーンの分断を受け、ルールに基づく自由貿易を促進しつつ、適切なリスク対応を講じる必要が出てきている、G7を始め同志国と議論していきたい旨述べました。
- G7首脳は、自由で公正な貿易体制の維持・強化に取り組みつつ、適切なリスク対応を講じる必要性について一致しました。
セッション2「ウクライナ」
- 岸田総理から、G7が結束し、あらゆる側面からウクライナへの力強い支援と厳しい対露制裁を継続していくことが不可欠である旨述べるとともに、今回のG7広島サミットでは、ロシアによる侵略を断固として拒否し、ウクライナに平和を取り戻すというG7の強い決意を改めて示したい旨述べました。また、中長期的なウクライナの復興に関して、官民一体となった取組が不可欠であり、ロンドンでの「ウクライナ復興会議」に向けて連携していきたい旨述べました。
- G7首脳は、厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援を継続していくことを確認するとともに、ロシア軍の撤退なくして平和の実現はあり得ないことを強調し、ウクライナに平和をもたらすため、あらゆる努力を行うことを確認しました。また、民間セクターによるものを含め、ウクライナの復興に向けた取組を進めていくことを改めて確認しました。
- G7首脳は、本セッション後に「ウクライナに関するG7首脳声明」を発出しました。
セッション3「外交・安全保障」
- 岸田総理から、以下のとおり発言しました。
- 厳しい国際情勢において、世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試みは決して認められず、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くというG7の強い意志を示していくことが不可欠である。
- 「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の新プランについて、引き続き連携していきたい。G7として、ASEAN諸国や太平洋島嶼国を含むインド太平洋地域との協力を強化していく。
- 中国については、我々共通の懸念を直接伝え、国際社会の責任ある一員として行動を求めつつ、気候変動等のグローバルな課題や共通の関心分野については中国と協働し、対話を通じて建設的かつ安定的な関係を構築することが重要である。
- 北朝鮮については、前例のない頻度と新たな態様で弾道ミサイルの発射等を行っており、深刻に懸念する。G7として、北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射を強く非難する。また、拉致問題の即時解決に向け、引き続きG7各国の全面的な理解と協力をお願いする。
- 核軍縮・不拡散については、広島の地で平和への誓い、そして「核兵器のない世界」の実現への決意を新たにしたい。ロシアによる核の威嚇は断じて受け入れられず、ましてやその使用はあってはならない。NPTの維持・強化を図ることこそが、「核兵器のない世界」を実現する唯一の現実的な道である。世界の核兵器数の全体的な減少を継続していくことが不可欠。核戦力の透明性、多国間輸出管理レジームを中心に軍事転用可能な品目・技術を管理することが重要。
- 安保理改革を含む国連の機能強化が重要である。
- 岸田総理の発言を受け、G7首脳間で率直な意見交換が行われました。インド太平洋情勢については、中国をめぐる諸課題への対応や、核・ミサイル問題、拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き緊密に連携していくことを確認しました。また、核軍縮・不拡散に関し、G7として「核兵器のない世界」へのコミットメントを再確認しました。そのような意見交換の成果として、本セッション後、G7首脳は、核軍縮に焦点を当てたG7初の首脳独立文書である「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」を発出しました。
セッション4「パートナーとの関与の強化(グローバル・サウス、G20)」
