APEC(アジア太平洋経済協力、Asia Pacific Economic Cooperation)

令和元年5月19日
(写真1)APEC貿易大臣会合集合写真 APEC貿易大臣会合集合写真
(写真2)発言する辻外務大臣政務官(写真提供:APEC事務局) 発言する辻外務大臣政務官(写真提供:APEC事務局)
(写真3)閣僚合同記者会見 閣僚合同記者会見

 5月17日及び18日,チリのビニャ・デル・マールにおいて,APEC貿易担当大臣(MRT: Ministers Responsible for Trade)会合が開催されたところ,概要以下のとおり(APECの21エコノミーの貿易担当閣僚等が参加し,チリのアンプエロ外務大臣が議長,我が国からは辻外務大臣政務官及び石川経済産業大臣政務官が出席)。
 今次会合では,APECのWTO支持の推進,地域経済統合の推進,デジタル時代における包摂的かつ持続可能な成長の強化等について議論が行われ,4年ぶりに共同声明(英文)(PDF)別ウィンドウで開くがとりまとめられた。また,同会合の機会を捉え,辻政務官と石川政務官は,韓国,台湾及びシンガポールに対し,日本産食品に対する輸入規制措置の早期撤廃・緩和について働きかけを行った。

1 採択された共同声明の概要

  • WTOがこれまで果たしてきた貢献を認識。
  • 透明性があり,非差別的で,WTOで合意されたルールの重要性を確認。
  • WTOの機能を改善するための行動が必要。
  • 透明性及び通報に関する能力構築イニシアティブ等を含め,WTOの作業の支持を推進させ得るAPECの作業を加速させるよう指示。
  • 電子商取引に関するジュネーブでの交渉の進展を認め,APECにおける取組を奨励。
  • APECが多角的貿易体制を支持し続けることに対するビジネス界からの要請を認識。
  • 女性の経済的発展及びエンパワーメントを増大させる努力を促す。
  • 適用可能な国内法規制を認識しつつ,情報とデータの自由な流通を促進。
  • 関連するAPECでの取組に基づく質の高いインフラ開発を通じて連結性を改善。
  • 海洋ごみ,IUU(違法・無報告・無規制)漁業が海洋環境等に悪影響を与えていることに留意。WTOにおける一定の漁業補助金を禁止する規律策定への支持を再確認。
  • ボゴール目標に向けた最後の一押しを支持。
  • 野心的なポスト2020ビジョンを策定。
  • FTAAPに関する能力構築イニシアティブ及び情報共有メカニズムの重要性を強調。

2 我が国からの発言(概要)

  • 国際的なルールに則り,貿易・投資の自由化と連結性の強化によって繁栄するアジア太平洋地域は,「自由で開かれたインド太平洋」の核。
  • 自由貿易の旗手としてTPP11に続き,RCEPの年内妥結を目指す。
  • WTOを中核とするルールに基づく多角的貿易体制は重要。WTO改革も必要不可欠であり,G20議長として議論を主導していく。
  • 不公正な貿易慣行を含む保護主義と闘い,市場歪曲の除去のための産業補助金のルールの強化に取り組み,レベルプレイングフィールドを実現すべき。
  • APECエコノミーがボゴール目標達成に向けて更なる努力を行うことを促す。
  • 「FTAAPに関するリマ宣言」に基づき,質が高く包括的なFTAAPの実現を目指し,「次世代貿易投資課題」を含む幅広い分野での検討や能力構築に取り組むべき。
  • 質の高いインフラが重要。「APECインフラ開発・投資の質に関するガイドブック」改訂を歓迎し,その実施の重要性を指摘。G20で新しい原則を策定。
  • デジタル貿易の円滑な成長には,自由なデータ流通とプライバシー保護やセキュリティ確保を両立させる「Data Free Flow with Trust」が重要。
  • APECの望ましい将来像は,「自由で,開かれ,連結され,デジタル化したAPEC」。
  • 包摂的かつ持続可能な成長を実現する観点から,女性のエンパワーメント,海洋プラスチックごみへの対応に取り組む。

3 評価・意義

(1)昨年のMRT会合では全体についてコンセンサスによる声明文書をまとめることができず,一部について議長声明の形で決着,また,昨年11月の首脳会議でもコンセンサスによる声明文書が発出できなかった。MRT会合でのコンセンサスによる声明文書の発出は2015年以来4年ぶり。
(2)今回は過去の経緯を踏まえ,昨年のブエノスアイレスでのG20首脳宣言をスタートとした上で,多くのエコノミーが合意文書を出すことを重視。また,議長国のチリは,簡潔な声明を志向した(今次声明は昨年の半分の分量)。
(3)今回全てのメンバーが合意する形での文書を出すことができたことは,G20大阪サミットおよび11月のAPEC閣僚・首脳会議に向けての大きな成果。
(4)今次会合の機会を利用し,日本産食品の輸入禁止措置を続けている韓国,台湾,シンガポールに対して政治レベルで同措置の撤廃・緩和につき働きかけを実施。

(参考:APECの今後の主な予定)
11月13日及び14日 APEC閣僚会議(チリ・サンティアゴ)
11月16日及び17日 APEC首脳会議(同上)

4 その他

アンプエロ・チリ外務大臣主催環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)メディア・ブリーフへの出席

(写真4)CPTPPメディア・ブリーフ CPTPPメディア・ブリーフ

 16日16時(現地時間),辻外務大臣政務官は,アンプエロ・チリ外務大臣がCPTPPに関し,チリのメディア向けに行ったブリーフに,MRT会合出席のためにチリを訪問した石川経済産業大臣政務官及びカー・カナダ国際貿易多様化大臣,パーカーNZ貿易・輸出振興担当大臣,チャン・シンガポール貿易産業大臣などTPP11参加各国の閣僚とともに出席した。辻外務大臣政務官は,チリ・サンティアゴでTPP11協定の署名式が行われたことに言及しつつ,チリのリーダーシップに感謝と敬意の意を表するとともに,TPP11協定の経済効果への期待や,我が国として着実な実施と拡大に向けて本協定参加各国と緊密に連携していくこと,チリを含む残り4か国の早期発効を期待する旨述べた。


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