APEC(アジア太平洋経済協力、Asia Pacific Economic Cooperation)
2014年北京APEC閣僚会議
1 APEC25年間の成果及び今後の役割
(1)APEC25年間の成果について,各エコノミーからは,APECは,2020年までに自由で開かれた貿易投資の実現を目指すというボゴール目標の基に,世界の他地域よりも高い経済成長を達成してきたこと,多角的貿易体制を一貫して支持してきたことなどへの評価がなされた。
(2)APECの今後について,相互協力及び信頼に基づき,各エコノミーの発展の度合いを考慮しつつ,地域経済統合及び経済発展を追求していくべきとの意見が出された。
(3)日本からは,概要以下のとおり発言。
ア 地域経済統合の推進,多角的貿易体制の後押し等につき,APEC25年間の成果を評価。
イ APECに期待する今後の役割として,ⅰ 環境物品の関税削減等の先進的取組を継続すること,ⅱ 「開かれた地域協力」を重視するAPECとしてビジネス界等との協力を強化すべきこと,ⅲ ルールに基づいた安定したビジネス環境を不断に改善すべきことなどを指摘。
2 包括的連結性及びインフラ開発の強化
(1)「APEC連結性ブループリント」を採択。インフラ開発に関する官民協力(PPP)の重要性が強調された。APECビジネス・トラベル・カード(ABTC)の有効期限を5年に延長するとの合意を歓迎。域内の相互理解と地域の連結性強化に資する教育交流の重要性についても確認。
(2)日本から,概要以下のとおり発言。
ア 域内の膨大なインフラ需要への対応として官民連携の(PPP)の推進が重要。
イ インフラ開発投資の推進に当たって,ⅰ ライフ・サイクル・コスト,環境性能,安全性などの「インフラの質」を勘案すること(日本が取りまとめた「インフラの質ガイドブック」の参照),ⅱ 環境社会配慮,透明性などの質の高いスタンダードを確保しつつ,現地の人々の雇用や能力構築につなげていくことが重要。
3 持続的発展,防災,女性と経済等の分野での協力
(1)エネルギー,環境,防災,女性の経済参画,持続的な保健システムの構築,腐敗との闘い等の分野での協力を継続していくことが確認された。
(2)日本からは,東日本大震災等の経験を踏まえ,強じんな地域の連結性,及びバリューチェーン構築の重要性を強調。併せて,来年3月の第3回国連防災世界会議への首脳・閣僚級の参加・協力を呼びかけた。また,女性の活躍促進における日本のAPECにおける取組(ⅰ APEC地域における管理職の割合向上の取組,ⅱ 「APEC女性活躍推進企業50選」報告書)を紹介。
4 多角的貿易体制の支持
(1)バリ合意の実施とWTOの交渉機能を巡る行き詰まりの打開につき議論。多角的貿易体制におけるITA拡大等,有志国(プルリ)の取組の重要性を認識。スタンドスティルの期限を2018年末まで延長するとともに,ロールバックを再確認すべく首脳に進言。
(2)日本からは,ⅰ WTOの交渉機能を取り戻す策を見いだすことにコミット,ⅱ ITA拡大交渉のできるだけ早期の妥結を促すとともに,環境物品交渉では,さらに幅広い品目の関税撤廃を目指すべき,ⅲ スタンドスティルの期限を2018年末まで延長するとともに,ロールバックを再確認すべきことに言及。
5 地域経済統合の進展
(1)「FTAAP実現に向けたAPECの貢献の北京ロードマップ」を承認し,「FAATP実現に関連する課題にかかる共同の戦略的研究(collective strategic study on issues related to the realization of the FTAAP)」に合意し,その結果を2016年末までに閣僚に報告することとなった。また,「グローバル・バリュー・チェーン戦略的ブループリント」を承認。
(2)日本からは,概要以下のとおり発言。
ア FTAAPは,TPP,RCEP,日中韓FTA交渉の成功を礎として実現されるものであり,これら全ての交渉に積極的に関与し,ロードマップへの取組みを進める。
イ FTAAP実現に向け,サービス貿易の自由化・円滑化が不可欠。来年は行動計画の策定に向けてフィリピンとも連携。
ウ 「グローバル・バリュー・チェーン戦略的ブループリント」の具体化として,日本は,強靱性と投資環境改善の二つの取組を主導。
6 革新的発展,経済改革及び成長の推進
(1)APECが世界の成長エンジンであり続けるため,経済改革を通じたイノベーティブな成長が共通課題であることを認識。「革新的な発展,経済改革及び成長に関するアコード」を承認。
(2)日本からは,概要以下のとおり発言。
ア アベノミクスを強力に推進。成長戦略を着実に実行し,APECの更なる発展に資する取組・協力を推進する。
イ エネルギー安全保障向上に向け,高効率石炭火力や基幹電源としての原子力発電等のクリーンエネルギー,再生可能エネルギー,エネルギー効率向上,仕向地条項緩和等による競争的で柔軟なLNG市場の構築が鍵。