- 岸田総理から、グローバル・サウスと呼ばれる新興国・途上国が存在感を高める中で、G7を超えた国際的なパートナーへの関与を強化したい旨述べつつ、現下の複合的な危機によって最も深刻な影響を受けているのがこれらの国である旨指摘しました。その上で、これらの国が抱える課題に積極的に取り組むことの重要性を強調し、グローバル・サウスは多様な国が存在するため、各国が直面する様々なニーズに応じてきめ細やかに対応することが必要、3月に発表したFOIPの新プランも、こうした問題意識に基づくものである旨説明しました。また、こうした取組を進めるに当たり、「人」を中心に据えたアプローチを通じて、人間の尊厳や人間の安全保障を大切にすることの重要性を強調しました。
- 岸田総理から、国際的なパートナーへの関与を強化するに当たっては、G20、その議長国インドとの連携を深めていくことが肝要である旨強調しつつ、G7として、食料、開発、保健といった国際社会が直面する諸課題において、G20が具体的な成果を得られるよう協力していきたい旨述べました。また、今回G20メンバーも含む招待国を交える形で、「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」を打ち出すのはその一環であり、こうしたG7広島サミットの成果を、今後のG20との連携に繋げていきたいと述べました。
- G7首脳は、(1)国際的なパートナーとの間で、国連憲章の原則や、国際社会が依って立つべき法の支配の重要性を共有していくこと、(2)こうした国々が抱える貧困、エネルギー移行、金融等の様々なニーズに応じて、途上国が自国内で加工等を行えるようなバリューチェーンの構築、グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)を通じた支援、開発資金ギャップを埋めるための努力等を通じ、きめ細やかに対応していくこと、(3)本年9月のG20ニューデリー・サミットに向けて、議長国インドを積極的に支え、他のG20メンバーに対しても丁寧な対応を継続していくべきことについて一致しました。
セッション5「経済的強靱性・経済安全保障」
- 岸田総理から、昨年のG7エルマウ・サミットにおいて、我々は重要なサプライチェーンのリスクに対処し、経済的強靱性を向上させていくことを始め、経済安全保障上の課題への対応に向けた協力を進めていくことで一致した、近年経済安全保障上の課題に対処することの重要性が急速に高まっていることを受け、今回、G7サミットの議題としては初めて本件を取り上げることになる旨述べました。
- 岸田総理から、具体的な協力分野として、以下の3点について発言しました。
- 第一に、サプライチェーンの強靱化や、基幹インフラのセキュリティリスクへの対応など、グローバルな経済的強靱性の向上。サプライチェーンについては、従来確認されてきた透明性、多様性、安全性や持続可能性といった原則に加え、「信頼性」が重要。重要鉱物、半導体、蓄電池等の重要物資のサプライチェーン強靭化が極めて重要。特に、現在国際社会がエネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクという複合的な困難に直面する中、クリーン・エネルギー経済への移行に不可欠な重要鉱物のサプライチェーン強靱化は大きな課題。
- 第二に、経済的威圧に対し、G7が協調して対応することが必要。また、不透明で有害な産業補助金、国有企業による市場歪曲的慣行、強制技術移転を含め、非市場的政策及び慣行に対応するツールやルールの活用・強化についても連携を強化したい。
- 第三に、我々の機微技術の保全に向けた取組や連携の強化。技術の移転に関するリスクについて、G7の共通理解を醸成していくことが鍵。そういった努力の一環として、輸出管理や投資規制など我々が有する技術管理ツールについて、意見交換や情報共有を進めていきたい。
- G7首脳は、G7が結束して次の事項について対応していくことを確認しました。
- 第一に、サプライチェーンや基幹インフラの強靱化。
- 第二に、非市場的政策・慣行や経済的威圧への対応を強化すること。経済的威圧については、G7が連携して対応していくための新たな仕組みを立ち上げる。
- 第三に、最先端の機微な技術が国際の平和と安全に悪影響を及ぼす事態を回避するため、適切に管理すること。
- 第四に、これらの取組を通じ、グローバル・サウスを含む国際社会全体の経済的強靭性と経済安全保障を強化すること。また、そのための協力に当たり、WTOを中核とする多角的貿易体制を維持・強化していくこと。
- また、G7首脳は、経済安全保障はG7が緊密な連携の下で取り組んでいくべき戦略的な課題であるとの認識の下、経済安全保障に関する取組について、G7枠組を通じて包括的な形で協働し、連携していく意思を確認しました。
- 更に、AIがもたらす機会と課題についても議論が及び、G7首脳間で問題意識を共有しながら、データの重要性と対応の方向性について意見が交わされました。
- ここでの議論を踏まえ、G7首脳は、G7として初めて、経済的強靭性や経済安全保障に関する包括的かつ具体的なメッセージを「経済的強靭性及び経済安全保障に関するG7首脳声明」として発出することで一致しました。
- 加えて、G7として、クリーン・エネルギー移行に必要不可欠な重要鉱物及び再生エネルギー機器製造のサプライチェーンの強靱化に関する「G7クリーン・エネルギー経済行動計画」を発表し、世界全体のクリーン・エネルギー経済への移行を加速することで一致しました。
セッション6「複合的危機への連携した対応」
- 開発
- 岸田総理から、以下のとおり発言しました。
- 本年はSDGs達成に向けた中間年。開発課題は、非常に幅広く、気候、保健、食料等、様々な分野の課題が複合的に連関している。多くの途上国が複合的危機に直面する中で、SDGs達成は危機に瀕しており、達成に向けた資金ギャップはむしろ拡大している。9月のSDGサミットを見据え、次の二点を提案したい。
- 第一に、SDGs達成に向けた着実な進捗を得るべく、開発協力の効果的活用や民間資金の動員に向けた取組を推進したい。日本は、新たな時代の人間の安全保障の理念に立脚し、脆弱な人々を支援する取組を重視。本年17億ドル以上の人道支援を行う。G7全体としては、210億ドル以上になる。また、昨年、G7は、世界のインフラ投資ギャップを埋めるため、PGIIを立ち上げた。5年間で、最大6000億ドルの官民資金を動員していくことを表明し、現在これを強力に進めている。国際開発金融機関(MDBs)改革については、貧困削減といった従来の開発目標を維持しつつ、地球規模課題への対応を強化する必要がある。
- 第二に、SDGsの達成に向けて、透明で公正な開発金融の促進に共に取り組みたい。全ての債権国・債務国に対し、国際ルール・スタンダードを遵守し、透明で公正な開発金融を促進していくよう呼びかけたい。とりわけ、喫緊の課題である債務危機への対応では、低所得国のために「債務措置に係る共通枠組」を迅速に実施することが不可欠。また、日本は、インド、フランスと共にスリランカの債務再編を主導しており、これが中所得国の債務再編のモデルとなることを期待。
- MDBs改革、透明で公正な開発金融等の諸課題について、今後、G20を始めとする枠組も活用し、この問題に取り組んでいきたい。
- 参加国・機関は、SDGs達成に向けた力強いコミットメントを再確認し、開発協力の効果的活用や民間資金の動員に向けた取組を推進していくことを確認しました。特に、PGIIの下で具体的な投資案件を推進していくことや、MDBsを始め様々な改革を推進していくことへの期待が示されました。また、透明で公正な開発金融の重要性や、債務問題への対応を加速する必要性についても一致しました。
- 食料
- 岸田総理は、喫緊の食料危機への対処と強靱な食料安全保障の確立が急務である旨述べました。
- G7と招待国の首脳は、共同で「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」を発出することで一致しました。岸田総理は、この声明は食料問題に対する我々の結束した対応を示す重要な成果、産消対話やG20サミットの議論に繋げていきたい旨述べました。
- 保健
岸田総理から以下のとおり発言し、参加国・機関は引き続き連携して取り組んでいくことを確認しました。 - 新型コロナの次の危機に備え、予防し、対応することが不可欠。
- 第一に、グローバルヘルス・アーキテクチャー(GHA)の構築・強化。首脳級ガバナンスや国際規範の設定に加え、既存の機関等による緩やかな連携を強化する「ソフト・ガバナンス」の重要性を確認したい。また、財務・保健当局間の連携の強化や、危機時に迅速かつ効率的に資金を供給する「サージ・ファイナンス」を含む資金面の取組を推進したい。
- 第二に、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成への貢献。G7として、480億米ドル以上の官民支援にコミットする。インパクト投資や「UHCグローバル・プラン」を含め、UHC達成に向けた取組を後押ししたい。
- 第三に、パンデミックや薬剤耐性(AMR)への対応を含むヘルス・イノベーションの促進。今般G7が発出する「感染症危機対応医薬品等(MCM)への公平なアクセスのためのG7広島ビジョン」で示した原則に基づき、「MCMに関するデリバリー・パートナーシップ」を立ち上げる。連携していきたい。
- ジェンダー
岸田総理から、ジェンダー主流化の推進に向け、各課題に対する政策を一体的に扱う「ネクサス」を作り出すことが重要、防災を含む女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダの促進、女性の経済的自立など、様々な取組を有機的に連携させていく旨発言しました。参加国・機関から、これに賛同する発言がありました。 - この他、参加国・機関は、第13回WTO閣僚会合(MC13)の成功に向け、WTO改革を含む貿易分野における課題に取り組んでいくことを確認しました。
セッション7「持続可能な世界に向けた共通の努力」
- 岸田総理から、気候変動・エネルギーに関して以下のとおり発言しました。
- 気候変動は、「気候危機」とも呼ぶべき人類共通の待ったなしの課題である。各国を取り巻く状況は様々であるが、人類共通の課題に連携して対応していくための方途について議論し、COP28につなげていきたい。
- 温室効果ガスの排出削減には、世界全体での取組が不可欠。気温上昇を1.5℃に抑えるため、2050年ネット・ゼロに向けて、2030年までの「勝負の10年」に、全ての部門において、急速かつ大幅で、即時の温室効果ガス排出削減を実施しなければならない。省エネや再エネの活用を最大限進めたい。
- ロシアによるウクライナ侵略は、気候変動対策とエネルギー安全保障の強化の両立が一層重要になっていることを我々に認識させることになった。エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクを一体的に捉え、バランスのとれた解決の道筋を描いていくことが重要である。そのような観点から2点述べたい。
- 第一に、多様な道筋を描きつつ、ネット・ゼロという共通のゴールを目指すことの重要性。世界全体で温室効果ガス排出量をネット・ゼロに近づけていくためには、各国・地域毎にエネルギー事情、産業・社会構造、地理的条件などが一様ではないことを認識した上で、実効的な対策を打つことが重要。各国・地域の経済成長を損なうことなく、脱炭素経済へと転換していくことが必須。
- G7は、「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」を立ち上げ、パートナー国の高排出インフラの早期退役の加速と再エネへの投資を積極的に推進している。また、日本はアジアの脱炭素化を加速すべく「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想を提唱。今年3月には、ASEANや豪州の10か国の参加を得て、初の閣僚級会合を開催し、エネルギー安全保障、気候危機、地政学的リスクの一体的な解決に向けた域内協力の方針を打ち出した。具体的には、省エネや再エネの活用を最大限進めつつ、原子力やアンモニアを含む水素エネルギーの活用、これらと二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)との組み合わせ等を行っていく。
- 第二は、サプライチェーンのリスクへの対応である。ネット・ゼロ実現に向けた省エネや再エネ技術の活用が進み、クリーン・エネルギー移行の取組が加速。しかし、こうした取組に不可欠な重要鉱物等のサプライチェーンの特定国への依存という地政学的リスクや、中長期的な需給逼迫の可能性も顕在化。
- 各国が連携して上中流部門の開発に取り組むなど、重要鉱物の安定供給を実現することが不可欠である。併せて、脱炭素に不可欠な製品のサプライチェーンで新興国・途上国がより大きな役割を果たせるよう協力する「RISE(強靭で包摂的なサプライチェーンの強化)に向けたパートナーシップ」の早期立ち上げも重要。
- 今回のサミットでは、サプライチェーン強靱化を含む「G7クリーン・エネルギー経済行動計画」をG7として発表。G7はクリーン・エネルギー経済への移行を力強く支援する。
- 世界の脆弱層が取り残されないことも必須である。気候変動に対し脆弱な人々を守りぬくことは不可欠。強靭性の強化に向け、島嶼国を含む気候脆弱国に対する更なる支援を実行していく。
- 岸田総理から、環境に関して以下のとおり発言しました。
- 環境汚染や生物多様性の損失の課題にも国際社会が一体で取り組むべき。循環経済・資源効率性のアプローチが有効であり、取組を強化したい。
- プラスチック汚染の解決に向け、G7で野心的な目標を示し、条約策定に向けた議論をリードしたい。違法・無報告・無規制(IUU)漁業対策等の持続可能な海洋の実現に向けた具体的な取組も進める。
- 昨年12月に採択されたグローバルな生物多様性枠組の実施に向けた取組・支援、ネイチャーポジティブ経済実現に向けた経済界と連携した取組、持続可能な森林経営及び木材利用等についても、国際社会と連携して実施したい。
- 議論の結果、参加国・機関の間で、以下の共通認識を得ました。
- 第一に、持続可能な世界を目指し、気候変動、生物多様性、汚染といった課題に一体的に取り組む必要があること。
- 第二に、「気候危機」への対応は世界共通の待ったなしの課題であり、G7も太平洋島嶼国もアフリカやその他の地域の国々も一緒に取り組むこと。
- 第三に、エネルギー安全保障、気候危機、地政学リスクを一体的に捉え、再エネや省エネの活用を最大限導入しつつ、経済成長を阻害しないよう、各国の事情に応じ、あらゆる技術やエネルギー源を活用する多様な道筋の下で、ネット・ゼロという共通のゴールを目指すこと。
- 第四に、クリーン・エネルギー移行に不可欠なクリーン・エネルギー機器及び重要鉱物のサプライチェーンの強靱化の必要性。これらの点については、今後、国際エネルギー機関(IEA)から専門的・客観的な知見が提供されることへの期待が示された。
- 第五に、気候資金の動員が極めて重要であり、気候変動に脆弱な国や人々が取り残されないような支援が必要であること。
- 第六に、環境問題に関して、プラスチック汚染対策、生物多様性保全、森林対策、海洋汚染などの具体的な取組を進めていくための連携強化。
- 最後に、岸田総理から、今後も気候変動・エネルギー対策と生物多様性保全等の取組の相乗効果を活用し、環境課題に一体として対応することが不可欠であり、本日の議論をCOP28等の機会における更なる行動に繋げていきたい旨述べました。
セッション8「ウクライナ」
- 岸田総理から、以下のとおり発言しました。
- 厳しい冬も乗り越え、ロシアの侵略に結束して対抗してきたウクライナ国民の勇気と忍耐強さに、心から敬意を表する。
- ロシアによる侵略を一日も早く終わらせるためには、G7がこれまで以上に結束し、ウクライナをあらゆる側面から力強く支援するとともに、厳しい対露制裁を継続していくことが不可欠である。
- また、ウクライナに平和と繁栄を取り戻すためには、中長期的な復旧・復興が不可欠である。その際には、特に民間セクターの役割が重要。その観点から、G7として、多数国間投資保証機関(MIGA)にウクライナ復興・経済支援(SURE)信託基金が設立されたこと、我が国のJBICが主導して各国の開発金融機関によるウクライナ投資プラットフォームが立ち上がったこと、6月にロンドンで開催される「ウクライナ復興会議」も念頭に、官民で取り組む姿勢を示していきたい。
- ゼレンスキー大統領が「平和フォーミュラ」を示し、公正かつ永続的な平和に向けた真摯な努力を続けていることを、G7として歓迎し、支持している。
- これに対し、ゼレンスキー大統領からは、岸田総理のリーダーシップ及びG7メンバーからの支援に対する深い感謝の意が示されました。その上で、G7首脳は、ウクライナに対して外交、財政、人道、軍事支援を必要な限り提供するという揺るぎないコミットメントを着実に実施していくことで一致するとともに、ウクライナに平和を取り戻し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜く決意を確認しました。
セッション9「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」
- 岸田総理から、以下のとおり発言しました。
- ロシアによるウクライナ侵略は明白な国際法違反である。ロシアが行ったことが許されてしまえば、大国が小国を飲み込み、力が支配する世界となってしまう。そのためにも、ロシアによるウクライナ侵略を一日も早く終わらせ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜いていく必要がある。
- 国際社会が各地において直面している紛争、暴力、地政学的緊張にもこれまで以上に目を向けるべきである。スーダンでも非常に懸念される事態が起きている。国際社会が結束して早期終結を働きかける必要がある。
- 主権、領土一体性の尊重など、国連憲章の原則を全ての国が遵守することは、皆が賛同できると考える。こうした観点から、私は法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を訴え、この点について、多くの首脳と一致してきている。
- さらに、国際社会の平和を確保するためには、厳しい安全保障環境を踏まえつつ、「核兵器のない世界」の実現に向けた現実的な取組を進めることも重要。この点、ロシアによる核の威嚇は断じて受け入れられず、ましてやその使用はあってはならない。
- 平和と安定は、開発と補完関係にある。開発分野にもしっかりと取り組んでいきたい。
- これに対し、ゼレンスキー大統領から、ロシアによるウクライナ侵略に立ち向かう覚悟の表明とともに、和平に関する自らの考えにつき説明がありました。また、ウクライナ情勢に関し、各国首脳からは、ロシアによるウクライナ侵略がもたらしている人的被害やエネルギー、食料不安の増大を含む世界経済への悪影響につき、深い懸念が表明されました。
- その後、各国首脳の間で、ウクライナ情勢に加え、インド太平洋やアフリカを始め、国際社会が抱える様々な平和と安定に関する諸課題について議論を交わし、以下の点が重要であることについて認識を共有しました。
- 全ての国が、主権、領土一体性の尊重といった国連憲章の原則を守るべきこと。
- 対立は対話によって平和的に解決することが必要であり、国際法や国連憲章の原則に基づく公正で恒久的な平和を支持すること。
- 世界のどこであっても、力による一方的な現状変更の試みを許してはならないこと。
- 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くこと。
- また、複数の首脳から、「核兵器のない世界」に向けた現実的な取組や、安全保障理事会を含む国連の改革の必要性についても指摘がありました。その上で、各国首脳は、こうした土台に立ち、引き続き対話を続け、国際社会が直面する平和と安定に対する挑戦に共に立ち向かっていくことを確認しました。
閉会セッション
閉会セッションでは、岸田総理から、今回のサミットで、国際社会の喫緊の諸課題についてG7としての具体的な対応を示す各種文書に合意できたことは非常に喜ばしい、来年のイタリア議長下でも引き続きG7として結束し、緊密な連携を継続していきたい旨述べて、今回のG7広島サミットの全てのセッションを終えました。
関連リンク
- G7広島サミット(セッション1(ワーキング・ランチ)「分断と対立ではなく協調の国際社会へ/世界経済」概要)(令和5年5月19日)
- G7広島サミット(セッション2「ウクライナ」概要)(令和5年5月19日)
- G7広島サミット(セッション3(ワーキング・ディナー)「外交・安全保障」概要)(令和5年5月19日)
- G7広島サミット(セッション4「パートナーとの関与の強化(グローバル・サウス、G20)」概要)(令和5年5月20日)
- G7広島サミット(セッション5「経済的強靱性・経済安全保障」概要)(令和5年5月20日)
- G7広島サミット(セッション6「複合的危機への連携した対応」概要)(令和5年5月20日)
- G7広島サミット(セッション7「持続可能な世界に向けた共通の努力」概要)(令和5年5月20日)
- G7広島サミット(セッション8「ウクライナ」概要)(令和5年5月21日)
- G7広島サミット(セッション9「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」概要)(令和5年5月21日)